今回は、印紙税法ということで、課税文書のうち第2号文書(請負に関する契約書)について見てみたいと思います。
本記事では、基本概念を確認しつつ、間違いやすいポイント(委任・準委任との区別、第7号文書との違い)についても解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
第2号文書(請負に関する契約書)の基本概念
印紙税法上の「請負」とは、民法632条に規定される請負を指します。すなわち、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約です。
請負の目的物(仕事の完成)は、家屋の建築や機械の製作といった有形のものに限らず、建物の清掃、機械の保守、シナリオの作成、音楽の演奏といった無形のものも含まれます。
また、特例として、職業野球の選手、映画・演劇の俳優、音楽家、プロボクサーなどが、その者としての役務の提供を約する契約(専属契約や出演契約)は、委任や雇用などの要素が混ざっていても、すべて請負契約に含められます(第2号文書の定義欄1→令21条)。
▽印紙税法 別表第1(課税物件表)第2号文書
| 課税物件 | 課税標準及び税率 | 非課税物件 | |
| 物件名 | 定義 | ||
| 請負に関する契約書 | 1 請負には、職業野球の選手、映画の俳優その他これらに類する者で政令で定めるものの役務の提供を約することを内容とする契約を含むものとする。 | 1 契約金額の記載のある契約書 次に掲げる契約金額の区分に応じ、一通につき、次に掲げる税率とする。 百万円以下のもの 二百円 百万円を超え二百万円以下のもの 四百円 二百万円を超え三百万円以下のもの 千円 三百万円を超え五百万円以下のもの 二千円 五百万円を超え千万円以下のもの 一万円 千万円を超え五千万円以下のもの 二万円 五千万円を超え一億円以下のもの 六万円 一億円を超え五億円以下のもの 十万円 五億円を超え十億円以下のもの 二十万円 十億円を超え五十億円以下のもの 四十万円 五十億円を超えるもの 六十万円 2 契約金額の記載のない契約書 一通につき 二百円 | 1 契約金額の記載のある契約書(課税物件表の適用に関する通則3イの規定が適用されることによりこの号に掲げる文書となるものを除く。)のうち、当該契約金額が一万円未満のもの |
▽施行令21条
(その役務の提供を約することを内容とする契約が請負となる者の範囲)
第二十一条 法別表第一第二号の定義の欄に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 プロボクサー
二 プロレスラー
三 演劇の俳優
四 音楽家
五 舞踊家
六 映画又は演劇の監督、演出家又はプロジューサー
七 テレビジョン放送の演技者、演出家又はプロジューサー
2 法別表第一第二号の定義の欄に規定する契約は、職業野球の選手、映画の俳優又は前項に掲げる者のこれらの者としての役務の提供を約することを内容とする契約に限るものとする。
第2号文書で間違えやすい点
01|委任・準委任 (不課税文書)との区別
請負と委任(準委任)は、どちらも他人に業務を依頼する契約ですが、印紙税法上、請負契約書は課税(第2号文書)となるのに対し、委任契約書は原則として不課税文書(印紙不要)となるため、その区別が重要です。
区別の基準(仕事の完成か、事務処理自体か)
請負契約(第2号文書)は、仕事の内容が特定されており、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約です。仕事が完成しなければ債務不履行責任を負います。
委任・準委任契約(不課税文書)は、一定の目的に従って事務を処理すること自体を目的とする契約であり、必ずしも仕事の完成を目的としません。
典型例での比較
実務上、境界線が難しいものについて、典型的な判断例を挙げます。
02|第7号文書になるシチュエーションとの違い
清掃請負や機械の保守請負のように、継続的に役務を提供する契約は、請負契約(第2号文書)の要件を満たすと同時に、営業者間で共通の取引条件を定める継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)の要件も同時に満たすことがよくあります。
所属の決定ルール(通則3)
一つの文書が第2号文書と第7号文書の両方に該当する場合、最終的にどちらの文書として印紙税を納めるか(所属の決定)は、契約金額(記載金額)が計算できるかどうかで分かれます(通則3-イ)。
- 第2号文書になる場合:契約金額の記載が「ある」場合
- 第7号文書になる場合:契約金額の記載が「ない」場合
▽別表第1「課税物件表の適用に関する通則」第3項イ
3 一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。
イ 第一号又は第二号に掲げる文書と第三号から第十七号までに掲げる文書とに該当する文書は、第一号又は第二号に掲げる文書とする。ただし、第一号又は第二号に掲げる文書で契約金額の記載のないものと第七号に掲げる文書とに該当する文書は、同号に掲げる文書とし、第一号又は第二号に掲げる文書と第十七号に掲げる文書とに該当する文書のうち、当該文書に売上代金(同号の定義の欄1に規定する売上代金をいう。以下この通則において同じ。)に係る受取金額(百万円を超えるものに限る。)の記載があるもので、当該受取金額が当該文書に記載された契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額)を超えるもの又は契約金額の記載のないものは、同号に掲げる文書とする。
シチュエーション別の具体例
エレベーター保守契約のケースを例に、具体例を見てみます。
パターンA:第2号文書になるシチュエーション(金額が計算できる)
例えば、契約書に「月額保守料:5万円」「契約期間:1年間(12ヶ月)」と記載されている場合、月額5万円×12ヶ月=60万円という契約総額が計算できます。契約金額の記載がある(計算できる)ため、第7号文書から外れ、記載金額60万円の第2号文書として扱われます。
「いずれか一方が申し出ない限り1年延長する」といった自動更新条項があっても、更新後の期間は計算に含めず、当初の1年間のみで計算します
パターンB:第7号文書になるシチュエーション(金額が計算できない)
例えば、契約書に「月額保守料:5万円」とは書かれているが、「契約期間」の記載がなく、「当事者の申し出がない限り継続する」とだけ書かれている場合、いつまで続くかわからないため、月額料金がわかっても、全体の契約金額が計算できません。契約金額の記載がないものとして扱われるため、第7号文書(1通一律4,000円)として扱われます。
そのほか例えば、月額料金は書かずに、「保守料金は別途覚書で定める」として契約期間だけを書いた場合も、同様に金額が計算できないため第7号文書になります
パターンC:(例外)第2号文書になるシチュエーション(期間が3ヶ月以内)
契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがない契約書は、そもそも法律上第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の定義から除外されます(そもそも第7号文書への該当性がない)。そのため、契約金額の記載がなくても、第7号文書にはならず、契約金額の記載のない第2号文書(1通200円)として扱われます。
このように、継続的な請負契約においては、単価と契約期間の記載の有無によって、印紙税額が大きく(階級定額の金額、4,000円、200円と)変動する点に注意が必要です。
結び
今回は、印紙税法ということで、第2号文書(請負に関する契約書)について見てみました。
印紙税法の関連記事一覧はこちら
-
-
印紙税法 - 法律ファンライフ
houritsushoku.com
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
印紙税法に関するその他の記事(≫Read More)
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 印紙税法(「印紙税法」)
- 施行令(「印紙税法施行令」)
- 施行規則(「印紙税法施行規則」)
- 基本通達(「印紙税法基本通達」)
- 質疑応答事例:印紙税目次一覧
参考資料
当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品・サービスを記載しています
参考文献image