商標法務

商標権の管理|商標権の更新手続

著作者:Racool_studio/出典:Freepik

今回は、商標法務ということで、商標権の更新手続について書いてみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

商標権の更新とは(法19条2項)

商標権の存続期間は10年だが、更新することができる(法19条2項)。

更新の単位は10年であり、更新回数の制限はない。

そのため、更新を続ければ半永久的に権利を保持できる。

(存続期間)
第十九条
 商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもって終了する。
 商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することができる。
 商標権の存続期間を更新した旨の登録があったときは、存続期間は、その満了の時に更新されるものとする。

以下、本記事では更新の手続について見てみる。

更新登録の申請(法20条)

申請書の提出(1項)

まず、更新登録の申請書を提出しなければならない。

(存続期間の更新登録の申請)
第二十条
 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を特許庁長官に提出しなければならない。
 申請人の氏名又は名称及び住所又は居所
 商標登録の登録番号
 前二号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

申請書の様式は、施行規則で定められている。

▽施行規則10条1項

(商標権の存続期間の更新登録の申請書の様式等)
第十条
 商標権の存続期間の更新登録の申請書は、様式第十二により作成しなければならない。

申請期間(2項)

 更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前六月から満了の日までの間にしなければならない。

申請期間の開始日は、存続期間満了日の6か月前からである。

例えば、20xx年12月26日が存続期間満了日の場合、申請期間は20xx年6月27日~12月26日となる(▷参考資料)。

なお、期間の計算については、こちらの参考記事を参照。

過去に向かってカウントする場合も、期間の計算に関する民法の規定が準用される(つまり逆向きに適用する)と解されています。

上記の例では、”初日”である12/26という表現は24時からカウントできる(端数が出ない)ので初日不算入の原則が適用されず(=12/26が算入される)、あとは暦計算によることになります。

申請期間の終了日は、存続期間満了日である。

期間経過後の申請(3項・4項)

ただ、存続期間満了日を過ぎても、直ちに商標権が消滅するわけではなく、6か月間の猶予がある。

▽法20条3項、施行規則10条2項

 商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であつても経済産業省令で定める期間内その申請をすることができる。 
   ↓ 経済産業省令
 商標法第二十条第三項の経済産業省令で定める期間は、同条第二項に規定する期間の経過後六月とする。

期間内に更新登録の申請をすることが「できない」の理由のいかんは問われない。

この猶予期間も経過すると、商標権は存続期間満了の時(=存続期間満了日の24時)に遡って消滅する。

 商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなす。

商標権の一部更新(施行規則11条参照)

複数の区分を登録している場合、使用の必要がなくなった区分を更新の際に落とせるよう、区分単位で更新申請をすることができる(法20条1項3号→施行規則11条)。

▽施行規則11条

(商標権の存続期間の更新登録の申請書に記載する事項)
第十一条
 商標法第二十条第一項第三号の経済産業省令で定める事項は、商標権に係る商品及び役務の区分の数を減じて申請する場合にあっては、更新登録を求める・・・・・・・・商品及び役務の区分とする。

更新登録料の納付(法40条2項)

一括納付の場合(基本パターン)

更新登録の申請と同時に、更新登録料を納付しなければならない。

▽法40条2項、法41条5項

(登録料)
第四十条
 
 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、登録料として、一件ごとに、四万三千六百円を超えない範囲内で政令で定める額に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。

(登録料の納付期限)
第四十一条
 前条第二項の規定による登録料は、更新登録の申請と同時に納付しなければならない。

期間経過後の申請の割増登録料

ただし、申請期間経過後の申請の場合は、登録料と同額の割増登録料を別途支払わなければならない。

▽法43条1項

(割増登録料)
第四十三条
 第二十条第三項…(略)…の規定により更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定により納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、…(略)…

分納の場合

上記は、一括納付の場合の話だが、更新登録料を前半5年分と後半5年分の2回に分けて納付すること(分納)もできる(法41条の2第7項)。

分納の時期は、前半5年分は更新登録の申請と同時に、後半5年分は存続期間の満了前5年までに、納付する必要がある。

▽法41条の2第7項

(登録料の分割納付)
第四十一条の二

 商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、更新登録の申請と同時に、一件ごとに、二万五千四百円を超えない範囲内で政令で定める額に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、二万五千四百円を超えない範囲内で政令で定める額に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。

分納のメリットは、初期費用を抑えたり、商標の使用状況に応じて権利を失効させたりすることができることである。

期間経過後の申請の割増登録料

分納の場合も、前半5年分に関して、6か月の猶予期間と、割増登録料の支払いの制度がある。

▽法43条2項

(割増登録料)
第四十三条
 
 第四十一条の二第七項の場合においては、前項に規定する者は、同条第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、…(略)…

後半5年分に関しても、6か月の猶予期間(追納)と、割増登録料の支払いの制度がある。

▽法41条の2第8項→第5項(※【 】は管理人注)

 第五項及び第六項の規定【商標登録時の分割納付に関する規定】は、前項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料を追納する場合に準用する。この場合において、第五項中「第一項」とあるのは、「第七項」と読み替えるものとする。
   ↓ 準用
 第一項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料(以下「後期分割登録料」という。)を納付すべき者は、後期分割登録料を納付すべき期間内に後期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつてもその期間の経過後六月以内に後期分割登録料を追納することができる

▽法43条3項

 第四十一条の二第五項(同条第八項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の場合においては、商標権者は、同条第一項又は第七項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料のほか、その登録料と同額の割増登録料を納付しなければならない。ただし、…(略)…

この後半5年分の猶予期間も経過すると、更新後の存続期間満了日の5年前に遡って商標権が消滅する。

▽法41条の2第8項→第6項

 前項の規定により後期分割登録料を追納することができる期間内に後期分割登録料及び第四十三条第三項の規定により納付すべき割増登録料の納付がなかつたときは、その商標権は、存続期間の満了前五年の日に遡つて消滅したものとみなす。

更新登録料の金額

更新登録料の金額は以下のとおりで、区分数に比例する(産業財産権関係料金一覧(特許庁HP)より抜粋)。

更新登録申請区分数×43,600円
分納額(前期・後期支払分)区分数×22,800円(※)

(※)分割納付における前期分の更新登録料の納付日又は納付期限が令和4年(2022年)3月31日以前である場合の、後期分の更新登録料は、改正政令附則第3条により、施行日(令和4年(2022年)4月1日)以降の納付であっても旧料金(区分数×22,600円)を適用

なお、上記は特許庁に支払う手数料であり、弁理士(特許事務所)に依頼して行う場合の弁理士費用はまた別です。

ちなみに、最近の改正によって値上がりしているが、その点については以下のページを参照。
令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ(令和4年4月1日施行)|特許庁HP

更新登録(法23条)

申請期間内の申請の場合(1項)

更新登録料の一括納付、または、分割納付の場合の前半5年分の納付があったときは、更新登録がなされる。

▽法23条1項(※【 】は管理人注)

(存続期間の更新の登録)
第二十三条
 第四十条第二項の規定【一括納付】による登録料又は第四十一条の二第七項の規定【分納】により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料納付があつたときは、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。

前半5年分の納付のときは、更新も5年分なのでは?という気もするが、あくまでも商標権の存続期間は10年ごとである。

前述のように、後半5年分を納付しないままでいると、更新後の存続期間満了日の5年前に遡って商標権が消滅する、ということになっている。

期間経過後の申請の場合(2項)

申請期間経過後の申請の場合は、納付すべき更新登録料に加えて、同額の割増登録料の納付があったときに、更新登録がなされる。

分納の場合は、前半5年分の額と同額である。(※以下の【 】は管理人注)

 第二十条第三項…(略)…の規定により更新登録の申請をする場合は、前項の規定にかかわらず、【一括納付の場合】第四十条第二項の規定による登録料及び第四十三条第一項の規定による割増登録料又は【分納の場合】第四十一条の二第七項の規定により更新登録の申請と同時に納付すべき登録料及び第四十三条第二項の規定による割増登録料の納付があつたときに、商標権の存続期間を更新した旨の登録をする。

商標公報への掲載(3項)

更新登録がなされると、商標公報に掲載される。

 前二項の登録があつたときは、次に掲げる事項を商標公報に掲載しなければならない。
 商標権者の氏名又は名称及び住所又は居所
 登録番号及び更新登録の年月日
 前二号に掲げるもののほか、必要な事項

まとめ

条文がややこしいため、表で整理してみると以下のようになる。

  申請 登録料の納付
期間内の申請 期間経過後の申請 権利の消滅 通常の登録料 割増登録料
一括納付 20条2項 20条3項 20条4項 40条2項 43条1項
分納 前期分 20条2項 20条3項 20条4項 41条の2第7項 43条2項
後期分 41条の2第8項
→第5項(追納)
41条の2第8項
→第6項
41条の2第7項 43条3項

分納の前期分については、申請自体は基本パターンである一括納付のときと同じタイミングなので、同じ条文になっている(20条3項の規定により更新登録の申請をする者は…、という内容の表現で、割増登録料の納付について記述している)。

登録商標の存続期間の管理

なお、存続期間の満了に関して、特許庁からお知らせ等は来ない。

特許事務所の通知サービス(特許事務所が登録商標の存続期間や更新登録料の納付期限などを管理・通知してくれるサービス)や、自社管理、あるいはそれらの併用によって、存続期間を管理する必要がある。

割と杜撰な会社(というか企業グループ)では、特許事務所からの通知すらスルーしていることもあるので、会社の規模や、登録商標の数、管理体制の成熟度いかんによっては、注意が必要である。

失効した登録商標が使用しない商標だったならいいが、使用するかどうかの検討自体をスルーして失効していたようなケースも実際にあったりする。

結び

今回は、商標法務ということで、商標権の更新手続について書いてみました。

簡単にいうと、

更新登録の申請
  +
更新登録料の納付
  ↓
更新登録

というだけの話ですが、申請期間、金額感、分納の話なども知っておいて損はない、という感じかと。

なお、存続期間の満了後6か月の猶予期間をさらに過ぎた場合の、商標権の回復手続というのもありますが、あまり一般的ではないと思うので割愛しています。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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