契約条項本文 法制執務

法令用語を勉強しよう|法令用語と契約用語の関係

2024年4月19日

今回は、法令用語を勉強しようということで、法令用語と契約用語の関係について書いてみたいと思います。

契約書を読み書きするには、法令用語などのいわゆる法制執務(法令の書き方・作り方に関する実務的な知識を集めたジャンル)をざっと見ておいた方がいいんですが、なぜそう思うのかという理由になります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

Point1:出発点は「見て真似る」

法令の書き方と契約の書き方の関係というのは、そもそも契約書ってどう書けばいいのか?という素朴な疑問がスタートなんだろうと思います。

そこでどうするのか、というと、同じような文書(ルールを記述するもの)で格式高いもの、つまり法令があるので、契約書を書くときには法令にならって書いていることが多いわけです。

なので、契約書の書き方について迷ったときに、まず最初に出てくるのは、基本的には、条文を眺めて真似すればいい、ということだと思います。

原始的なやり方ですが、そこが出発点だと思います。(管理人の個人的感覚)

いつでも見れる

▷法令データ提供システム:https://elaws.e-gov.go.jp/

これなら比較的ラクにできますし、いつでもできますし、迷っている事柄が何であっても、参考にすることができます。

全体的な書き方でもいいですし、レイアウトでもいいですし、「こういうときってどうやって書くんだろう」という特定の場面の書き方でもいいと思います。

若干乱暴な言い方ですが、それでだいたいは合ってます。法令用語をはじめとして、法令の書き方というのは慣用的にくり返し使われているので、その使い方の結果として出来上がっているものを見て真似るというのは、それなりに合理的なやり方だと思います。

ただ、細かい用法の違いなどは、一見すると、使い分けに気がつかない(真似しているだけでは気づかない)ことも多いですので、もう一歩進んで、精度を上げようと思ったら、やはり法令用語などを勉強した方がよいのだろうと思います。
(ex.「その他」と「その他の」の違い、「から」と「から起算して」の違い、「前項の場合において」と「前項に規定する場合において」の違いなど)。

別にまとめてでなくても、都度都度、必要な分だけかじりながら学ぶこともできますし。どちらでもいいと思います。

Point2:箇条書き文書のベースとなる

法令用語など法制執務の勉強をやっておいた方がいいと思う理由は、根本的なことをいうと、箇条書き文書を書くときのベースの技術になるからです。

法律家の書く文書は、まとめていえば、

  • ストーリー
  • 箇条書き
  • レポート

の3種類になります(たしか司法修習のときに聞いた話だったと思いますが、振り返ってみると確かにそうだなと思います)。

①は、”これはこういう事案だったんです”という物語を当事者が主張する書面で、裁判での準備書面や主張書面が典型です。

②は、箇条書き、つまり、条文構造になっているもので、法令や契約書や社内規程などがこれにあたります。

③は、一般的な文書と同じく、物事を整理して書いたレジュメ調の文書で、書籍でも論文でも、意見書でもメモランダムでも、届出書でも報告書でも、幅広い文書がこれにあたります。

それで、法令用語などをやっておいた方がいい根本的な理由というのは、②の基本作法になるので、そこのベースとして持っておいた方がよい、ということです。契約書だけでなく、規程を作成するときも使います。

通常の教育課程(法学部でもロースクールでも司法修習でも)では、まとめてトレーニングする機会はないので、普通は、実務に出てから各人でやっていることだろうと思います。

以前の職場(法務部)で、管理人が話していたときに、先に退職した弁護士もそういうの(←法令用語の本)持ってましたわ~、みたいな話を聞いたことがありますが、ああみんなそうやってやってるんだなー、と思ったことがあります。

Point3:法令用語と契約用語の違い

さて、ここまでした話と矛盾しているようですが、あまり神経質になりすぎなくてもいいと思います。

法令用語の使い方としては間違った使い方をしてしまった、とか、そんなの知らんかった、ということがあっても、それで大ごとになるとは考えにくいと思われるからです。

法令用語は法令の解釈ですが、契約用語は、当事者の合理的意思解釈、つまり事実認定の問題なので、全く同じものと考える必要はないだろうと思います。
(法令用語としての意味そのものというよりは、当事者がどういう意思だったと認定できるかが最終的な問題)

このように明言しているものは意外と見当たりませんので、管理人の私見です

法令用語としては正確でない書き方をしたからといって、基本的には、内容や前後の文脈で合理的に解釈できるところに落ち着くだろうと思われます。

そもそも法令自体も、法令用語としての使い方を貫徹できているわけではなく、物の本でもだいたい「しかし例外もある」とか「こういう例もあるが、あまり良い例とはいえない」とかの解説がついている場合が多いですしね。法令を作成する際の慣行ですし、そりゃ多少の揺れはあるでしょうと。

実際のところ、法令用語としての使い方が争点に含まれているような事案は、個人的には見た覚えがないですし、判決文に書いても、あまり説得力が生まれないように思います。

あくまでもそのように契約を解釈する実質的理由がメインの争点なり判断になるはずで、法令用語としての使い方は、その際の考慮要素のひとつ、みたいな位置づけになるかと思います。

なので、法令用語としての意味などは、精度、正確性をより・・高めていくためのベター要素なのだと思っています。

Point4:悩みどころが共通する部分が結構ある

最後にもうひとつ。法令用語などの解説を見ていると、法令を作成するときも契約書を作成するときも、悩みどころはけっこう一緒なんだな、と思うことがあります。

なので、何かと解決のヒントを得たりできますし、実際に契約書を読み書きするなかで自分の感じる感覚と同じようなことがたまたま書いていると、一種の安心感みたいなものを感じるようなこともありますので(ルールを記述するというのはそういうもんなんだな、みたいな)、やはり有用だと思います。

例えば、「ものとする」という法令用語に関して、ざっくりいうと、

義務づけを表現したいんだけれども、ニュアンスがきつく出すぎるのをソフトにするために使われる、ただ、例外的な裁量の余地があると読まれるおそれもなくはない

みたいな話があります。

これは、契約書やら利用規約やらをつくるときも、顧客向けの文書では、正確性だけでなく、一般的な普通の文書として読んだときの感覚やニュアンスもやっぱり多少は気になる、みたいなことと似ているように思います。

正確性だけをとれば使わなければよいだけですが(実際そういう契約書もある)、さりとてそういう要請だけというわけでもないので、「ものとする」って実際には使われてるんだよなあ…みたいなことです

あるいは、定義や略称の書き方っていくつかのパターンがありますが(まとめて定義規定をつくるのか個別に途中でつくるのかとか、途中でつくるときの括弧書きの書き方とか)、どういうふうに使い分けたらいいのかという話も、法制執務の本を紐解くと、整理して書いてくれていたりします。

こういった悩みにも解決のヒントを得ることができますので、用語だけでなく、レイアウト、定義づけのパターン、対句構造など、骨格的なことも、一度見ておいた方が悩みが減るような気がします。

結び

今回は、法令用語を勉強しようということで、法令用語と契約用語の関係(法制執務と契約書の読み書きの関係)について書いてみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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