業務委託契約書

業務委託契約書|「納入と検収に関する条項」を解説~納期・検査期間・不合格時の措置など

今回は、業務委託契約書ということで、納入および検収に関する条項を見てみたいと思います。

両事項は、別々の条項にして分けて規定しているときもあれば(納入条項の後に検収条項が続く)、同じ条項にまとめて規定されているときもあります。本記事では、納入と検収に分けて、これらの条項の意義や主なルール、レビュー時のポイントなどについて詳しく解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

納入に関する条項

業務委託契約(特に請負や製作物供給の性質を持つ契約)において、納入(引渡し)に関する条項は、受託者の債務履行の重要なステップです。

納入時期(納期)と納入場所

納入時期(納期)は、契約上の義務が履行されるべき期限であり、受託者はこの期限を徒過すると履行遅滞の責任を負います(納期の特定)。

納入場所について契約書で規定しなかった場合、法律上の原則(民法)では、特定物であれば契約時にその物が存在した場所、その他の場合は債権者(委託者)の現在の住所または営業所での引渡しとなりますが、通常は、契約書のなかで納入場所を指定します(例:委託者の指定する場所、委託者の○○工場など)を指定します(場所の特定)。

受託者の責めに帰すべき事由によって納入が遅延した場合に備え、委託者は損害賠償や「1日につき契約金額の○%」といった違約金(遅延損害金)を請求できる規定を設けることもあります。

納入遅延時の措置

納期に遅れるおそれがある場合、受託者は直ちに理由や納入予定時期を委託者に申し出たうえで、対策を協議・指示を仰ぐ旨の条項を設けるのが一般的です(遅延の事前通知と協議)。

納品費用(運賃・梱包費等)の負担

納品に関する費用について規定がない場合、民法の原則(民法485条)では弁済の費用として債務者(受託者)の負担となります。

解釈の疑義を防ぐため、契約書に「特別の定めがない限り、納品にかかる梱包費、運賃、保険料その他一切の費用は委託料(単価)に含まれる」といった内容を定め、受託者負担であることを明確にすることも考えられます。

検収に関する条項

検収の意味と契約上の意義

検収とは、納入された目的物(成果物)が、契約で定めた仕様や基準に合致しているか(数量や品質など)を検査し、合格したものを受け入れることをいいます。

そもそも、民法には検収という言葉や定義自体が存在しません。商法には検査という言葉はありますが(商法526条1項)、検査期間などは定められていません。そのため、検収プロセスが必要な場合には、その内容を具体的に契約書に定めておくことが、事実上必須となります。

また、代金の支払時期、所有権の移転時期、危険負担の移転時期、契約不適合責任の期間(起算点)といった、他の関連する法的効果を検収時点と結び付けたい場合には、そもそも検収に関する定めがあることが前提となります。

【参考】他の関連する法的効果

 検収の完了は、以下のような効果を発生させる基準点として設定されることがあります。

  • 所有権の移転:目的物の所有権は、原則として委託者が検査を行い合格して受け入れた時(検収時)に、受託者から委託者へ移転すると定める
  • 危険負担の移転:不可抗力など当事者双方の責めに帰さない事由で目的物が滅失・毀損した場合のリスク(危険負担)について、検収時(または引渡し時)をもって受託者から委託者へ移転すると規定する
  • 契約不適合責任の起算点:検収時に発見できなかった契約不適合についての責任追及期間を、「検収完了後○ヶ月以内」といった形で検収完了日を起算点とする

法律上の原則

業務委託契約書に検収に関する条項を設けなかった場合、民法や商法などの法律上の原則(デフォルトルール)が適用されることになります。

目的物に契約不適合(瑕疵や数量不足)があった場合の責任追及について、民法の原則では、不適合を知った時から1年以内に通知すればよいとされています(民法566条、637条1項)。

また、業務委託契約が製作物供給契約(売買と請負の混合契約)や売買の性質を帯びている場合、委託者と受託者がともに商人(会社など)だと、商法526条が適用されます(検査・通知義務)。

この場合、委託者は目的物を受領した後、遅滞なく検査しなければならず、不適合を発見したときは直ちに受託者へ通知しなければ、契約解除や損害賠償などの権利を失ってしまいます(また、直ちに発見できない隠れた不適合であっても、受領から6ヶ月以内に発見して直ちに通知しなければ同様に権利を失います)。

契約書で合理的な検査期間(検収期間)を定めておかないと、この比較的短い期間制限に縛られることになります。

▽商法526条(※商事売買に関する規定)

(買主による目的物の検査及び通知)
第五百二十六条
 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない
 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

検収条項の記載内容

検査期間

委託者は目的物を受領した後、速やかに(あるいは契約で定めた期間内に)検査を行う旨を定めます。

検査期間は、対象物の性質に応じて合理的に設定する必要があります。例えば、大規模なソフトウェア開発などの場合、テストに数か月を要することも珍しくないため、5営業日などの短すぎる期間設定は適切でなく、実態に合わせて1か月などの期間を確保する必要があります。

みなし検収(みなし合格)

受託者側としては、検査期間内に委託者が具体的な理由を明示して異議を述べない場合や、通知を行わない場合は、検査に合格したもの(検収完了)とみなすみなし検収の規定を置くことが考えられます(受託者が不安定な地位に置かれることを防ぐ)。

システム開発等では、検収書が交付されていなくても、委託者が実際にソフトウェアを本番稼働させている場合は、実用に耐えているものとして検査に合格したとみなす条項が設けられることもあります(本番稼働によるみなし合格)。

検査不合格(契約不適合)時の措置・通知期間

検査の結果、仕様に合致しない不合格品があった場合のルールも定めておきます。

契約不適合(瑕疵や数量不足)を発見した場合は、直ちに(あるいは契約で定めた期間内に)受託者へ具体的な理由を明示して通知する、とするのがニュートラルな内容です(商法526条の趣旨に基づく)。

そして、委託者は受託者に対し、不合格品の無償での修補、代替品の納入、または不足分の追加納入を求めることができることを定めます(修補や代替品の納入)。

不合格の理由が些細なものであり、委託者の工夫等によって使用可能である場合には、両者で協議のうえ価格を減額して特別に引き取る特別採用の規定が設けられることもあります(特採)。

その他の留意点:取適法との関係

業務委託契約が取適法の取引類型であり、事業者の規模要件も満たして取適法の適用がある場合、委託者(委託事業者)は、特に以下の点に注意する必要があります。

委託事業者の義務との関係

発注内容等の明示義務(取適法4条)との関係では、委託する業務の内容、納入場所、納入期日(納期)、検収期日、代金の額、支払期日などが必須の記載事項となっています(4条明示事項)。

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また、委託事業者は、目的物を受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません(60日ルール。取適法3条)。検収に時間をかけすぎて支払いが60日を超えてしまうと法違反となるため、検収のリードタイムを考慮する必要があります。

禁止事項との関係

禁止事項(取適法5条)との関係では、受託事業者に責任がないにもかかわらず、委託事業者の都合で受領後に返品することが禁止されています。直ちに発見できる不適合を理由に返品する場合も、速やかに手続をとる必要があります(不当な返品の禁止。同条1項4号)。

その他、追完請求などについて気にしておいた方がよい禁止事項もあります。詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご参照ください。

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結び

今回は、業務委託契約書ということで、納入と検収に関する条項を見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考資料

-業務委託契約書