「医師の90%が推奨」「専門家の80%が支持」といった、広告やウェブサイトで頻繁に見かけるフレーズ。これらは、第三者からの好意的な評価を多数獲得していることを示すものであり、高評価%表示と呼ばれます。
2024年9月に消費者庁が公表した実態調査報告書において、この高評価%表示は、主観的評価によるNo.1表示と同様に、合理的な根拠に基づかない場合は景品表示法の不当表示(優良誤認)に問われるリスクがあることが示されています。
本記事では、実際に多用されやすい、専門家(医師など)による高評価%表示に潜む法的な落とし穴と、適法性を担保するためのチェックポイントを解説します。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
なぜ高評価%表示が不当表示(優良誤認)になるのか
前提として、「医師の〇%が推奨」といった高評価%表示自体は、商品の成分や性能といった品質の優良性を直接示すものではありません。
しかし、消費者庁が行った意識調査によれば、「医師の90%が推奨」という表示を見た消費者の約5割が、その商品は「医師の知見による専門的な根拠や裏付けがある」「商品等の品質・内容に関する客観的なデータを元に調査を行っている」と認識することがわかっています。つまり、消費者は”専門家が客観的データや専門的知見に基づいて推奨している”と受け取るため、結果として同種の他社商品よりも優れていると認識するということです。
このように、高評価%表示は、間接的に商品等の品質や規格の優良性を示しているとみなされるため、客観的かつ合理的な根拠がないまま表示を行えば、優良誤認表示として景表法違反に問われるおそれがあります。
専門家の評価における3つのNG要件
有資格者や専門家の評価を謳う表示は一般消費者に与える影響が大きいため、調査対象者の選定や調査設計において特に客観性が求められます。
消費者庁の報告書では、以下の3つのケースが合理的な根拠に欠けるおそれがあるとして注意喚起されています。
1. 属性確認が「自己申告」のみにとどまっている場合
アンケートの回答者が本当に医師や有資格者であるかどうかを、単なる自己申告によって確認しているだけで、客観的に担保できていない調査に基づく表示は問題となります。
調査会社が保有するモニターを利用する場合でも、その資格確認がどのように行われているか(医師免許の確認等)を広告主として把握しておく必要があります。
2. 専門分野と商品の評価に必要な知見が合致していない場合
例えば、皮膚の疾患に関する商品の推奨アンケートを、全く関係のない診療科の医師を多数含めて実施するなど、調査対象者の専門分野が、その商品を評価するために必要な専門的知見と対応していない場合は、合理的な根拠とはいえません。
3. 合理的な根拠のない情報を与えて評価させている場合
回答者である専門家に対して、対象商品の品質や内容について合理的な根拠がない情報(例:「特定の試験結果で〇〇の効果がある」「安全性について〇〇の認定を受けている」など、客観的に実証されていない事実と異なる情報)を提供したうえで「推奨するか」を質問するようなケースです。
バイアスのかかった不適切な情報提供によって引き出された推奨は、当然ながら客観的な評価とは認められません。
結び
専門家の権威を借りたプロモーションは強力ですが、その裏付けとなる調査にはハードルが存在します。「調査会社が適法だと言っているから大丈夫」と安易に考えるのではなく、回答者の資格担保基準、専門分野の絞り込み、そして調査時の設問や提供資料にバイアスがないかを、広告主自身の責任でチェックする体制が必要です。
以下の基本記事では、主観的No.1表示(顧客満足度No.1など)に関する適法要件の全体像についても詳しく解説しています。自社のマーケティング施策や調査設計の見直しに、ぜひご活用ください。
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- 定義告示(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)
- 定義告示運用基準(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)
- 不実証広告ガイドライン(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針-」)
- 価格表示ガイドライン(「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」)
- 将来価格執行方針(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」)
- 比較広告ガイドライン(「比較広告に関する景品表示法上の考え方」)
- 2008年No.1報告書(平成20年6月13日付け「No.1表示に関する実態調査報告書」(公正取引委員会事務総局))
- 2024年No.1報告書(令和6年9月26日付け「No.1表示に関する実態調査報告書」(消費者庁表示対策課))
- 打消し表示留意点(「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」)
参考資料
- よくわかる景品表示法と公正競争規約〔令和6年12月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 事例でわかる景品表示法〔令和6年12月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 違反事例集(「景品表示法における違反事例集」)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
参考文献
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