ウェブサイトや広告で頻繁に目にする「顧客満足度No.1」や「おすすめしたいサービスNo.1」といった表示。これらは第三者の主観的評価を指標とした主観的No.1表示と呼ばれます。
売上額のような数値に基づくNo.1表示とは異なり、主観的評価は調査の設計次第で結果が左右されやすい側面があります。合理的な根拠に基づかないまま表示を行うと、景品表示法上の不当表示(優良誤認)に問われるおそれがあります。
2024年9月に消費者庁が公表した実態調査報告書では、主観的No.1表示が合理的な根拠に基づく適法なものと認められるためには、少なくとも4つの要件を満たす必要があるとされています。本記事では、それぞれの要件と実務上の注意点を解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
主観的No.1表示の適法要件
主観的No.1表示の適法要件は、2024年No.1報告書において、
- 比較する商品等が適切に選定されていること(比較商品等の適切な選定)
- 調査対象者が適切に選定されていること(調査対象者の適切な選定)
- 調査が公平な方法で実施されていること(公平な調査方法)
- 表示内容と調査結果が適切に対応していること(表示内容と調査結果の適切な対応)
とされています(第3-1 参照)。
No.1表示一般の適法要件との関係
ちなみに、2008年No.1報告書で、No.1表示一般の適法要件(=No.1表示が合理的な根拠に基づくといえるための考え方)は、
①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
②調査結果を正確かつ適正に引用していること
とされていますが、概ね、上記➊~➌は調査の客観性を要求する①に対応しており、上記➍は②と同じような内容となっています(2024年No.1報告書 第3-1脚注2 参照)。
つまり、このような対応関係になっています。
| 「No.1表示」 (2008年報告書) | 「主観的No.1表示」 (2024年報告書) |
|---|---|
| ①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること →その分野で一般的に認められた調査方法、又は、社会通念上妥当な調査方法であること <客観的な調査といえない場合の例> a. 調査対象者が関係者であったり恣意的に選定されているなど、無作為に抽出されていない b. 調査対象者の数が統計的に不十分 c. 調査項目が恣意的に設定されている | ➊比較商品等の適切な選定 ➋調査対象者の適切な選定 ➌公平な調査方法 |
| ②調査結果を正確かつ適正に引用していること →(a)商品等の範囲、(b)地理的範囲、(c)調査期間・時点、(d)調査の出典を明瞭に表示すること | ➍表示内容と調査結果の適切な対応 |
2024年No.1報告書で特徴的なのは、調査の客観性を基礎づける要素➊~➌になりますが、以下、順に見ていきましょう。
要件1:比較商品等の適切な選定
「No.1」を訴求する以上、原則として市場における主要な競合商品やサービスを比較対象に含める必要があります。
つまり、No.1表示は、競争事業者との比較において、自らの供給する商品等が第1位(No.1)であることを示す表示であるので、比較対象となるべき同種又は類似の商品等(以下「同種商品等」)を適切に選定した上で順位を調査する必要があるとされています(2024年No.1報告書 第3-2-⑴ 参照)。
比較商品等の選定が適切でない例としては、
- 「○○サービス 満足度 No.1」等と表示する場合において、○○に属する同種商品等のうち市場における主要なものの一部又は全部を比較対象に含めずに、調査を行っている場合
- インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品等を比較対象として選定しているだけで、市場における主要な同種商品等の一部又は全部を比較対象に含めないまま、調査を行っている場合
といったものが挙げられています。
このように、恣意的に特定の競合を排除したり、「インターネット検索で上位に表示された企業のみ」を対象として主要な競合を含めなかったりする調査は、適切な選定とはいえません。
要件2:調査対象者の適切な選定
主観的評価の調査において、回答者(調査対象者)の選定は重要です。
主観的No.1 表示を行う場合、「売上額」のような客観的数値によって把握可能な事項を調査するのに比べて、調査者による恣意性や、調査対象者(アンケート調査の回答者等)のバイアスが働きやすいと考えられるため、調査の客観性が担保されるよう特に留意する必要があるとされています(2024年No.1報告書 第3-2-⑵ 参照)。
具体的には以下の2点が求められます。
01|恣意性の排除(無作為抽出)について
商品等についての主観的評価を調査する場合、少なくとも、調査対象者は、無作為に抽出された者である必要があります。
無作為抽出がされていない例としては、
- 自社の商品等を継続的に購入している顧客だけを調査対象者に選定する場合
- 調査対象者として自社の社員や関係者を選定する場合
といったものが挙げられています(2024年No.1報告書 第3-2-⑵-ア 参照)。
02|調査対象者の属性について
主観的No.1表示の中には、表示内容全体から見たときに、特定の属性を有する者(例えば、その商品等を実際に利用したことがある者等)に調査をした結果、第1位であったかのように示す表示となっているものがあります。
このような調査対象者の属性に関する表示と実際の調査内容が対応していない場合には、不当表示に該当するおそれがあります(2024年No.1報告書 第3-2-⑵-イ 参照)。
例①:「顧客満足度Mo.1」
そのような主観的No.1表示の例として、まず「顧客満足度No.1」が挙げられています。
「顧客満足度」とは、顧客がNo.1表示の対象商品等に満足したかどうかを数値化するものなので、少なくとも、対象商品等を実際に利用したことがある者でなければ、その商品等に満足したかどうかを適切に判断することはできないと考えられます。
そのため、「顧客満足度No.1」といった表示は、特段の事情がない限り、実際に対象商品等を利用したことがある者を対象に調査をした結果、第1位であったかのように示す表示であると考えられます(=一般消費者が表示から認識する内容)。
したがって、No.1表示の対象商品等を実際に利用したことがない者を調査対象者としたり、利用経験の有無を確認することなく調査対象者を選定している場合は、当該表示は合理的な根拠に基づいているとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある、とされています。
この文脈で問題視されているのは、いわゆるイメージ調査です(意味は以下のとおり)。
▽2024年No.1報告書 第2-4-⑶
なお、ここでいう「イメージ調査」とは、アンケートの回答者に対して、対象商品等や、これと比較する商品等を提供する各事業者のウェブサイトのURLを示し、当該ウェブサイトの閲覧を促した上で、例えば、後記のとおり質問をする調査のことである。回答者は、対象商品等や、比較対象とされている同種又は類似の商品等の利用経験の有無を問わずに集められ、専らウェブサイトを閲覧した際の印象(イメージ)に基づき、質問に回答することとなる。
【質問】ご覧いただいたサイトの中で、「サポートの手厚さ満足度が高い○○」だと思うものを、すべて選んでください。 [複数回答可]
このように、「満足度 No.1」を求する表示の根拠としてイメージ調査のみが実施されているケースは、不当表示に該当するおそれがあります。
例②:「利用したい〇〇サービスNo.1」「コスパが良いと思う〇〇商品No.1」
次に、「利用したい〇〇サービスNo.1」「コスパが良いと思う〇〇商品No.1」といった例が挙げられています。
こうしたフレーズが用いられる理由は、
「~したい」や「~と思う」のようなフレーズを用いていれば、実際の利用者に調査をしたかのように示す表示には当たらないのではないか?
という考え方からです(=フレーズを使用していた事業者側の考え方)。
しかし、消費者庁の行った消費者の意識調査の結果からは、これらの表示であっても、表示の内容によっては、実際の利用者に調査をした結果、第1位であったかのように示す表示に当たる場合があるとされています。
その他の留意事項
また、調査対象者の属性に関する表示と対応した調査内容かどうかは、あくまでも個別の事案ごとに判断される問題であることが念押しされています。
例えば、調査対象者として、実際の利用者のうちさらに一定の範囲に絞った者を選定すべきことになる場合もあり得るとして、以下のような例が挙げられています。
- 「20代顧客満足度No.1」のように、表示内容から、実際の利用者のうち一定の範囲の者(この例では20代の顧客)に調査をしたかのように示す表示を行っている場合
- 表示内容との関係で、実際の利用者のうち一定の範囲の者を除かなければ不公平な調査となる場合
(例:「コスパが良いと思う○○サービスNo.1」と表示する場合において、調査対象とする自社のサービスの利用者の大部分が、通常よりも著しく安いキャンペーン料金でサービスを受けているとき) - 保険商品についての顧客満足度No.1のように、商品等の特性等から、実際の利用者(契約者)のうち一定の範囲の者(この例では保険適用を受けたことがある者)でなければ適切な評価を行うことができないと考えられるため、当該範囲の者に調査をしたかのように示す表示を行っている場合
要件3:公平な調査方法
調査方法についても、調査者による恣意性や、調査対象者のバイアスを排除し、公平な調査が行われるよう留意する必要があります。
調査方法の公平性を欠く例としては、
- 自社に有利になるよう回答を誘導する場合
(例:複数の商品等の中から「おすすめしたい」商品等を選択して回答させる場合に、自社の商品等を、選択肢の最上位に固定する等して、選択されやすくする場合) - 自社の商品等が1位になるまで調査を繰り返している、1位になったタイミングで調査を終了するなど、結論ありきの調査が行われている場合
といったものが挙げられています。
このように、調査票の設計や実施方法において、自社に有利な結果を導くような誘導を行ってはいけません。
要件4:表示内容と調査結果が適切に対応していること
実施した調査の内容と、広告等で謳う表示内容にズレがあってはなりません。
この点に関して、広告に注記(打消し表示)を入れるケースがありますが、消費者が受ける印象と実際の調査結果が対応していないことに変わりはなく、不当表示のリスクは解消されないと指摘されています。
例えば、比較商品等の適切な選定(要件①)に関して、「インターネット検索で上位に表示された企業のみ」を対象とした調査(主要な競合が必ずしも含まれない調査)において、注記をつけたとしても、必ずしもズレがなくなるわけではないとされています。
▽2024年No.1表示報告書 第3-2-⑴
また、サンプリング調査では、同種商品等について、次のような注記をしている例が見られた。このような注記をしていても、記載位置、文字の大きさ、文字の色等を踏まえ、一般消費者にとって明瞭でない方法により注記がされている場合は、表示内容と調査結果が適切に対応しているとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある。
比較対象企業選定条件:「○○」で検索上位○社(検索エンジン名)
また、調査対象者の属性(要件②)に関して、実務上よく見られるのが、広告の隅に「※本調査はサイトのイメージをもとにしたアンケートです」との注記を入れるケースです。
しかし、このような注記を入れたとしても、メインとなる「顧客満足度No.1」といった表示から消費者が受ける印象(=実際の利用者の評価)と実際の調査結果が対応していないことに変わりはなく、不当表示のリスクは解消されないと指摘されています。
▽2024年No.1表示報告書 第3-2-⑵-イ-(ア)
さらに、サンプリング調査では、次のような注記をしている例が見られたが、これらの注記があったとしても、「顧客満足度No.1」という表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりはなく、景品表示法上問題となるおそれがある。
<注記の例>
① サイトイメージ調査
② 本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています。
③ 本ブランドの利用有無は聴取していません。
補足:2008年No.1報告書との関係性
なお、従来の2008年No.1報告書でも、「顧客満足度No.1」と表示する広告を例にして、客観的な調査について説明されている部分があります。
▽2008年No.1報告書 第4-3-⑴-イ
イ 例えば、「顧客満足度No.1」と表示する広告は、収集した広告物の中でも比較的多数であるが(全体の15.2%)、この中には、どのような手法の調査を行ったのか必ずしも明確ではないものもあるところ、以下のような場合には、客観的な調査とはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある。
① 顧客満足度調査の調査対象者が自社の社員や関係者である場合又は調査対象者を自社に有利になるように選定するなど無作為に抽出されていない場合
② 調査対象者数が統計的に客観性が十分確保されるほど多くない場合
③ 自社に有利になるような調査項目を設定するなど調査方法の公平性を欠く場合
この部分を、関連部分を含めたり概念を整理したりしつつ、よりクリアにしたものが今回の報告書、といってよいのではないかと思います。今回の報告書と重なる部分もありますので、もし余裕があれば併せて見ておくのがおすすめです。
結び
上記の4要件を満たさない調査に基づくNo.1表示は、法的なリスクを伴います。不当表示の責任を問われるのは、調査を実施した調査会社ではなく、広告主自身です。調査会社から”他社もやっているから適法”と提案された場合でも、その言葉を安易に鵜呑みにせず、自社の責任において上記の4要件を満たす調査設計になっているかを冷静に確認することが求められます。
以下の基本記事では、専門家の評価を謳う高評価%表示(例:医師の90%が推奨)を行う際の独自の注意点などについても詳しく解説しています。自社のマーケティング施策の見直しに、ぜひご活用ください。
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- 定義告示(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)
- 定義告示運用基準(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)
- 不実証広告ガイドライン(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針-」)
- 価格表示ガイドライン(「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」)
- 将来価格執行方針(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」)
- 比較広告ガイドライン(「比較広告に関する景品表示法上の考え方」)
- 2008年No.1報告書(平成20年6月13日付け「No.1表示に関する実態調査報告書」(公正取引委員会事務総局))
- 2024年No.1報告書(令和6年9月26日付け「No.1表示に関する実態調査報告書」(消費者庁表示対策課))
- 打消し表示留意点(「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」)
参考資料
- よくわかる景品表示法と公正競争規約〔令和6年12月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 事例でわかる景品表示法〔令和6年12月改訂〕(消費者庁)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
- 違反事例集(「景品表示法における違反事例集」)|消費者庁HP(≫掲載ページ)
参考文献
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