今回は、反社排除ということで、暴力団排除条例(暴排条例)の基本構造と全体像を見てみたいと思います。
暴対法が主に暴力団員が悪さ(不当要求)をすることを取り締まる法律であるのに対し、各自治体が定めている暴排条例は、一般市民や企業が、暴力団と関係を持つことそのものを規制し、社会から暴力団を排除することを目的としています。
本記事は、東京都の暴排条例を例に、その基本的な仕組み(基本構造)と全体像をわかりやすくひも解いていきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
暴排条例とは
東京都の暴力団排除条例(暴排条例)は、事業者・都民すべてに暴力団(および関係者)との関係遮断を求めるルールです。
すなわち、東京都暴排条例は「警察vs暴力団」という構図だけではなく、行政・事業者・都民を含む“社会ぐるみ”で関係遮断を進めるための枠組みです。
2010~2011年にかけて各都道府県で同趣旨の条例が整備され、2011年10月1日に東京都・沖縄県でも施行され、全国実施が出そろいました。
暴排条例の規制の仕組み(基本構造)
規制のメインは利益供与と名義貸しの禁止
暴排条例の規制の大きな柱は、事業者や一般人が暴力団側に対して行う以下の2つの行為を禁止していることです。
① 利益供与の禁止(条例24条)
利益供与とは、暴力団側にお金や物品、サービスなどの財産上の利益を与えることです。条例では大きく2つのパターンを禁止しています。
- 威力を利用する目的の利益供与:
トラブル解決のために相手を脅してほしいと頼んでお金を払ったり、用心棒代を支払ったりするケースです - 暴力団の活動を助長し、運営に資することを知って行う利益供与:
暴力団事務所と知りながら内装工事を請け負ったり、組長の襲名披露と知りながらホテルの宴会場を貸し出したりするケースです
ただし、日用品をコンビニで売ったり、適法な状態を保つための電気・ガスの供給など、暴力団の活動を助長することにならない場合は違反になりません。
② 名義貸しの禁止(条例25条)
暴力団員が暴力団員であることを隠すためであると知りながら、自分の名義を使わせる行為です。
例えば、暴力団員に頼まれて代わりに自分の名前でホテルの宴会場を予約したり、携帯電話を契約したりすると名義貸し違反になります。
違反したときのペナルティは勧告と公表
もし事業者が利益供与や名義貸しの禁止ルールを破ってしまったら、どうなるのでしょうか。いきなり刑事罰があるわけではありませんが、行政による措置が待っています。
- ステップ1:勧告(条例27条)
公安委員会(警察)から、違反行為をやめなさい、再発防止の措置をとりなさいという指導(勧告)を受けます - ステップ2:公表(条例29条)
もし勧告を受けたにもかかわらず、1年以内に再び違反行為を繰り返すなど悪質な場合には、公安委員会によって違反した企業名や個人名が公表されます
名前を公表されるだけかと甘く見るのは禁物です。名前が公表されれば、反社と付き合いのある企業だと見られ、銀行口座の凍結や融資の打ち切り、取引先からの契約解除(暴排条項の発動)などが行われ、事実上ビジネスが立ち行かなくなるという致命的なダメージを受ける可能性があります。
暴排条例の全体像
根幹となる4つの基本理念
東京都暴排条例は、暴力団が都民の生活や事業活動に不当な影響を与える存在であるという認識のもと、以下の4つの基本理念を掲げています(条例3条)。
この理念に基づき、東京都、区市町村、都民、そして事業者が連携して暴力団排除に取り組むことが求められています。
▽東京都暴排条例3条
(基本理念)
第三条 暴力団排除活動は、暴力団が都民の生活及び都の区域内の事業活動に不当な影響を与える存在であるとの認識の下、暴力団と交際しないこと、暴力団を恐れないこと、暴力団に資金を提供しないこと及び暴力団を利用しないことを基本として、都、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)並びに都民等の連携及び協力により推進するものとする。
義務と禁止行為
義務:契約時の確認と暴排条項
事業者がビジネスを行う上で、条例は以下の努力義務を定めています(条例18条)。
- 相手方の属性確認(1項):
契約が暴力団の活動を助長する疑いがある場合、契約相手や代理人が暴力団関係者でないかを確認するように努める - 暴排条項の導入(2項):
書面で契約を結ぶ際は、相手が暴力団関係者だと判明したら、催告なしで直ちに契約を解除できるといった特約(暴力団排除条項)を契約書に盛り込むように努める
契約時に、暴力団関係者ではありませんと表明・確約させる内容を含む書面(表明確約書、暴排条項を含む契約書)を取っておくことで、後から反社だと判明した際にスムーズに関係を遮断できるようになります。
禁止行為:利益供与と名義貸しの禁止
先ほど見たように、暴排条例における規制の最大の柱がこれです。後者は、事業者はもちろん、一般人も対象になります。
- 利益供与の禁止(条例24条):
事業者は、暴力団員などの規制対象者に対して、トラブル解決のために脅してほしいなどと威力を利用する目的で利益(お金やサービス)を提供してはいけません。また、威力を利用する目的がなくても、組長の襲名披露に宴会場を貸すなど、暴力団の活動を助長し、運営に資することを知って利益供与をすることも禁止されています - 名義貸しの禁止(条例25条):
何人も、暴力団員が身分を隠すために、自分の名義を利用させる(例えば、代わりにホテルの宴会場を予約してあげる、携帯電話を契約してあげるなど)ことは禁止されています
禁止行為:青少年と不動産を守る厳格なルール
暴力団から地域社会を守るため、特定の分野にも厳しいルールが設けられています。
- 青少年の健全育成:
学校、図書館、児童福祉施設などの周囲200メートル以内では、新たに暴力団事務所を開設・運営することが禁止されています(条例22条)。また、正当な理由なく青少年(18歳未満)を組事務所に立ち入らせることも禁止です(条例23条) - 不動産取引の規制:
不動産を譲渡・貸付けする際は、相手が暴力団事務所として使わないか確認し(条例19条1項)、契約書には、事務所に使われたら無催告で契約解除や買戻しができる旨の特約を入れることが求められます(同条2項)。不動産業者も、事務所に使われると知って仲介をしてはいけません(条例20条)
違反へのペナルティと救済措置
もし、禁止されている利益供与や名義貸しをしてしまったらどうなるのでしょうか。
先ほど見たように、まずは公安委員会から指導である勧告を受けます(条例27条)。これに従わず、再び違反を繰り返すなど悪質な場合は、企業名や個人名が公表されます(条例29条)。公表されれば、事実上ビジネスを続けるのが困難になるようなダメージを受ける可能性もあります。
他方、適用除外(自主申告)という救済措置もあります(条例28条)。警察から勧告を受ける前に、自ら違反事実を申告し、今後は違反しない旨を誓約すれば、勧告や公表を免除してもらえるという制度です。
結び
暴排条例は、社会から暴力団を排除し、一般市民の安全とビジネスの健全な発展を守るためのルールです。
一般市民や事業者は、この条例のルールを理解し、契約時の暴排条項の導入や、不審な取引の遮断を徹底することが求められます。もし、意図せず暴力団と関わってしまったり、トラブルに巻き込まれたりした場合は、一人で抱え込まず、警察や暴追センターに相談することが大切です。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- 暴対法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)※法律情報はこちら
- 暴対法施行令(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行令」)
- 暴対法規則(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則」)
- 政府指針(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 指針解説(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 組織犯罪対策要綱|警察庁HP(≫掲載ページ)
- 東京都暴排条例|東京都例規集データベース
- 東京都暴排条例Q&A(「東京都暴力団排除条例 Q&A」)|警視庁HP
参考文献
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