取適法

取適法解説|委託事業者が守るべき4つの義務(全体像)

今回は、中小受託取引適正化法(取適法)ということで、委託事業者の4つの義務について見てみたいと思います。

禁止事項(〇〇してはいけない)に目が行きがちですが、この義務(〇〇しなければならない)を守れていないと、それも法令違反となってしまいます。本記事は、委託事業者が守るべき4つの義務について、その全体像を解説します。今回の法改正で変わったポイントも要チェックです。

委託事業者の4つの義務

① 発注内容等の明示(4条明示)
② 取引記録の作成・保存(7条記録)
③ 支払期日を定める義務
④ 遅延利息の支払義務

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

発注内容等の明示義務(4条明示)

委託事業者は、発注(製造委託等)をした場合、直ちに、発注内容に関する所定の事項を、書面または電磁的方法(メールなど)で明示しなければなりません(法4条)。

口頭での言った・言わないのトラブルを防ぐための、最も基本的な義務です。取適法4条に定められているので、4条明示とも呼ばれます。

発注時は、条件を「直ちに」「カタチ」にして残す、ということです

あわせて読みたい
取適法解説|トラブル防止の鉄則「発注内容等の明示義務」(4条明示)の基本ガイド

続きを見る

主な明示事項は、以下のとおりです(簡略化しています)。

主な明示事項

  • 委託事業者及び中小受託事業者の名称等
  • 委託をした日
  • 給付の内容(提供される役務の内容)
  • 給付を受領する(役務の提供を受ける)期日及び場所
  • 検査をする場合は、その検査を完了する期日
  • 代金の額及び支払期日
  • 支払手段に関する詳細(一括決済方式や電子記録債権を使う場合は、金融機関名や満期日などの細かい条件)
  • 原材料等を有償支給する場合は、その詳細
  • 未定事項がある場合は、その理由と内容を定める予定期日

【改正のポイント】メール等での明示がラクに

 旧下請法では、発注書をメール等の電磁的方法で送る場合、事前に相手の承諾を得る必要がありましたが、取適法では、事前の承諾がなくても電磁的方法で明示することが可能になりました(法4条1項本文)。ただし、相手から紙(書面)でくださいと求められた場合は、原則として書面を交付する義務がありますので(法4条2項)、留意が必要です。

取引記録の作成・保存義務(7条記録)

委託事業者は、製造委託等取引の内容や経過などを記録した書類(または電磁的記録)を作成し、2年間保存しなければなりません(法7条)。

発注時の内容だけでなく、その後どうなったかも含めて、取引のプロセスを記録することが求められます。取適法7条に定められていることから、7条記録とも呼ばれます。

  • 記録事項(記録する内容):発注日、受領した日、検査結果、変更ややり直しをさせた場合の理由、実際の支払額・支払日・支払手段など
  • 保存期間:記録すべき事項をすべて記録した日から2年間

発注してから取引が完了するまでの一連の経緯を記録して、2年間保存する、ということです

あわせて読みたい
取適法解説|委託事業者の義務「取引記録の作成・保存」(7条記録)とは~記録事項・4条明示との違いなど

続きを見る

なお、記録事項には、先ほど見た明示事項以外の事項も含まれていますので、発注書の控えを保存しておくだけでは不十分です。いつ受け取って、いつ、どうやって支払ったかといった事後の記録もセットで残す必要があります。

支払期日を定める義務

委託事業者は、代金の支払期日を、検査をするかどうかにかかわらず、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内で定めなければなりません(法3条)。

中小受託事業者の資金繰りを守るための重要なルールです。

代金は、受領した日から60日以内に支払う必要がある、ということになります

あわせて読みたい
取適法解説|資金繰りの保護「支払期日を定める義務」と「遅延利息の支払義務」のメカニズム

続きを見る

注意点は、起算日は請求書が届いた日でも社内検査が終わった日でもなく、納品された日(役務提供を受けた日)だということです。例えば、検査に時間がかかるからといって、支払いを60日以上先延ばしにすることは許されません。もし期日を定めなかった場合は、納品された日が支払期日とみなされます(即金払い)。

遅延利息の支払義務

もし、定めた支払期日までに代金を支払わなかった場合、委託事業者はペナルティとして遅延利息を支払う義務を負います(法6条)。

  • 利率:年率14.6%(取適法による特別の利率が課されています)
  • 計算期間:受領日から60日を経過した日から、実際に支払った日までの日数分

支払いが遅れたら、高金利のペナルティを負うということです

あわせて読みたい
取適法解説|資金繰りの保護「支払期日を定める義務」と「遅延利息の支払義務」のメカニズム

続きを見る

【改正のポイント】「不当な減額」にも遅延利息が追加

 今回の法改正で、支払遅延だけでなく、代金を減額した場合も遅延利息の支払対象に追加されました(法6条2項)。減額した日(または受領から60日経過日のいずれか遅い日)から、その減額分を返還して支払う日までの期間について、年率14.6%の利息が乗ってきます。

結び

取適法における発注側の4つの義務は、以下のとおりです。

  1. 発注時に条件を明示する(4条明示)
  2. 取引の経緯を記録し、2年間保存する(7条記録)
  3. 受領後60日以内の支払日を定める(支払期日)
  4. 支払いが遅れたり不当に減額したら、年率14.6%の利息を払う(遅延利息)

取適法の施行(令和8年1月1日)にあわせて、自社の発注書フォーマットや支払サイクル、記録の保存体制などが法律の要件を満たしているか、改めてチェックするのがよいかもしれません。

次の記事は、4つの義務のうちのひとつめ、4条明示の詳細についてです。

次の記事
取適法解説|トラブル防止の鉄則「発注内容等の明示義務」(4条明示)の基本ガイド

続きを見る

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

取適法

取適法解説|価格転嫁の切り札「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」を詳解

取適法

取適法解説|不良品でも返品できない場合がある?「返品の禁止」とは

取適法

取適法解説|どう違う?物流規制の3本柱「特定運送委託」「役務提供委託」「物流特殊指定(独禁法)」の棲み分けを横断解説

取適法

取適法解説|全11項目「委託事業者の禁止事項」を理解~「基本NG」と「不当ならNG」の境界線とは

フリーランス法 取適法

同じ「役務提供委託」でも中身が違う?取適法とフリーランス法を横断比較

主要法令等

  • 取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)
  • 取適法施行令(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」)
  • 4条明示規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」)
  • 7条記録規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」)
  • 遅延利息利率規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の率を定める規則」)
  • 取適法運用基準(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」)
  • 取適法Q&A(「よくある質問コーナー(取適法)」)|公取委HP
  • 取引適正化ガイドライン(「受託適正取引等推進のためのガイドライン」)|中小企業庁HP
  • 令和7年改正法 説明資料(「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 令和7年10月1日パブコメ(同日付け「「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」)|e-Gov(≫掲載ページ

参考資料

  • 取適法ガイドブック(「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」(公正取引委員会・中小企業庁))
  • 取適法テキスト(「中小受託取引適正化法テキスト」〔令和7年11月版〕(公正取引委員会・中小企業庁))

-取適法