下請法

下請法を勉強しよう|親事業者の禁止行為⑤ー買いたたきの禁止

今回は、下請法を勉強しようということで、親事業者の禁止行為のうち「買いたたきの禁止」について書いてみたいと思います。

下請法の適用対象になったとき、親事業者には4つの義務と以下のような11の禁止事項が課せられますが、

【親事業者の11の禁止事項】
4条1項のグループ
①受領拒否の禁止
②下請代金の支払遅延の禁止
③下請代金の減額の禁止
④返品の禁止
買いたたきの禁止 ←本記事はココ
⑥購入・利用強制の禁止
⑦報復措置の禁止
(4条2項のグループ)
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
⑨割引困難な手形の交付の禁止
⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑪不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

本記事は上記のうち黄色ハイライトを引いた箇所の話です。

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

買いたたきの禁止(5号)

五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額不当に定めること。

「下請代金の減額」(3号)は、一旦決定された下請代金の額を事後に減ずるものであったのに対し、この「買いたたき」(5号)は、親事業者が下請事業者に発注する時点で生ずるものである。

「通常支払われる対価」

通常支払われる対価」の意味は以下のとおりで、要するに、その地域での市価(市場価格)である。

〇市価=下請事業者の給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価
 ┗市価の把握が困難な場合は,下請事業者の給付と同種又は類似の給付に係る従来の取引価格をいう

下請法運用基準の原文は以下のとおり。

▽下請法運用基準【第4-5-(1)】

通常支払われる対価」とは,当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(以下「通常の対価」という。)をいう。

ただし,通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については,例えば,当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には,従前の給付に係る単価で計算された対価通常の対価として取り扱う。

「著しく低い下請代金の額」を「不当に定める」

買いたたきに該当するか否かは,以下のような要素を勘案して総合的に判断される。

  • 対価の決定方法(下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等)
  • 対価の決定内容(差別的であるかどうか等)
  • 通常の対価と、当該給付に支払われる対価との、乖離状況
  • 当該給付に必要な原材料等の価格動向

下請法運用基準では、以下のように解説されている。

▽下請法運用基準【第4-5-(2)】

買いたたきに該当するか否かは,下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法,差別的であるかどうか等の決定内容,通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断する。

(2) 次のような方法で下請代金の額を定めることは,買いたたきに該当するおそれがある
 多量の発注をすることを前提として下請事業者に見積りをさせ,その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請代金の額を定めること。
 量産期間が終了し,発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず,単価を見直すことなく,一方的に量産時の大量発注を前提とした単価で下請代金の額を定めること。
 原材料価格や労務費等のコストが大幅に上昇したため,下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず,一方的に従来どおりに単価を据え置くこと。
 一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定めること。
 親事業者の予算単価のみを基準として,一方的に通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。
 短納期発注を行う場合に,下請事業者に発生する費用増を考慮せずに通常の対価より低い下請代金の額を定めること。
 給付の内容に知的財産権が含まれているにもかかわらず,当該知的財産権の対価を考慮せず,一方的に通常の対価より低い下請代金の額を定めること。
 合理的な理由がないにもかかわらず特定の下請事業者を差別して取り扱い,他の下請事業者より低い下請代金の額を定めること。
 同種の給付について,特定の地域又は顧客向けであることを理由に,通常の対価より低い単価で下請代金の額を定めること。

結び

今回は、下請法を勉強しようということで、親事業者の禁止行為のうち「買いたたきの禁止」について書いてみました。

▽次の記事

下請法を勉強しよう|親事業者の禁止行為⑥⑦ー購入・利用強制の禁止、報復措置の禁止

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献

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主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム又は公正取引員会HPの掲載ページに飛びます
  • 下請法(「下請代金支払遅延等防止法」)
  • 下請法施行令(「下請代金支払遅延等防止法施行令」)
  • 3条書面規則(「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」)
  • 下請法運用基準(「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」)
  • 下請法Q&A(「よくある質問コーナー(下請法)」)

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