今回は、下請法を勉強しようということで、親事業者の義務のうち発注書面(3条書面)の交付義務について見てみたいと思います。
下請法の適用対象になったとき、親事業者には以下のような4つの義務が課せられます。
【親事業者の4つの義務】
① 発注書面の交付義務 (第3条) ←本記事
② 取引記録書類の作成・保存義務 (第5条)
③ 支払期日を定める義務 (第2条の2)
④ 遅延利息の支払義務 (第4条の2)
その中で、本記事は黄色ハイライトを引いた箇所の話です。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
発注書面の交付義務(法3条)
下請取引において口頭による発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、トラブルが生じた場合、下請事業者が不利益を受けることが多いとされます。
どういうことかというと、例えば、あいまいな条件のまま発注しておいて、下請事業者が業務を遂行した後になって、親事業者が「こんなふうにしてって言ったっけなあ…?違うよ、こうしてって言ったんだよ」とか言い出したりして、下請事業者が困っているような場面などを想像するとよいかと思います(これは「下請事業者の給付の内容」の書面化が足りなかった例)。
そこで、下請取引に係るトラブルを未然に防止するために、親事業者は、発注時の取引条件等を明確に記載した書面を、発注の都度下請事業者に交付しなければならないものとしています。
下請法3条に定められているので、「3条書面」とも呼ばれます。
▽下請法3条1項
(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。…(略)…。
つまりは、下請事業者の保護のため、口頭での発注で済まさせないようにするものです。
▽公正取引委員会のXアカウント
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— 公正取引委員会 (@jftc) April 27, 2024
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必要記載事項
必要記載事項の内容(3条書面規則1条1項)
では、3条書面の必要記載事項について見てみます。
公正取引委員会規則で定めるところによる「下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項」は、以下のようになっています。
ここでいう公正取引委員会規則は、3条書面規則(「下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則」)になります。
【3条書面の必要記載事項】
- 当事者
- 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
- 発注日・下請事業者の給付に関する事項
- 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
- 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
- 下請事業者の給付を受領する場所(役務提供委託の場合は、役務が提供される場所)
- 検収に関する事項
- 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
- 下請代金に関する事項
- 下請代金の額
- 下請代金の支払期日
- 下請代金の全部又は一部の支払につき、手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
- 下請代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払を受けることができることとする額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
- 下請代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の支払期日
- 原材料等の有償支給に関する事項
- 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法
規則の条文そのものも、一応確認してみます。
▽3条書面規則1条1項(※【 】は管理人注)
第一条 下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)第三条の書面には、次に掲げる事項を明確に記載しなければならない。
【1号:当事者】
一 親事業者及び下請事業者の商号、名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって親事業者及び下請事業者を識別できるもの
【2号:発注日・下請事業者の給付に関する事項】
二 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託(以下「製造委託等」という。)をした日、下請事業者の給付(役務提供委託の場合は、提供される役務。以下同じ。)の内容並びにその給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が委託を受けた役務を提供する期日(期間を定めて提供を委託するものにあっては、当該期間))及び場所
【3号:検収に関する事項】
三 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
【4号~7号:下請代金に関する事項】
四 下請代金の額及び支払期日
五 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付する場合は、その手形の金額及び満期
六 下請代金の全部又は一部の支払につき、親事業者、下請事業者及び金融機関の間の約定に基づき、下請事業者が債権譲渡担保方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債権を担保として、金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付けを受ける方式)又はファクタリング方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債権を金融機関に譲渡することにより、当該金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)若しくは併存的債務引受方式(下請事業者が、下請代金の額に相当する下請代金債務を親事業者と共に負った金融機関から、当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)により金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付け又は支払を受けることができることとする場合は、次に掲げる事項
イ 当該金融機関の名称
ロ 当該金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとする額
ハ 当該下請代金債権又は当該下請代金債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日
七 下請代金の全部又は一部の支払につき、親事業者及び下請事業者が電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。以下同じ。)の発生記録(電子記録債権法第十五条に規定する発生記録をいう。)をし又は譲渡記録(電子記録債権法第十七条に規定する譲渡記録をいう。)をする場合は、次に掲げる事項
イ 当該電子記録債権の額
ロ 電子記録債権法第十六条第一項第二号に規定する当該電子記録債権の支払期日
【8号:原材料等の有償支給に関する事項】
八 製造委託等に関し原材料等を親事業者から購入させる場合は、その品名、数量、対価及び引渡しの期日並びに決済の期日及び方法
下請代金の額(4号)-算定方法による記載
必要記載事項のうち「下請代金の額」(4号)については、やむを得ない事情がある場合には、算定方法による下請代金の額の記載も定められています。
▽3条書面規則1条2項
2 前項第四号の下請代金の額について、具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合には、下請代金の具体的な金額を定めることとなる算定方法を記載することをもって足りる。
この算定方法は、
- 算定根拠となる事項(変数)が決まれば、具体的な金額が自動的に確定するものでなければならない
- 3条書面とは別に算定方法を定めた書面を交付することも許容されるが、算定方法を定めた書面と3条書面が別のものである場合は、これらの相互の関連性(関連付け)を明記する必要がある
とされています。
また、法令上の根拠があるかは明確でないですが、具体的な金額の確定後は速やかにその金額を通知する必要があるとされています。
▽講習会テキスト〔R5.11版〕 1-⑷-ア-(イ)
…ただし、算定方法は、下請代金の額の算定根拠となる事項が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定するものでなければならない。算定方法を定めた書面と3条書面が別のものである場合においては、これらの書面の相互の関連性(関連付け)を明らかにしておく必要がある。
また、下請代金の具体的な金額を確定した後、速やかに下請事業者に当該金額を通知する必要がある。
「やむを得ない事情」がある場合としては、例えば、以下のようなものがあります(※講習会テキストに、より詳細なものが解説されています)。
▽下請法運用基準 第3-1-⑵
「具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情」があり、具体的な金額ではなく「具体的な金額を定めることとなる算定方法」を記載することが認められる場合とは、例えば、次のような場合である。
〇 原材料費等が外的な要因により変動し、これに連動して下請代金の額が変動する場合
〇 プログラム作成委託において、プログラム作成に従事した技術者の技術水準によってあらかじめ定められている時間単価及び実績作業時間に応じて下請代金の総額が支払われる場合
〇 一定期間を定めた役務提供であって、当該期間における提供する役務の種類及び量に応じて下請代金の額が支払われる場合(ただし、提供する役務の種類及び量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)
下請事業者の給付の内容(2号)
また、必要記載事項のうち「下請事業者の給付の内容」(2号)についても、以下のような解説があります。
▽下請法運用基準 第3-1-⑶
⑶ 3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」とは、親事業者が下請事業者に委託する行為が遂行された結果、下請事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務提供委託をした場合にあっては、下請事業者から提供されるべき役務)であり、3条書面には、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要がある。
また、主に、情報成果物作成委託に係る作成過程を通じて、情報成果物に関し、下請事業者の知的財産権が発生する場合において、親事業者は、情報成果物を提供させるとともに、作成の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを「下請事業者の給付の内容」とすることがある。この場合は、親事業者は、3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」の一部として、下請事業者が作成した情報成果物に係る知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。
書面の交付方法
3条書面の交付方法としては、
- 1項本文に「原則的な書面の交付方法」
- 1項但書に「例外的な書面の交付方法」
- 2項に「電磁的方法による提供」(=電子受発注)
が、それぞれ定められています。
以下、順に見てみます。
原則的な交付方法(法3条1項本文)
原則的な交付方法は、必要記載事項を全て記載した書面を発注時に交付する、というものです。
▽下請法3条1項本文
(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、…(略)…。
必要記載事項が網羅されていればよく、特に様式の制約はありません。
3条書面それ自体は契約書を想定しているわけではないですが、契約書において記載事項が満たされていれば契約書で兼ねることはOKなので、実際上はこのやり方が多いかと思います。
ただし、以下のように、タイムラグがあってはいけないとされています。
▽講習会テキスト〔R5.11版〕【Q32】
3条書面は様式を問わないので契約書を3条書面とすることも可能と聞いたが、発注後、契約締結まで日数を要する場合、どの程度までなら「直ちに」交付したといえるか。
「直ちに」とは「すぐに」という意味である。親事業者には、発注した場合「直ちに」書面を交付する義務があるので、発注から契約締結までに日数を要するのであれば、発注後、直ちに交付したとはいえない。そのような場合には、契約書とは別に必要事項を記載した書面(3条書面)を、発注後直ちに交付しなければならない。
▽公正取引委員会のXアカウント
正解は③(発注後直ちに交付)です。
— 公正取引委員会 (@jftc) May 30, 2023
電話のみでの発注は書面交付義務違反となります。
緊急でやむを得ずに電話注文する場合であっても、「すぐに書面を交付するので確認してほしい」という趣旨の連絡をして、直ちに書面交付をしなければなりません。https://t.co/yQQeIOCeXD#下請法 pic.twitter.com/VLk3oSUPFb
継続的下請取引において共通事項がある場合
また、書面の交付は原則として発注の都度必要ですが、下請取引は継続的に行われることが多いため、必要記載事項のうち一定期間共通である事項がある場合(例:支払方法、検査期間等)には、あらかじめこれらの事項を書面により通知することで、発注の都度交付する書面に記載することは不要となります。
つまり、共通事項についてはあらかじめ別書面化しておき、個々の発注時の記載を省略することもできるということです。
この場合、個々の発注時には、共通事項を記載した書面との関連性を明らかにする必要があります。
▽3条書面規則4条1項
第四条 第一条第一項各号に掲げる事項が一定期間における製造委託等について共通であるものとしてこれを明確に記載した書面によりあらかじめ下請事業者に通知されたときは、当該事項については、その期間内における製造委託等に係る法第三条の書面への記載は、その通知したところによる旨を明らかにすることをもって足りる。
▽下請法運用基準 第3-1-⑴
親事業者は、製造委託等をした都度、3条規則第1条第1項に定められた事項(以下「必要記載事項」という。)を3条書面に記載し、交付する必要があるが、必要記載事項のうち、一定期間共通である事項(例:支払方法、検査期間等)について、あらかじめこれらの事項を明確に記載した書面により下請事業者に通知している場合には、これらの事項を製造委託等をする都度交付する書面に記載することは要しない。この場合、当該書面には、「下請代金の支払方法等については○年○月○日付けで通知した文書によるものである」等を記載することにより、当該書面と共通事項を記載した書面との関連性を明らかにする必要がある。
また、講習会テキストによると、通知した書面には、当該書面が有効である期間を明記する必要があり、新たな通知が行われるまでの間は有効とする場合には、通知した書面に、新たな通知が行われるまでの間は有効である旨明記する必要があるとされています。
例外的な交付方法(法3条1項但書)
当初書面と補充書面
例外的な書面交付方法として、当初書面を交付した後、補充書面を交付するという方法があります。
つまり、必要記載事項のうちその内容が定められないことについて正当な理由があって記載しない事項(「特定事項」)がある場合には、
- これら以外の事項を記載した書面(「当初書面」)を交付した上で、
- 特定事項の内容が定まった後、直ちにその特定事項を記載した書面(「補充書面」)を交付する、
というやり方です。
▽下請法3条1項但書(※【 】は管理人注)
(書面の交付等)
第三条 …(略)…。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面【=補充書面】を下請事業者に交付しなければならない。
この場合、当初書面には、
① 特定事項の内容が定められない理由
② 特定事項の内容を定めることとなる予定期日
を記載しなければなりません。
このような記載も含めて委託時に直ちに「当初書面」を交付したうえで、特定事項の内容が定まってから直ちに「補充書面」を交付する、というやり方です。
▽3条書面規則1条3項
3 法第三条第一項ただし書の規定に基づき、製造委託等をしたときに書面に記載しない事項(以下「特定事項」という。)がある場合には、特定事項以外の事項のほか、特定事項の内容が定められない理由及び特定事項の内容を定めることとなる予定期日を、製造委託等をしたときに交付する書面(以下「当初書面」という。)に記載しなければならない。
また、当初書面と補充書面について、相互の関連性が明らかになるようにする必要があります。
▽3条書面規則5条(※【 】は管理人注)
第五条 法第三条第一項ただし書の規定に基づき、特定事項の内容を記載した書面【=補充書面】を交付するときは、当初書面との関連性を確認することができるようにしなければならない。
内容が当初定められないことにつき正当な理由
では「正当な理由がある」とはどのようなものか?というと、例えば、以下のような場合が示されています。
▽下請法運用基準 第3-2-⑵
2 3条書面の交付の時期
⑵ 「その内容が定められないことについて正当な理由がある」とは、取引の性質上、製造委託等をした時点では必要記載事項の内容について決定することができないと客観的に認められる理由がある場合であり、次のような場合はこれに該当する。ただし、…(略)…。
〇 ソフトウェア作成委託において、委託した時点では最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、下請事業者に対する正確な委託内容を決定することができない等のため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」、「下請事業者の給付を受領する期日」又は「受領場所」が定まっていない場合
〇 広告制作物の作成委託において、委託した時点では制作物の具体的内容が決定できない等のため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」又は「下請事業者の給付を受領する期日」が定まっていない場合
〇 修理委託において、故障箇所とその程度が委託した時点では明らかでないため、「下請事業者の給付の内容」、「下請代金の額」又は「下請事業者の給付を受領する期日」が定まっていない場合
〇 過去に前例のない試作品等の製造委託であるため、委託した時点では、「下請事業者の給付の内容」又は「下請代金の額」が定まっていない場合
〇 放送番組の作成委託において、タイトル、放送時間、コンセプトについては決まっているが、委託した時点では、放送番組の具体的な内容については決定できず、「下請代金の額」が定まっていない場合
電磁的方法による提供(法3条2項)
下請事業者の承諾を要件に、親事業者が3条書面の交付に代えて電磁的方法により必要記載事項の提供を行うことも認められています。
▽下請法3条2項
2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
電磁的方法
公正取引委員会規則で定める方法は、
- 電磁的記録の送信(1号イ)
ex. 電子メールなど(下請事業者が受信) - 電磁的記録のダウンロード(1号ロ)
ex. ウェブの利用など(下請事業者がウェブからダウンロード) - 電磁的記録媒体の交付(2号)
ex. 磁気ディスク、CD-ROMなど
となっています(3条書面規則2条1項)。また、下請事業者が電磁的記録を出力して書面を作成できることが必要になります(2項)。
▽3条書面規則2条
第二条 法第三条第二項の公正取引委員会規則で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 親事業者の使用に係る電子計算機と下請事業者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された書面に記載すべき事項を電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、当該下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(法第三条第二項前段に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに書面に記載すべき事項を記録したものを交付する方法
2 前項に掲げる方法は、下請事業者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものでなければならない。
3 第一項第一号の「電子情報処理組織」とは、親事業者の使用に係る電子計算機と、下請事業者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
下請事業者の承諾
下請事業者の承諾は、書面又は電磁的方法による承諾である必要があり、また、事前に電磁的方法の種類(上記の①~③)と電磁的方法の内容(記録に用いられるソフトウェアやそのバージョン)を示す必要もあります。
下請事業者は、承諾をした後でも、申出によりいつでも通常の書面による交付を求めることができます。
▽施行令2条
(情報通信の技術を利用する方法)
第二条 親事業者は、法第三条第二項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該下請事業者に対し、その用いる同項前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2 前項の規定による承諾を得た親事業者は、当該下請事業者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該下請事業者に対し、法第三条第二項に規定する事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該下請事業者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
▽下請法運用基準 第3-3
3 電磁的方法による提供
親事業者は、法第3条第2項に基づき、3条書面の交付に代えて、電磁的方法により、委託内容、下請代金の額等の必要記載事項の提供を行うことが認められているが、この場合には、親事業者は下請事業者に対して、事前に、電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。⏎改行
また、親事業者は、3条書面に代えて電磁的方法による場合には、下請事業者に不利益を与えないようにするため、「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」(平成13年3月30日)を踏まえる必要がある。
▽公正取引委員会のXアカウント
新人さん、メールで送るなら事前に下請事業者の承諾を得なければダメですよ!
— 公正取引委員会 (@jftc) May 31, 2023
下請事業者への発注書面の交付は、事前に下請事業者の承諾を得た上で、電子メール等の電磁的方法で行うことができます。
承諾を得るときも書面か電磁的方法で!#下請法 pic.twitter.com/ZQIjX4eLas
結び
今回は、下請法を勉強しようということで、親事業者の義務のうち3条書面の交付義務について見てみました。
次の記事は、親事業者の義務のうち取引記録書類の作成・保存義務についてです。
▽次の記事
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下請法を勉強しよう|親事業者の義務-5条書類の作成・保存義務
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下請法に関する記事は、以下のページにまとめています。
▽下請法
-
下請法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
参考文献
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