今回は、法務部で働くことになったときに勉強を始めるなら何から?ということで、勉強を始める際におすすめの法律について書いてみたいと思います。
もちろん、業界ごとに違いますし、個々の会社ごと、また規模によっても、必要な法律分野は異なります。ただ、それを踏まえても、共通する根っこの部分です。
なので本記事は、
✓ 法務以外から突然法務に異動になった
✓ 一般民事系の法律事務所からインハウス転身した弁護士だが、どこから適応すればいいのか、取っ掛かりがよくわからない(←過去の管理人)
といった人向けの話です。
もちろん、自分の心の赴くままにするのが一番ですが(必ずしも法律の勉強である必要もないですし)、本記事では、とりあえず勉強しておくべき法律、という観点から書いています。
法務部で働くときに勉強を始めるべき法律
結論から言ってしまいますと、民法・会社法・金商法の3つです。
規模に応じて以下の表のように3段階に分かれ、会社の規模が大きくなるごとに、民法→会社法→金商法の順に、勉強すべき範囲が増えていきます。
(この部分が、本記事で一番言いたかった部分です)
なお、以下の表の「個人」の行のところは、会社の人には関係ないですが、全体観を出したいので書いています。
【法務部で働くときに勉強を始めるべき法律】
事業者の規模 | 民法 | 会社法 | 金商法 |
---|---|---|---|
個人 | ○ | ー | ー |
中小企業 | ○ | ○ | ー |
上場企業 | ○ | ○ | ○ |
以下、若干ですが、どんなふうに必要か書いてみます。
民法
民法は、直接その知識だけで解決できる事は少ないのですが、何だかんだいって極めて広範囲で顔を出すので(特に契約ですね)、やはり根っこの部分、として必要になります。
民法自体の説明は長くなるのでここでは省略します。特に、インハウス転職の人には説明不要かなと。
法務部への異動の人には、「ビジネス法務検定」を利用してトレーニングするのもおすすめです。もちろん、実戦で学ぶ派の人は、それでも問題ありません。
職場にこの検定(2級)をとっている人がいましたが、普通に法律の会話ができました。法務部の人ではなかったので(かつ法学部出身でもない)、この人何でこんなこと知っているんだろうと思いましたが、自主的にこの検定をとったということでした。
管理人自身はこの検定を勉強したことはないのでよくわかりませんが、必要な範囲でスムーズな意思疎通が可能でしたので、ビジネスで必要なベースをつくるのには有用と思われます。
(単にその人が多方面に優秀な人だっただけという可能性もありますが)
会社法
会社法は、弁護士でも、一般民事系の法律事務所に所属していた場合は、ちょっとご無沙汰になっている人もいるかと思います(管理人自身は若干そうでした)。
法務部に入ってからでも、入った後でも、会社や法務の状況に応じて、必要な部分をかじり取っていくことをおすすめします。
例えば、
- 株主総会や役会(取締役会etc)など会議体の取り回しが必要な場合は(いわゆる機関法務が法務部の業務分掌になっている場合です)、
→ 機関の部分など - ファイナンスやM&Aがしばしば行われる会社の場合は、
→ 株式や資金調達の部分など - 企業グループを形成していて合併・分割などが多い会社の場合は、
→ 組織再編の部分など
ですね。
インハウス転職などではなく、法務部への異動の人(社内の人事異動で法務にいくことになったが、法律自体に馴染みが薄い人)は、上記のビジネス法務検定で、会社法もトレーニングできると思います。
金商法(金融商品取引法)
金商法は、上場会社の法務に行く場合は必要です。逆に、そうでなければいったんは不要です。
金商法は、大雑把にいうと、
- 開示規制
- 業規制
- 市場規制
- 不公正取引規制
の4つに分かれますが、上場会社として一般的に必要になるのは、①開示規制の部分と、④不公正取引規制とりわけインサイダー規制の部分です。
この分野を主戦場としているのは、通常、法務部というより、IR部・財務部ですが、法務部でも必要になる場合があります。
特に、インサイダー規制についてはダイレクトに法務部の管掌としている会社もあるので、その場合は直接担当部署として必要になりますね。要は、業務分掌によりけりです。
また、上場会社の場合、四半期や年間のサイクルが金商法に沿って動いていきますので、仮に法務部で直接触れることがなかったとしても、会社法と併せて金商法をある程度見ていないと、普通の業態の理解が遅れると思います。
結び
管理人自身は、一般民事系の事務所(会社法案件もあるが、割合は少ない)というところからのインハウス転身でしたが、当時、この大局観はありませんでした。
その後、複数社で法務部をやってみて、上場会社や20~30人規模の会社の双方を経験しまして、振り返ってみると、大枠ってこうなっているなという肌感覚です。当然のことといえば当然のことなんですが、この感覚を記事にしてみました。
会社の法務支援にあっては、まずはこの3つが土台となるように思います。
取っ掛かりに困っている人は、まずここから勉強を始めてみるのもいいのではと思います。
[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。