今回は、独立開業時のおそらく定番の悩み、借入金を起こすかどうか、についてです。
私は、弁護士開業して借入金を起こし、その後返済しましたが、自分でやったみたり人に聞いたりするなかで、借入金についての考え方は、メンタルに応じて2パターンに分かれる気がしています。
そこでまず、そもそも借入金を起こすかどうかについての精神論を、強メンタル(つよめんたる)と弱メンタル(よわめんたる)の2パターンに分けて解説したいと思います(個人的見解)。
1 強メンタル(つよめんたる)
借金を敢えて積極的に背負い、これを返すために必死に働いてがんばり、筋肉をつけて、後日の爆発的な成長につなげるという方法です。
私がお会いした経営者でゴツい人(肉体ではなく精神がゴツい人。男女関係なし。オラオラ系)は、こういうスタンスの人が多かったように思います。やはり世の中そういうものなんですかね。
ただ、強メンタルの人でないと、シンプルに潰れると思います。潰れた人はあえて表に出さないので見えてこないだけ、ということを冷静に考えましょう。
2 弱メンタル(よわめんたる)
これは自分のメンタルの強さをわきまえて、程良いバランスを取ろうとする主義です。財布の状態とその後の見通しとを相談して決めます。いわずもがな私はこっちです。
そんな甘っちょろいこと言ってるからパッとしないんだよ!と強メンタルの人から罵声が飛んで来そうですが…( ;∀;)笑。
しかし、事業を初めてしばらくの間は、顧客を当初から確保していない限りは、単に貯蓄が減り続けるだけという「真綿で首を絞められる」時期が待っています。「息をしているだけでお金が減っていく」という地獄のフェーズです。
ここでカツカツの分しかない場合、生活費と運転資金の消費を日々眺め続けることで、じわじわとメンタルがやられる可能性があります。引退した芸能人とかでそういうこと言ってる人をテレビで見かけたことがありますが、自分がなってみて、これか、と思いました。
なので、最初の初期投資としばらくの間の運転資金を決め、そこに自己資金で達しない分について、借入金を起こしておく、という方針が良いと思います。
私の場合、そこまでカツカツではなかったですが、かといって余裕があるという程ではなかったので、借入金と自己資金をフィフティーフィフティーにしました。
どちらかと言うと要はメンタルの方針の問題です。
どっちが優れているという問題ではない
強メンタルと弱メンタル、と書きましたが、これは優劣とか、上下という意味のつもりではなく、それぞれに合った方針をとるべきという意味です。弱メンタルには弱メンタルの生存戦略があります。
私がこれまで接したことのある限りでは、経営者で成功した人は、強メンタル系の人が多いような気はします。
”借金した後、またその分を返そうと思って頑張るのよ”、”むしろ借金するのは楽しいことだ、そのあとはもっと大きくなっている”、と言っている女帝のような豪傑もいました(女傑、というやつです)。このセリフは、ファイナンス、事業投資(設備投資)の考え方としてもシンプルに正しいですしね。朝ドラ「あさが来た」の主人公あさは、たぶんこんな人だったんじゃないかなあ、と思うような人でした。
でも、自分は自分、その人はその人です。「あなたのことは尊敬しますが、私はまた別の人間です」と素直に突っ込みましょう。もちろん、その人のようになりたいという憧れが湧いてきたら、そのようにすればよいです。
創業時の人はみな同じらしい
話が逸れますが、創業者の悩みと二代目社長の悩みって、別種のものなんでしょうね。私は父親が小さな会社の2代目社長だったのですが、ボケ防止にでもと思って(失礼。冗談です)、たまに経営について会話したりしてみましたが、全く話が合いませんでした。
おそらく、二代目社長の悩みは、事業立ち上げの負荷ではなく、いったん回り出した事業をどう維持していくか(そのときには従業員も増えているし責任も重大)、というところにあるんでしょうね。
初期フェーズの苦しみは、他の士業など、独立してゼロからつくっていこうという人(その時点で顧客はいない人)にはみな同じであろうと思います。私は非常に尊敬している美容師さんがいるのですが、その人も、最初はお金が減っていくだけだから辛いよねー、と言っていました。というより、この人から聞いて、ああみんなそうなんだな、と思いましたね。
ただ、最近は、ブロガーやYoutuberなど、とても低リスクな初期投資で参入可能な領域が増えていますね(素晴らしいことです)。初期投資の額は低ければ低いほどいいです。事務所開設のときも、初期投資は本当に必要なものだけに絞りましょう。苦しみを抱えること自体に意味はないです。
弁護士業界の昔のシステムはよくできている
もうひとつ話が逸れますが、弁護士業界の昔ながらのシステムというのは、よくできていますね。自分が正規ルートから外れて開業してみると、そのことがよくわかります。
昔ながらの正規ルートというのは、どこかの法律事務所にイソ弁として入り、ノウハウを学びつつ、初期投資金額と、一定程度の個人事件(自分の顧客)をつくってから独立する、という方法です。
これなら、事業立上げ時のストレスは相当減ると思いますね(というか、ほとんどないのでは)。
ただ、時代的にはもはや理想、って感じもしますが。そのようになっている周囲はあまり多くない印象です(個人的見解)。
イソ弁として入ったからといってこのとおり出来ると限らないからですね。ブラックと丸投げでノウハウは学べない(自分で調べて頑張るだけ=即独しているのと変わらない)、給与低廉で初期投資金額の貯蓄はできない、個人受任は禁止or受任するなら即経営参画しろ(事務所経費を負担せよ)とか、逸脱パターンももはや珍しくはない気がします。
さて、借入金についての次の回は、具体的な借入の方法について書いてみたいと思います。