業務委託契約書

業務委託契約書|どこまで管理?「再委託に関する条項」を解説~事前承諾を要する範囲・義務と責任・通知義務など

今回は、業務委託契約書ということで、再委託に関する条項について見てみたいと思います。

業務委託契約における再委託に関する条項は、受託者が引き受けた業務の全部または一部をさらに第三者に委託できるか否か、またその際の条件を定めるものであり、業務の品質維持や情報管理の観点から重要な意味を持ちます。本記事は、再委託条項の意義や実務上のポイントについて詳しく解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

再委託条項の意義と法律上の原則

委託者は通常、受託者の技術力、実績、コスト、管理体制、会社の信用状況などを総合的に評価したうえで業務を委託しています。

そのため、受託者の自由な判断で委託者の関知しない第三者に業務を回されてしまうと、期待した品質が担保されなかったり、機密情報が漏洩したりするリスクが高まります。そこで、通常は再委託に関する条項を設けて制限をかけます。

再委託の可否に関する法律上の原則(=もし再委託条項を定めなかったらどうなるか)は、契約の法的性質によって異なります。

  • 請負契約の場合
    ➡ 仕事の完成を目的とするため、原則として受託者(請負人)は自ら業務を行う必要はなく、自由に下請負人を使用することができます
  • 委任・準委任契約の場合
    ➡ 当事者間の人的な信頼関係を基礎とするため、原則として受託者自らが事務を処理する義務(自己執行義務)を負い、委託者の許諾ややむを得ない事由がない限り、復委任(再委託)はできません

実際の業務委託においては請負か準委任かの区別が曖昧になることも多いため、法律の原則に委ねるのではなく、契約書で再委託の可否を明確に定めておくことが通常です。

再委託条項の記載内容

標準的な規定のあり方

原則禁止と事前の書面承諾

委託者側のリスクを管理するため、原則として再委託を禁止し、事前に委託者の書面による承諾を得た場合に限り再委託を認めるという形にするのが標準的です。

再委託が認められた場合の受託者の義務と責任

再委託を例外的に認める場合であっても、委託者を保護するために、以下の2点がセットで規定されるのが通常です。

  • 同等の義務の負担
    受託者は再委託先と書面で契約を結び、自身が委託者に対して負っている義務(秘密保持、品質保証、知的財産権の取り扱いなど)と同じ義務を再委託先にも遵守させる義務を負います
  • 受託者の全責任
    再委託先の業務遂行上の過失や債務不履行、情報漏洩などの一切の行為について、受託者は自らがなした行為として、委託者に対して全責任を負う旨を明記します

なお、受託者側としては、「再委託先の選任および監督についてのみ責任を負う」など、リスクヘッジ方向での修正を行うことも考えられます。

事前承諾の範囲の調整

そのほか、事前承諾を要する範囲の調整(チューニング)として、様々なパターンが考えられます。

事前承諾を不要とする(緩和方向)

受託者の業務形態上、どうしても多数の再委託先を利用する必要がある場合などは、全面的な事前承諾制では業務が回らなくなる場合もあり得ます。

そのような場合は、事前承諾を不要とすることも考えられます(受託者の義務と責任だけを負わせる)。

ただ、事前承諾を不要とする場合であっても、後述のような委託者への事前通知や、一定の選定基準を要求するなど、何かしらの管理方法をセットで定めていることが多く、再委託について完全にフリーハンドにすることはかなり稀と思われます。

再々委託先以降も含めて事前承諾を必要とする(厳格方向)

逆に、再々委託以降が発生する場合にも、委託者の都度の事前承諾を必要とするという、厳格な方向性の管理を行うことも考えられます。例えば、「再委託先の第三者が再々委託を行う場合以降も同様とする」などと定めます。

事前承諾を必要とする業務の範囲を調整する(緩和方向)

あるいは、事前承諾を要する受託者の範囲ではなく、事前承諾を要する業務の範囲を調整する(絞る)方法も考えらます。

定型的で裁量を伴わない業務のように軽微な部分を除外する定め方のほか、重要部品や製造の根幹に関わる部分についてのみ事前承諾を要するとする定め方もあり得ます。

事前承諾以外の管理方法

事前承諾のほかに、事前通知(あるいは事後報告)で足りるとしたり、一定の選定基準を満たす事業者であることを求める、といった管理方法も考えられます。

事前通知を求める

事前承諾を不要としつつ、再委託先の名称や業務内容などに関する事前通知を求めるという方法もあり得ます。もちろん、実際に何を通知させるかは案件に応じて定めることができます。

事前承諾の範囲の場合と同じように、事前通知の範囲を調整することも考えられます(例:再々委託先以降も含めてすべての事業者の名称や業務内容などを通知させる)。

一定の選定基準を定める

また、再委託先に一定の能力・体制・資格などを求める(一定の選定基準を定める)という方法もあり得ます。

なお、こういった事前通知や一定の選定基準を求めることは事前承諾とはまた別の話であるため、論理的には事前承諾を必要としつつさらにこれらを要求するといった建付けにすることももちろん可能です。

例えば、一定の選定基準を明示しつつ事前承諾も求める場合も考えられます。ただ、かなりきつめの管理になるため、このような場合は「甲は、合理的な理由がない限り承諾を留保、遅延及び拒絶できない」などとしてバランスをとるケースもあります(一定の選定基準を満たしているのだから、事前承諾は必要としつつも、基本は承諾すべしとの考え方)。

IT・システム開発などにおける対立と交渉

大規模なシステム開発やインフラ構築などの分野では、受託者(ベンダー)一社で全ての業務を完結させることは非現実的であり、複数の下請け企業を利用する多重下請け構造が常態化しています。

そのため、システム業界のモデル契約(JEITAモデルなど)では、再委託先の選定を受託者の自由裁量・自己責任とし、委託者の承諾を不要とする条項(事後報告のみ等)が提案されることがあります。

しかし、委託者(ユーザ)がこれをそのまま受け入れると、再委託先の管理がブラックボックス化し、情報漏洩などのトラブルを招くおそれがあります。したがって、委託者としては事前承諾制を維持するか、最低限、再委託先の名称等の事前通知不適切な場合の委託者からの中止請求権などを契約に盛り込むよう交渉することが推奨されます。

その他の留意点

個人情報保護・情報セキュリティの観点

再委託条項は、セキュリティの観点からも重要性を持ちます。過去にも、再委託先(下請け)の従業員を介して情報漏洩やデータ流出事件が複数発生しています。

特に個人情報を取り扱う業務を委託する場合、個人情報保護法により、委託元は委託先に対して必要かつ適切な監督を行う義務があります(個人情報保護法25条)。この監督義務を果たすためには、委託先が再委託を行う場合、委託元が再委託の内容や相手方について事前報告や承認を行うこと、そして再委託先にも適切な安全管理措置を講じさせることが望ましいとされています。

したがって、再委託を無制限に許可することは法令対応の観点からも相応のリスクがあるといえます。

▽個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)3-4-4

また、委託先が再委託を行おうとする場合は、委託を行う場合と同様、委託元は、委託先が再委託する相手方、再委託する業務内容、再委託先の個人データの取扱方法等について、委託先から事前報告を受け又は承認を行うこと、及び委託先を通じて又は必要に応じて自らが、定期的に監査を実施すること等により、委託先が再委託先に対して本条の委託先の監督を適切に果たすこと、及び再委託先が法第23条に基づく安全管理措置を講ずることを十分に確認することが望ましい(※4)。再委託先が再々委託を行う場合以降も、再委託を行う場合と同様である。

反社会的勢力排除の観点

業務委託契約において再委託を認める場合、受託者自身だけでなく再委託先が反社会的勢力であるリスクを想定した条項を設けることも考えられます。

再委託先に関する反社排除条項の規定

再委託先が反社会的勢力であることが判明した場合に備え、契約書に以下のような内容を盛り込むことが考えられます(委託者側の視点)。

  • 表明・保証と確約
    受託者に対し、再委託先(数次にわたる場合はその全てを含む)が反社会的勢力に該当しないことを表明・保証させ、将来にわたっても該当しないことを確約させる
  • 判明時の解除措置義務
    契約後に再委託先が反社会的勢力であると判明した場合、受託者は直ちにその再委託先との契約を解除する等の措置をとらなければならない旨を規定する
  • 不当介入時の報告義務
    再委託先が反社会的勢力から不当な介入(暴力的な要求など)を受けた場合、受託者は再委託先に対してこれを拒否させるとともに、速やかに委託者へ報告し、捜査機関への通報等に協力する義務を負わせる
  • 委託者による元契約の解除権
    受託者がこれらの義務に違反した場合、委託者は何らの催告を要さずに業務委託契約そのものを解除できる権利を確保しておく

受託者に求める表明・確約の限界

一方で、受託者の立場で考えた場合、自社の委託先(再委託先)が反社会的勢力ではないことまで、受託者自身の表明・確約と全く同等のレベルで保証することは困難な場合があり得ます(受託者側の視点)。

そのため、比較的ニュートラルな内容として、暴排条例の内容などを参考に、①相手方に対し、その再委託先との契約を解除するよう是正措置を求め、②もし相手がそれに従わなければ、元々の契約(自社と相手方との契約)自体を解除できるという規定を盛り込むという方法も考えられます(以下の東京都暴排条例18条2項2号・3号を参照)。

  • 第1段階(是正の要求)
    相手方の関連契約に反社がいることが判明した場合、まずは相手方に対してその再委託先との関連契約を解除するなど必要な措置をとる旨を要求できる
  • 第2段階(本契約の解除)
    もし相手方がその要求(是正措置)に正当な理由なく従わなかった場合、最終的に相手方との本契約自体を解除できる

▽東京都暴力団排除条例18条2項

 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。
 工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。
 前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること。

以上のように内容にはいくらかの幅がありますが、再委託を伴う契約では、反社会的勢力が下請構造の中に紛れ込むリスクを防ぐため、受託者に対して再委託先の反社排除を義務付け、違反時の解除権をセットで規定するという視点があるということです。

結び

今回は、業務委託契約書ということで、再委託に関する条項について見てみました。

本記事の文例(条項例)付き解説は、noteに掲載しています。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

【文例付き】業務委託契約書の「再委託に関する条項」について解説|法律ファンライフ NOTE
【文例付き】業務委託契約書の「再委託に関する条項」について解説|法律ファンライフ NOTE

note.com

業務委託契約書 - 法律ファンライフ
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houritsushoku.com

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考資料

-業務委託契約書