グループガバナンス

グループガバナンスと法務|グループ会社のキャッシュマネジメントと貸金業法

今回は、グループガバナンスということで、企業グループにおけるキャッシュマネジメントについて見てみたいと思います。

グループ会社でキャッシュマネジメントとして資金の融通(貸付けなど)を行う場合、その行為が貸金業法上の「貸金業」に該当するかどうかが問題となります。本記事では、貸金業法の観点からの注意点について解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

貸金業法の適否

原則:反復継続的な貸付けは「貸金業」に該当しうる

金銭の貸付けを反復継続の意思をもって行うことは、営利目的の有無にかかわらず「業として行う」ことになり、原則として貸金業法上の「貸金業」に該当します。貸金業を営むには内閣総理大臣または都道府県知事の登録が必要であり、登録を受けずに貸金業を営むと無登録営業として刑事罰の対象となります。

▽貸金業法2条1項

(定義)
第二条
 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 国又は地方公共団体が行うもの
二 貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの
三 物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの
四 事業者がその従業者に対して行うもの
五 前各号に掲げるもののほか、資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けを行う者で政令で定めるものが行うもの

▽貸金業法3条1項

(登録)
第三条
 貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない

例外:一定のグループ会社間での貸付けは適用除外となる

しかし、貸金業法では「資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付け」であって政令で定めるもののみを行う会社は、貸金業の適用対象から除外されると規定されています(上記の法2条1項5号)。

具体的には、以下のいずれかに該当する関係会社に対する貸付けのみを業として行う場合は、貸金業の登録は不要となります。

  • 同一グループ内の会社に対する貸付け:自社、または自社の子会社等(自社が議決権の過半数を保有している、または経営を支配している会社等)を含む「同一の会社等の集団」に属する他の会社に対する貸付け
  • 共同支配している合弁会社等への貸付け:自社(または親会社)が20%以上の議決権を保有し、かつ、他の会社等と共同で営利目的の事業を営む契約に基づき経営を共同支配している会社に対する貸付け
    • ただし、この合弁会社等に対する貸付けが適用除外となるためには、当該会社の総株主または総出資者の共同の利益を損なうおそれがないものとして、総株主又は総出資者の同意を得ている必要があります。

注意すべきポイント

キャッシュマネジメントシステムの一環であっても、上記の適用除外となるグループの要件(議決権の保有割合や支配関係、合弁会社における総株主の同意など)を満たさない会社や、グループ外部の法人・個人に対して反復継続して貸付けを行った場合は、貸金業法の適用対象となってしまいます。

したがって、資金を融通する対象となる各法人が、法令上の「同一の会社等の集団」等に確実に含まれるか(あるいは法的に求められる同意を得ているか)を事前に慎重に確認し、グループ外への貸付けが行われないよう管理することが重要です。

適用除外となるための具体的な要件(令1条の2第6号)

では、グループ会社間での貸付けが貸金業法の適用除外となるための具体的な要件はどうなっているのでしょうか。

適用除外となるためには、資金の貸付け先が以下の「同一の会社等の集団(グループ会社)」または「共同支配している合弁会社等」のいずれかに該当し、かつ、これらに対する貸付けのみを業として行う必要があります。ここでいう「会社等」には、日本の会社だけでなく、組合やこれらに準ずる事業体、外国の相当する事業体も含まれます。

▽施行令1条の2第6号

(貸金業の範囲からの除外)
第一条の二
 法第二条第一項第五号に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 貸付けを業として行う会社等会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下この号及び次号において同じ。)であつて、かつ、次に掲げる他の会社等に対する貸付け(…(略)…)以外の貸付け(法第二条第一項第三号又は第四号に掲げるものを除く。)を業として行わないもの
イ~ハ (略)

01|同一の会社等の集団(グループ会社)に対する貸付けの要件(令1条の2第6号イ)

同一の会社等の集団とは、自社と、自社が経営を支配している子会社等で構成される集団のことです。

▽施行令1条の2第6号イ

 当該会社等を含む同一の会社等の集団(一の会社等及び当該会社等の子会社等会社等がその総株主又は総出資者の議決権の過半数を保有する会社等その他の当該会社等がその経営を支配している会社等として内閣府令で定めるものをいう。の集団をいう。以下イにおいて同じ。)に属する他の会社等(…(略)…)

この子会社等に該当するためには、自社が対象会社の財務及び事業の方針の決定を支配している必要があり、具体的には以下の基準で判断されます(※対象会社が組合等の場合は、その総組合員や総構成員が法人であるものに限られます)。

▽施行規則1条2項

 令第一条の二第六号イに規定する内閣府令で定めるものは、会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等組合その他これに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)である場合にあつては、その総組合員又は総構成員が法人(外国の法令に準拠して設立された法人を含む。)であるものに限る。とする。

支配しているとみなされる具体的な基準(規則1条3項)

以下の⑴または⑵のいずれかに該当する場合、支配しているとみなされます(ただし、財務上・事業上の関係からみて支配していないことが明らかな場合を除きます)。

⑴ 議決権の過半数(50%超)を保有している場合(1号)

自己の計算において所有している議決権の割合が50%を超えている場合です。

▽施行規則1条3項

 前項の「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」とは、次に掲げる場合(財務上又は事業上の関係からみて他の会社等の財務又は事業の方針の決定を支配していないことが明らかであると認められる場合を除く。)をいう(以下この条において同じ。)。
 他の会社等(次に掲げる会社等であつて、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の総数に対する自己その子会社等(会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等をいう。次項において同じ。)を含む。以下この項において同じ。の計算において所有している議決権の数の割合が百分の五十を超えている場合
  民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等
  会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社
  破産法(平成十六年法律第七十五号)の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等
  その他イからハまでに掲げる会社等に準ずる会社等

⑵ 議決権の40%以上を保有しており、かつ、以下のいずれかの要件を満たす場合(2号)

  • 同調者の議決権との合算:自社と緊密な関係があり自社と同一の議決権を行使すると認められる者、または自社と同一の議決権を行使することに同意している者の議決権を合わせると50%超になること
  • 役員等の派遣:対象会社の取締役会等(意思決定機関)の構成員の過半数を、自社の役員、業務執行社員、使用人(過去にこれらであった者を含む)が占めていること
  • 支配契約の存在:自社が対象会社の重要な財務・事業方針の決定を支配する契約等が存在すること
  • 資金調達の過半を融資:対象会社の資金調達総額のうち、自社(緊密な関係にある者を含む)が行う融資(債務保証や担保提供を含む)の割合が50%を超えていること
  • その他、自社が方針決定を支配していると推測される事実が存在すること

 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が百分の四十以上である場合(前号に掲げる場合を除く。)であつて、次に掲げるいずれかの要件に該当する場合
  他の会社等の議決権の総数に対する次に掲げる議決権の数の合計数の割合が百分の五十を超えていること。
 ⑴ 自己の計算において所有している議決権
 ⑵ 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
 ⑶ 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
  他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の総数に対する次に掲げる者(当該他の会社等の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものに限る。)の数の合計数の割合が百分の五十を超えていること。
 ⑴ 自己の役員(会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)第二条第三項第三号に規定する役員をいう。)
 ⑵ 自己の業務を執行する社員
 ⑶ 自己の使用人
 ⑷ ⑴から⑶までに掲げる者であつた者
  自己が他の会社等の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。
  他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額に対する自己が行う融資債務の保証及び担保の提供を含む。以下ニにおいて同じ。)の額(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を含む。の割合が百分の五十を超えていること。
  その他自己が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。

グループを離脱した会社に対する特例

同一の会社等の集団に1年以上属していた会社がグループから外れた場合、そのグループから外れた日から1年を経過するまでの間は、引き続き適用除外の貸付対象とすることが認められています(以下の括弧書き参照)。

▽施行令1条の2第6号イ(※再掲)

 当該会社等を含む同一の会社等の集団…(略)…に属する他の会社等当該会社等を含む同一の会社等の集団に属さないこととなつた他の会社等(当該同一の会社等の集団に属さないこととなつた日において当該同一の会社等の集団に属していた期間が一年を経過していないものを除く。)であつて、当該同一の会社等の集団に属さないこととなつた日から一年を経過しないものを含む

02|共同支配している合弁会社等への貸付けの要件(令1条の2第6号ロ・ハ)

自社、または自社の100%親会社(総株主等の議決権の全部を保有する会社)が、他の会社等と共同で出資等を行っている合弁会社に対する貸付けも適用除外となります。

この場合の具体的な要件は以下のとおりです。

議決権の保有割合と共同支配契約

  • 自社(または自社の100%親会社)が、対象会社の議決権の20%以上を保有していること
  • 自社(または自社の100%親会社)を含む2つ以上の会社等が、共同で営利目的の事業を営む契約に基づき、対象会社の経営を共同して支配していること

▽施行令1条の2第6号ロ・ハ

 当該会社等がその総株主又は総出資者の議決権に内閣府令で定める割合を乗じて得た数以上の議決権を保有する他の会社等であつて、当該会社等を含む二以上の会社等が共同で営利を目的とする事業を営むための契約に基づき当該他の会社等の経営を共同して支配している場合における当該他の会社等
 当該会社等の親会社等(会社等の総株主又は総出資者の議決権の全部を保有する会社等をいう。)がその総株主又は総出資者の議決権に内閣府令で定める割合を乗じて得た数以上の議決権を保有する他の会社等であつて、当該親会社等を含む二以上の会社等が共同で営利を目的とする事業を営むための契約に基づき当該他の会社等の経営を共同して支配している場合における当該他の会社等

▽施行規則1条5項

 令第一条の二第六号ロ及びハに規定する内閣府令で定める割合は、百分の二十とする。

総株主等の同意(規則1条1項)

合弁会社等に対する貸付けが適用除外となるためには、その貸付けが「総株主又は総出資者の共同の利益を損なうおそれがないと認められる貸付け」でなければならず、具体的には、当該合弁会社の総株主又は総出資者の同意に基づく貸付けである必要があります(以下の括弧書き参照)。

▽施行令1条の2第6号(※再掲)

(貸金業の範囲からの除外)
第一条の二
 法第二条第一項第五号に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 貸付けを業として行う会社等(会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下この号及び次号において同じ。)であつて、かつ、次に掲げる他の会社等に対する貸付け(ロ及びハに掲げる他の会社等に対する貸付けにあつては、当該他の会社等の総株主又は総出資者の共同の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けとして内閣府令で定めるものに限る。)以外の貸付け(法第二条第一項第三号又は第四号に掲げるものを除く。)を業として行わないもの
イ~ハ (略)

▽施行規則1条1項

(同一の会社等の集団に属する会社等への貸付け及び経営を共同で支配する会社等への貸付け)
第一条
 貸金業法施行令(昭和五十八年政令第百八十一号。以下「令」という。)第一条の二第六号に規定する他の会社等の総株主又は総出資者の共同の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けとして内閣府令で定めるものは、同号ロ及びハに掲げる他の会社等会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下この条において同じ。総株主又は総出資者の同意に基づくものとする。

結び

以上のとおり、議決権の保有割合(50%超、40%以上+実質的支配、20%以上+共同支配)や、役員派遣・資金提供などの実態、合弁会社における総株主の同意取得など、法令で定められた要件を満たしている法人のみに貸付けを行う場合に限り、貸金業登録が不要となります。

【補足】金額と他の法令上の注意点

 貸金業法上の金額制限はありませんが、実際のグループ会社間で多額の資金の貸付けを行う場合には、会社法上の取締役の善管注意義務(回収可能性の判断など)や、税務上の問題(適正な利息を設定しない場合の寄付金認定など)といった別の法令・実務上の観点からの検討が必要になるのが一般的ですので、その点にはご留意ください。

今回は、グループガバナンスということで、企業グループにおけるキャッシュマネジメントについて見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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