取適法

取適法解説|法律の適用対象となる5つの取引類型(全体像)

今回は、中小受託取引適正化法(取適法)ということで、適用対象となる取引の内容について見てみたいと思います。

法律の適用対象になるかどうかを判断する基準は、大きく分けて事業者の規模(資本金・従業員数)と取引の内容の2つですが、本記事は、後者の取引の内容について全体像を解説します。

取適法は、立場の格差から濫用が行われがちな取引のパターンを括り出し、適用対象となる受託取引を全部で5つの類型に分類しています。旧下請法から取適法への法改正で新たに追加されたもの(特定運送委託)もあるため、これまで自社は関係ないと思っていても、放置していると思わぬところで法律違反になってしまうこともあるかもしれません。

適用対象となる取引の内容

① 製造委託
② 修理委託
③ 情報成果物作成委託
④ 役務提供委託
⑤ 特定運送委託

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

製造委託

製造委託とは、事業者が他の事業者に対し、給付に係る仕様、内容等を指定して物品等の製造(加工を含む)を委託することです。

最も基本的で、イメージしやすい取引類型といえます。要するに、事業者が、他の事業者に対して、仕様(規格、品質、デザインなど)を指定して、モノの製造や加工を依頼する取引です(※単に市販のカタログ品(規格品)を買ってくるだけなら対象外です)。

  • 対象になるモノ:
    製品そのものだけでなく、部品、原材料、半製品、さらにはそれらを作るための金型・木型・治具(工作物保持具)・特殊な工具も含まれます
  • 具体例:
    • メーカーが、製品の部品製造を町工場に委託する
    • スーパーやコンビニが、自社ブランド(PB)の食品製造を食品メーカーに委託する
    • 出版社が、書籍の印刷を印刷所に委託する

簡単にいうと、モノづくりを頼むことです

製造委託にはさらに4つの類型がありますが、くわしくは以下の関連記事で解説しています。

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取適法解説|適用の基本となる「製造委託」の定義と4つの類型

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修理委託

修理委託とは、事業者が他の事業者に対し、物品の修理を委託することです。

  • 具体例:
    • 請け負った修理の再委託:自動車ディーラーが、顧客から預かった車の板金塗装を、別の修理工場に委託する
    • 自社設備の修理:自社工場で使う機械などを自社の修理部門で業として直している事業者が、その修理の一部を外部の業者に委託する(※単にオフィスのエアコンが壊れたから修理を頼むといった場合は対象外)

簡単にいうと、モノを直す作業を外注することです

修理委託にはさらに2つの類型がありますが、くわしくは以下の関連記事で解説しています。

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情報成果物作成委託

情報成果物作成委託とは、事業者が他の事業者に対し、情報成果物の作成を委託することです。

IT業界やクリエイティブ業界で多いのが情報成果物作成委託です。形のないデジタルデータやデザインなどの作成を、仕様を指定して依頼する取引です。

  • 対象となる情報成果物:
    1. プログラム(システム開発、アプリ、ゲームソフトなど)
    2. 映像・音声(テレビ番組、CM、アニメ、ラジオなど)
    3. 文字・図形等(デザイン、設計図、取扱説明書、原稿など)
  • 具体例:
    • システム会社が、受注したシステム開発のプログラミング(コーディング)を別の会社やフリーランスに委託する
    • 広告代理店が、ポスターのデザイン作成をデザイン会社に委託する

情報成果物作成委託にはさらに3つの類型がありますが、くわしくは以下の関連記事で解説しています。

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役務提供委託

役務提供委託とは、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することです。

ここで注意すべきポイントは、自社で消費するサービス(自家利用役務)は対象外という点です。あくまで、顧客に提供するビジネスとして請け負ったサービスを、他の業者に再委託することが対象となります。

  • 対象になる例
    • ビル管理会社が、オーナーから請け負ったビルの清掃業務を、清掃業者に委託する
    • ソフトウェア会社が、自社ソフトのユーザーサポート窓口(電話対応等)を、コールセンター業者に委託する
  • 対象にならない例
    • メーカーが、自社のオフィスビルの清掃を清掃業者に頼む(自社で消費するサービス=自家利用役務であるため)
      • なお、建設業者が請け負う建設工事の再委託は、建設業法で規制されるため取適法からは除外されています

簡単にいうと、サービスの再委託です

役務提供委託の類型は1つだけです。自家利用役務が対象外である点も含め、以下の関連記事でくわしく解説しています。

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特定運送委託(顧客への配送を頼む)

特定運送委託とは、事業者が、販売する商品や製造・修理を請け負ったモノを、取引の相手方(顧客)へ届けるために、他の事業者に運送を委託することです。

今回の法改正で新たに加わった取引類型です。旧下請法では、荷主から運送業者に対する運送の委託は対象外とされてきましたが(自家利用役務であるため対象外という考え方。代わりに独禁法に基づく物流特殊指定で対応)、取適法では真正面から規制の対象となりました。

  • 具体例:
    • 家具屋や家電量販店が、販売した商品を顧客の家へ配送するのを運送会社に委託する
    • メーカーが、販売する製品を卸売業者や小売店へ運ぶのを運送会社に委託する

簡単にいうと、製造・販売・修理等の目的物の、顧客への配送を頼むことです

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注意点としては、自社工場から自社倉庫への移動など、自社拠点間の移動は、取引の相手方に対する運送ではないため、原則として対象外です。また、「運送」には荷積みや荷下ろしといった附帯作業は含まれないため、これらの作業を無償でやらせることは禁止事項(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)の違反となる可能性があります。

結び

取適法の対象となる取引は、以下の5つです。

  1. 製造委託(モノを作る)
  2. 修理委託(モノを直す)
  3. 情報成果物作成委託(ソフトやデザインを作る)
  4. 役務提供委託(サービスを再委託する)
  5. 特定運送委託(顧客へ運ぶ)

取引先の規模が小さいというだけで取適法が適用されるわけではありません。自社が発注している業務が、この5つのどれかにあてはまるかを確認することが、取適法対応の第一歩となります。社内の発注業務を棚卸しして、該当する取引がないかチェックすることが大切といえます。

次の記事は、5つの取引類型のうちのひとつめ、製造委託についてです。

次の記事
取適法解説|適用の基本となる「製造委託」の定義と4つの類型

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

  • 取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)
  • 取適法施行令(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」)
  • 4条明示規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」)
  • 7条記録規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」)
  • 遅延利息利率規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の率を定める規則」)
  • 取適法運用基準(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」)
  • 取適法Q&A(「よくある質問コーナー(取適法)」)|公取委HP
  • 取引適正化ガイドライン(「受託適正取引等推進のためのガイドライン」)|中小企業庁HP
  • 令和7年改正法 説明資料(「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 令和7年10月1日パブコメ(同日付け「「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」)|e-Gov(≫掲載ページ

参考資料

  • 取適法ガイドブック(「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」(公正取引委員会・中小企業庁))
  • 取適法テキスト(「中小受託取引適正化法テキスト」〔令和7年11月版〕(公正取引委員会・中小企業庁))

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