フリーランス法

フリーランス法|ルール違反はどうなる?違反への措置と独禁法・取適法との関係を理解

2024年11月16日

今回は、フリーランス法ということで、違反に対する措置等について見てみたいと思います。

フリーランス法では発注者が守るべき義務や禁止行為が定められていますが、もし発注者がルールを守ってくれなかったら一体どうなるのか、結局泣き寝入りするしかないのかと不安に思う方もいるかもしれません。

本記事では、発注者がフリーランス法に違反した場合にどのような措置やペナルティが下されるのか、そして関連する独占禁止法や取適法(旧下請法)との関係について、解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

行政機関への申出

発注者がフリーランス法に違反している場合、フリーランスは所管の行政機関に対して申出(通報や相談)をすることができます(法6条1項、法17条1項)。

違反の内容によって、担当する行政窓口が異なります。

  • 取引適正化に関するルール違反(報酬の未払いや減額、買いたたきなど)
    →公正取引委員会、中小企業庁
  • 就業環境整備に関するルール違反(虚偽の募集情報、ハラスメント、育児介護の配慮義務違反、中途解除の不当な扱いなど)
    →厚生労働省(都道府県労働局)

ウェブからのオンライン申出も可能となっています。

【参考】相談窓口「フリーランス・トラブル110番」

 いきなり行政に申出をするのはハードルが高いとか、そもそも法律違反にあたるのかわからないという場合は、「フリーランス・トラブル110番」に相談するという方法もあります(厚労省から第二東京弁護士会が受託して運営)。 ここでは、弁護士に無料で電話やメール相談ができ、必要に応じて行政窓口への申出のサポートや、当事者間での和解あっせんなども行っています。

また、別記事で解説していますが、この申出をしたことを理由に、発注者が契約解除や仕事減らしなどの報復(不利益な取扱い)をすることはフリーランス法上禁止されています(報復措置の禁止)。

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以上につき、条文も確認してみます。

▽フリーランス法6条 ※取引適正化に関する遵守事項関連

(申出等)
第六条
 業務委託事業者から業務委託を受ける特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
 公正取引委員会又は中小企業庁長官は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
 業務委託事業者は、特定受託事業者が第一項の規定による申出をしたことを理由として、当該特定受託事業者に対し、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない

▽フリーランス法17条 ※就業環境整備に関する遵守事項関連

(申出等)
第十七条
 特定業務委託事業者から業務委託を受け、又は受けようとする特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、厚生労働大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
 厚生労働大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
 第六条第三項の規定は、第一項の場合について準用する

フリーランス法では、取引適正化に関する遵守事項は公取委と中小企業庁が所管し、就業環境整備に関する遵守事項は厚労省が所管しているため、申出や報復措置の禁止もこれに対応して、法6条と法17条とに区別されています

違反に対する措置等

行政機関に申出がなされると、行政は以下のような流れで発注者に対して調査・厳正な措置をとります(※すべてのステップを踏まないといけないという意味ではありません)。

  • 報告徴収・立入検査
     ↓
  • 指導・助言
     ↓
  • 勧告
     ↓
  • 命令・公表

報告徴収・立入検査

まずは事実確認です。行政から発注者に対して報告を求めたり、事務所に立ち入って帳簿や書類を検査したりします。

▽フリーランス法11条 ※取引適正化に関する遵守事項関連

(報告及び検査)
第十一条
 中小企業庁長官は、第七条の規定の施行に必要な限度において、業務委託事業者、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 公正取引委員会は、第八条及び第九条第一項の規定の施行に必要な限度において、業務委託事業者、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 前二項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

▽フリーランス法20条 ※就業環境整備に関する遵守事項関連

(報告及び検査)
第二十条
 厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分を除く。)及び前条第一項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分に限る。)及び前条第三項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者に対し、業務委託に関し報告を求めることができる。
 第十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定による立入検査について準用する。

指導・助言

違反の事実が確認された場合や、改善の必要がある場合、行政から発注者へ指導や助言が行われます。

▽フリーランス法22条

(指導及び助言)
第二十二条
 公正取引委員会及び中小企業庁長官並びに厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、業務委託事業者に対し、指導及び助言をすることができる。

勧告

悪質な違反がある場合や、指導に従わない場合、速やかに違反行為をやめるよう勧告(例えば、減額した報酬を支払いなさいなど)が行われます。

▽フリーランス法8条(※【 】は管理人注) ※取引適正化に関する遵守事項関連

(勧告)
第八条
 公正取引委員会は、業務委託事業者が第三条の規定【=3条通知】に違反したと認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに同条第一項の規定による明示又は同条第二項の規定による書面の交付をすべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第四条第五項の規定【=期日における報酬支払義務】に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに報酬を支払うべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定【=受領拒否の禁止】に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに特定受託事業者の給付を受領すべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)の規定【=報酬の減額の禁止、返品の禁止、買いたたきの禁止、購入・利用強制の禁止】に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかにその報酬の額から減じた額を支払い、特定受託事業者の給付に係る物を再び引き取り、その報酬の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第二項の規定【=不当な経済上の利益の提供要請の禁止、不当な給付内容の変更・やり直しの禁止】に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに当該特定受託事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 公正取引委員会は、業務委託事業者が第六条第三項の規定【=報復措置の禁止】に違反していると認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

▽フリーランス法18条 ※就業環境整備に関する遵守事項関連

(勧告)
第十八条
 厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が第十二条【=募集情報の的確表示】、第十四条【=ハラスメント対策に係る体制整備】、第十六条【=中途解除等の事前予告・理由開示】又は前条第三項において準用する第六条第三項の規定【=報復措置の禁止】に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、その違反を是正し、又は防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

命令・公表

発注者が正当な理由なく勧告に従わなかった場合、行政はさらに、勧告に従うよう命令を出し、その事実を世間に公表することができます。公表されれば、企業の社会的信用に大きなダメージとなります。

▽フリーランス法9条 ※取引適正化に関する遵守事項関連

(命令)
第九条
 公正取引委員会は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
 公正取引委員会は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。

▽フリーランス法19条 ※就業環境整備に関する遵守事項関連

(命令等)
第十九条
 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものを除く。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
 厚生労働大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。
 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものに限る。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。

違反行為の自発的申出

なお、公正取引委員会は、発注者が自らの法律違反に気づき、行政の調査が入る前に自発的に申出をした場合には、一定の要件を満たすことで勧告をしない(免除する)という運用をしています(執行ガイドライン第4項)。

対象となるのは、以下の5つの要件をすべて満たした場合です。

  • 調査に着手される前に、自発的に申し出た
  • 違反行為をすでにやめている
  • フリーランスに与えた不利益(減額分の支払いなど)をすでに回復した
  • 今後違反しないための再発防止策を講じることとしている
  • 公正取引委員会の調査や指導に全面的に協力している

これは、発注者に自主的な改善を促し、被害を受けたフリーランスが一刻も早く不利益を回復してもらえる(未払い金が支払われる等)ことを優先的に考えた仕組みです。

罰則

さらに、発注者が命令に違反した場合や、報告・立入検査を拒否したり虚偽の報告をしたりした場合には、50万円以下の罰金が科せられます(法24条)。また、この罰金は違反した担当者個人だけでなく、企業(法人)そのものにも科せられます(いわゆる両罰規定。法25条)。

なお、報告要請への違反のうち厚労省所管のハラスメント対策に係る体制整備違反に関する部分のみ、罰金ではなく20万円以下の過料の対象になっています(法26条)。

罰則の対象

  • 命令への違反
  • 報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告
  • 立入検査の拒否、妨害、忌避

▽フリーランス法24条~26条

第二十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
 第九条第一項又は第十九条第一項の規定による命令に違反したとき。
 第十一条第一項若しくは第二項又は第二十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。
第二十六条 第二十条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

独占禁止法や取適法(旧下請法)との適用関係

フリーランスと発注者との取引は、フリーランス法のほかに、独占禁止法(優越的地位の濫用)や取適法(旧下請法)といった他の法律のルールにもあてはまるケースがあります。

それでは、発注者はフリーランス法、独禁法、取適法で、3重にペナルティを受けるのかと疑問に思うかもしれませんが、これについては、公正取引委員会の執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)で適用関係が整理されています。

原則としては、フリーランス法を優先して適用することとされています。つまり、同じ違反行為が、フリーランス法と独禁法、あるいはフリーランス法と取適法の両方に違反している場合、原則としてフリーランス法が優先して適用されるということです。

  • 対 独禁法:フリーランス法で勧告の対象となった行為について、重ねて独禁法の排除措置命令や課徴金納付命令を出すことはありません
  • 対 取適法:フリーランス法で勧告の対象となった行為について、重ねて取適法で勧告を出すことはありません(※ただし、その発注者が取適法(旧下請法)にしか違反しない別の行為もやっていた場合など、全体を見て取適法を適用したほうが適切な場合は、取適法で勧告されることもあります)

▽執行ガイドライン第2項・第3項

 本法と独占禁止法との関係
本法と独占禁止法のいずれにも違反する行為については、原則として本法を優先して適用し、本法第8条に基づく勧告の対象となった行為と同一の行為について、重ねて独占禁止法第20条の規定(排除措置命令)及び同法第20条の6の規定(課徴金納付命令)を適用することはない。
 本法と取適法との関係
本法と取適法のいずれにも違反する行為については、原則として本法を優先して適用し、本法第8条に基づく勧告の対象となった行為について、重ねて取適法第10条に基づき勧告することはない。ただし、本法と取適法のいずれにも違反する行為を行っている事業者が取適法のみに違反する行為も行っている場合において、当該事業者のこれらの行為の全体について取適法を適用することが適当であると公正取引委員会が考えるときには、本法と取適法のいずれにも違反する行為についても取適法第10条に基づき勧告することがある。

結び

フリーランス法は、単なるお願いのルールではなく、立入検査や勧告、さらには罰金・公表といった措置がセットになった法律です。独禁法や取適法との棲み分けも整理され、行政も迅速に対応できる体制を整えています。

発注事業者は、フリーランス相手ならバレないだろうという考え方はせず、自発的なコンプライアンス(法令遵守)体制の構築が必要です。そしてフリーランスの側としては、もし理不尽なトラブルに巻き込まれたら、ひとりで抱え込まずに行政窓口やフリーランス・トラブル110番を活用するなどして、自身の権利を守っていくことが肝要です。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
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  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
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参考資料

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  • ガイドブック(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法