合同会社

合同会社法務|登記事項

今回は、合同会社法務ということで、合同会社の登記事項について見てみたいと思います。

本記事では、会社法914条に基づく合同会社の登記事項についてグループに分けて解説し、また登記事項が変更された場合に必要となる変更登記の手続についても触れます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

登記事項(会社法914条)

合同会社の登記事項は、会社法第914条に定められており、1号から11号までの事項があります。

▽会社法914条

(合同会社の設立の登記)
第九百十四条
 合同会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる事項を登記してしなければならない。
十一 (略)

それぞれの内容について、以下、3つのグループに分けて見てみます。

1号~5号:会社の基本情報

まず、会社の基本情報として、以下の登記事項が挙げられます。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店及び支店の所在場所
  4. (定款に定めがある場合は)合同会社の存続期間又は解散事由
  5. 資本金の額

①の「目的」は、会社の事業内容です。定款の絶対的記載事項でもあります。

②の「商号」は、会社の名称です。合同会社の場合、必ず「合同会社」という文字を含める必要があります(会社法6条2項)。定款の絶対的記載事項でもあります。

③の「本店及び支店の所在場所・・・・」は、本店/支店の具体的な住所です(ex. 東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)。定款の絶対的記載事項である「本店の所在地・・・」(最小行政区画)と違って、具体的な住所まで記載が必要になります。

「所在地」と「所在場所」という用語は、いずれも会社の拠点に関するものですが、若干意味が異なります

「所在地」は、最小行政区画である市町村(東京都においては区、政令指定都市は市)までの記載で足りると解されています(ex. 東京都千代田区 )。これに対し、「所在場所」は、会社の営業所の具体的な住所を示すものになります(ex. 東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)

④の「存続期間又は解散事由」は、定款によって定めることができる事項(いわゆる定款の相対的記載事項)です(会社法641条1号・2号)。定められた場合には、登記事項としても必要になるということです。

▽会社法641条1号・2号

(解散の事由)
第六百四十一条
 持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三~七 (略)

⑤の「資本金の額」は、合同会社においても、株式会社の場合と同様に登記事項とされています。

まとめて条文も確認してみます。

▽会社法914条1号~5号

 目的
 商号
 本店及び支店の所在場所
 合同会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
 資本金の額

6号~8号:会社の管理に関する事項

次に、会社の管理に関する事項として、以下の登記事項が挙げられます。

  1. 業務執行社員の氏名又は名称
  2. 代表社員の氏名又は名称及び住所
  3. (代表社員が法人である場合は)職務執行者

合同会社に特徴的なのは、合名会社や合資会社と異なり、「社員の氏名又は名称及び住所」は登記事項にはなっていない点です。これは、合同会社ではすべての社員が間接有限責任しか負わないことから、社員全員について登記により公示する必要はないと考えられているためです。

したがって、業務執行社員でない社員に変動が生じた場合であっても、変更登記は不要です(定款の変更は必要になりますが)。

条文も確認してみます。

▽会社法914条6号~8号

 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所

なお、合同会社は、

  • 定款で業務執行社員を定めていない場合は、社員全員業務執行社員となる(会社法590条1項)、
  • 定款又は定款に基づく社員の互選によって代表社員を定めていない場合は、業務執行社員全員代表社員となる(会社法599条1項・3項)、

という建付けになっているのですが、このことと登記のイメージがわきにくいので、いくつかの例で考えてみます。

社員A・B・C(いずれも自然人)がいて、定款に何の定めもしなかった場合Case1)は、A・B・C全員が業務執行社員で、A・B・C全員が代表社員となりますので、その旨の登記が必要になります。

社員A・B・C(いずれも自然人)がいて、定款によりA・Bを業務執行社員とした場合Case2)は、A・Bが業務執行社員で、A・Bともに代表社員となりますので、その旨の登記が必要になります。

社員A・B・C(いずれも自然人)がいて、定款によりA・Bを業務執行社員とし、かつ、定款又は定款に基づく互選によりAを代表社員とした場合Case3)は、A・Bが業務執行社員で、Aのみが代表社員となりますので、その旨の登記が必要になります。

職務執行者は、法人が業務執行社員となる場合に選任が義務づけられており(会社法598条1項)、法人が代表社員である場合には登記事項にもなっています(上記8号)。つまり、以下のようになります。

上記のCase3で、Aが法人だった場合、Aは代表社員なので、職務執行者の登記が必要になります。

上記のCase3で、Bが法人だった場合、Bは業務執行社員なので、職務執行者の登記は不要です。

なぜかというと、8号は法人が代表社員である場合に職務執行者を登記事項としており(「合同会社を代表する社員が法人であるとき」との文言))、法人が業務執行社員にとどまる場合は、職務執行者は登記事項になっていないためです。

上記のCase3で、Cが法人だった場合、Cは業務執行社員でない社員なので、そもそも職務執行者の選任が不要です(会社法598条1項)。

9号~11号:会社の公告に関する事項

最後に、会社の公告に関する事項として、以下の登記事項が挙げられます。

  1. (定款の定めがある場合は)公告方法についての定め
  2. (定款の定めがある場合で、それが電子公告を公告方法とする旨の定めであるときは)
    1. 電子公告を行うウェブサイトのURLアドレス
    2. (定款で定めている場合は)事故等のやむを得ない事由により電子公告ができない場合の予備的公告方法(官報公告又は新聞公告)についての定め
  3. (公告方法について定款の定めがない場合は)官報に掲載する方法を公告方法とする旨

条文も確認してみます。

▽会社法914条9号~11号(※【 】は管理人注)

 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
  電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
  第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定め【=やむを得ない事由により電子公告ができない場合の予備的公告方法】があるときは、その定め
十一 第九号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

会社公告の種類(①官報公告、②新聞公告、③電子公告)については、以下の関連記事にくわしく書いています。

変更登記(会社法915条)

登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店所在地において変更登記が必要になります。

▽会社法915条1項

(変更の登記)
第九百十五条
 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

なお、本店が法務局の管轄区域外に移転したときは(管轄外本店移転)、旧所在地と新所在地の2か所で登記申請が必要になります。

▽会社法916条4号

(他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記)
第九百十六条
 会社がその本店を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、二週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては次の各号に掲げる会社の区分に応じ当該各号に定める事項を登記しなければならない。
 合同会社 第九百十四条各号に掲げる事項

結び

今回は、合同会社法務ということで、合同会社の登記事項について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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