合同会社

合同会社法務|定款の記載事項

今回は、合同会社法務ということで、合同会社の定款の記載事項について見てみたいと思います。

合同会社を設立する際には、定款を作成し、会社の基本的な情報などを記載します。本記事では、合同会社の定款に記載すべき事項について、具体的な内容を分類ごとに解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

定款の記載事項

合同会社に限らず、一般に定款の記載事項には、

  • 絶対的記載事項
    定款に記載しなければならない事項(欠くと定款が無効)
  • 相対的記載事項
    定款に記載してもしなくてもよいが、定款に記載しないと有効にならない事項
  • 任意的記載事項
    定款に記載してもしなくてもよく、また定款以外に記載してもよい事項

という3つの分類があるとされています。

合同会社の定款作成については、以下の法務省HPに簡潔な説明があります。また、法務局HPにある、設立登記申請書の添付書類の記載例の中で、定款の記載例も見ることができます。

▽参考リンク
合同会社の設立手続について|法務省HP
合同会社設立登記申請書 記載例|法務局HP(≫掲載ページ

以下、順に見てみます。

合同会社の定款の絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことで、合同会社の場合、会社法576条1項に定められています。

合同会社における絶対的記載事項には、以下のような内容があります。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 社員の氏名又は名称及び住所
  • 社員全員が有限責任社員である旨
  • 社員の出資の目的(※合同会社は社員全員が有限責任社員であるため、金銭等に限られる)
     及び
    出資の価額又は評価の標準

①の「目的」は、会社の事業内容を記載します。

②の「商号」は、会社の名称を定めます。合同会社の場合、必ず「合同会社」という文字を含める必要があります(会社法6条2項)。

③の「本店の所在地」は、会社の主たる営業所の所在地・・・を記載します。「所在地」は最小行政区画である市町村(東京都においては区、政令指定都市は市)で足りると解されているため、具体的な住所まで定款に記載するか、地域(市町村名)だけにとどめるかは任意です。

④の「社員(の氏名又は名称及び住所)」は、従業員のことではなく、合同会社の構成員たる出資者のことです。自然人の社員の場合は氏名と住所、法人の社員の場合は名称と住所(本店の所在場所・・・・。会社法4条参照)になります。

なお、「所在地」と「所在場所」という用語は、いずれも会社の拠点に関するものですが、若干意味が異なります

「所在地」は、最小行政区画である市町村までの記載で足りると解されています(ex. 東京都千代田区 )。これに対し、「所在場所」は、会社の営業所の具体的な住所を示すものです(ex. 東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)

⑤の「社員全員が有限責任社員である旨」は、合同会社はすべての社員が有限責任社員であることが特徴ですので、その旨を記載します(会社法576条4項)。

⑥の「出資の目的」は、出資の対象のことです(purposeの意ではなく、subject matterの意)。条文に「(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)」との括弧書きがありますが、合同会社はすべての社員が有限責任社員ですので、必然的に「金銭等」(=金銭その他の財産。会社法151条1項)に限られます。

出資の価額又は評価の標準」は、金銭出資の場合はその金額を、現物出資の場合はその評価額を記載することになります。

これらの絶対的記載事項を欠くと、定款そのものが無効とされます。

▽会社法576条1項・4項

(定款の記載又は記録事項)
第五百七十六条
 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
 目的
 商号
 本店の所在地
 社員の氏名又は名称及び住所
 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
 (略)
 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

合同会社の定款の相対的記載事項

相対的記載事項は、定款に記載しなくても定款の効力に影響はありませんが、定款に記載することではじめて効力が生じる事項を指します。

▽会社法577条

第五百七十七条 前条に規定するもののほか、持分会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及び…(略)…を記載し、又は記録することができる。

合同会社の定款の相対的記載事項には、

  • 明文上の相対的記載事項
  • 解釈上の相対的記載事項

があります。

明文上の相対的記載事項のうち主なものをざっと見てみると、以下のようなものがあります(※他にもたくさんあります)。

会社法上の
位置づけ
項目会社法上の原則相対的記載事項
社員(第2章)社員の持分譲渡業務執行社員の持分譲渡
:他の社員全員の承諾(会585Ⅰ)
非業務執行社員の持分譲渡
:業務執行社員全員の承諾(会585Ⅱ)
定款で別段の定めが可能(会585Ⅳ)
管理(第3章)業務執行の決定原則
:社員の過半数(会590Ⅱ)
業務執行社員を定めた場合
:業務執行社員の過半数(会591Ⅰ)
定款で別段の定めが可能(会590Ⅱ、591Ⅰ)
競業禁止他の社員全員の承認を得ない限り競業禁止(会594Ⅰ)定款で別段の定めが可能(会594Ⅰ)
利益相反取引他の社員の過半数の承認を得ない限り利益相反取引制限(会595Ⅰ)定款で別段の定めが可能(会595Ⅰ)
代表社員全ての業務執行社員が代表権を有する(会599Ⅰ・Ⅱ)定款または定款の定めに基づく社員の互選により代表社員を定めることが可能(会599Ⅲ)
加入/退社(第4章)任意退社6か月前の予告により事業年度終了時に退社(会606Ⅰ)
※やむを得ない事由がある場合はいつでも(会606Ⅲ)
定款で別段の定めが可能(会606Ⅱ)
※やむを得ない事由がある場合はいつでも(会606Ⅲ)
相続・合併一般承継人は持分を承継しない(会608Ⅰ)一般承継人が持分を承継する旨を定款で定めることが可能(会608Ⅰ)
計算(第5章)利益配当/損益分配/払戻し利益の配当
:社員は利益配当請求できる(会621Ⅰ)
損益の分配
:社員の出資の価格に応じる(会622Ⅰ)
出資の払戻し
:出資の払戻しが請求できるのは定款変更による出資価額の減少の場合に限られる(会632Ⅰ)
利益の配当
:定款で請求方法などを定めることが可能(会621Ⅱ)
損益の分配
:定款で損益分配の割合を定めることが可能(会622Ⅰ)
出資の払戻し
:定款で請求方法などを定めることが可能(会624Ⅱ)
定款変更(第6章)定款変更総社員の同意(会637)定款で別段の定めが可能(会637)
解散(第7章)解散事由①総社員の同意、②社員が欠けたこと、③合併、④破産手続開始の決定、⑤解散を命ずる判決(会641Ⅲ~Ⅶ)定款で、①存続期間、②解散事由を定めることが可能(会641Ⅰ・Ⅱ)
雑則(第7編)公告方法定款で公告方法を定めていない場合→官報(会914XI)定款で、①官報、②日刊新聞紙、③電子公告のいずれかを公告方法として定めることが可能(会939Ⅰ)

例えば、上記のうち「損益の分配」の部分などは、損益分配の割合を出資割合に応じることなく自由に決めることができる、ということを意味します。

合同会社の定款の任意的記載事項

任意的記載事項は、法令で記載が義務づけられているわけではなく、会社の決まり事を任意で記載するものです。

任意的記載事項は、定款に記載することによって取扱いが明確になりますが、いったん定款に記載したからには、その変更には定款変更の手続が必要になることに留意が必要です。

▽会社法577条

第五百七十七条 前条に規定するもののほか、持分会社の定款には、…(略)…及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。

例えば、事業年度の扱い、業務執行社員の員数や報酬、社員総会の設置・運営()に関する事項といったものが考えられます。

)合同会社には社員総会はありませんが、定款で定めることはできるということです

結び

今回は、合同会社法務ということで、合同会社の定款事項について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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