労働法

労働法を勉強しよう|労働市場法ー職業紹介、労働者供給

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今回は、労働法を勉強しようということで、労働市場法のうち”労働者の需給”といわれる分野について書いてみたいと思う。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

労働者の需給に関する法規制

労働市場法のうち、職業紹介や労働者供給に関する法規制である。

労働市場においては求人側と求職側が何らかの形で結び付くわけだが(自力で結びつくor他者を介して結びつく)、そこに他者が介在する場合、あっせんの過程などに何の規制もなく介入できるとすると中間搾取等が行われるおそれがある。

そこで、職業安定法や労働者派遣法等により、職業紹介事業や労働者供給事業が規制されている。

職業紹介事業ー職業安定法

法の目的

正式名称も「職業安定法」(昭和二十二年法律第百四十一号)である。

職安法の目的は以下のとおりで、①公的機関が職業紹介事業を行うことと、②民間が行う職業紹介事業の適正な運営を確保すること、である。

(法律の目的)
第一条 この法律は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。


職業紹介というより、どちらかというと「人材紹介」といった方が、耳馴染みのあるカジュアルな言い方であるような気もする(普通、「人材紹介会社」っていいますし)。

全体の骨子は以下のような感じ。

✓公共の職業安定機関の行う職業紹介及び職業指導
✓地方公共団体の行う職業紹介
✓民間の行う職業紹介
 ┗有料の職業紹介事業
 ┗無料の職業紹介事業
✓労働者供給事業の原則禁止

厚労省のHPに解説、資料等が掲載されている。

▽職業紹介事業|労働者派遣事業・職業紹介事業等|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/index.html

以下、若干内容を見てみたいと思う。

職業紹介とは

「職業紹介」の定義は、職業安定法4条に定められている。

(定義)
第四条 この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。

職業紹介には、国の機関である公共職業安定所(ハローワーク)が行う公共職業紹介と、民間の職業紹介事業者が行うものがある。

民間の職業紹介事業

有料の職業紹介事業は許可制である。なお、無料の職業紹介事業も一部を除き許可制である。

(有料職業紹介事業の許可)
第三十条 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

(定義)
第四条
 この法律において「無料の職業紹介」とは、職業紹介に関し、いかなる名義でも、その手数料又は報酬を受けないで行う職業紹介をいう。
 この法律において「有料の職業紹介」とは、無料の職業紹介以外の職業紹介をいう。

求人側からの手数料については手数料表に基づくとされ、一方、求職側からの徴収は原則として禁止されている。

(手数料)
第三十二条の三 第三十条第一項の許可を受けた者(以下「有料職業紹介事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。
一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
二 あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合
 有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、同項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる。

労働者供給事業の禁止

また、職安法44条は、労働者供給事業を原則として禁止している。

(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

(労働者供給事業の許可)
第四十五条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

ただし、労働者派遣については労働者派遣法によるため、職安法でいう「労働者供給」からは定義上除外されている。

(定義)
第四条
 この法律において「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第二条第一号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。

「労働者供給事業」の意義(隣接概念との区別等)については、業務取扱要領の「第1 労働者供給事業の意義等」に細かい説明がある。

▽令和2年4月1日から適用される労働者供給事業業務取扱要領|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179552.html

労働者派遣事業ー労働者派遣法

法の目的

正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和六十年法律第八十八号)である。

法の目的は、以下のとおり、①職安法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため、労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずること、②派遣労働者の保護を図り、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること、である。

(目的)
第一条 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

耳馴染みのあるカジュアルな言い方をすれば、「人材派遣」である(普通、「人材派遣会社」っていいますし)。

全体の骨子は以下のような感じ。

✓労働者派遣事業の許可制
✓労働者派遣事業の業規制
✓派遣元・派遣先間の法律関係(労働者派遣契約
✓派遣元・派遣労働者間の法律関係(雇用契約ー派遣労働契約
✓派遣労働者・派遣先間の法律関係(指揮命令関係
✓紹介予定派遣

厚労省のHPに解説、資料等が掲載されている。

▽労働者派遣事業|労働者派遣事業・職業紹介事業等|厚労HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/index.html

労働者派遣とは

「労働者派遣」の定義は2条1号に定められている。①自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、②他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることで、③当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない、という3要件である。

第二条
 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

隣接概念(「業務処理請負」「在籍出向」「労働者供給」など)との区別については、業務取扱要領の「第1 労働者派遣事業の意義等」に細かい説明がある。

▽労働者派遣事業関係業務取扱要領|厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/index.html

適用対象業務

特定業務を除き労働者派遣を認める、というネガティブリスト方式となっている。

第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
一 港湾運送業務(以下略)
二 建設業務(以下略)
三 警備業法(以下略)

労働者派遣事業の許可制

労働者派遣事業を許可制としている。

(労働者派遣事業の許可)
第五条 労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

労働者派遣契約(派遣元ー派遣先の関係)

26条以下に定められている。労働者派遣契約の内容などにつき規制がある。

(契約の内容等)
第二十六条 労働者派遣契約(当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約する契約をいう。以下同じ。)の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。
一〜十 (略)

条文と見出しのみ一覧すると以下のような感じである。

✓ 第二十六条(契約の内容等)
✓ 第二十七条~第二十九条(契約の解除等)
✓ 第二十九条の二(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)

派遣元事業者の措置(派遣元ー派遣労働者の関係:派遣労働契約)

30条以下に定められている。

第二節 派遣元事業主の講ずべき措置等

(特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等)
第三十条 派遣元事業主は、…(略)…派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者であつて雇用の安定を図る必要性が高いと認められるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下この項において「特定有期雇用派遣労働者等」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次の各号の措置を講ずるように努めなければならない。
一~四 (略)

条文と見出しのみ一覧すると以下のような感じである。

✓ 第三十条(特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等)
✓ 第三十条の二(段階的かつ体系的な教育訓練等)
✓ 第三十条の三、第三十条の四(不合理な待遇の禁止等)
✓ 第三十条の五(職務の内容等を勘案した賃金の決定)
✓ 第三十条の六(就業規則の作成の手続)
✓ 第三十条の七(派遣労働者等の福祉の増進)
✓ 第三十一条(適正な派遣就業の確保)
✓ 第三十一条の二(待遇に関する事項等の説明)
✓ 第三十二条(派遣労働者であることの明示等)
✓ 第三十三条(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)
✓ 第三十四条(就業条件等の明示)
✓ 第三十四条の二(労働者派遣に関する料金の額の明示)
✓ 第三十五条(派遣先への通知)
✓ 第三十五条の二、第三十五条の三(労働者派遣の期間)
✓ 第三十五条の四(日雇労働者についての労働者派遣の禁止)
✓ 第三十五条の五(離職した労働者についての労働者派遣の禁止)
✓ 第三十六条(派遣元責任者)
✓ 第三十七条(派遣元管理台帳)
✓ 第三十八条(準用)

なお、労働関連法規の適用は原則として派遣元が責任主体である。

派遣先事業者の措置(派遣先ー派遣労働者の関係:指揮命令関係)

39条以下に定められている。

第三節 派遣先の講ずべき措置等

(労働者派遣契約に関する措置)
第三十九条 派遣先は、第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければならない

条文と見出しのみ一覧すると以下のような感じである。

✓ 第三十九条(労働者派遣契約に関する措置)
✓ 第四十条(適正な派遣就業の確保等)
✓ 第四十条の二、第四十条の三(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)
✓ 第四十条の四(特定有期雇用派遣労働者の雇用)
✓ 第四十条の五~第四十条の八(派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知)
✓ 第四十条の九(離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止)
✓ 第四十一条(派遣先責任者)
✓ 第四十二条(派遣先管理台帳)
✓ 第四十三条(準用)

紹介予定派遣

「紹介予定派遣」の定義は、2条4号に定められている。要するに、労働者派遣とともに職業紹介を行う(又は行うことを予定する)ものである。

 紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(第三章第四節を除き、以下「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。

労働者派遣法上の規制については特則がある。業務取扱要領の関連部分を参考までに引用する。

▽労働者派遣事業関係業務取扱要領(第1の4)

4 紹介予定派遣

(2) 紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第 26 条第6項)。

(3) 紹介予定派遣については、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として設けられたものであり、具体的には次の①から③までの措置を行うことができるものである。
① 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等
② 派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示
③ 派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定

(4) 紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先は次の措置等を講じなければならない
① 労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第5の2の(1)イ(ハ)の⑩参照)
② 紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守(第6の 25 の(1)及び第7の 17 の(1)参照)
③ 派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示(第6の25 の(2)及び第7の 17 の(2)参照)
④ 派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置(第7の 17 の(3)参照)
⑤ 派遣労働者であることの明示等(第6の 11 の参照)
⑥ 就業条件等の明示(第6の 13 の(3)のイの⑩参照)
⑦ 派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第6の 20 の(1)のホの⑬参照)
⑧ 派遣先管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第7の 12 の(2)のハの⑬参照)

なお、紹介予定派遣の期間について法令上の制限はないが、派遣元指針(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」)により、6か月を超えないこととされている(同様のものが派遣先指針にもある)。

▽派遣元指針(第2の15の(1))

15 紹介予定派遣
(1) 紹介予定派遣を受け入れる期間
 派遣元事業主は、紹介予定派遣を行うに当たっては、6箇月を超えて、同一の派遣労働者の労働者派遣を行わないこと

違反行為に対する措置

違反行為に対する措置としては、指導・助言(48条)、改善命令、停止命令(49条)、勧告・公表(49条の2)などがある。

(指導及び助言等)
第四十八条 厚生労働大臣は、この法律(第三章第四節の規定を除く。第四十九条の三第一項、第五十条及び第五十一条第一項において同じ。)の施行に関し必要があると認めるときは、労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、労働者派遣事業の適正な運営又は適正な派遣就業を確保するために必要な指導及び助言をすることができる。

(改善命令等)
第四十九条 厚生労働大臣は、派遣元事業主が当該労働者派遣事業に関しこの法律…(略)…に違反した場合において、適正な派遣就業を確保するため必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、派遣労働者に係る雇用管理の方法の改善その他当該労働者派遣事業の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
 厚生労働大臣は、派遣先が第四条第三項の規定に違反している場合において、同項の規定に違反している派遣就業を継続させることが著しく不適当であると認めるときは、当該派遣先に労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該派遣就業に係る労働者派遣契約による労働者派遣の停止を命ずることができる。

(公表等)
第四十九条の二 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、…(略)…に違反しているとき、又はこれらの規定に違反して第四十八条第一項の規定による指導若しくは助言を受けたにもかかわらずなおこれらの規定に違反するおそれがあると認めるときは、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、…(略)…の規定に違反する派遣就業を是正するために必要な措置又は当該派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
 厚生労働大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

結び

労働者の需給に関する法規制のうち、職業紹介、労働者供給については以上になります。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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