非正規雇用等

間接雇用等の類型|労働者派遣と労働者派遣法

今回は、間接雇用等の類型ということで、労働者派遣とこれを規制する労働者派遣法について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

労働者派遣と労働者派遣法

労働市場においては求人側と求職側が何らかの形で結び付くわけですが(自力で結びつくor他者を介して結びつく)、そこに他者が介在する場合、あっせんの過程などに何の規制もなく介入できるとすると中間搾取等が行われるおそれがあります。

そこで、職業安定法や労働者派遣法等により、職業紹介事業、労働者供給や労働者派遣事業が規制されています(労働力の需給に関する法規制)。

本記事はこのうち労働者派遣にスポットを当てています

労働者派遣とは

労働者派遣」の定義は、法2条1号に定められており、

  • 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、
  • 他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることであり、
  • 当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない

という3要件となっています。

▽労働者派遣法2条1号

(用語の意義)
第二条
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

図にすると、以下のとおりです。

労働者派遣

        労働者派遣契約
派遣元】— — — — — — — — — — —【派遣先
     \             /
 雇用関係  \         / 指揮命令関係
         \     /
          【労働者

隣接概念(「業務処理請負」「在籍出向」「労働者供給」など)との区別については、業務取扱要領の「第1 労働者派遣事業の意義等」にくわしい説明があります。

参考リンク

労働者派遣法

法の目的

労働者派遣法の正式名称は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)です。

法の目的は以下のとおりで、

①職安法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため、労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに
派遣労働者の保護等を図り
 ↓ もって
派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること

となっています。

▽労働者派遣法1条

(目的)
第一条
 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

労働者派遣というより、どちらかというと「人材派遣」といった方が、耳馴染みのあるカジュアルな言い方かもしれません(普通、”人材紹介会社”といいますので)。

全体の骨子は、

  • 労働者派遣事業の許可制
  • 労働者派遣事業の業規制
  • 派遣元・派遣先間の法律関係(労働者派遣契約
  • 派遣元・派遣労働者間の法律関係(雇用契約-派遣労働契約
  • 派遣労働者・派遣先間の法律関係(指揮命令関係
  • 紹介予定派遣

という感じです。

労働者派遣事業については、厚労省HPに解説や資料等が掲載されています。

適用対象業務

適用対象業務は、特定業務を除き労働者派遣を認めるというネガティブリスト方式となっています。

▽労働者派遣法4条1項

第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない
 港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)
 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節並びに第二十三条第二項、第四項及び第五項において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務

労働者派遣事業の許可制

労働者派遣事業は許可制となっています。

▽労働者派遣法5条1項

(労働者派遣事業の許可)
第五条
 労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

労働者派遣契約(派遣元-派遣先の関係)

労働者派遣契約については、法26条以下に定められており、

  • 法26条(契約の内容等)
  • 法27条~法29条(契約の解除等)
  • 法29条の2(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)

のようになっています。労働者派遣契約の内容などにつき規制があります。

▽労働者派遣法26条1項

(契約の内容等)
第二十六条
 労働者派遣契約(当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約する契約をいう。以下同じ。)の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。
 派遣労働者が従事する業務の内容
 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所並びに組織単位(労働者の配置の区分であつて、配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が当該労働者の業務の配分に関して直接の権限を有するものとして厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)
 労働者派遣の役務の提供を受ける者のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
 安全及び衛生に関する事項
 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項
 派遣労働者の新たな就業の機会の確保、派遣労働者に対する休業手当(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第二十六条の規定により使用者が支払うべき手当をいう。第二十九条の二において同じ。)等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担に関する措置その他の労働者派遣契約の解除に当たつて講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合にあつては、当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項
 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

派遣元事業者の措置(派遣元-派遣労働者の関係:派遣労働契約)

派遣元事業者の措置については、法30条以下に定められており、

  • 法30条(特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等)
  • 法30条の2(段階的かつ体系的な教育訓練等)
  • 法30条の3、法30条の4(不合理な待遇の禁止等)
  • 法30条の5(職務の内容等を勘案した賃金の決定)
  • 法30条の6(就業規則の作成の手続)
  • 法30条の7(派遣労働者等の福祉の増進)
  • 法31条(適正な派遣就業の確保)
  • 法31条の2(待遇に関する事項等の説明)
  • 法32条(派遣労働者であることの明示等)
  • 法33条(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)
  • 法34条(就業条件等の明示)
  • 法34条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示)
  • 法35条(派遣先への通知)
  • 法35条の2、法35条の3(労働者派遣の期間)
  • 法35条の4(日雇労働者についての労働者派遣の禁止)
  • 法35条の5(離職した労働者についての労働者派遣の禁止)
  • 法36条(派遣元責任者)
  • 法37条(派遣元管理台帳)
  • 法38条(準用)

のようになっています。

なお、労働関連法規の適用は、原則として派遣元が責任主体です。

▽労働者派遣法30条1項

(特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等)
第三十条
 派遣元事業主は、その雇用する有期雇用派遣労働者(期間を定めて雇用される派遣労働者をいう。以下同じ。)であつて派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して一年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下「特定有期雇用派遣労働者」という。)その他雇用の安定を図る必要性が高いと認められる者として厚生労働省令で定めるもの又は派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者であつて雇用の安定を図る必要性が高いと認められるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下この項において「特定有期雇用派遣労働者等」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次の各号の措置を講ずるように努めなければならない
 派遣先に対し、特定有期雇用派遣労働者に対して労働契約の申込みをすることを求めること。
 派遣労働者として就業させることができるように就業(その条件が、特定有期雇用派遣労働者等の能力、経験その他厚生労働省令で定める事項に照らして合理的なものに限る。)の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。
 派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。
 前三号に掲げるもののほか、特定有期雇用派遣労働者等を対象とした教育訓練であつて雇用の安定に特に資すると認められるものとして厚生労働省令で定めるものその他の雇用の安定を図るために必要な措置として厚生労働省令で定めるものを講ずること。

派遣先事業者の措置(派遣先-派遣労働者の関係:指揮命令関係)

派遣先事業者の措置については、法39条以下に定められており、

  • 法39条(労働者派遣契約に関する措置)
  • 法40条(適正な派遣就業の確保等)
  • 法40条の2、法40条の3(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)
  • 法40条の4(特定有期雇用派遣労働者の雇用)
  • 法40条の5~法40条の8(派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知)
  • 法40条の9(離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止)
  • 法41条(派遣先責任者)
  • 法42条(派遣先管理台帳)
  • 法43条(準用)

のようになっています。

▽労働者派遣法39条

(労働者派遣契約に関する措置)
第三十九条
 派遣先は、第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければならない

紹介予定派遣

紹介予定派遣」の定義は、法2条4号に定められています。

要するに、労働者派遣とともに職業紹介を行う(又は行うことを予定する)ものになります。

▽労働者派遣法2条4号

 紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(第三章第四節を除き、以下「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。

労働者派遣法上の規制については特則があります。業務取扱要領の関連部分を参考までに引用すると、以下のとおりです。

▽労働者派遣事業関係業務取扱要領 第1-4

4 紹介予定派遣

⑵ 紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第 26 条第6項)。

⑶ 紹介予定派遣については、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として設けられたものであり、具体的には次の①から③までの措置を行うことができるものである。
① 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等
② 派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示
③ 派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定

⑷ 紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先は次の措置等を講じなければならない
① 労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第5の2の(1)イ(ハ)の⑩参照)
② 紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守(第6の 25 の(1)及び第7の 17 の(1)参照)
③ 派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示(第6の25 の(2)及び第7の 17 の(2)参照)
④ 派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置(第7の 17 の(3)参照)
⑤ 派遣労働者であることの明示等(第6の 11 の参照)
⑥ 就業条件等の明示(第6の 13 の(3)のイの⑩参照)
⑦ 派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第6の 20 の(1)のホの⑬参照)
⑧ 派遣先管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第7の 12 の(2)のハの⑬参照)

なお、紹介予定派遣の期間について法令上の制限はありませんが、派遣元指針(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」)により、6か月を超えないこととされています(※同様のものが派遣先指針にもあります)。

▽派遣元指針 第2-15-⑴

15 紹介予定派遣
⑴ 紹介予定派遣を受け入れる期間
 派遣元事業主は、紹介予定派遣を行うに当たっては、6箇月を超えて、同一の派遣労働者の労働者派遣を行わないこと

違反行為に対する措置

違反行為に対する措置としては、

  • 指導・助言(法48条)
  • 改善命令、停止命令(法49条)
  • 勧告・公表(法49条の2)

などがあります。

▽労働者派遣法48条1項

(指導及び助言等)
第四十八条
 厚生労働大臣は、この法律(第三章第四節の規定を除く。第四十九条の三第一項、第五十条及び第五十一条第一項において同じ。)の施行に関し必要があると認めるときは、労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、労働者派遣事業の適正な運営又は適正な派遣就業を確保するために必要な指導及び助言をすることができる

▽労働者派遣法49条

(改善命令等)
第四十九条
 厚生労働大臣は、派遣元事業主が当該労働者派遣事業に関しこの法律(第二十三条第三項、第二十三条の二及び第三十条第二項の規定により読み替えて適用する同条第一項の規定を除く。)その他労働に関する法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)に違反した場合において、適正な派遣就業を確保するため必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、派遣労働者に係る雇用管理の方法の改善その他当該労働者派遣事業の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる
 厚生労働大臣は、派遣先が第四条第三項の規定に違反している場合において、同項の規定に違反している派遣就業を継続させることが著しく不適当であると認めるときは、当該派遣先に労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該派遣就業に係る労働者派遣契約による労働者派遣の停止を命ずることができる

▽労働者派遣法49条の2

(公表等)
第四十九条の二
 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、第四条第三項、第二十四条の二、第二十六条第七項若しくは第十項、第四十条第二項若しくは第三項、第四十条の二第一項、第四項若しくは第五項、第四十条の三若しくは第四十条の九第一項の規定に違反しているとき、又はこれらの規定に違反して第四十八条第一項の規定による指導若しくは助言を受けたにもかかわらずなおこれらの規定に違反するおそれがあると認めるときは、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、第四条第三項、第二十四条の二、第二十六条第七項若しくは第十項、第四十条第二項若しくは第三項、第四十条の二第一項、第四項若しくは第五項、第四十条の三若しくは第四十条の九第一項の規定に違反する派遣就業を是正するために必要な措置又は当該派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる
 厚生労働大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる

結び

今回は、間接雇用等の類型ということで、労働者派遣と労働者派遣法について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考文献

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