個人情報

個人情報保護法を勉強しよう|要配慮個人情報とは

著作者:senivpetro/出典:Freepik

今回は、個人情報保護法を勉強しようということで、要配慮個人情報の定義について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

要配慮個人情報とは

要配慮個人情報とは、本人に不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要する個人情報である(法2条3項)。

個人情報と別括りの概念というわけではなく、あくまでも個人情報の一種である(個人情報のなかでも、内容の機微性から配慮を要するもの、というイメージ)。

(定義)
第二条
 
 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

要配慮個人情報というネーミングからもわかるとおり、通常の個人情報よりも厳格な義務の対象となっており、その範囲を把握しておくことが必要になる。

要配慮個人情報の範囲

要配慮個人情報の範囲は、法2条3項、施行令2条、施行規則5条によって明確に定められている。

全部で11項目あり、定めている規定と合わせて整理してみると、以下の表のようになる。

要配慮個人情報の範囲 法2条3項の文言 施行令2条 施行規則5条
①人種 「人種」  
②信条 「信条」  
③社会的身分 「社会的身分」  
④病歴 「病歴」  
➄犯罪の経歴 「犯罪の経歴」  
⑥犯罪により害を被った事実 「犯罪により害を被った事実」  
⑦心身の機能の障害 「その他…政令で定める記述等」 1号
⑧健康診断等の結果 2号  
⑨医師等の指導、診療、調剤 3号  
⑩刑事事件に関する手続 4号  
⑪少年の保護事件に関する手続 5号  

以下、順に見てみる。

人種(法2条3項)

人種とは、人種、世系又は民族的若しくは種族的出身を広く意味する。

単純な国籍や「外国人」という情報は法的地位であり、それだけでは人種には含まない。また、肌の色は、人種を推知させる情報にすぎないため、人種には含まない(通則ガイドライン2-3)。

信条(法2条3項)

信条とは、個人の基本的なものの見方、考え方を意味する。思想と信仰の双方を含む(通則ガイドライン2-3)。

社会的身分(法2条3項)

社会的身分とは、ある個人にその境遇として固着していて、一生の間、自らの力によって容易にそれから脱し得ないような地位を意味する。単なる職業的地位や学歴は含まない(通則ガイドライン2-3)。

病歴(法2条3項)

病歴とは、病気に罹患した経歴を意味するもので、特定の病歴を示した部分(例えば、特定の個人ががんに罹患している、統合失調症を患っている等)が該当する(通則ガイドライン2-3)。

犯罪の経歴(法2条3項)

犯罪の経歴とは、前科を意味する。すなわち、有罪の判決を受けこれが確定した事実が該当する(通則ガイドライン2-3)。

犯罪により害を被った事実(法2条3項)

犯罪により害を被った事実とは、身体的被害、精神的被害及び金銭的被害の別を問わず、犯罪の被害を受けた事実を意味する。

具体的には、刑罰法令に規定される構成要件に該当し得る行為のうち、刑事事件に関する手続に着手されたものが該当する(通則ガイドライン2-3)。

心身の機能の障害(法2条3項→施行令2条1号→施行規則5条)

心身の機能の障害は、施行令2条1号に規定されており、具体的には、

  • 身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害
  • 知的障害者福祉法にいう知的障害
  • 精神保健福祉法にいう精神障害(発達障害者支援法2条1項に規定する発達障害を含み、②にあるものを除く)
  • 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者総合支援法4条1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの

があることを特定させる情報、とされている(施行規則5条、通則ガイドライン2-3)。

▽施行令2条1号

(要配慮個人情報)
第二条
 法第二条第三項の政令で定める記述等は、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く。)とする。
 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。

▽施行規則5条

(要配慮個人情報)
第五条
 令第二条第一号の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害は、次に掲げる障害とする。
 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)別表に掲げる身体上の障害
 知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)にいう知的障害
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)にいう精神障害(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第一項に規定する発達障害を含み、前号に掲げるものを除く。)
 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第四条第一項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの

それぞれの具体例としては、以下のとおりである(通則ガイドライン2-3)。

心身の機能の障害具体例
①身体上の障害・医師又は身体障害者更生相談所により、別表に掲げる身体上の障害があることを診断又は判定されたこと(別表上の障害の名称や程度に関する情報を含む)
・都道府県知事、指定都市の長又は中核市の長から身体障害者手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(別表上の障害の名称や程度に関する情報を含む)
本人の外見上明らかに別表に掲げる身体上の障害があること
②知的障害・医師、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、障害者職業センターにより、知的障害があると診断又は判定されたこと(障害の程度に関する情報を含む)
・都道府県知事又は指定都市の長から療育手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(障害の程度に関する情報を含む)
③精神障害(発達障害を含み、②を除く)・医師又は精神保健福祉センターにより精神障害や発達障害があると診断又は判定されたこと(障害の程度に関する情報を含む)
・都道府県知事又は指定都市の長から精神障害者保健福祉手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(障害の程度に関する情報を含む)
④治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者総合支援法4条1項の政令で定めるもの・医師により、厚生労働大臣が定める特殊の疾病による障害により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けていると診断されたこと(疾病の名称や程度に関する情報を含む)

また、これらの障害があること又は過去にあったことを特定させる情報(例えば、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを受けていること又は過去に受けていたこと)も該当する(通則ガイドライン2-3)。

健康診断等の結果(法2条3項→施行令2条2号)

 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果

健康診断等の結果には、疾病の予防や早期発見を目的として行われた健康診査、健康診断、特定健康診査、健康測定、ストレスチェック、遺伝子検査(診療の過程で行われたものを除く)等、受診者本人の健康状態が判明する検査の結果が該当する。なお、健康診断等を受診したという事実は該当しない。

法律に定められた健康診査の結果等に限定されるものではなく、人間ドックなど保険者や事業主が任意で実施又は助成する検査の結果も該当する。

さらに、医療機関を介さないで行われた遺伝子検査により得られた本人の遺伝型とその遺伝型の疾患へのかかりやすさに該当する結果等も含まれる(通則ガイドライン2-3)。

▽ガイドラインQ&A1-29

 消費者直販型遺伝子検査の結果(いわゆる DTC 遺伝子検査の結果)は、要配慮個人情報に該当しますか。

 消費者直販型遺伝子検査の結果(いわゆる DTC(direct to consumer)遺伝子検査の結果)は、当該検査が施行令第2条第2号に規定する「医師その他医療に関連する職務に従事する者」(医師等)により行われ、かつ、疾病の予防及び早期発見のために行われたものである場合には、要配慮個人情報に該当します。

医師等の指導、診療、調剤(法2条3項→施行令2条3号)

 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと

ここでいう医師等の「指導が行われたこと」とは、健康診断等の結果、特に健康の保持に努める必要がある者に対し、医師又は保健師が行う保健指導等の内容をいう。法律に定められた保健指導の内容に限定されるものではなく、保険者や事業主が任意で実施又は助成により受診した保健指導の内容も該当する。

ここでいう医師等の「診療が行われたこと」とは、病院、診療所、その他の医療を提供する施設において診療の過程で、患者の身体の状況、病状、治療状況等について、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者が知り得た情報全てをいう(ex.診療記録)。

ここでいう医師等の「調剤が行われたこと」とは、病院、診療所、薬局、その他の医療を提供する施設において調剤の過程患者の身体の状況、病状、治療状況等について、薬剤師(医師又は歯科医師が自己の処方箋により自ら調剤する場合を含む)が知り得た情報全てをいう(ex.調剤録、薬剤服用歴、お薬手帳に記載された情報)。

また、指導、診療、調剤を受けたという事実そのものも、各々の文言に該当する(通則ガイドライン2-3)。

刑事事件に関する手続(法2条3項→施行令2条4号)

 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。

刑事事件に関する手続には、本人を被疑者又は被告人として刑事事件に関する手続が行われたという事実が該当する。

確定した有罪判決(つまり前科)は前述の「犯罪の経歴」に該当するが、それ以外に被疑者・被告人として受けた刑事手続全てが含まれるので、逮捕や不起訴処分、無罪判決なども該当する。

▽ガイドラインQ&A1-34

 不起訴処分となった場合は、「刑事事件に関する手続」として要配慮個人情報に該当しますか。

 施行令で定める「刑事事件に関する手続」の範囲には、被疑者又は被告人の立場で刑事事件に関して刑事訴訟法に基づく一切の手続を受けた事実を含んでおり、具体的には、刑事訴訟法に基づく逮捕捜索差押え勾留公訴の提起のほか、不起訴不送致微罪処分等も該当します。

▽ガイドラインQ&A1-33

 無罪判決を受けた事実は、要配慮個人情報に該当しますか。

 無罪判決を受けた事実は、それまで犯罪の嫌疑を受けて逮捕取調べ勾留公訴提起等をされたことを示すため、本人を被疑者又は被告人として刑事事件に関する手続を受けた場合に含まれ、要配慮個人情報に該当します。

さらに、外国政府による刑事事件に関する手続を受けた事実も該当する。

▽ガイドラインQ&A1-32

 外国政府により刑事事件に関する手続を受けた事実は、要配慮個人情報に該当しますか。

 外国政府により、本人を被疑者又は被告人として刑事手続が行われた事実は、施行令第2条第4号に該当し、要配慮個人情報に該当します。

他方、他人を被疑者とする犯罪捜査のために取調べを受けた事実や、証人として尋問を受けた事実に関する情報は、本人を被疑者又は被告人としていないことから、これには該当しない(通則ガイドライン2-3)。

また、犯罪行為の映像は、それのみでは刑事事件に関する手続が行われたことに当たらないので、該当しない。

▽ガイドラインQ&A1-31

 ある人の犯罪行為を撮影した防犯カメラ映像は、要配慮個人情報に該当しますか。

 単に防犯カメラの映像等で、犯罪行為が疑われる映像が映ったのみでは、犯罪の経歴にも刑事事件に関する手続が行われたことにも当たらないため、要配慮個人情報に該当しません。

少年の保護事件に関する手続(法2条3項→施行令2条5号)

 本人を少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第三条第一項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。

少年の保護事件に関する手続には、本人を非行少年又はその疑いのある者として、保護処分等の少年の保護事件に関する手続が行われたという事実が該当する。

日々のニュースで見る言葉遣いでいうと、いわゆる少年事件のことです。正式には、少年保護事件と呼ばれています。

推知させる情報

これらの情報を推知させる情報にすぎないもの(例えば、「信条」に関し、宗教に関する書籍の購買や貸出しに係る情報等)は、要配慮個人情報には含まない(通則ガイドライン2-3)。

▽ガイドラインQ&A1-27

 「○△教に関する本を購入した」という購買履歴の情報や、特定の政党が発行する新聞や機関誌等を購読しているという情報は、要配慮個人情報に該当しますか。

 当該情報だけでは、それが個人的な信条であるのか、単に情報の収集や教養を目的としたものであるのか判断することが困難であり、「信条」を推知させる情報にすぎないため、当該情報のみでは要配慮個人情報には該当しないと解されます。

機微情報(センシティブ情報)との違い

なお、イメージの似た言葉として、機微情報とかセンシティブ情報という言葉があるが、個人情報保護関連法令のなかでは、要配慮個人情報とは意味が異なる。

特定分野ガイドラインのひとつである金融ガイドライン(「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」)5条では、機微情報(センシティブ情報)について、要配慮個人情報に加えて・・・・労働組合への加盟門地本籍地保健医療及び性生活に関する情報を含むものと定義したうえで、一定の場合を除いて、取得、利用又は第三者提供を行わないこととしている。

▽金融ガイドライン5条1項

第5条 機微(センシティブ)情報
1 金融分野における個人情報取扱事業者は、法第2条第3項に定める要配慮個人情報並びに労働組合への加盟門地本籍地保健医療及び性生活(これらのうち要配慮個人情報に該当するものを除く。)に関する情報(本人、国の機関、地方公共団体、学術研究機関等、法第57条第1項各号に掲げる者若しくは施行規則第6条各号に掲げる者により公開されているもの、又は、本人を目視し、若しくは撮影することにより取得するその外形上明らかなものを除く。以下「機微(センシティブ)情報」という。)については、次に掲げる場合を除くほか、取得、利用又は第三者提供を行わないこととする。…(略)…

取得自体に厳格な制限があるというのは、一定の認められた場合を除き持っているだけでアウトということを意味するため、基本的にはそもそも持つなという感覚です(本籍地などが金融庁検査で引っかかる)。

結び

今回は、個人情報保護法を勉強しようということで、要配慮個人情報の定義について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考文献・主要法令等

参考文献

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主要法令等

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  • 個人情報保護法(「個人情報の保護に関する法律」)
  • 個人情報保護法施行令(「個人情報の保護に関する法律施行令」)
  • 個人情報保護法施行規則(「個人情報の保護に関する法律施行規則」)
  • 通則ガイドライン(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)
  • 外国提供ガイドライン(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」)
  • 確認・記録ガイドライン(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」)
  • ガイドラインQ&A(「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」)
  • 令和3年パブコメ(令和3年8月2日付「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編、外国にある第三者への提供編、第三者提供時の確認・記録義務編及び匿名加工情報編)の一部を改正する告示』等に関する意見募集の結果について」)
【特定分野ガイドライン】

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