金融商品取引法

金融商品取引法|「適格機関投資家」の定義・分類および法体系上の役割について解説

2025年8月28日

今回は、金融商品取引法ということで、適格機関投資家について見てみたいと思います。

本記事では、金融商品取引法および関連法令に基づく定義、具体的な範囲、法体系上の役割などについて解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

本記事の条文(金商法)は、令和8年8月12日施行版を基準にしています

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




適格機関投資家の概要と根拠法令

適格機関投資家とは、有価証券に対する投資に関する専門的知識および経験を有するプロの投資家を指します。

金融商品取引法上の根拠条文

適格機関投資家の定義は、法2条3項1号に規定されています。

同号では、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者」と定義されています。

▽金商法2条3項1号(抄)

一 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、…

定義府令における詳細規定

1号の委任を受け、定義府令(「金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令」)の10条が、具体的な範囲や要件を定めています。

適格機関投資家の分類

定義府令10条1項により、適格機関投資家は、大きく以下の2つの類型に分かれています。

01|属性により当然に該当する者(届出不要)

その事業の性質や適用される規制体系から、当然に高い投資能力を有するとみなされる事業者や機関です。

主な例としては、

  • 第一種金融商品取引業者(有価証券関連業を行う者に限る)および投資運用業者
  • 投資法人および外国投資法人
  • 銀行、保険会社、外国保険会社
  • 信託会社(管理型信託会社を除く)
  • 投資事業有限責任組合(LPS)
  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、株式会社日本政策投資銀行などの公的・政府系金融機関

などがあります。

▽定義府令10条1項

(適格機関投資家の範囲)
第十条
 法第二条第三項第一号に規定する内閣府令で定める者は、次に掲げる者とする。ただし、第十五号に掲げる者以外の者については金融庁長官が指定する者を除き、同号に掲げる者については金融庁長官が指定する者に限る。

02|金融庁長官への届出により該当する者(届出を要する者)

一定の要件を満たした上で、自ら金融庁長官(内閣総理大臣)へ届出を行うことで適格機関投資家となることができる事業者や個人です。

主な例は、以下のとおりです。

  • 有価証券残高が10億円以上の法人(23号イ)
    概要:直近の日において保有する有価証券の残高が10億円以上である法人
  • 有価証券残高が10億円以上であり、金融商品取引業者等に口座を開設してから1年以上を経過している個人(24号イ)
    概要:直近の日における保有有価証券の残高が10億円以上であり、かつ金融商品取引業者等に口座を開設した日から1年を経過している個人
  • 組合等の契約に係る有価証券残高が10億円以上で、全組合員の同意を得た業務執行組合員等(法人は23号ロ、個人は24号ロ)
    概要:組合契約等に係る出資対象事業により業務執行組合員等として保有する有価証券の残高が10億円以上であり、かつ全組合員の同意を得ている者
  • 資本金等が一定額以上の外国金融事業者(第一種金融商品取引業・投資運用業・銀行業・保険業・信託業等を営む外国法人)(25号)
    概要:外国の法令に準拠して外国において業を行う法人であり、業種に応じた資本金等の額(第一種金融商品取引業:5,000万円以上、投資運用業:5,000万円以上、銀行業:20億円以上、保険業:10億円以上、管理型以外の信託業:1億円以上)を満たす者
  • 純資産額が100億円以上の厚生年金基金、企業年金基金(日本の年金基金は19号、外国の年金基金は27号)
    概要:最近事業年度の財務計算に関する書類において、所定の計算による残高または純資産額が100億円以上である年金基金等
  • 金融庁長官に届出を行った信用協同組合や資本金5億円以上のベンチャーキャピタル会社(信用協同組合は9号、VCは17号)
    概要:VCは、関連業務を行う旨が定款において定められ、届出時の資本金の額が5億円以上である株式会社

届出手続と有効期間

届出により適格機関投資家となる区分については、以下の手続および運用ルールが定められています。

  • 届出方式:所定事項を記載した書面を金融庁長官へ提出します。届出は随時行うことが可能です。
  • 有効期間:届出が行われた日の翌々月の初日から2年間となります。
  • 公示:届出を行った者の名称、住所、適格機関投資家に該当する期間などは官報および金融庁ウェブサイトにおいて公表されます。

参考リンク

▽定義府令10条3項・6項・9項

3 第一項第九号、第十七号、第十九号又は第二十一号から第二十七号までの規定により当該各号に掲げる者として金融庁長官に届出を行おうとする者(以下この条において「届出者」という。)は、次の各号に掲げる届出者の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載した書面により、その旨を金融庁長官に届け出なければならない。

6 第三項の規定により届出を行った場合の適格機関投資家に該当することとなる期間は、当該届出が行われた月の翌々月の初日から二年を経過する日までとする。

9 金融庁長官は、第三項の規定により届出が行われたときは、当該届出が行われた月の翌々月の初日までに、当該届出を行った者の商号、名称又は氏名、本店若しくは主たる事務所の所在地又は住所、適格機関投資家に該当する期間(第六項に規定する期間をいう。)及び当該届出を行った者が第一項第二十三号ロ又は第二十四号ロに該当するものとして届出を行った者である場合にはその旨を官報に公告しなければならない。

金融商品取引法における役割と位置付け

適格機関投資家は、金融商品取引法上の各規制領域において重要な役割を果たしています。

① 発行開示規制における役割(プロ私募)

有価証券の新規発行において、勧誘の相手方が適格機関投資家のみであり、かつ一般投資家に譲渡されるおそれが少ない要件(転売制限)を満たす場合、適格機関投資家向け勧誘(プロ私募)に該当し、有価証券届出書の提出等の発行開示義務が免除されます(法2条3項2号イ)。

② ファンド規制における役割(適格機関投資家等特例業務)

ファンド(集団投資スキーム)の自己募集および自己運用において、出資者に適格機関投資家が1名以上含まれ、一般投資家が49名以下である等の要件を満たす場合、適格機関投資家等特例業務(法63条)として、登録ではなく事前届出による業務運用が可能となります。

③ 行為規制における役割(特定投資家制度)

金融商品取引業者等の行為規制においては、適格機関投資家は自動的に特定投資家(プロ投資家)に分類されます(法2条31項1号)。

適格機関投資家は、特定投資家のうち「一般投資家に移行できない(アマ成りできない)特定投資家」として位置付けられています(法34条の2第1項)。

結び

今回は、金融商品取引法における適格機関投資家について見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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編集:山下 友信, 編集:神田 秀樹

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