金融商品取引法

金融商品取引法|「私募」の定義と分類について解説~プロ私募・特定投資家私募・少人数私募など

2025年9月4日

今回は、金融商品取引法ということで、「私募」の概念について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

本記事の条文(金商法)は、令和8年8月12日施行版を基準にしています

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




私募の基本定義

金商法において、有価証券の私募とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(取得勧誘)であって、「有価証券の募集」に該当しないものと定義されています。

定義を定めているのは法2条3項柱書で、「この法律において『有価証券の募集』とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘…のうち、…に該当するものをいい、『有価証券の私募』とは、取得勧誘であって有価証券の募集に該当しないものをいう」とされています。

▽金商法2条3項

3 この法律において、「有価証券の募集」とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(これに類するものとして内閣府令で定めるもの(次項において「取得勧誘類似行為」という。)を含む。以下「取得勧誘」という。)のうち、当該取得勧誘が第一項各号に掲げる有価証券又は前項の規定により有価証券とみなされる有価証券表示権利、特定電子記録債権若しくは同項各号に掲げる権利(電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示される場合(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)に限る。以下「電子記録移転権利」という。)(次項及び第六項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第一項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第一号及び第二号に掲げる場合、当該取得勧誘が前項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(電子記録移転権利を除く。次項、第二条の三第四項及び第五項並びに第二十三条の十三第四項において「第二項有価証券」という。)に係るものである場合にあつては第三号に掲げる場合に該当するものをいい、「有価証券の私募」とは、取得勧誘であつて有価証券の募集に該当しないものをいう。

対象となる有価証券が第一項有価証券(株券、社債券、新株予約権証券など)であるか、第二項有価証券(集団投資スキーム持分、信託受益権などのみなし有価証券)であるかによって、「募集」と「私募」の区別基準が大きく分かれます。

第一項有価証券における私募の分類と要件

株式や社債などの第一項有価証券(法2条1項各号に掲げる有価証券等)の場合、原則として50名以上の者を相手方として行う取得勧誘は、多人数向け取得勧誘として「募集」に該当します(法2条3項1号、令1条の5)。

▽金商法2条3項1号

一 多数の者(適格機関投資家(有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者をいう。以下同じ。)が含まれる場合であつて、当該有価証券がその取得者である適格機関投資家から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)を相手方として行う場合として政令で定める場合(特定投資家のみを相手方とする場合を除く。)

▽施行令1条の5

(勧誘の相手方が多数である場合)
第一条の五
 法第二条第三項第一号に規定する多数の者を相手方として行う場合として政令で定める場合は、五十名以上の者を相手方として有価証券の取得勧誘を行う場合とする。

他方、勧誘対象者が50名未満である場合やプロ投資家を対象とする場合で、一定の転売制限要件等を満たすものが、「私募」に該当します(法2条3項2号)。

第一項有価証券の私募は、以下の3つ(同号イ~ハ)に分類されます。

01|プロ私募(適格機関投資家向け勧誘)

プロ私募の要件は、取得勧誘の相手方が適格機関投資家のみであり、かつ当該有価証券が適格機関投資家以外の者(一般投資家)に譲渡されるおそれが少ないこと(譲渡制限契約の締結等)です。

▽法2条3項2号イ

イ 適格機関投資家のみを相手方として行う場合であつて、当該有価証券がその取得者から適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

▽施行令1条の4

(取得勧誘において適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ない場合)
第一条の四
 法第二条第三項第一号に規定する譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合並びに同項第二号イ及び法第二条の三第四項第二号イに規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ、当該各号に定める場合とする。

専門的知識・経験を有するプロのみを対象とするため、勧誘対象者の人数制限がないのが特徴です。また、50名以上の多人数向け勧誘を行う場合でも、転売制限を満たす適格機関投資家は人数計算(50名)から除外可能です(法2条3項1号かっこ書)。

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02|特定投資家私募(特定投資家向け取得勧誘)

特定投資家私募の要件は、①取得勧誘の相手方が特定投資家(プロ向け市場の参加者等)のみであり、②金融商品取引業者等に委託して(または金商業者自身が)行い、特定投資家等以外の者に譲渡されるおそれが少ないことです。

プロ向け市場(TOKYO PRO Market等)での流通を前提とした私募形態であるのが特徴です。

▽法2条3項2号ロ

ロ 特定投資家のみを相手方として行う場合であつて、次に掲げる要件の全てに該当するとき(イに掲げる場合を除く。)。
(1) 当該取得勧誘の相手方が国、日本銀行及び適格機関投資家以外の者である場合にあつては、金融商品取引業者等(第三十四条に規定する金融商品取引業者等をいう。次項、第四条第一項第四号及び第三項、第二十七条の三十二の二並びに第二十七条の三十四の二において同じ。)が顧客からの委託により又は自己のために当該取得勧誘を行うこと。
(2) 当該有価証券がその取得者から特定投資家等(特定投資家又は非居住者(外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号に規定する非居住者をいい、政令で定める者に限る。)をいう。以下同じ。)以外の者に譲渡されるおそれが少ないものとして政令で定める場合に該当すること。

▽施行令1条の5の2

(取得勧誘において特定投資家等以外の者に譲渡されるおそれが少ない場合等)
第一条の五の二
 法第二条第三項第二号ロ(2)に規定する政令で定める者は、次のいずれかに該当する者とする。

2 法第二条第三項第二号ロ(2)に規定する政令で定める場合は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ、当該各号に定める場合とする。

【ポイント】プロ向け市場(TOKYO PRO Market等)との関係

 特定投資家私募は、主に特定投資家等のみが取引に参加するプロ向け市場(TOKYO PRO Marketなど)で流通する有価証券の発行・取得勧誘で活用されます。

 発行開示(有価証券届出書の提出等)は免除される一方、発行者は、投資者に対して、特定証券情報や発行者情報を提供・公表する義務を負います(法27条の31、27条の32)。

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03|少人数私募(少人数向け勧誘)

少人数私募の要件は、取得勧誘の相手方が50名未満(49名以下)であり、かつ多数の者に譲渡(転売)されるおそれが少ないことです。

ただし、過去6か月以内に発行された「同一種類」の有価証券の少人数私募における勧誘対象者数を合算し、合計50名以上となる場合は、少人数私募とは認められず、「募集」となります(6か月通算ルール。施行令1条の6)。

また、上場株式などの継続開示会社が発行する株券等は、流通性が高く転売防止が困難であるため少人数私募は認められず、勧誘対象者が50名未満であっても、「募集」(開示が必要)となります(対象制限。施行令1条の7第2号イ)。

▽法2条3項2号ハ

ハ 前号に掲げる場合並びにイ及びロに掲げる場合以外の場合(当該有価証券と種類を同じくする有価証券の発行及び勧誘の状況等を勘案して政令で定める要件に該当する場合を除く。)であつて、当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないものとして政令で定める場合

▽施行令1条の6

(取得勧誘が少人数向け勧誘に該当しないための要件)
第一条の六
 法第二条第三項第二号ハに規定する政令で定める要件は、当該有価証券の発行される日以前三月以内に、当該有価証券と同一種類の有価証券として内閣府令で定める他の有価証券(その発行の際にその取得勧誘が同号イに掲げる場合及び第二条の十二に規定する場合に該当するものであつた有価証券並びにその発行の際にその取得勧誘が有価証券の募集に該当し、かつ、当該有価証券の募集に関し法第四条第一項の規定による届出又は法第二十三条の八第一項(法第二十七条において準用する場合を含む。)に規定する発行登録追補書類の提出が行われた有価証券を除く。以下この条において「同種の新規発行証券」という。)が発行されており、当該有価証券の取得勧誘を行う相手方(当該有価証券の取得勧誘を行う相手方が適格機関投資家であつて、当該有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数と当該三月以内に発行された同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方(当該同種の新規発行証券の取得勧誘を行つた相手方が適格機関投資家であつて、当該同種の新規発行証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該適格機関投資家を除く。)の人数との合計が五十名以上となることとする。

▽施行令1条の7

(取得勧誘において少人数向け勧誘に該当する場合)
第一条の七
 法第二条第三項第二号ハに規定する政令で定める場合は、次に掲げる要件の全てに該当する場合とする。
一 当該取得勧誘が特定投資家(法第二条第三十一項に規定する特定投資家をいう。以下同じ。)のみを相手方とし、かつ、五十名以上の者(当該者が適格機関投資家であつて、当該取得勧誘に係る有価証券が第一条の四に定める場合に該当するときは、当該者を除く。)を相手方として行う場合でないこと。
二 次のイからハまでに掲げる有価証券の区分に応じ、当該イからハまでに定める要件に該当すること。

第二項有価証券における私募の要件

ファンド持分(集団投資スキーム持分)や信託受益権などの第二項有価証券(法2条2項各号に掲げるみなし有価証券)においては、勧誘相手方の人数ではなく、取得勧誘に応じることにより当該有価証券を所有することとなる者の人数を基準として判定します(法2条3項3号、令1条の7の2)。

区分の基準は、

  • 募集:取得勧誘に応じることにより500名以上の者が所有することとなる場合
  • 私募:取得勧誘に応じることにより所有することとなる者が499名以下である場合

です。

▽金商法2条3項3号

三 その取得勧誘に応じることにより相当程度多数の者が当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる場合として政令で定める場合

▽施行令1条の7の2

(取得勧誘により相当程度多数の者が所有する場合)
第一条の七の二
 法第二条第三項第三号に規定する政令で定める場合は、その取得勧誘に係る有価証券を五百名以上の者が所有することとなる取得勧誘を行う場合とする。

第二項有価証券の私募では、第一項有価証券で求められる「プロ私募」「少人数私募」の区分や「6か月通算ルール」、法令上の「転売制限要件」は直接的には課されません。

私募における手続上の義務と効果

私募に該当することによって生じる法的な効果と、遵守すべき手続は、以下のようになっています。

有価証券届出書の提出義務免除

有価証券の発行(公募・募集)に際しては原則として内閣総理大臣への有価証券届出書の提出が義務付けられますが(法4条1項本文)、私募に該当する場合はこの発行開示義務が免除されます。

相手方に対する告知義務および書面交付義務

発行開示が免除される反面、投資者保護の観点から、私募による勧誘を行う者は、勧誘相手方に対して以下の事項を告知し、書面を交付(電磁的方法を含む)しなければなりません(法23条の13)。

告知事項

  • 当該有価証券について有価証券届出書による届出が行われていない旨
  • 譲渡・転売に関して付された制限の内容等

▽金商法23条の13第1項・第2項:※適格機関投資家向け勧誘の部分

(適格機関投資家向け勧誘の告知等)
第二十三条の十三
 有価証券発行勧誘等又は有価証券交付勧誘等のうち、次の各号に掲げる場合に該当するもの(第二号に掲げる場合にあつては第二条第三項第一号の規定により多数の者から除かれる適格機関投資家を相手方とするものに限り、第四号に掲げる場合にあつては同条第四項第一号の規定により多数の者から除かれる適格機関投資家を相手方とするものに限る。以下この条において「適格機関投資家向け勧誘」という。)を行う者は、当該適格機関投資家向け勧誘が当該各号に掲げる場合のいずれかに該当することにより当該適格機関投資家向け勧誘に関し第四条第一項の規定による届出が行われていないことその他の内閣府令で定める事項を、その相手方に対して告知しなければならない。ただし、当該適格機関投資家向け勧誘に係る有価証券に関して開示が行われている場合及び発行価額又は譲渡価額の総額が一億円未満の適格機関投資家向け勧誘で内閣府令で定める場合に該当するときは、この限りでない。

2 前項本文の規定の適用を受ける適格機関投資家向け勧誘を行う者は、当該適格機関投資家向け勧誘により有価証券を取得させ、又は売り付ける場合には、あらかじめ又は同時にその相手方に対し、同項の規定により告知すべき事項を記載した書面を交付しなければならない。

補足:売出し・私売出しとの概念上の区別

「募集」および「私募」は、新たに発行される有価証券(自己株式の処分を含む)の取得勧誘を対象とする概念です。

これに対し、既に発行された有価証券を二次流通市場等で売却・勧誘する場合は、「有価証券の売出し」(法2条4項)または「私売出し(プロ私売出し・少人数私売出し等)」として区別して整理されます。

結び

今回は、金融商品取引法における私募の概念について見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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編集:山下 友信, 編集:神田 秀樹

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