今回は、金融商品取引法ということで、特定投資家について見てみたいと思います。
本記事では、適格機関投資家との違いや、法令上の位置付けについて解説します。金商法における「特定投資家私募」などを理解するうえでも必要な前提知識になります。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
特定投資家とは何か
特定投資家とは、知識・経験・財産の状況から、金融取引に関するリスク管理を自ら行い得るプロの投資家として金商法上位置付けられている者を指します。
特定投資家の定義(金商法上の根拠条文)
特定投資家の定義は、法2条31項に規定されています。同項では、以下の者が特定投資家として定められています。
- 適格機関投資家(金商法第2条第31項第1号)
- 国(同項第2号)
- 日本銀行(同項第3号)
- 内閣府令で定める法人(同項第4号)
上記4号の委任を受けた内閣府令は、定義府令(「金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令」)23条です。
▽金商法2条31項
31 この法律において「特定投資家」とは、次に掲げる者をいう。
一 適格機関投資家
二 国
三 日本銀行
四 前三号に掲げるもののほか、第七十九条の二十一に規定する投資者保護基金その他の内閣府令で定める法人
▽定義府令23条
(特定投資家の範囲)
第二十三条 法第二条第三十一項第四号に規定する内閣府令で定める法人は、次に掲げるものとする。
一 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
二 法第七十九条の二十一に規定する投資者保護基金
三 預金保険機構
四 農水産業協同組合貯金保険機構
五 保険業法第二百五十九条に規定する保険契約者保護機構
六 特定目的会社
七 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
八 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が五億円以上であると見込まれる株式会社
九 金融商品取引業者、法第六十三条第五項に規定する特例業務届出者又は法第六十三条の九第四項に規定する海外投資家等特例業務届出者である法人
十 外国法人
特定投資家制度(プロ・アマ区分)の趣旨
金商法では、金融商品取引業者等の行為規制(適合性の原則、契約締結前交付書面の交付義務など)において、投資家を特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)に区分しています。
取引相手が特定投資家である場合には、情報格差の是正を目的とする各種の行為規制の適用が除外されます(法45条)。
特定投資家の分類(プロ・アマ制度の4類型)
金商法上の投資家区分は固定的なものではなく、一定の範囲で選択による区分の移行(プロ成り・アマ成り)が認められています。
これにより、投資家は以下の4つの類型に分かれます。
01|一般投資家に移行できない特定投資家(絶対的プロ)
法令上、常に特定投資家として扱われ、一般投資家への移行(アマ成り)が認められない区分です(法2条31項1号〜3号、34条の2第1項かっこ書反対解釈)。
対象者は、①適格機関投資家、②国、③日本銀行です。
▽金商法34条の2第1項
(特定投資家が特定投資家以外の顧客とみなされる場合)
第三十四条の二 特定投資家(第二条第三十一項第四号に掲げる者に限る。)は、金融商品取引業者等に対し、契約の種類ごとに、当該契約の種類に属する金融商品取引契約に関して自己を特定投資家以外の顧客として取り扱うよう申し出ることができる。
02|申出により一般投資家に移行できる特定投資家(アマ成り可能なプロ)
原則として特定投資家ですが、金融商品取引業者等への申し出により一般投資家に移行することが可能な区分です(法2条31項4号→定義府令23条、34条の2第1項)。
対象者(主な法人)は、
- 地方公共団体(定義府令23条1号)
- 特殊法人・独立行政法人(同条2号)
- 資産流動化法上の特定目的会社(TMK)(同条7号)
- 上場会社(同条8号)
- 資本金の額が5億円以上と見込まれる株式会社(同条9号)
- 金融商品取引業者または特例業務届出者である法人(同条10号)
- 外国法人(同条11号)
などです。
03|申出により特定投資家に移行できる一般投資家(プロ成り可能なアマ)
原則として一般投資家ですが、手続と同意を経て、特定投資家に移行することが可能な区分です。
対象者は、
- 特定投資家以外の法人全般(法34条の3第1項)
- 一定の要件を満たす個人(法34条の4第1項):
- 匿名組合の営業者や民法組合・LLPの業務執行組合員等である個人(出資合計額3億円以上かつ全組合員同意)(金商業等府令61条)
- 純資産3億円以上、金融資産3億円以上、かつ取引経験1年以上を満たす個人(金商業等府令62条)
です。
▽金商法34条の3第1項
(特定投資家以外の顧客である法人が特定投資家とみなされる場合)
第三十四条の三 法人(特定投資家を除く。)は、金融商品取引業者等に対し、契約の種類ごとに、当該契約の種類に属する金融商品取引契約に関して自己を特定投資家として取り扱うよう申し出ることができる。
▽金商法34条の4第1項
(特定投資家以外の顧客である個人が特定投資家とみなされる場合)
第三十四条の四 次に掲げる個人(適格機関投資家を除く。)は、金融商品取引業者等に対し、契約の種類ごとに、当該契約の種類に属する金融商品取引契約に関して自己を特定投資家として取り扱うよう申し出ることができる。
一 商法第五百三十五条に規定する匿名組合契約を締結した営業者である個人(内閣府令で定めるものを除く。)その他これに類するものとして内閣府令で定める個人
二 前号に掲げるもののほか、その知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に相当する者として内閣府令で定める要件に該当する個人
04|特定投資家に移行できない一般投資家
上記3の要件を満たさない個人投資家です(法34条の4第1項の反対解釈)。特定投資家への移行は認められず、常に一般投資家として保護を受けます。
「特定投資家私募」における特定投資家の範囲と役割
第一項有価証券(株式や社債等)の取得勧誘において、相手方が特定投資家のみであり、転売制限要件等を満たす場合を、特定投資家向け取得勧誘(特定投資家私募)と呼びます。
対象となる特定投資家の範囲
特定投資家私募における勧誘対象者としての「特定投資家」には、上記類型のうち、①絶対的特定投資家、②アマ成り可能な特定投資家に加え、③手続により特定投資家に移行した法人および個人が含まれます。
プロ向け市場(TOKYO PRO Market等)との関係
特定投資家私募は、主に特定投資家等のみが取引に参加するプロ向け市場(TOKYO PRO Marketなど)で流通する有価証券の発行・取得勧誘で活用されます。
発行開示(有価証券届出書の提出等)は免除される一方、発行者は投資者に対して、特定証券情報や発行者情報を提供・公表する義務を負います(法27条の31、27条の32)。
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結び
今回は、金融商品取引法における特定投資家について見てみました。
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