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【転職後の話】業界によるバックオフィスのまとまり具合の違い

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管理人は何回か転職しているが、いくつか会社にいくと、なんかバックオフィスがバラバラだな、と思うことがある。

大ざっぱな傾向をいうと、保守的(コンサバ)な業界の企業ほどまとまりがよく、新しい業界の企業ほどまとまりが悪い、という感じがする。
(注:しょせん自分の経験なのでサンプルが少ないことを前置きしつつ…(汗))

なんでこうなるんだろう、とか、どうすればいいんだろう、ということを考えてみた。

バックオフィスのまとまり具合の違い

保守的な企業は、働かないおじさんが相当数生息しており、どう見ても個体の能力は、新しい業界の企業の方が(平均的に)高い。そのようにしか見えない。

…のだが、新しい業界の企業は、組織化の知恵に乏しいというか、各個バラバラに動いているため、集団の動きとして見たときは、本来持っているポテンシャルの60%ぐらいに押しとどめられたまま業務をしているように見えることがある(←個人の見解です)。

個体は知識経験アリでエッジの効いた人も多いのに、まとまりがなく、あっちいったりこっちいったりして、ちょっと前に進むのに異様なエネルギーを消費する。ミーティングやスケジュールが不在ということではない。それらはちゃんとしている(むしろちゃんとしすぎぐらい)。なのに、前に進まない(リスケ頻繁)。

まとめ役(司令塔的な人)の不在なのか、以下でいうところの「仕事の仕方」みたいな部分が馴染んでないのか、それぞれの個体がそもそも個人プレーを好む性格なのか、何なのかわからないが…。

一方、保守的な企業は、憤りすら感じるようなおじさんが相当数生息していて、かつ、それが普通のことになっているので、個体の能力が高いとはお世辞にもいえない。そういえば、みんないる職場の席で、ネットニュースを見ながらパチパチ爪を切っているような人もいた(家か?)。

そして、基本的に責任者が当該部分の専門知識も有していないので、ほぼ何もわかっていないことも珍しくない。コンプライアンスの責任者から「ちょっと教えてほしいんだけど、犯罪収益移転防止法って何?」と聞かれたときは、アゴが外れそうになったことがある。

どう見ても、それぞれの分野の個体の力としてみたときは乏しさしか感じないのに、しかし、不思議なことに、ちゃんと期限までに段取りをして、一元管理しやすいスケジュールをつくって、節目で必要な全体ミーティングをして、かなり厳しいスケジュールを強いられたりすることがあっても、スケジュールを修正しながら前に進み、そして…終わってみれば、なぜかちゃんと着地すべきところに着地してクローズするのだ。

これは不思議なことだ(管理人にとっては)。なんか、専門知識はないけど、「仕事の仕方は知ってる」みたいな感じ。

もちろん、タネ明かしをすれば、何とかなるのは若手と外注先の使い方が上手いからだ。そして方針が統一されているからだ。それがマネジメント(に専念する)ということだよ、と自分を諭してくれる方もいるかもしれないが、限度があると思うし、そこまで単純な話ではないのでは、と個人的には思っている(今でも)。

なお、働かないおじさん、とか、よくないことばかり書いたが、保守組織(かつ巨大組織)には、それ以外に、超強力な「スーパーキーマン」も超少数ながら存在する。その人たちは本当にすごい。ちなみに、その点はバックオフィスでもフロントでも技術部門でも同じだ。

だから、保守的な巨大組織というのは、そういうスーパーキーマンたちはきちんと一定数確保しつつ、そこで組織体としての動きを議論・決定しながら、あとのおじさんたちは虚ろな目をしながらただただそれに従う、という構造で動いてきたのかもしれない。まあ軍隊的発想でいえば、組織化の方法としては合理的なのかもしれない。

ちょっと話が逸れた。バックオフィスのまとまりの話だった。

バックオフィスを3極でまとめる

なんでなんだろうな…とモヤモヤと考えてみたりするのだけど、バックオフィスをまとめるにあたって、個人的に、こういう「極」で理解すればうまく全体を回せるのでは、と思うものがある。

それは「IT」と「会計」と「法律」の3極による理解である。
それぞれの分野に、それぞれの専門性と経験をもったトップをおき、そのトップスリーがタッグを組む、そういうイメージ。

なお、これは、人事とか労務とかIRとか財務とか経理とか投資とか経企とか、それぞれの部門にリーダー(部付部長的なポジション)がいることは前提で、かつこれらをまとめる元締めとして3極があった方がいいのではないか、という話です。この元締め的役割を果たせる極がいないと(執行役員でも取締役でもあるいはそれ以外でも何でもいいんですが)、部ごとにバラバラに動きがちというか、非常にバックオフィスの全体的なまとまりが悪い、ような気がする。

逆に、この3極がそれぞれの領域をまとめ、かつこの3極の意思疎通のレベルが高ければ、バックオフィス全体のまとまりがよくなり、前線たるフロントを力強くサポートできる、ような気がする。

ただ、それには、それぞれ隣接分野に一定の理解がないといけないと思う。

✓ 法律トップは、ITリテラシーが高く会計知識もないといけない
✓ ITトップは、法律と会計について一定の知識がないといけない
✓ 会計トップは、ITリテラシーが高く法律知識もないといけない

という風に。

この3極がそれぞれの領域をお互いに理解しながら進めていけると、理想的だと思う。

領域というのは、もう少し詳しくいうと、こういう感じ。

「法律」領域→総務・法務・人事労務の領域
「会計」領域→経理・財務・IRの領域
「IT」領域→IT領域(文字どおり)

なお、人事労務について、「採用・育成等は総務法務と一括りにされるような領域ではない!ナメんな!」というお叱りも聞こえてきそうだが、4極となると据わりが悪いし(数が多い)、やはり総務・法務との親和性は高い(そもそも労務部分は労働法の話だし)と思うので、ここに含ませていただいた。

また、総務と法務の親和性については、両者は成り立ち的に兄弟みたいなもの(正確には親子)だという記事を書いたことがある。

▽参考記事

法務部ってどんなことをしている?|法務部の仕事内容と成り立ち

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実際はどうか?

しかし、実際は、CFOがバックオフィスの元締めとして3極を1人でやっていることも多いのではと思う。バックオフィス全般の経験豊富なスペシャリストとして。

これは、生え抜きだけではなく、比較的新しい業界で、そういった組織化の知恵に乏しいことを認識した企業が、保守的企業のいい部分(組織化の知恵)を吸収しようとして外部から招聘するといったケースもあるのではないかと思う。

が、ITや総務法務は、本来はCFOの専門領域外のはずで、その人にとっても過大な負担になっており、またそれゆえに非効率な仕組み・体制を敷いてしまっていることに気付いていない場合もある(というかたぶん多い)のでは?と思う。

なおそのことに気付ける人間はいない。仮に気付けるとすれば、立ち位置的にそのCFOしかいないが、そのCFOが気付いていない場合、だからだ。

もちろんケースバイケースなので、たとえば、公認会計士の先生であったりすれば、企業法もやっているし、法分野の実務知識もそのへんの弁護士よりも深いだろうから(ローファームやブティック型事務所の弁護士を除けば)、総務法務を兼任しても何の問題もないのかもしれない。

だから、3極体制といっても、物理的に3人が必要というよりは、本質的な要素が3極あって(IT、会計、法律)、この3極をいま自社に居るトップ層人材で綺麗に覆うことができているかどうかを見る、といった方が適切なのかもしれない。

CFOがいて一見全部をカバーしてくれているように感じる体制もあると思うけれど、冷静に考えると実はそうでもない場合、覆えていない極に、新しい人を招聘する必要があるのではないかと思ったりする。

言い換えると、ウチはCFOにバッチリやってもらってますという態度が、本当は覆えていない部分があることを結果として隠してしまっている場合があるように感じるのである。

インハウスローヤーの立ち位置

で、また別の話になりますが、上記のなかの総務法務労務の立ち位置、ここがインハウスのゆくゆくの立ち位置ではないかと思うのです(ほんまかどうか知らんけど、ってやつですが)。

JILA(日本組織内弁護士協会)の、どうやったら取締役になれるか、ジェネラルカウンセルになれるか、そして増やせるか、というポジショントークは、管理人は興味を持てなかったけど、実際、機能的にどこの立ち位置がハマるかという話をしたときは、ここなのではと思う。

そして、この立ち位置に弁護士が就く場合、総務や労務までカバーしてできる人である(あるはなる)必要があると思う。また、カバーできるなら当然、弁護士である必要もないですが。

結び

以上はもちろん管理人独自の理想論、空想論です(汗)。

実際には難しいと思います。現実にはそんな殊勝な心がけでかつ経験も深い人を3人も集めるのはほぼ不可能ですし。

また、そもそも言っていることがおかしいとか、この人は何を言っているんだろうという感想もあると思いますが、その場合はご放念ください。

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