インハウスローヤー

インハウスと訴訟管理

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今回は、インハウスと訴訟管理について書いてみたいと思います(管理人の個人的意見)。

管理人の経験

以前にこんな記事を書いたことがありました(訴訟管理があまり面白くなかった、という話)。

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紛争モノがほとんどない業界や会社もあるし、状況はさまざまだと思いますが、インハウスで訴訟管理などの紛争対応するときは、皆さまは(特に自身も外部弁護士として活動歴ある人は)どういう気持ちでやっているのだろう?と思うことがあったりする。

私見

いろんな意見、というかたぶん反対の意見の方が多いと思うけれど、個人的には、インハウスローヤーの本来の役割は訴訟管理とかの紛争対応の方ではないと思う派です。まあ、自分の個人的な嗜好の問題かもしれませんけども。

インハウスローヤーが訴訟管理をするのは、個人的には、立ち位置的にひどく中途半端だなと思っている。自分が準備書面を書くわけではないし、外部弁護士は良いときも悪いときもあるし。わりとイライラすることが多い気がする。

会社内部の事情や専門領域の経験則に当該事業部の人ほど詳しいかといえばそれは実際のところかなり難しいし(ここはご批判もあるでしょうけど)、外部弁護士のように自由に立ち回ることも難しい。打ち合わせのときも、両方の中間みたいな感じだから、はたして本当に必要なのかどうかという気持ちが常にある(対応せざるをえないときは)。

もちろん、弁護士だから訴訟管理をやって欲しい、というシンプルな発想はわかる。そこに合理性がないとはいわない。一般的にも、インハウスローヤーの訴訟対応における役割としては、①その法的な知識を活かして的確に内部から事情・資料を拾い上げていくこと、そして外部に渡すこと、②逆に外部からの専門的な助言や宿題を噛み砕いて内部にフィードバックすること、だと言われているし、それは一般論としてもっともであることは否定しない。

しかし実際のところ、いないと本当にうまく回らないかというとそうでもない気がする。弁護士でない普通の事業部門の人でも、メールもわかりやすく、理解力も早く、外部弁護士と折衝するにあたって特に不都合は何もない人もいる。また多少不都合があっても、それを外部弁護士がフォローする部分もある(それは自分が外部弁護士の立場から対応するときも同じはずで、その感覚はわかるはず)。

そうするとやたら時間がとられる割に、そこにインハウスが介在する価値がわざわざあるのかというのは、個人的な肌感覚としてはひどく疑問に感じざるを得ないのです。外部弁護士にお金を払って対応しているのに、さらに内部の法務マンパワーをそんなに使う必要ありますかという。

以前、とある大学のインハウスに、「えーそうなんですか?訴訟がうまく行くかどうかなんて、頼んだ弁護士次第でしょう。うちはもう極力任せてますよ(サバサバ)」みたいに仰っている人がいた。個人的には、こちらの方が合理的な人材配分だと思う。

結局訴訟追行がうまくいくかどうかは、直接それを遂行している外部弁護士の腕次第というところがあるので(もちろん事件自体の筋もありますが)、多少内部から補正しようとしたところではっきりって限界がある、というのが個人的な感覚。

なので個人的にはインハウスの方としてやるべき事は、良い弁護士を探すこと・選ぶことと、あまりにもひどい人に当たってしまったときに多少のフォローをすることだと思う。

特に、ベテランの弁護士に頼んだのに、1年生2年生位のイソ弁に丸投げされてる感じになったときは、非常にだるい(なお、期が若くてもすごい人はすごいので、厳密にいえば期の問題ではないです)。どんなに直してもあんまりよくならない。それは何故かというと、率直に言って1stドラフトの出来が悪いから。。根本的な枠や流れが1stドラフトで設定されているので、ディティールをがんばって直したところで、全体的なドラフトの印象はあんまり変わらない。なのにやたら時間だけは取られる。自分は複数社経験したが、どの会社でも同じことが起こる(紛争数の多寡は違うけれど)。

こういったことからわかるところのインハウスの果たすべき役割というのは、訴訟管理といった紛争対応の方にはないのだと思う。少なくともメイン(=インハウスでないとできないこと)としては。インハウスがメインとして担うべき役割は外科手術ではなく内科の方なのではないかと思うのです。

なんというか、このような言葉はないんだけれども、「行政法律官」というか、一種の官僚的な立ち回りというか、訟務検事みたいなベクトルの方ではなくて法務省で働く検察官みたいな感じになるべき、というか。

外部弁護士は外科医インハウスは内科医、という風に、明確に役割を分けて認識した方が、人の使い方として合理的で効率的だと思う。ちなみにこの感覚をもった組織または上長に管理人はまだ会ったことがない。

こういう感覚が将来的に共有されるかどうかはわからないし(管理人の独断と偏見、あるいはカン違い?)、万が一共有されるとしても、相当先のことになるとは思う。今のところは「弁護士だったらちょっとトラブルあったんだけども対応担当お願いよ」というわかりやすい思考でお鉢が回ってくる場合がほとんど(多くの実態)なのではないかと思う。

もちろん、紛争対応しないという極論ではなくて、インハウスのメインは仕組み作りの方で、紛争対応の出来は基本的には外部弁護士の腕によるところが大きいので、そこにかかっているんですよ、という認識が広がるといいなと思っているという意味です。

結び

個人的には上記の大学のインハウスの人が言っていたような意見が、マンパワーの適切な使い方だと思う。インハウスは事業のスキーム作りとか、契約と取引の円滑な流れ作りとか、コンプライアンスとかガバナンスとかの、仕組み作りの方をメインに注力するべきでなのではないかと。

紛争処理の法的な側面は、直接執刀する外科医であるところの外部弁護士の選定の時点で8・9割決まる(ドラフトのほか、その弁護士による適切な発問も含めて)のであって、そこに内部の弁護士を重ねてもマンパワーの消費に見合うほど大きなインパクトはない、という認識が共感されていけばいいなあと。

異論ももちろんあると思うけれど、上記の大学インハウスの方のような価値観のところも実際あるようだし、こちらの価値観の方が個人的には正しいと思う次第。(まあ、インハウスだからどうこうというより、法務だから訴訟担当対応が回ってきてるだけなんじゃないの?というご批判もわかりますが。)

[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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