数年間インハウスをやらせていただいたので,振り返ってみた感想などを書いていきたいと思います。
さて昔何かの記事で,”法務部のあるような企業の社員は弁護士を見る目があるから,弁護士は,顧問をする際には心してかからねばならない”というような内容の文章を見たことがある。
が,自分が入ってみて,そうでもないのでは…と思った。
そうでもないというと少し言い過ぎかもだが,半分当たりで,半分はずれだと思う。
というのは,法務部の人間であっても,顧問先の弁護士がやっている訴訟活動なりドラフトチェックなりの法的な活動が,それぞれ専門的に高い水準にあるのか低い水準にあるのかといったことは,必ずしもわかっていないからである(たとえば,準備書面の良し悪しやら,契約書ドラフトの良し悪しがわかるわけではない)。
上記の文章は,”法務部のあるような企業では,法務部員の専門性も高く,厳しく見られるから心してかかれ”といったニュアンスだったのだが,法務部のあるような企業だからといって,必ずしも専門性が高くて,絶対評価で弁護士を見る目があるというわけではない。
というより,はっきりいってしまえば,絶対評価で見る目というのは(ごく一部の人を除けば)持っていない。
ただ,それでも確かに,長い期間おつきあいしている顧問先には,弁護士(←私や同僚のインハウス)からみても,とてもよい先生だと思える人が多かった。
それはなぜか?
それは,法務部員の彼らは絶対評価はできないが,相対評価で見ているからである。つまり,何人かの先生を比べた場合に,A先生とB先生のどちらがよいのか,というのはわかり(この先生は動きがいいとか,こっちの先生は金ばかりとるとか,なんとなくこっちの先生よりこっちの先生がいいよねというような),おそらくそれは,弁護士の目から見てもだいたい当たっている。つまり比較はかなり正確にできるのである。
その結果、長い時間をかけると,いい先生が残っていくのである。
これは入るまで気づかなかったが,自分は妙に納得した。
もちろん、絶対評価ベースで可能な企業もあるだろうとは思うので(なかには法律事務所と見まごうほどの凄まじい陣容をそろえているような会社もあるので)、上記はあくまで一例である。ただ,多くの法務部は,あくまで総務部の延長線,という感覚で動いているところが多いのではないかと思う(当然かもしれないが)。
法務部にきたからといって,法的な専門性を高めるようなトレーニングは部内ではされていなかったし(OJTと言えば聞こえはいいが,実際のところはただの無為である),謎の人事異動で”何でおれが法務部やねん”という感覚の人もいた。
ちなみに,長い時間をかけていい先生が残っていく,と書いたが,先生の干され方というのは,突然クビを宣告されるわけではなく,だんだんと事件を振らなくなっていって、徐々に干していくのである。
自信満々の先生で、「俺は頼りにされている!」と思っていらっしゃる感じの人であっても、中では相当イジられているというか,ネタにすらなっている場合もあるので、注意が必要である。最近あそこからなんにも依頼ないなーとおもっていたら、それは干されているのかもしれない。
自分もそうならないように気をつけねば(汗)。