子どもの権利

箇条整理シリーズ|いじめ防止対策推進法

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実務や理論を箇条書きで整理する,「箇条整理」シリーズ。

今回は,いじめ防止対策推進法について。

触れる機会があったので、ほんの触りだけだが整理しておきたいと思う。

「いじめ」の定義

①児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、

②当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの

(法2条1項)

いじめの上記定義は極めて広いものになっている。

反復性、継続性、顕著性、重大性、一方性、などなど、範囲に絞りをかける要素はいくつか考えられると思うが、いずれも入っていない。

これは、いじめの有無が疑われる場合の学校側の対処として「今回の件は~だから、いじめには該当しない」という形での反論がなされ、解決を阻むことが多かったからとのこと。

規範の名宛人

規範の名宛人としては、学校、学校の設置者、保護者、教職員、児童等、といろいろ出てくるが、本法にいう「学校」は、学校教育法にいう「学校」とは範囲が違っている。

具体的には、「学校教育法第1条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)」(法2条2項)とされており、幼稚園は除かれている。
(⇔学校教育法1条では幼稚園も入っている)

そのほか、大学、高等専門学校も除かれている。

規範の内容

章立てとポイントは以下のとおり。

第一章 総則

第二章 いじめ防止基本方針等

第三章 基本的施策

第四章 いじめの防止等に関する措置

(ポイント)
23条2項で、学校に、いじめが疑われる場合の「いじめの事実の有無の確認」義務を規定。
23条3項で、学校に、いじめがあった場合の対応として、①被害児童とその保護者に対する「支援」、②加害児童に対する「指導」とその保護者に対する「助言」を継続的に行う義務を規定。

第五章 重大事態への対処

(ポイント1)
「重大事態」の定義
①いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認められとき
または
②いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき

(ポイント2)
28条1項で、学校と設置者に、組織の設置及び調査の義務を規定。
28条2項で、被害児童及び保護者への情報提供義務を規定。

第六章 雑則

私見

本法にいういじめの定義は極めて広く、いじめを根絶したいという立法者の意思は素晴らしいと思うが、他方、法制における定義づけとしては議論の余地はあるようにも思う(個人的見解です)。

林修三『法令作成の常識』(日本評論社)に、以下のような記述がある(p13~14)。
(※林氏は内閣法制局長官。平成元年没。)

✓ 法令に違反した者が確実に処罰されるようにするには、その社会における大多数の者、平均的な知識・考えをもつ人々が、その法令に違反することは悪いことと思い、法令違反者というものが例外的な存在であることを必要とする
✓ 社会の大部分の人々が、この条例は悪い条例だとして、これを守るような気をもたず、これに対する違反者が続出するようでは、とうていその実効性は発揮できないのである
✓ 社会の大部分の人々が違反状態にある場合、違反者をもれなく処罰するなどということは実際問題としてできるものではなく、そうなっては、違反者の大部分は放置されることになり、その法令は空文化し、いわゆるザル法となる。
✓ こういうザル法が出現することくらい、一般の人々の遵法精神をそこなうものはない。

上記は主に刑事法を念頭に置かれたものではあるが、法令一般にもあてはまるものだと思う。

いまの定義では1回頭を叩くことも「いじめ」に該当しうるのであり、この記述も一瞬頭に思い浮かんでしまった。

立証のハードルを上げてしまうため諸々の限定要素は検討の結果削られたのではないかとは思うが、個人的には定義の作り方としては議論の余地はあるようにも思った。

以上、箇条整理シリーズでした。

※箇条整理シリーズは,一般的な整理方法に沿うように心掛けておりますが,最終的には当ブログ管理人の理解による整理です。専門的・学術的な整理ではありませんし,万人共通の整理でもありませんので,ご注意ください。

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