犯罪被害者支援

箇条整理シリーズ|犯罪被害者支援

Photo by Martin Moreno on Unsplash

実務や理論を箇条書きで整理する,「箇条整理」シリーズ。

今回は,犯罪被害者支援について。

犯罪被害者支援も近年ひとつの実務ジャンルとして確立された感がありますね。

支援策の種類について,箇条整理したいと思います。ここに記したものがすべてではなく,相談ダイヤル等もたくさん設けられています。

主としては「刑事手続」「民事手続」という2本が柱になるわけですが,ほかにも「情報の入手」「経済的支援」「類型別の特徴」という3つを足しているものがあり,この5つで考えるのが全体を把握しやすいかと思います。

刑事手続

刑事処罰を求めていくもの。

被害届

被害の発生を申告するもの。

刑事告訴

被害者が,犯罪事実を申告するとともに,その訴追を求めるもの。

「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」(刑訴法230条)

被害者参加制度

犯罪被害者等が刑事手続に関与する手続。一定の重大犯罪の被害者本人や遺族らが公判期日に出席し,証人尋問や被告人質問,事実や求刑についての意見陳述(被害者論告)などを行うことができる(刑訴法316条の33~316条の39)。

不起訴処分への対抗

・検察審査会への申立て(検察審査会法30条)

・準起訴手続(刑訴法262条):公務員の職権濫用罪等の事件に限られる

民事手続

被害回復(損害の賠償)を目指していくもの。

民事訴訟

犯罪被害に限らず,損害賠償の基本は民事訴訟。

損害賠償命令制度

犯罪被害の場合特有の制度。

対象犯罪について有罪判決が言い渡された後に,判決を言い渡した刑事裁判所が引き続き損害賠償命令の申立についての審理(原則として4回以内の審理期日)を行うもの(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律23条~40条)。

※被害回復を目指すものなので民事手続に分類したが,正確には刑事手続に付随する手続である。

刑事和解

これも犯罪被害の場合特有の制度。

当該刑事事件の係属する刑事裁判所に対し,被告人と被害者等の民事上の損害賠償の合意を刑事事件の公判調書へ記載することを求める制度。裁判上の和解と同一の効力をもち,強制執行の際の債務名義となる。(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律19条~22条)

被害回復給付金支給制度

財産犯等の犯人から剥奪した犯罪被害財産を金銭化して給付資金として保管し,そこから当該事件の被害者等に給付金を支給する制度。(犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律)

情報収集

犯人や捜査の状況,その後の処遇等について知るための制度。

被害者連絡制度(警察)

被害者等の希望により,被害者連絡員(事件を担当している捜査員から指定)が,捜査に支障のない範囲で,犯人の逮捕状況や処分等について知らせる制度(被害者連絡実施要領)。

対象事件は限られる(ⅰ殺人・全治1か月以上の重傷害・性犯罪等の身体犯,ⅱ重大な交通事故事件)

被害者等通知制度(検察)

被害者等に対し,事件の処分結果(起訴・不起訴等),刑事裁判の結果,実刑後の処遇状況等について,検察官から通知がされる制度。(被害者等通知制度実施要領)

対象事件は特に限定されていない。

告訴事件における処分結果の通知

告訴事件については,起訴にせよ不起訴にせよ,処分結果が通知される。(刑訴法260条本文)

告訴事件で不起訴の場合は,不起訴にした理由を告知するよう求めることもできる。(刑訴法261条)

事件記録の閲覧・謄写

起訴後,第1回公判期日まで
検察官請求予定証拠の閲覧・謄写(刑訴法47条但書,最高検次長検事通達)

第1回公判期日以降
検察官請求証拠,弁護人請求証拠,公判調書の閲覧・謄写(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条,4条)

経済的支援

犯罪被害者等給付金支給制度

生命・身体を害する犯罪行為(過失犯は除く)により死亡,重症病,障害を負った場合に,給付金が支給される制度。(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)

条例による犯罪被害者支援金

上記の犯給法は法律レベルでの給付金であるが,条例レベルでも,犯罪被害者等の支援に関する条例を設け,犯罪被害者等に支援金を給付している先進的な自治体もある(明石市など)。

法テラスによる支援

犯罪被害者法律援助

日弁連委託援助事業のひとつ。犯罪被害者等が刑事手続等に関する活動を希望する際に,法テラスが弁護士費用を援助する制度。

なお,刑事事件の延長としてなされる示談交渉については利用可能であるが,純粋な民事問題(損害賠償請求)については,ⅲの民事法律扶助が利用できるため利用対象外となる。

人権救済の観点から主として刑事手続について援助されるもので,弁護士費用は原則として交付(償還を求められない)である。

国選被害者参加弁護士制度

民事法律扶助制度

民事手続について援助されるもので,弁護士費用は原則として立替え(償還が求められる)である。

類型別注意点

〇 少年犯罪

〇 被害者が子どもの場合

〇 ストーカー犯罪
→住民票の写し等の交付等の制限の申出
→ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)による警告の申出(to警察),禁止命令(by公安委員会)等

〇 ドメスティック・バイオレンス
→住民票の写し等の交付等の制限の申出
→DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)による保護命令の申立て(to裁判所)等
※保護命令の種類は,接近禁止命令,退去命令,電話等禁止命令。
※保護命令の申立てに関する法テラス支援は,犯罪被害者法律援助ではなく,民事法律扶助である。

〇 触法精神障碍者

〇 インターネット犯罪

参考文献

参考文献としては、

✓ 『ビクティム・サポート(VS)マニュアル』(第一東京弁護士会 犯罪被害者に関する委員会)

✓ 『犯罪被害者等支援ハンドブック』(各都道府県で作成されているもの)

を参考にしました。探してみたのですが,書籍は未だ少ないですね。これ以外にはまとまったものはないのではないでしょうか。

箇条整理なので,個別の内容については踏み込んでいません。また別枠で整理したいと思います。

以上,箇条整理シリーズでした。

※箇条整理シリーズは,一般的な整理方法に沿うように心掛けておりますが,最終的には当ブログ管理人の理解による整理です。専門的・学術的な整理ではありませんし,万人共通の整理でもありませんので,ご注意ください。

-犯罪被害者支援