今回は、広告法務ということで、ステマ規制における不当表示該当要件の2つめ(事業者の表示であることの判別が困難であること)について見てみたいと思います。
本記事では、世の中に存在するステマ関連のルール全般ではなく、景品表示法上の不当表示として新たに指定されたステマ告示のことを、ステルスマーケティング規制(ステマ規制)と表記しています。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
事業者の表示であることの判別が困難であること(判別困難性)
ステマ告示では、ステマ表示を以下のように定義しています。
- 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって
- 一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
「事業者の表示であることの判別が困難であること」(=判別困難性)は、上記②の部分を指しています。
判断基準
判別困難性は、
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか(逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうか)
を、表示内容全体から判断します。
表示内容全体から、というのは、表示上の特定の文章、図表、写真などから一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となる、ということです(ステマ告示ガイドブック13頁参照)。
判別困難に該当する類型
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていないものは、判別困難に該当します。
以下のような2類型が挙げられています。
事業者の表示であることが記載されていないもの
1つめは、事業者の表示であることが記載されていないものです(ステマ告示運用基準 第3-1-⑴)。
以下のような例が挙げられています。
- 事業者の表示であることが全く記載されていない場合
- 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合
ただし、②の場合に関して、複数の商品又は役務の価格情報や内容等を比較するアフィリエイトサイトにおいては、アフィリエイトサイト自体が一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっている限り、一般消費者が第三者の表示であると誤認することはないことから、掲載されている全ての商品又は役務について、それぞれ当該事業者の表示であることを記載する必要はないとされています。
事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの
2つめは、事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものです(ステマ告示運用基準 第3-1-⑵)。
以下のような例が挙げられています。
- 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
- 文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。あるいは、文章の冒頭に「これは第三者としての感想を記載しています。」と記載しているにもかかわらず、文中に「広告」と記載し、事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合
- 動画において事業者の表示である旨の表示を行う際に、一般消費者が認識できないほど短い時間において当該事業者の表示であることを示す場合(長時間の動画においては、例えば、冒頭以外(動画の中間、末尾)にのみ同表示をするなど、一般消費者が認識しにくい箇所のみに表示を行う場合も含む)
- 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使用する場合
- 事業者の表示であることを一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合
- 事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合
- 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合
- 事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(例えば、SNSの投稿において、大量のハッシュタグ(SNSにおいて特定の話題を示すための記号をいう。「#」が用いられる。)を付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)。
なお、これらに関連するものとして、「事業者が講ずべき管理上の措置の指針」(管理措置指針)においても、広告である旨の文言、表示位置、文字の大きさ、文字の色、その他の対応などに分けて、望ましい表示の例が絵付きで挙げられています(管理措置指針 別添8-⑴ア~オ)。
直接にはアフィリエイト広告のみを対象にした部分ではありますが、概ね上記の例と同様の着眼点が示されているので、併せて一度目を通しておくと有益かと思います。
判別困難に該当しない類型
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているものは、判別困難に該当しません。
以下のような2類型が挙げられています。
広告である旨が一般消費者から見て分かりやすい表示になっているもの
1つめは、広告である旨が一般消費者から見て分かりやすい表示になっているものです。
一般消費者にとって、表示内容全体から、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている必要があります(ステマ告示運用基準 第3-2-⑴)。
例えば、
- 「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合
- 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合
が挙げられています。
ただし、①のような文言による表示については、これらの文言を使用していたとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もあるとされています。
文章による表示ほどは、意味が明瞭でないからだと思われます
一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかなもの
また、(必ずしも上記のような文言による表示や文章による表示がなくても)一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかなものは、判別困難に該当しないとされています(ステマ告示運用基準 第3-2-⑵)。
例えば、以下のような場合が挙げられています。
- 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合
- 事業者の協力を得て制作される番組放送や映画等において当該事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合
- 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示を行う場合
- 商品又は役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示を行う場合
- 事業者自身のウェブサイト(例えば、特定の商品又は役務を特集するなど、期間限定で一般消費者に表示されるウェブサイトも含む)における表示を行う場合
- 事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合
- 社会的な立場・職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合
ただし、⑤のような場合については、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、ⅰ. 媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、ⅱ. そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない、とされています。
事業者の表示であることの表示としては、例えば、「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています」といった表示などが挙げられています
最近のニュースでこのケースに相当しそうな事例があったため、noteでコンパクトな解説記事を書いています。
結び
今回は、広告法務ということで、ステマ規制における不当表示該当要件の2つめ(事業者の表示であることの判別が困難であること)について見てみました。
消費者庁HPに、ステマ規制の解説ページがあります。
▽参考リンク
令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。|消費者庁HP
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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