金商法(業規制)

金融商品取引法|「適格機関投資家等特例業務」の概要と主な要件について解説

2025年9月25日

今回は、金融商品取引法ということで、適格機関投資家等特例業務について見てみたいと思います。

ファンド(集団投資スキーム)を立ち上げて出資を集め運用を行う場合、原則として、金商法に基づく第二種金融商品取引業(自己募集)や投資運用業(自己運用)の登録が必要となります。

しかし、一定のプロ投資家を対象とするファンドについては、登録手続の負担を軽減し、円滑な資金調達を可能にするための特例制度が設けられています。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

本記事の条文(金商法)は、令和8年8月12日施行版を基準にしています

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。




適格機関投資家等特例業務の基本構造

適格機関投資家等特例業務とは、集団投資スキーム持分の自己募集(私募)または自己運用を行う際、あらかじめ行政当局に届出を行うことで、金融商品取引業の登録義務が免除される制度です(法63条)。

プロの投資判断能力を有する投資家を対象とすることから、一定の自己責任原則を前提として、手続が簡素化されています。

▽金商法63条1項(※【 】は管理人注)

(適格機関投資家等特例業務)
第六十三条
 次の各号に掲げる行為については、第二十九条【=金融商品取引業の登録】及び第三十三条の二【=金融機関の登録】の規定は、適用しない。
【1号:自己募集(私募)】
一 適格機関投資家等(適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(その数が政令で定める数以下の場合に限る。)及び適格機関投資家をいう。以下この条において同じ。)で次のいずれにも該当しない者を相手方として行う第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募(適格機関投資家等(次のいずれにも該当しないものに限る。)以外の者が当該権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものに限り、投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定めるものを除く。)

【2号:自己運用】
二 第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利(同一の出資対象事業(同項第五号に規定する出資対象事業をいう。)に係る当該権利を有する者が適格機関投資家等(前号イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。)のみであるものに限る。)を有する適格機関投資家等から出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)の運用を行う同条第八項第十五号に掲げる行為(投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定めるものを除く。)

主な要件と投資家の構成ルール

特例業務の適用を受けるためには、出資者の属性および人数に関して定められた制限を満たす必要があります。

01|出資者(投資家)の人数および属性基準

出資者の構成は、適格機関投資家等に限られます。

具体的な構成基準は、

  • 適格機関投資家(プロ投資家):1名以上が含まれていること
  • 一般投資家(適格機関投資家以外の者):49名以下であること

となっています。

ファンド運営者(GP)を除いた出資者のうちに、必ず適格機関投資家が1名以上存在しなければなりません。

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▽施行令17条の12第1項・第3項

(適格機関投資家等特例業務)
第十七条の十二
 法第六十三条第一項第一号に規定する適格機関投資家以外の者で政令で定めるものは、適格機関投資家以外の者であつて、その取得する法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募又は私募の取扱いの相手方となる時点において、次の各号のいずれかに該当するものとする。

3 法第六十三条第一項第一号に規定する政令で定める数は、四十九とする。

02|転売制限の付与

発行される権利が一般の投資家に転売・流出することを防止するため、契約上、

  • 取得者が適格機関投資家の場合:適格機関投資家以外の者への譲渡を禁止する制限(1号)
  • 取得者が一般投資家(条文上は「特例業務対象投資家」)の場合:一括譲渡以外の譲渡を禁止する制限(2号イ)

という制限を付すことが求められます(令17条の12第4項)。

なお、過去6か月以内に発行された同一種類の権利の一般投資家も合算して49名以下に収める必要があります(2号ロ)。

▽施行令17条の12第4項

4 法第六十三条第一項第一号に規定する権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める要件に該当するものとする。
一 当該権利の取得勧誘に応ずる取得者が適格機関投資家(法第六十三条第一項第一号イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。以下この号及び次号イにおいて同じ。)である場合 当該権利に係る契約その他の法律行為により、当該権利を適格機関投資家に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていること。
二 当該権利の取得勧誘に応ずる取得者が特例業務対象投資家(第一項に規定する者(第二項に規定する場合にあつては、同項に規定する者)であつて、法第六十三条第一項第一号イからハまでのいずれにも該当しないものをいう。イ及びロにおいて同じ。)である場合 次に掲げる要件の全て
 イ 当該権利に係る契約その他の法律行為により、当該権利を取得し又は買い付けた者が当該権利を一括して他の一の適格機関投資家又は特例業務対象投資家に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されていること。
 ロ 当該権利が有価証券として発行される日以前六月以内に、当該権利と同一種類のものとして内閣府令で定める他の権利(ロにおいて「同種の新規発行権利」という。)が有価証券として発行されている場合にあつては、当該権利の取得勧誘に応じて取得する特例業務対象投資家の人数と当該六月以内に発行された同種の新規発行権利の取得勧誘に応じて取得した特例業務対象投資家の人数との合計が四十九名以下となること。

Memo: 一般的な「私募」概念との比較

 第一項有価証券や第二項有価証券における一般的な「私募」の人数基準と、適格機関投資家等特例業務における「私募」の人数基準を比較すると、以下のような違いがあります。

① 第一項有価証券の各「私募」要件:

 以下の3つに分類されます。

  1. プロ私募:勧誘対象者は適格機関投資家のみ(人数制限なし、転売制限あり)
  2. 特定投資家私募:勧誘対象者は特定投資家のみ(人数制限なし、プロ向け市場等での流通前提)
  3. 少人数私募:勧誘対象者が50名未満(一般投資家を含む、6か月通算ルールあり)

② 第二項有価証券(ファンド持分等)における「私募」:

 第一項有価証券のような「プロ私募」「少人数私募」といった細分化はなく、取得勧誘に応じることにより所有することとなる者の人数が499名以下である場合が、一括して「私募」と定義されます。

③ 適格機関投資家等特例業務の要件における「私募」:

 この特例での出資者構成は、適格機関投資家1名以上 + 一般投資家49名以下です。

 つまり、構造上の性格としては、第二項有価証券の私募(499名以下)のうち、さらに・・・出資者の属性を「プロ1名以上+一般投資家49名以下」に制限することで、第二種金融商品取引業の登録を免除する特例要件として構成されている、といえます。

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補足:ファンド・オブ・ファンズ(FoF)における人数の取扱い

他のファンド(親ファンド)から出資を受ける重層構造(ファンド・オブ・ファンズ)を採用する場合、原則として親ファンドの出資者に一般投資家が含まれていると、特例の適用対象外となります。

ただし、特定の構造においては、以下のような例外規定が置かれています。

特例の適用対象外とならない例外

  • LPS(投資事業有限責任組合)またはLLP(有限責任事業組合)の特例:親ファンドがLPSやLLPであり、親ファンドと子ファンドの一般投資家を合算して49名以下であれば、特例の適用が可能
  • 登録投資運用業者の特例:親ファンドの運営者が登録済みの投資運用業者である場合は、親ファンド側の一般投資家数を加算する必要はない
  • 同一運営者の特例:親ファンドと子ファンドの運営者が同一である場合、両ファンドの一般投資家数を合算して49名以下であれば認められる

届出手続と主要な記載項目

業務を開始する前に、管轄の財務局長(内閣総理大臣)に対して事前届出を行う必要があります。

届出書には、主に以下のような事項を記載します。

  1. 商号、名称または氏名
  2. 役員および重要な使用人の氏名
  3. 業務の種別(自己募集または自己運用)
  4. 出資対象事業持分の名称(ファンド名)
  5. 出資者となる適格機関投資家少なくとも1名の名称

届け出た内容に変更が生じた場合は、遅滞なく変更届出書を提出する必要があります。

▽金商法63条2項

2 適格機関投資家等特例業務(前項各号に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう。以下同じ。)を行う者(金融商品取引業者等を除く。)は、あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を内閣総理大臣に届け出なければならない。
一 商号、名称又は氏名
二 法人であるときは、資本金の額又は出資の総額
三 法人であるときは、役員の氏名又は名称
四 政令で定める使用人があるときは、その者の氏名
五 業務の種別(前項各号に掲げる行為に係る業務の種別をいう。)
六 主たる営業所又は事務所の名称及び所在地
七 適格機関投資家等特例業務を行う営業所又は事務所の名称及び所在地
八 他に事業を行つているときは、その事業の種類
九 その他内閣府令で定める事項

適用される行為規制と行政監督

特例業務届出者に対しては、金融商品取引業者に適用される標準的な行為規制の一部が免除されますが、最低限の公正性を確保するための規制および監督が及ぶ仕組みとなっています。

適用される主な規制

適用される主な規制は、

  • 虚偽告知の禁止(法38条1号)
  • 損失補てん等の禁止(法39条)
  • 犯罪収益移転防止法に基づく義務(取引時確認、疑わしい取引の届出等)

などです。

一般投資家に適用される契約締結前交付書面の交付や、適合性の原則などは、原則免除されます。

行政による監督および検査

自己運用を行う特例業務届出者については、運用の継続性や要件の維持状況を確認するため、行政当局による報告徴取および立入り検査の対象となる場合があります。また、モニタリング調査票等を通じて、運用財産額などの定期報告が求められます。

適格機関投資家等特例業務は、要件の管理および適切な届出管理を継続して行うことが制度適用の前提となります。

結び

今回は、金融商品取引法における適格機関投資家等特例業務について見てみました。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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