今回は、印紙税法ということで、課税文書・不課税文書・非課税文書について見てみたいと思います。
一見似たような響きの言葉ですが、これらはそれぞれ意味が異なります。本記事では、印紙税法における「課税文書」「不課税文書」「非課税文書」の違いについて、詳しく解説します。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
課税文書と不課税文書
課税文書と不課税文書の定義
印紙税法において、ある文書に印紙を貼る必要があるかどうかは、その文書が「課税文書」に該当するかどうかで決まります。
課税文書とは、印紙税法別表第一の課税物件表に掲げられている20種類の文書(第1号〜第20号文書)に該当し、そこに規定される課税事項が記載され、かつ、当事者間においてその事実を証明する目的で作成された文書を指します。さらに、これらの要件を満たした上で、法律により非課税と定められている文書を除いたものが、最終的な課税文書となり、印紙税を納める義務が生じます。
これに対し、上記の課税物件表の課税物件欄にそもそも掲げられていない文書のことを不課税文書と呼びます。これらは印紙税の課税対象外となるため、印紙を貼る必要はありません。
▽印紙税法2条
(課税物件)
第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
該当するかどうかの判断基準(実質判断の原則)
ある文書が課税文書に該当するか、あるいは不課税文書になるかは、文書の名称(タイトル)や形式的な文言だけで判断されるわけではありません。その記載文言の実質的な意義に基づいて判断されます。
例えば、タイトルが「覚書」や「念書」であっても、内容が契約の成立や変更を証明するものであれば課税文書(契約書)になりますし、逆にタイトルが「契約書」であっても、記載されている内容が課税物件表に該当しない事項だけであれば不課税文書になります。
実務で迷いやすい「課税文書」と「不課税文書」の具体例
どのような内容が課税対象となり、どのような内容が対象外(不課税)となるのか、実務上境界線が問題になりやすい代表的なケースを挙げます。
① 請負契約(課税)と物品の売買契約(不課税)
- 請負契約(第2号課税文書):注文者の指示に基づき一定の仕様に従って工作物を建設したり、洋服を仕立てたりするなど、「仕事の完成」に重きを置く契約は請負となり、課税文書に該当します。
- 物品の譲渡・売買契約(不課税文書):あらかじめ一定の規格で統一されたカタログ商品や建売り以外の既製品などを販売し、「物の所有権の移転」に重きを置く契約は物品売買契約となり、不課税文書として扱われます。
② 請負契約(課税)と委任契約(不課税)
- 委任契約(不課税文書):請負が「仕事の完成」を目的として結果に対して報酬が支払われるのに対し、委任は「一定の目的に従って事務処理を行うこと自体」が目的であり、必ずしも仕事の完成を目的としません。そのため、委任契約(例えば、税理士による税務代理や、店舗設計に関する単なる相談など)に関する契約書は、原則として不課税文書となります。
③ 契約の成立・変更(課税)と契約の消滅(不課税)
- 契約の成立・変更・補充(課税文書):印紙税法上の「契約書」は、契約の成立、更改、変更、補充を証する文書と定義されています。
- 契約の消滅(不課税文書):既に交わした契約を解約・消滅させる事実のみを証明する目的で作成される文書(例:解約合意書)は、印紙税法上の「契約書」には該当せず、不課税文書となります。
④ 承諾文書(課税)と申込文書(不課税)
- 申込文書(不課税文書):単なる契約の申込みの事実を証明する目的で作成される「申込書」「注文書」「依頼書」などは、契約書には該当せず不課税文書です。
- 承諾文書(課税文書):申込みに対する承諾事実を証明する目的で作成される文書(例:「請書」など)は、契約の成立を証するため課税文書(契約書)となります。ただし、「申込書」という名称であっても、提出することによって自動的に契約が成立するような規定が盛り込まれている場合は、実質的に契約書として課税文書の扱いを受けます。
以上のように、文書がどのような目的で作成され、実質的にどのような権利・義務関係(課税事項)を証明しているかを読み解くことが、課税文書と不課税文書を区別する上で最も重要なポイントとなります。
課税文書と非課税文書
これらの不課税文書がそもそも法律に定められた課税対象(20種類の文書)に該当しない文書であったのに対し、非課税文書は、本来であれば課税対象となる文書(20種類の文書に該当する)であるものの、公益的な理由や取引の零細性などから、法律によって特別に印紙税を免除されている文書を指します。
詳細な違いと、非課税となる条件について以下に整理します。
課税文書と非課税文書の定義
課税文書は、先ほど見たように、印紙税法別表第一の課税物件表に掲げられている20種類の文書(第1号〜第20号文書)に該当し、課税事項が記載され、当事者間で証明する目的で作成された文書のうち、非課税文書を除いたものです。この課税文書に該当した場合に、印紙税を納める義務が生じます。
非課税文書は、課税物件表に掲げられている20種類の文書に該当するものの、印紙税法5条などの規定により、特別に印紙税を課さないこととされている文書です。
▽印紙税法5条
(非課税文書)
第五条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。
一 別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書
二 国、地方公共団体又は別表第二に掲げる者が作成した文書
三 別表第三の上欄に掲げる文書で、同表の下欄に掲げる者が作成したもの
非課税文書となる4つの条件(印紙税法5条)
印紙税法5条では、以下の4つのいずれかに該当する文書を非課税文書と定めています。
① 課税物件表の「非課税物件欄」に規定する文書(主に金額の基準)
取引金額が少額であるため、印紙税の負担を求めるのが適当でないとされる零細な取引に関する文書です。
- 第1号文書(不動産譲渡等)、第2号文書(請負契約)、第15号文書(債権譲渡等):記載された契約金額が1万円未満のもの
- 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書=領収書):記載された受取金額が5万円未満のもの
- 第8号文書(預貯金証書):預入額が1万円未満のもの
- 第3号文書(約束手形・為替手形):手形金額が10万円未満のもの
② 国、地方公共団体又は「非課税法人の表」に掲げる者が作成する文書
国や地方公共団体、あるいは法律で特別に指定された非課税法人(日本銀行、日本年金機構、各種協同組合など)が作成する文書は非課税となります。
ただし、これらの機関と民間企業(国等以外の者)が共同で契約書を作成した場合には特殊なルールがあります(後述の「実務上注意すべきポイント」で解説します)。
③ 「非課税文書の表」に掲げる文書で、指定された者が作成するもの
特定の法律に基づく公益性の高い事業に関する文書です。例えば、国庫金・公金の取り扱いに関する文書や、独立行政法人日本学生支援機構が行う奨学金の貸与に関する文書などが該当します。
④ その他の特別法により非課税とされている文書
印紙税法以外の法律(租税特別措置法や震災特例法など)によって非課税とされるものです。
- 東日本大震災の被災者が代替建物を取得するための不動産譲渡契約書や建設工事請負契約書
- 都道府県等が高等学校等の生徒に対して無利息で行う奨学金の貸付けに係る消費貸借契約書
実務上注意すべきポイント
非課税文書の判定において、実務上よく問題になるポイントを挙げます。
① 「営業に関しない」受取書(領収書)は非課税
第17号文書(領収書など)のうち、「営業に関しない受取書」は金額にかかわらず非課税となります。
- 非課税になる例:個人が自宅の車や家具など私的財産を売却して受け取った領収書、公益法人(NPO法人や公益社団法人)が作成する領収書、医師・歯科医師・弁護士・税理士等がその業務上作成する領収書
- 課税される例:株式会社や合同会社などの営利法人が作成する領収書は、たとえ本業以外の土地売却等であっても「営業に関する」ものとして課税対象となります。
② 国・地方公共団体等との「共同作成文書」の取り扱い
国や地方公共団体(非課税)と、一般の民間企業(課税対象)が契約書を2通作成し、お互いに1通ずつ保管するような場合、印紙の貼り方に特別なルールがあります。
- 民間企業が保管する契約書:「国等」が作成し交付したものとみなされるため、非課税となります。
- 国等が保管する契約書:「民間企業」が作成し交付したものとみなされるため、課税文書となり、民間企業側に印紙税の納税義務(印紙を貼る義務)が生じます。
つまり、相手方が国や自治体だからといって全てが非課税になるわけではなく、「どちらが保管する文書か」によって課税・非課税が逆転します。
▽印紙税法4条5項
5 次条第二号に規定する者(以下この条において「国等」という。)と国等以外の者とが共同して作成した文書については、国等又は公証人法(明治四十一年法律第五十三号)に規定する公証人が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなし、国等以外の者(公証人を除く。)が保存するものは国等が作成したものとみなす。
③ 複数の性質を持つ文書の場合
ある契約書が、非課税となる少額な契約(例:9,000円の請負契約)と、別の課税事項(例:100万円の債権譲渡)の両方を含んでいる場合、文書全体としてはその最も高い税率の号に所属が決まり、全体として非課税の恩恵を受けられないケースがあります。所属の決定(通則3)と非課税の適用には複雑なルールが絡むため注意が必要です。
結び
本記事のハイライトをまとめます。
課税文書・不課税文書・非課税文書まとめ
- 不課税文書:そもそも印紙税法の20種類のリストに載っていない文書
- 課税文書:20種類のリストに載っており、かつ非課税の条件に当てはまらない文書
- 非課税文書:20種類のリストには載っている(本来は課税される性質のもの)が、少額である、作成者が国である、営業に関しないなどの特定の理由により、法律で特別に課税を免除されている文書
このように、文書の性質(何号文書か)を判定した後に、法5条等の非課税要件に当てはまるかどうかをチェックすることで、最終的に印紙を貼る必要があるかどうか(課税文書になるか)が決定されます。
今回は、印紙税法ということで、課税文書・不課税文書・非課税文書について見てみました。
印紙税法の関連記事一覧はこちら
-
-
印紙税法 - 法律ファンライフ
houritsushoku.com
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
印紙税法に関するその他の記事(≫Read More)
主要法令等・参考文献
参考資料
当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品・サービスを記載しています
参考文献image