反社排除 社内規程

社内規程|組織で取り組む「反社会的勢力排除規程」作成のポイントを解説

今回は、社内規程ということで、反社会的勢力排除規程(反社排除規程)について見てみたいと思います。

反社チェックの手法はさまざまありますが、実際に不審な取引先を見つけたとき、現場の担当者がどうすればいいのかとパニックになってしまっては意味がありません。現場の担当者を守り、会社として毅然とした対応をとるためには、反社排除規程をはじめとする社内規程やマニュアルの整備が不可欠です。

本記事は、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(政府指針)とその解説も参照しつつ、反社排除規程や関連する社内ルールを作成・見直しする際のポイントを解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

なぜ規程を作る必要があるのか(政府指針の考え方)

そもそもなぜ規程にする必要があるのかですが、自社の社員は真面目だから、万一にも暴力団員などと取引したりしないと思うかもしれません。しかし、政府指針の解説では、反社対応を単なる従業員の個人の倫理の問題として片付けてはいけないとされています。

なぜなら、不当要求を問題にせず安易に解決しようとする人が社内にいた場合、現場の担当者が反社からの要求と社内の圧力の間で板挟みになり、判断を誤るおそれがあるからです。また、恐怖心や、会社にとって不名誉なことだという思いから、隠蔽に走ってしまう危険性もあります。

そのため、反社との関係遮断は、法令等遵守(コンプライアンス)に関わる問題としてとらえ、経営トップ以下、組織全体で対応できるよう、社内規則に明文化し、内部統制システムに位置づけるべきとされています。

▽指針解説 ⑵反社会的勢力との関係遮断を社内規則等に明文化する意義

 今日、反社会的勢力との関係遮断については、(社)日本経済団体連合会の「企業行動憲章」のほか、多くの企業が、当該企業の企業倫理規程の中に盛り込んでいる。
 かかる企業倫理規程は、従業員の倫理に期待し、従業員の自発的な適正処理を促すために有用であるものの、反社会的勢力への対応を、単に従業員の倫理の問題としてとらえると、企業内に、反社会的勢力の不当要求を問題化せず安易に解決しようとする者がいる場合に、反社会的勢力と直接に対峙する担当者が、相手方の不当要求と当該社内関係者の判断との間で板挟みになり、従業員の倫理だけでは処理しきれない問題に直面し、判断を誤らせるおそれがある。また、反社会的勢力への対応は、その性質上、企業の担当者が当該問題を企業にとって不名誉なことと受け取ったり、相手方に対する恐怖心を抱いたりすることから、適切に処理することに困難が伴う。
 そこで、反社会的勢力との関係遮断を更に確実なものとするため、反社会的勢力との関係遮断を、単なる倫理の問題としてとらえるのではなく、法令遵守に関わる重大な問題としてとらえ、外部専門機関と連携して、その助言・助力を得て法的に対応し、問題を解決することを手順化することが有効となる。
 そのためには、企業は、反社会的勢力との関係遮断を、内部統制システムの法令等遵守・リスク管理事項として明記するとともに、社内規則等の服務規程の中にも規定することが重要と考えられる。

反社会的勢力排除規程の記載内容

それでは、反社排除規程の主なポイントを見ていきましょう。

反社会的勢力の定義

定義規定を設けるか、個別の条項の中で定義するかはどちらもあり得ますが、反社排除規程で言及する「反社会的勢力」の定義を明らかにしておきます。契約書の暴排条項と同じく、概ね以下のような内容で定義されることが多いです。

  • 暴力団
  • 暴力団員
  • 暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者(偽装離脱を防ぐため、辞めて5年以内の人も排除対象にするのが一般的)
  • 暴力団準構成員
  • 暴力団関係企業
  • 総会屋等(企業ゴロ等も含む)
  • 社会運動等標ぼうゴロ
  • 特殊知能暴力集団等
  • その他これらに準ずる者

個別の項目についても定義を明らかにする場合は定義規定で、そこまで書かない場合は個別の条項の中で定義することが多いかと思います。

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基本方針

反社との関係遮断を基本方針として明記します。

ポイントは、単に不当要求には応じない旨を書くだけでは不十分ということです。反社会的勢力とは取引関係を含めた一切の関係をもたない(関係遮断)という政府指針の基本原則を規定することが重要です。

基本方針の内容については、別途、企業倫理規程の中に入っていたり、経営トップが反社排除を基本方針として社内外に宣言する体裁、つまり「反社会的勢力排除に関する基本方針」あるいは「反社会的勢力排除宣言」といった名称で別の規程(これらは社外にも公表する用)になっている場合もあるかと思います。その場合でも、反社排除規程のなかでも簡単に触れておくのが通常かと思います。

これら規程があることは、反社と対峙する場合の後ろ盾(内部的な根拠)となります。

▽政府指針 2-⑵

〇 代表取締役等の経営トップは、⑴の内容を基本方針として社内外に宣言し、その宣言を実現するための社内体制の整備、従業員の安全確保、外部専門機関との連携等の一連の取組みを行い、その結果を取締役会等に報告する。

対応部署の決定

情報を一元管理する反社会的勢力対応部署を決定します。もちろん、対応部署の責任者や担当役員の決定も含みます。

▽政府指針 2-⑵

〇 反社会的勢力による不当要求が発生した場合の対応を統括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備する。反社会的勢力対応部署は、反社会的勢力に関する情報を一元的に管理・蓄積し、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを支援するとともに、社内体制の整備研修活動の実施対応マニュアルの整備外部専門機関との連携等を行う。

▽指針解説 ⑿反社会的勢力との関係遮断を内部統制システムに位置づける必要性

 会社法上の大会社や委員会設置会社の取締役会は、健全な会社経営のために会社が営む事業の規模、特性等に応じた法令等の遵守体制・リスク管理体制(いわゆる内部統制システム)の整備を決定する義務を負い、また、ある程度以上の規模の株式会社の取締役は、善管注意義務として、事業の規模、特性等に応じた内部統制システムを構築し、運用する義務があると解されている。
 反社会的勢力による不当要求は、
〇 取締役等の企業トップを対象とするものとは限らず、従業員、派遣社員等の個人や関係会社等を対象とするものがあること
〇 事業活動上の不祥事や従業員の不祥事を対象とする場合には、事案を関係者限りで隠ぺいしようとする力が社内で働きかねないこと
を踏まえると、反社会的勢力による被害の防止は、業務の適正を確保するために必要な法令等遵守・リスク管理事項として、内部統制システムに明確に位置づけることが必要である。このことは、ある程度以上の規模のあらゆる株式会社にあてはまる。
 また、反社会的勢力の攻撃は、会社という法人を対象とするものであっても、現実には、取締役や従業員等、企業で働く個人に不安感や恐怖感を与えるものであるため、反社会的勢力による被害を防止するための内部統制システムの整備に当たっては、会社組織を挙げて、警察や弁護士を始めとする外部専門機関と連携して対応することが不可欠である。
 すなわち、
〇 取締役会が明文化された社内規則を制定するとともに、反社会的勢力対応部署と担当役員や従業員を指名すること
〇 制定した社内規則に基づいて、反社会的勢力対応部署はもとより、社内のあらゆる部署、会社で働くすべての個人を対象としてシステムを整備すること
が重要である。

平時・有事の対応

不当要求対応マニュアルを作っている企業もありますが、それだけでは反社対策としては不十分です。一般の取引に入り込んでくる反社を防ぐために、一切の関係遮断(取引からの排除)を見据えた内容にする必要があります。

といっても、それほど難しい話ではなく、政府指針に書かれているような平時・有事対応のやり方を決めておき、それを社内規程(反社排除規程)として明文化しておくというイメージです(必要に応じて暴排条例の内容を盛り込むのもよいです)。

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反社排除規程としては、政府指針に書かれているような粒度で一般的な内容を記載しておき、具体的なフローや手順については、規則・細則といった下位規程や、社内規程に紐づいたマニュアルとして作成することが多いかと思います。

平時の対応

平時の対応として規定することが一般的なのは、以下のような内容です。

  • 事前審査:契約前の属性審査(反社会的勢力でないことの確認)を行うこと。いわゆる反社チェック
    →より具体的には、取引開始前にどのような情報を集め、どのように反社データベース等と照合するかなど
  • 継続審査:既存の取引先について、契約更新時(あるいは〇年に1回)などに属性を再確認するルール
  • 異常察知時のルール:反社チェックで疑わしい取引先を発見した場合や、日々の営業活動のなかで現場が異変を察知した際の報告ルート
  • 暴排条項の導入:契約書への暴排条項の記載や、反社排除覚書の締結、誓約書の徴求を行うことなど
  • 関係遮断:反社であることが判明・あるいは疑わしいと判断した場合の取引禁止や既存取引の解消を行うとの定め

有事の対応

また、有事の対応フローも定めておきます。

  • 対応フロー:不当要求を受けた場合のエスカレーション(連絡・報告・相談・意思決定)のフロー
  • 外部との連携:外部専門機関(警察や弁護士など)への連絡・支援要請の手順

これらを属人的な対応にせず、組織的な手順としてマニュアル化することが重要です。

▽政府指針 2-⑶

〇 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、当該情報を、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談し、さらに、速やかに当該部署から担当取締役等に報告する。
〇 反社会的勢力から不当要求がなされた場合には、積極的に、外部専門機関に相談するとともに、その対応に当たっては、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等に従って対応する。要求が正当なものであるときは、法律に照らして相当な範囲で責任を負う。
〇 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、担当者や担当部署だけに任せずに、不当要求防止責任者を関与させ、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。その際には、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、刑事事件化を躊躇しない。特に、刑事事件化については、被害が生じた場合に、泣き寝入りすることなく、不当要求に屈しない姿勢を反社会的勢力に対して鮮明にし、更なる不当要求による被害を防止する意味からも、積極的に被害届を提出する。

また、不祥事事案等を理由とする攻撃がされた場合、事実関係を調査することはあるわけですが、事案を隠ぺいするための裏取引や反社への資金提供は絶対に行わないわけなので、そのことを特に明記しておくこともあります(基本方針として書くこともある)。

▽指針解説 ⑶不当要求の二つの類型(接近型と攻撃型)

② 攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。

その他の内容

そのほか、来社時の対応や、報道機関への対応(広報部門との関係含む)、社内の教育・研修などについても規定することがあります。

その他の関連する社内規程

反社排除規程のほか、他の社内規程(業務分掌や人事関連など)にも、反社排除と関連する規程があります。

代表的なものは、業務分掌規程職務権限規程です。反社リスク管理や取引先の属性審査をどの部署(総務部やコンプライアンス部など)が担当するのか、業務分掌としての位置づけを明確にします。また、営業部などの折衝部門の役割として、取引先の反社会的勢力該当性に関する情報収集を記載しておくこともあります。

次に、就業規則等です。従業員が反社と不適切な関係を持たないよう、就業規則を整備します。業務上はもちろん、私生活において反社と交際したときや、反社からの不当要求を会社に報告しなかったときなどを、懲戒処分の対象として定めます。

他方、適切な措置を講じて反社排除に貢献した従業員を表彰する規定を設ける(社員が積極的に対応するインセンティブを作る)といったことも考えられます。ただ、実際にはそこまでやっている企業は少ないと思われますが。

そのほかは、役員規程人事考課規程などです。役員についても同様に、私生活において反社と交際してはならないこと、取引相手の属性審査を怠ってはならないことといった事項を遵守事項として定め、違反した場合は取締役会が辞任勧告を出せる態勢にしておくことが有効です。また、人事考課規程の執務態度などの項目に、反社への適切な対応(社内の風紀を乱さないか)を評価基準として盛り込むことも考えられます。

結び

反社会的勢力排除に関する規程を作成・見直す際のポイントは以下のとおりです。

反社排除規程のポイント

  • 一切の関係遮断をコンプライアンスの最重要課題として明記する(企業倫理規程の内容、他の別建ての規程にすることもある)
  • 不当要求対応だけでなく、事前・事後の属性審査を含む関係遮断を内容とする(具体的なフローは規則・細則やマニュアルレベルとして策定する)
  • 業務分掌、就業規則、役員規程など、社内の他の規程とも連動させる

そして最後に、立派な規程やマニュアルを作っても、社員に浸透していなければ意味がありません。入社時や定期的な社内研修で規程の内容を周知し、あるいは誓約書を提出させるといった取り組みを通じて、組織全体で反社を許さない企業風土を育てていくことが大切です。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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関連団体

  • 暴追都民センター(「公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター」)
  • 特防連(「公益社団法人 警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」)

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