反社排除

反社排除|暴力団排除条例は誰に適用される?適用対象者を解説

今回は、反社排除ということで、暴力団排除条例(暴排条例)の適用対象者について見てみたいと思います。

暴力団を排除するための条例だから、ターゲットは暴力団なのだろうと思っている方もいるかもしれません。しかし、実は暴排条例は、主に一般市民や普通の企業を名宛人としたルールです。

本記事は、東京都の暴排条例を例に、その適用対象者のカテゴリー(誰にどんなルールが適用されるのか)についてわかりやすく解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

主な適用対象者:都民等

暴排条例の基本理念は、社会全体で暴力団を排除することです。そのため、東京都暴排条例の主な適用対象者は、都民等都民と事業者)となっています。

なかでも、ビジネスを通じて暴力団と関わるリスクが高い事業者に対しては、特にいくつかのルール(努力義務や禁止行為)が定められています。

  • 事業者:事業(その準備行為を含む)を行う法人その他の団体、または事業を行う個人(個人事業主など)のこと
  • 事業者のルール:契約時に相手が暴力団関係者でないか確認する努力義務、契約書への暴排条項導入の努力義務(条例18条)、利益供与の禁止(条例24条)などがあります

▽東京都暴排条例2条6号・7号

 都民等 都民及び事業者をいう。
 事業者 事業(その準備行為を含む。以下同じ。)を行う法人その他の団体又は事業を行う場合における個人をいう。

【補足】暴力団員も適用対象者

 もちろん、暴力団員を適用対象者にしている(または含めている)規定もあります。
 例えば、脱退等の妨害行為の禁止(条例21条)、暴力団事務所の開設及び運営の禁止(条例22条)、青少年を暴力団事務所へ立ち入らせることの禁止(条例23条)、他人の名義利用の禁止(条例25条1項)などです。

関わってはいけない相手:暴力団関係者

事業者が、契約時などに該当性を確認すべき対象(契約時に審査すべき属性)として定義されているのが、暴力団関係者です。

▽東京都暴排条例2条4号

 暴力団関係者 暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者をいう。

暴力団関係者の定義

暴力団関係者とは、暴力団員+暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者をいいます。

つまり、正式な組員(暴力団員)だけでなく、彼らと密接な関係を持っている人たちもひっくるめて、暴力団関係者と呼んでいます。

密接な関係を有する者」としては、以下のような者が挙げられており、ざっくりいうと、暴力団周辺者や共生者、密接交際者を合わせたような内容になっています。

▽東京都暴排条例Q&A〔2022年7月4日版〕【Q6】

 条例に「暴力団関係者」と規定されています(第2条第4号)が、どのような人が「暴力団関係者」に該当するのですか?

 条例において「暴力団関係者」は、「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と規定されており(第2条第4号)、「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」とは、例えば、

  • 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
  • 暴力団員を雇用している者
  • 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
  • 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
  • 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者(Q7を参照)

等が挙げられます。
…(以下略)…

上記のうち社会的に非難されるべき関係を有している者というのが、一般に密接交際者と呼ばれたりしている者たちですが、具体的には以下のような例が挙げられています。

▽東京都暴排条例Q&A〔2022年7月4日版〕【Q7】

 「暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有している」とは、どのような場合をいうのですか?

 例えば、次のような場合が挙げられます。

  • 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、その主催するゴルフ・コンペに参加している場合
  • 相手方が暴力団員であることを分かっていながら、頻繁に飲食を共にしている場合
  • 誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合
  • 暴力団員が関与する賭博等に参加している場合

これらに対して、例えば、

  • 組員と交際しているという噂があるだけ
  • 組員と一緒に写真に写ったことがあるだけ
  • 組員と幼なじみという関係のみで交際している
  • 組員と結婚を前提に交際している
  • 親族や血縁関係者に組員がいる

という状況や境遇にあるというだけでは、暴力団関係者には該当しないとされています(東京都暴排条例Q&A【Q6】参照)。

あくまでも、暴力団員だとわかった上で、ビジネスで利用したり、社会的に非難されるような深い交際を続けているかどうかがポイントになります。

【ポイント】「反社会的勢力」とはどう違うのか?

 なお、暴排条例であるため暴力団員(暴力団排除)を中心にした規定ぶりになっていますが、いわゆる反社会的勢力を含まない趣旨ではありません。例えば、総会屋や社会運動等標ぼうゴロについても、上記のような密接な関係がある場合は、暴力団関係者として暴排条例の規制対象となります(「暴力団排除と企業対応の実務」(東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会 編)31頁参照)。

該当するとどうなるのか

条例上、暴力団関係者に該当するという事実だけで、勧告や公表といったペナルティを受けたりすることはありません。

しかし、実際にインパクトが大きいのは社会的な排除です。都や、暴力団排除に取り組んでいる一般企業は、契約書に暴排条項を入れていますので、もし暴力団関係者だと判明すれば、都や一般企業が結ぶ各種契約(口座の開設、オフィスの賃貸、取引先とのビジネスなど)において、排除(契約解除、あるいはそもそも締結しない)の対象となります。

▽東京都暴排条例Q&A〔2022年7月4日版〕【Q8】

 「暴力団関係者」であった場合、何らかの不利益を受けることがありますか?

 都や暴力団排除活動に取り組んでいる事業者と締結する各種契約において、排除の対象となる場合があります。(都との契約においては第7条、事業者との契約については第18条を参照してください。)
 ただし、「暴力団関係者」と認められる場合であっても、その事実のみで、条例上の「勧告」や「公表」の措置が講じられることはありません。

利益供与禁止の対象者:規制対象者

条例のなかでも特に重要なルールは利益供与の禁止(条例24条)ですが、この利益供与が禁止される対象となる者が規制対象者です。

利益供与の禁止違反は刑事罰の対象になっているため、その範囲が明確に定められています

誰が該当し得るか、どういう場面で排除の対象になるかについては、Q&Aで具体例付きで整理されています。

▽東京都暴排条例Q&A〔2022年7月4日版〕【Q9】

 「規制対象者」について、どのような人が当たるのか詳しく教えてください。

 「規制対象者」とは、第24条において、事業者による利益供与を禁止する対象として規定されている者で、「暴力団員」のほか、例えば、「暴対法に基づく中止命令等を受けた日から3年が経過していない者」や、この第24条第1項の規定に違反する利益供与をして「勧告」を受けたにもかかわらず、さらに同種の利益供与をして「公表」をされた事業者など、正に「暴力団ともちつもたれつの関係にある者」がこれに当たります。(第2条第5号イからチまで)
 具体的には、以下の者が「規制対象者」に該当します。

  • 暴力団員(同号のイ)
  • 既に暴力団を離脱しているものの暴力団員と変わらない者
    • 「暴力団員ではないが、暴対法第11条に基づく中止命令等を受けた日から3年を経過しない者」(同号のロ)
  • 暴力団員と認定できないまでも、準構成員等、極めて暴力団員に近い者
    • 「暴対法第12条、同法第12条の6に基づく中止命令等、同法第12条の4第2項に基づく指示を受けた日から3年を経過していない者」(同号ハ、ニ)
    • 「暴力団との間で威力を使用することの対償として利益供与することを合意している者」(同号ホ)
    • 「暴力団員の行った暴力的不法行為等の共犯等として刑に処せられて、その執行が終わった日から5年を経過しない者」(同号ヘ)
  • フロント企業の役員や従業員等
    • 「暴力団員が代表者であったり、その運営を支配している法人等の役員や従業者等」(同号ト)
  • 自己の事業のために暴力団の威力を利用する者
    • 「第24条第1項に規定する利益供与違反を繰り返し公表された者」(同号チ)

条文も確認してみます。

▽東京都暴排条例2条5号

 規制対象者 次のいずれかに該当する者をいう。
  暴力団員
  法第十一条の規定による命令を受けた者であって、当該命令を受けた日から起算して三年を経過しないもの(イに該当する者を除く。)
  法第十二条又は第十二条の六の規定による命令を受けた者であって、当該命令を受けた日から起算して三年を経過しないもの
  法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であって、当該指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの
  暴力団員との間で、その所属する暴力団の威力を示すことが容認されることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与すること(以下「利益供与」という。)を合意している者
  一の暴力団の威力を示すことを常習とする者で、当該暴力団の暴力団員が行った暴力的不法行為等若しくは法第八章に規定する罪に当たる違法な行為に共犯として加功し、又は暴力的不法行為等に係る罪のうち譲渡し若しくは譲受け若しくはこれらに類する形態の罪として東京都公安委員会規則(以下「公安委員会規則」という。)で定めるものに当たる違法な行為で当該暴力団の暴力団員を相手方とするものを行い刑に処せられたものであって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しないもの
  一の暴力団の威力を示すことを常習とする者であって、当該暴力団の暴力団員がその代表者であり若しくはその運営を支配する法人その他の団体の役員若しくは使用人その他の従業者若しくは幹部その他の構成員又は当該暴力団の暴力団員の使用人その他の従業者
  第二十九条第一項第二号の規定により公表をされ、当該公表をされた日から起算して一年を経過しない者

イ~チの順に簡単に内容を見ておくと、以下のとおりです。

  • 暴力団員(イ):
    暴対法では国が指定した指定暴力団の組員がメインの規制対象ですが、条例では指定・未指定を問わずすべての暴力団員が対象になります
  • 暴対法で行政処分(命令・指示)を受けた者たち(ロ、ハ、二):
    • 暴対法に基づく中止命令や再発防止命令(暴力的要求行為や準暴力的要求行為をしたことへのペナルティ)を受けてから3年以内の者
    • 暴力団員に「俺の代わりに要求してこい」と頼まれ、警察から「準暴力的要求行為をしてはいけない」と指示を受けてから3年以内の者
  • みかじめ料などを払う約束をしている者(ホ):
    暴力団の威力を利用する対価として、利益供与の合意をしている者
    • これは暴対法においても準暴力的要求行為を禁止される対象となっています
  • 暴対法で準暴力的要求行為を禁止されている周辺者(威力を示す常習者)
    • 一緒に犯罪をして刑の執行を終えてから5年以内の「共犯者」(へ)
    • 暴力団関係企業(フロント企業)の役員や従業員など(ト)
      • これらは暴対法においても準暴力的要求行為を禁止される対象となっています
  • 【条例独自の対象】利益供与違反で公表された事業者(チ):
    条例の利益供与違反を繰り返して名前を公表されてから1年以内の者

繁華街で厳しく見張られる:特定営業者

また、東京都独自の特徴として、暴力団排除特別強化地域の制度があります。

歌舞伎町・六本木・赤坂・池袋など、別表で指定された都内の主要な繁華街(29地域)を中心に、用心棒の役務提供・受領、みかじめ料等の対償供与、暴力団員の業務従事などを特に厳しく禁じています。区域は条例別表に丁目単位で列挙されています(※区域は随時見直され得るため、最新の別表で確認要)。

この暴力団排除特別強化地域において、特別に厳しいルール(直罰規定など)が適用されるのが特定営業者です。

特定営業者とは、以下の特定営業を営む者のことを指します。

  • キャバクラ、クラブ、パチンコ、ゲームセンター(風俗営業)
  • ソープランド、ファッションヘルス、デリバリーヘルス、テレクラ(性風俗関連特殊営業)
  • ナイトクラブ(特定遊興飲食店営業)
  • コンパニオン派遣業(接客業務受託営業)
  • 居酒屋、一般飲食店(食品衛生法の許可を受けた飲食店営業)
  • 風俗案内所(風俗案内業)
  • 路上での客引き、呼び掛け、ビラ配り、スカウトなど

モグリの営業も対象:風営法の許可を取ってないから特定営業者じゃない、といった理由は通用しません。許可や届出の有無にかかわらず業務の業態で判断され、規制の対象になります(※飲食店営業は食品衛生法上の許可を受けていることが要件)

こららの者が違反して、暴力団員から用心棒をしてもらったり、みかじめ料を払ったりすると、勧告を経ずに刑事罰が科されます(直罰)。

結び

東京都暴排条例は、暴力団だけを相手にした内容ではありません。主たる適用対象者は都民等であり、適用範囲のポイントは、

  • 都民等(都民・事業者)がルールを守る主体となり、
  • 暴力団関係者との契約を避け、
  • 規制対象者への利益供与を絶対にせず、
  • 繁華街でビジネスをする特定営業者は特に用心棒などの誘惑を断ち切る

のようになっています。

自分には関係ないと思わず、ルールを把握してビジネスや生活を守っていくことが大切になります。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

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関連団体

  • 暴追都民センター(「公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター」)
  • 特防連(「公益社団法人 警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」)

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