第2回。今回は問題提起について。
旧司法試験のノウハウ
問題提起は4つのポイントを指摘しなければならない、という話があったのはご存知でしょうか?
それは、
- 事案の問題の所在
- 事案の問題提起
- 法律上の問題の所在
- 法律上の問題提起
の4つです。①・②は事案、③・④は論点、という風に大きく2つに分かれます。
問題提起は語尾を疑問形にすればいいってもんじゃないわけです。何が問題になっているのか(問題提起)、なぜそれが問題になるのか(問題の所在)、を書かないと答案において特に書く意味のない文章になってしまいます。
例①
例えば、共犯からの離脱だと、「甲は乙と暴行の途中で立ち去っているが、その後に生じたAの死の結果との間に因果関係が認められるか。共犯関係からの離脱の肯否及び要件が明文にないため問題となる。」
みたいな感じですかね。
(あんまりうまくない・・?因果関係というより、「共同して」(60条)にあたるか、の方が正確か?まあ別に離脱を書きたいわけではないのでそこは勘弁を)
これだと
①甲は途中から立ち去っている・・・事案の問題の所在
②それなのに甲に死の結果が帰責されるのか・・・事案の問題提起
③離脱には明文がない・・・法律上の問題の所在
④共犯関係からの離脱の肯否及び要件・・・法律上の問題提起
①②には甲とか具体的事実が出てくるのに対し、③④は抽象論なので具体的事実は出てこないことは、基本的ですが注意が必要です。
ちなみにローでゼミの先生から論点名を書いて問題提起をしたつもりになるなと指導を受けていたのですが、ちょっと今思いつかないので勘弁を。
例②
もうひとつ例を思いついたので書き加えます。例えば、背信的悪意者排除論だと、
「甲は専ら乙に嫌がらせをするつもりで安価にその後土地を買い受けているが、甲は「第三者」(177条)にあたるか。「第三者」の主観的要件が条文上明らかでないため問題となる」
みたいな感じですかね。
これだと、
①甲は自らその土地が必要なのではなくただの嫌がらせで乙の後に土地を買い受けた・・・事案の問題の所在
②こんな奴でも「第三者」にあたり、乙は所有権取得を対抗するのに登記が必要なのか・・・事案の問題提起
③「第三者」の他に177条は何も書いていない・・・法律上の問題の所在
④「第三者」の主観的要件は如何・・・法律上の問題提起
この後、単純悪意者は「正当の利益」を有するが、単なる悪意を越えた背信的悪意者は信義則上「正当の利益」を有しない、という論証が続くわけですな。
新司法試験になって
新司法試験になってからは時間の制約及びあてはめ最重要との関係から、こんなに問題提起を書いている暇はありません。
4つのポイントを指摘するのが正式な問題提起である、ということを知ったうえで、時間の制約などを考えて適宜省略していくのが現実的だと思います。
答案作成という観点から現実問題として有用なのは、重要論点については少なくとも①・②は書く、という書き方ではないでしょうか。私はそういう意識でした。でも①~④も思考の整理としては今でも有用だと思います。
「新・単なる勉強記録」も、問題提起は必要だが前菜にすぎないのでコンパクトに、というスタンスだったと思います。
しかし、省略がいきすぎて問題提起があまりにも少なくなり、あった方がいいところでないようなことになると、今度は答案全体の流れが悪くなります。なぜかというと、なぜそれを長々と論じているのかという必然性が見えなくなるからです。
実際の本試験で
当然のことながら、旧司法試験時代にやっていたような4ポイントの指摘などできません。緊張、問題文複雑、頭粉砕、でも時間迫ってくる、の中でそんなに丁寧に書けません。
ですが①事案の問題の所在、は書いたほうがいいように思いますし、極力書きました。②事案の問題提起だけで済ますのが最短ですがそれだけだとやっぱり「論じる必然性」が見えません。
例えば今年の刑訴第一問目であれば、「写真撮影したい状況下で、捜索差押令状はあるが検証令状がない」という事案の問題の所在をスパッと書いたほうが印象がよいのではないかと思います。さすがにこれぐらいは書く時間あります。
まあこのように現実の制約との中で妥協を迫られるわけですが、それでも基本を知っていることは大事ではないかと思うわけです。
結構長くなりましたが、ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。