旧司ノウハウ

旧司的ノウハウ⑤ー一読了解型答案ー

連載第5回。

一読了解型答案とは何か?何に気をつけて書けばそのようになるのか?

 

1.旧司法試験のノウハウ

一読了解型とはその名の通り、一回読んだだけで内容が頭に入ってくる答案のことです。読み手にとっては読むのが楽であり心証もよく、書き手にとっては読み返されるおそれが低くボロがばれにくい、という効用があるものです。

私は心証の問題というのは、
・心証が良くても直接そこに点数がつくわけではないが、加点は素直になされ減点はされにくくなる

・心証が悪くても直接それで点数を引かれるわけではないが、加点はされにくくなり減点はされやすくなる

というものだと思っています。

「一読了解」が直接の配点事項となっているかどうかは知る術もありませんが、根本的な力量を感じさせる重要な要素だと思います。では何に気をつけて書けばそのようになるのか?以下、私の知ってる範囲で。

 

 

(1)法律の文章としての順序に沿っていること

請求の定立→その要件→あてはめ、の順序で話が進む答案であることが、まず大前提だと考えます。

刑事系だと公訴事実の提示→その要件→あてはめ、の順序といえるでしょう。

これはお約束なので、読む側もそのような順序で話が展開すると思って読んでいると思われます。これから逸れると「あれっ」て感じで読み手は戸惑うでしょう。

また、要件→あてはめで書くということは、要件とあてはめを分けて書くことつまり法的三段論法を守るということでもあります。要件とあてはめが常に一体化している答案は非常に読みにくいはずです。

 

(2)ナンバリングと小見出し

結局内容が問題だからさほど気にしない、時間もかかるし、という人もいますが、私は必須事項だと思います。

なぜなら読み手としては確実に読みやすいからです。話の切れ目や次元がわかります。書き手としてもちょっとはめんどくさいですが、思考の混乱を防ぐという効果もあります。

すでに弁護士をやっている友人からも「整理されていること」は「内容」と並ぶ重要な要素だと聞いたことがありますので、実務でも重視されている事柄だと思います。実際、訴状も判決書もナンバリングと小見出しを使っていますし。点数がどうとかいう次元の話でなく、常識的な作法のような気がします。

 

(3)一文の長さ

一文は短くした方が読みやすくなります。では何をもって「長すぎる」というのか?目安は4行です。一息で読める長さは4行なので、5行以上の文は「長すぎる」と判定してよいと思います。これを仲間内では「4行ルール」と呼んでいました。

もちろん5行にわたってしまうこともあるのですが、「あっ今長すぎる文章を書いてる!」という自分に対する警告を発することができます。

「主語と述語があってない」という注意を聞くこともありますが、一文が長すぎるときにそうなるのであって、結局は文の長さに集約されると思います。

 

(4)実例

具体例を思いついたので書き加えておきます。例えば競業避止義務違反(365条1項・356条1項1号)を理由として取締役Yの会社に対する責任(423条1項)を追及しようとする場合。

 

(訂正前)
本問の行為は競業避止義務違反(365条1項・356条1項1号)となるか?

「株式会社の事業の部類に属する取引」とは~をいい、取締役Yの行為はこれにあたる。

「自己又は第三者のために」とは~をいい、取締役Yの行為はこれにあたる。

そして取締役会の承認も得ていないので、競業避止義務(365条1項・356条1項1号)に違反する。よって、「任務を怠った」といえる。

また、競業行為により取締役Yは1億円の利益を得ているので、利益の額である1億円が損害額と推定され、因果関係も認められる(423条2項)。

したがって、会社は取締役Yに対し1億円の損害賠償請求できる。

 

(コメント)
内容的には間違ってない(はず)ですが、パッと見、何が書いてるかわからないはずです。理由は、(1)で述べた、請求→要件→あてはめの順になっていないこと、(2)で述べた、小見出しとナンバリングという答案整理のツールが全く使われていないことです。これを訂正すると、次のようになります。

 

(訂正後)
X会社は、取締役Yに対し任務懈怠に基づく損害賠償請求(423条1項)ができるか。

(1)任務懈怠

 ア 競業取引該当性

  「株式会社の事業の部類に属する取引」とは~をいい、取締役Yの行為はこれにあたる。

  「自己又は第三者のために」とは~をいい、取締役Yの行為はこれにあたる。

  よって、取締役Yの行為は競業取引に該当する。

 イ 承認がないこと

   そして取締役会の承認も得ていないので、競業避止義務(365条1項・356条1項1号)に  違反する。

 ウ したがって、「任務を怠った」といえる。

(2)損害及び因果関係

 競業行為により取締役Yは1億円の利益を得ているので、利益の額である1億円が損害額と推定され、因果関係も認められる(423条2項)。

(3)したがって、X会社は取締役Yに対し1億円の損害賠償請求できる。

 

(コメント)
わかりやすくするためちょっと極端に書きまくりましたが、多分、訂正後の方がパッと見読みやすいはずです。訴訟物は任務懈怠に基づく損害賠償請求権1個であり、任務懈怠という要件の中で競業避止義務違反が問題となっている、という答案の構造がすぐ読み取れます。

 

2.新司法試験になって

以上の話は旧とか新とか関係ない類のものです。

 

3.実際の本試験で

もちろんそのように書きました。さすがにナンバリングや小見出しをする時間くらいはあります。

 

以上で旧司的ノウハウは終わりです。基本的な答案の書き方がわからなくて悩んでいる人に向けて、旧司で培った答案の基本的な書き方をわかりやすく伝えることを試みました。

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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