司法試験

平成21年度新司法試験簡易再現答案|刑事系第1問(刑法)

2009年10月9日

Photo by Hannah Olinger on Unsplash

刑事系第1問。

罪名と65条の適用が間違っていると思うが、今年の問題はきっとそういう人が多かったのだろうから、助かったのだろう。

本来、刑事系で罪名の間違いはアウトのはずである。

簡易再現答案

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刑事系第1問
第一.事実1から6まで

第1.乙の罪責

1.乙に業務上横領罪が成立しないか

2.乙は営業担当事務員なので「業務上」「占有」にあたるためには甲に業務上占有者の身分があり、かつ65条が適用される必要。

()甲に「業務上」「占有」の身分あるか

 ア.横領罪における占有は、委託信任関係に基づき、また、事実上の占有のみならず法律上の占有も含まれる。なぜなら、~。

 イ.本問についてみると、そもそも預金に占有認められるか問題となるも、上記のように法律上の占有も含まれるから肯定しうる。

 ウ.では、具体的に甲に法律上の占有あったか。

 思うに、預金を自由に引き出せる状態にあったかという点が最も重要。甲は金庫の鍵を持ってて、自由に出し入れし、事務員に事務を行わせていた。

 貸付実行業務のほか、資金管理も。関係書類の確認・帳簿の記載も甲がやっていた。

 Aのチェックは帳簿と通帳に目を通すだけで、関係書類と突き合わせることはなかったので、不正を行ってもわからない状況にあった。

 以上より甲に占有あり。業務上にも該当。

()65条の適用あるか。

 ア.65条の説明

 イ.65条は身分者が非身分者に加功した場合にも適用あり

 ウ.業務上横領は二重の身分

 エ.以上より、乙には単純占有者の身分あり

3.Aの預金が「他人の物」であることは明らか。

4.「横領」とは、~。

()120万円の現金引き出しは所有者でなければできないような処分をする意思の発現として「横領」。

()80万円の入金については第三者領得であるが、第三者領得も所有者でなければできないような処分なので「横領」。

()両行為は時間的場所的にも接着した一連の行為といえるので200万円の横領行為

5.よって、乙に200万円につき単純横領罪が成立

第2.甲の罪責

1.甲に業務上横領の教唆が成立しないか

2.65条はそれぞれの身分に応じた犯罪の成立と科刑をする趣旨であるので、「業務上」「占有」

3.客観的には教唆だが主観的には間接正犯

 錯誤の論証

 教唆の限度で故意あり

 なお、80万円しか手に入れていないが、結局200万円の横領をさせているのだから金額についても錯誤はない

4.以上より、甲には業務上横領罪の教唆犯成立

第二.事実7から10まで

1.証拠偽造罪の共同正犯?

2.「他人の刑事事件」?

 専ら共犯者のためにした場合には「他人」に該当しうる

 80万円についてはうまく隠蔽できていたのだから、120万円については専ら乙のためにしたものとして「他人」に該当しうる

3.もっとも、「証拠」は証拠方法のみをさし証拠資料は含まれないから不成立

第三.以上より、甲には200万円の業務上横領罪の教唆犯、乙には200万円の横領罪が成立

コメント

かなり、というか相当危ない。絶対評価でいけば間違いなくアウトである。でも多分、そんな答案ばっかりだったのだろう。出題趣旨と再検討をまだしていないので内容について断定はできないが。

ちなみに上記の再現でははしょっているが、「なぜ横領罪の占有には窃盗罪の占有と違って法律上の占有が含まれるのか」という論証を本番ではちゃんと書いた。

それは、

「遺失物等横領罪と単純横領罪は行為態様が同じなのに法定刑が違うのは、単純横領罪が委託信任関係の破壊を本質とするからである。そして、委託信任関係への違背は、事実上の占有を有している者でなくとも、濫用のおそれのある支配力つまり法律上の占有を有している者でも可能。だから、横領罪の占有には法律上の占有が含まれる。」

ということである。

案外ちゃんと答えられないことだと思う。私はローで実務家の先生に聞いて初めて理解しました。

これが心証良かったのかどうかはわからない。というか未だに問題自体がよくわからない。

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