平成21年度新司法試験簡易再現答案・参考答案

平成21年度新司法試験簡易再現答案 刑事系第2問(刑事訴訟法)

Photo by Hannah Olinger on Unsplash

刑事系第2問。

設問1は、まあまあ?あてはめイマイチだが。

設問2は時間がなくてコンパクトにしか書けなかったが、出題趣旨には合っていた。

簡易再現答案

■□■□■□■□■□

論文再現 刑事系第2問

設問1

第1.
()各写真撮影は意思に反してプライバシーを侵害するから強制処分。

 性質としては、検証。よって、検証令状が必要なはず。

 しかし本問では検証令状なく、捜索差押令状による捜索差押に附随するものとして写真撮影が行われているため、その限界が問題。

()論証

→令状記載物件及び関連するものなら許容。

 令状記載物件以外なら違法

 以下、各写真撮影につき検討


第2.壁の跡

()資料1によれば、殺害日時場所は1月12日М埠頭。そして、壁の跡は、殺害依頼者とされる乙が代表取締役を務める会社の事務所のメモ。

 確かに、△の部分がМ以外であり無関係なメモである可能性もあるが、日時と「埠頭」の点では一致しており、本件に関連しないとはいえない

 わざわざ消していたこと、カレンダーで隠れるようになっていたことからは、記載者が他人の目に触れないようにしようとしていたと受け取れ、この点からも本件との関連性が疑われる。よって、「本件に関連する」(資料2)といえる。

()壁の跡であるが、「メモ」に類するものといえる。

 よって、①の写真撮影は適法

第3.X銀行通帳

()「預金通帳」は記載対象に明示されているが、「本件に関連する」といえるか。第三者であるA名義であるため問題

 A名義とはいえ、わざわざT社の事務所のレターケースに入っていたことからは、A名義ではあるものの、会社用の口座通帳として使われている可能性。

 平成21年1月14日の取引日に現金30万円の出勤が記録されており、資料1からは1月15日に乙が甲に30万円の報酬を渡しており、1月14日は前日にあたる。特に他に書き込みがないのにこの日だけ「→T.K」との記載がある。30万円はこの報酬として引き出された可能性。

 よって、「本件に関連する」といえる。

 よって、②の写真撮影は適法

第4.Y銀行通帳
 これもA名義であるが、入金が不定期にあり、電気代や水道代など定期的に出金されていることからは、会社用の雑費用の口座として使われている可能性。

 不定期の出金もあるものの、特にそれ以外に本件との関連性を疑わせる事情はなく、「本件に関連する」といえない。

 よって、③の写真撮影は違法


第5.パスポート等

()パスポート、名刺、はがきは、殺害を依頼したとされる乙の情報を記載したものであるが、特にそれ以外に本件との関連性をうかがわせる事情はない。「本件に関連する」といえない。

()印鑑は前述のX銀行通帳、Y銀行通帳がA名義でありその点で関連性を有するが、特にそれ以外に本件との関連性をうかがわせる事情はない。「本件に関連する」といえない。

 よって、④の写真撮影は違法

設問2

1.本件実況見分調書は「公判期日における供述に代え」た書面として、原則として証拠能力が否定される(320条1項)。では、321条3項の適用により伝聞例外として許容されないか。

2.論証。321条3項適用肯定。

 よって、真正作成供述(名義の真正および内容の真正)あれば証拠能力肯定されうる

3.もっとも、甲の供述、写真など見分者以外の者の供述が含まれているので、別途伝聞例外の要件を満たす必要はないか。

 伝聞・非伝聞の論証

4.本問では、検察官の立証趣旨に従えば、甲の供述の内容の真実性は問題とならないので非伝聞。弁護人の立証趣旨に従えば、甲の供述の内容の真実性が問題となるので、伝聞。

 なお、写真については連続写真とも言うべきもので、供述としての役割を果たしているから、甲の供述と同様の取扱いとなる

5.確かに、甲の供述調書と細部まで一致していることからすれば、弁護人主張のように解すべきとも思える。

 しかし、本当に甲が一人で滞りなく車を海中に沈める事ができたかを立証するのは実益があり、検察官が非伝聞とするためことさらに設定した、客観的に合理性を欠く立証趣旨とはいえない

 よって、検察官主張のように考え、非伝聞。よって、証拠能力認められる。

                                    以上

コメント

設問2の立証趣旨は、調査官解説を読んでいたので比較的容易に気づいた。

巷でよく言われるように、「立証趣旨は客観的に決まる」などとは判例は多分一言も言ってない。犯罪立証の上でそのことを立証趣旨としても最低限度の証明力(自然的関連性)すらないような場合のみ例外的に客観的に定まる、といった風なことが書いてあり、平成17年度判例の射程はかなり狭いことは読んでいればわかる。

でも調査官解説読みまくったのに、役に立ったのはこれだけだったのでかなり切ない。

調査官解説は歯止めなくやりだすと無限に時間とられるから、超ド級重要判例のみにして、あとは基本書とか百選とか問題集とかベーシックな勉強に時間割いたほうがいいよ、と在学中の自分に言ってやりたい。

-平成21年度新司法試験簡易再現答案・参考答案