今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトアウト規制(受信拒否の場合の送信禁止)について見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
オプトアウト規制(法3条3項)
広告宣伝メールの送信について同意があった場合であっても、受信拒否の通知を受けた場合には、以後の送信は禁止されます(法3条3項)。
メールの送信者に受信拒否の意思を伝えた場合、以後の送信を認めない方式です。利用者が拒否するかどうかを決める(outするかどうかを決める(=opt))ので、いわゆる”オプトアウト方式"の規制と呼ばれます。
▽法3条3項
3 送信者は、第一項各号に掲げる者から総務省令・内閣府令で定めるところにより特定電子メールの送信をしないように求める旨(一定の事項に係る特定電子メールの送信をしないように求める場合にあっては、その旨)の通知を受けたとき(送信委託者がその通知を受けたときを含む。)は、その通知に示された意思に反して、特定電子メールの送信をしてはならない。…(略)…
★「第一項各号に掲げる者から」とされているので、同意があった場合のほか、オプトイン規制の例外として送信できる場合であっても、受信拒否の通知を受けたときは以後の送信は禁止される
受信拒否の通知方法(施行規則5条)
受信拒否の通知方法は、電子メールアドレスを明らかにし、適宜の方法で行うこととされています。
▽規則5条
(特定電子メールの送信をしないように求める旨の通知の方法)
第五条 法第三条第三項本文の規定による特定電子メールの送信をしないように求める旨(一定の事項に係る特定電子メールの送信のみをしないように求める場合にあってはその旨、特定電子メールの送信を一定の期間しないように求める場合にあってはその旨及びその期間)の通知の方法は、特定電子メールの送信をしないように求める電子メールアドレスを明らかにして、電子メールの送信その他の任意の方法によって行う方法とする。
例えば、広告宣伝メール中に表示されている受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレス宛てに、受信を拒否する自分の電子メールアドレスと受信を拒否する旨を伝えるなどです。
簡便なオプトアウト方法の推奨(ガイドライン4-⑸)
また、ガイドライン上、送信者・送信委託者に対しては、簡便なオプトアウトの方法を提供することが推奨されています(ガイドライン4-⑸)。
これは、オプトアウトの方法が複雑であると、利用者はメールの受信拒否による対応をとることになり(フィルタリングサービスなど)、広告・宣伝メールが本来の機能を果たさないだけではなく、電気通信事業者の設備への負荷となり、電子メール利用の良好な環境の整備への妨げとなりかねないためです。
平成23年ガイドラインパブコメ5頁も参照
簡便な方法によるオプトアウト方法としては、例えば、
- 広告・宣伝メール本文に記載するオプトアウトの通知の連絡先となるURLを受信者ごとに異なるものとし、そのURLをクリックすることで表示されるウェブサイトの画面で簡便にオプトアウトができるようにするなどの工夫
- 複数の広告・宣伝メールを送信している場合であって、オプトアウトの画面上で利用者が選択してオプトアウトの通知ができるようにしているときには、一括で全ての項目のオプトアウトができる設定を用意するなどの工夫
が挙げられています。
このような場合は、受信拒否の通知を受けるためのURLにより誘導されるウェブサイトにおいて必要事項の入力などを行うことが、受信拒否の通知となります。
また、同意の記録の管理の方法にもよりますが、
- 複数の者による特定電子メールの送信について、送信者を明示した上で、ある者が責任を持って一括して同意を取るような場合などでは、オプトアウトの際にも一回の手続でまとめて行うことができる方法を提供すること
が望ましいとされています。例えば、広告媒体事業者、プラットフォーム事業者や関連会社が一括で同意を取得した場合などです。
迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第11回)「提出された意見の概要とそれに対する考え方(案)」5頁も参照(▷掲載ページはこちら)
受信拒否通知の記録保存の推奨(パンフレット第⑤項)
また、パンフレット上、受信拒否の通知を受けた際には、後日、通知の有無について争いになることを避けるため、その記録を保存することが推奨されています(パンフレット4頁)。
オプトアウト規制の例外(法3条3項但書→規則6条)
広告・宣伝以外の目的を主目的として送信される電子メールに、付随的に広告・宣伝が含まれる場合があります。
このような場合にも受信拒否により送信が一切禁止されるとすると、本来の目的に支障が生ずることになりますので、オプトアウト規制の例外が認められています(法3条3項但書)。
具体的な内容は、規則6条1号~3号に定められており、
- 契約や取引の履行に関する事項を通知する電子メールにおいて、付随的に広告宣伝が行われる場合(1号)
- フリーメールサービスを用いた電子メールなどにおいて、付随的に広告宣伝が行われる場合(2号)
- その他、広告または宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(受信者の意思に反することなく送信されるものに限る)において、付随的に広告宣伝が行われる場合(3号)
には、受信拒否の通知を受けた後であっても送信を行うことができるとされています。
条文も確認してみます。
▽法3条3項但書
3 …ただし、電子メールの受信をする者の意思に基づき広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合その他のこれに類する場合として総務省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
↓ 規則6条1号~3号
(拒否者に対する送信の禁止の例外)
第六条 法第三条第三項ただし書の総務省令・内閣府令で定める場合は、次の各号のいずれかに掲げる場合とする。
一 契約の申込みをした者又は契約を締結した者に対し当該契約の申込み、内容又は履行に関する事項を通知するために送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合
二 電子メールの受信をする者に対し広告又は宣伝が行われることを条件として提供される電子メール通信役務を用いて電子メールが送信される場合であって、その電子メールにおいて当該電子メール通信役務の提供をする者により広告又は宣伝が付随的に行われる場合
三 前二号に掲げる場合のほか、広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(電子メールの受信をする者の意思に反することなく送信されるものに限る。)において広告又は宣伝が付随的に行われる場合
1号の例
1号は、例えば、契約に伴う料金請求等や、サービス内容の変更のための事務連絡等の電子メールに、付随的に広告・宣伝が含まれる場合です。
▽料金請求に付随的な広告・宣伝が含まれる例(事務局資料7頁より)
○○○○○○ 様
引用元:平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局)
7月の料金の請求についてお知らせいたします。
7月のご請求額 5,955円
◆ご請求額内訳
・基本使用料 5,672円
・消費税額 283円
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最新のサービス情報は以下を見てね!
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○○○○○○株式会社
3号の例
3号は、例えば、契約の前段のやりとりとして顧客から行われる問合せに対する返信等に、付随的に広告・宣伝が含まれる場合です。
▽契約の前段に付随的な広告・宣伝が含まれる例(事務局資料7頁より)
○○○○○○ 様
引用元:平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局)
このたびは、当店のID登録にお申し込みいただきありがとうございます。
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○○○○○○株式会社
結び
今回は、迷惑メール防止法を勉強しようということで、オプトアウト規制(受信拒否の場合の送信禁止)について見てみました。
迷惑メール防止法については、総務省HPと消費者庁HPに解説ページがあります。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- 迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)
- 施行規則(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則」)
- ガイドライン(「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」〔平成23年8月〕)
- 平成20年パブコメ(平成20年11月15日付「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案及び特定電子メールの送信等に関するガイドライン案について提出された意見について 」)
- 平成17年改正法(平成17年法律第46号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成16年10月7日)~第9回会合(平成17年7月15日))
- 平成20年改正法(平成20年法律第54号「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」)
- 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会(第1回会合(平成19年7月24日)~第11回会合(平成20年8月28日))
- 事務局資料(平成20年12月「特定電子メール法の改正等について」(総務省総合通信基盤局))(▷掲載ページはこちら)
関連団体
- 財団法人日本データ通信協会(※登録送信適正化機関)≫迷惑メール相談センター/特定電子メール法
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