電気通信事業法

電気通信事業法|「電気通信設備」の定義と多層的な分類構造

今回は、電気通信事業法ということで、事業の物理的な土台となる「電気通信設備」の定義と、法律上の分類について見てみたいと思います。

電気通信事業法においては、設備に対する単一の分類基準があるわけではなく、「ネットワークのどの部分か」「どれくらい重要か」「誰が設置しているか」といった様々な切り口で設備を分類し、それぞれに異なる重さのルールを課しています。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

「電気通信設備」の基本的な法的定義

電気通信事業法2条2号において、「電気通信設備」は次のように定義されています。

 電気通信設備 電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備をいう。

この定義は非常に広く、電話機などの端末機器、交換機、ケーブルや光ファイバー(線路設備)、無線通信設備、サーバー(電子計算機)、通信用の電力装置などが含まれます。これらが相互に結合して通信可能な状態にあり、設置者が支配・管理している状態のものを指します。

現用の設備だけでなく予備用の設備も含まれますが、単なる工具や在庫品はまだ設備を構成していないため含まれません。また、電柱などの電線を支持する工作物も、法的には電気通信設備として扱われます。

「電気通信設備」の4つの主要な分類

法律では、この広範な「電気通信設備」を、規制の目的ごとに以下のように細かく分類しています。

  • ネットワークの構成上の分類:電気通信回線設備
  • 安全性・信頼性を確保するための分類:事業用電気通信設備
  • 競争政策(非対称規制)のための分類:指定電気通信設備
  • 利用者側が設置・接続する設備の分類

① ネットワークの構成上の分類:電気通信回線設備

他人の通信を媒介するための基盤となる重要なネットワーク部分の分類です。参入規制(登録か届出か)を判断する基準などに使われます。

電気通信回線設備とは、送信の場所と受信の場所との間を接続する「伝送路設備」と、これと一体として設置される「交換設備」およびこれらの「附属設備」を指します(法9条1号)。これを自前で設置するかどうかが、事業者の法的な立ち位置を大きく左右します。

▽電通法9条1号

電気通信回線設備(送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備及びこれと一体として設置される交換設備並びにこれらの附属設備をいう。以下同じ。)…

伝送路設備には以下の2種類がありますが、詳しくは後述します。

  • 端末系伝送路設備:利用者の設備(自宅やスマホ等)から最寄りの局舎・基地局までを結ぶ、ネットワークの末端部分の回線です
  • 中継系伝送路設備:端末系伝送路設備以外の伝送路設備で、主に局舎と局舎の間を結ぶ基幹回線などを指します

② 安全性・信頼性を確保するための分類:事業用電気通信設備

国民生活に影響を与える重要な設備について、国が定める「技術基準」への適合維持義務や、「電気通信主任技術者」の選任義務など、厳しい安全管理ルールを課すための分類です(法41条等)。

事業用電気通信設備の定義は、法44条1項に出てきます。

▽定義:法44条1項

…第四十一条第一項から第五項まで(第四項を除く。)又は第四十一条の二のいずれかに規定する電気通信設備(以下「事業用電気通信設備」という。)…

具体的には以下の5種類が指定されています。

  1. 回線設置事業者の設備(影響が軽微なものを除く)
  2. 回線を持たない事業者であっても、「基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)」を提供する事業者の設備
  3. NTT東西の基礎的電気通信役務提供用の設備
  4. 大規模回線非設置事業者(利用者数100万人以上の有料サービス等、影響が大きいと指定された事業者)の設備
  5. インターネットの根幹を支える「ドメイン名電気通信役務」の提供用設備

③ 競争政策(非対称規制)のための分類:指定電気通信設備

他の事業者がビジネスをする上で「接続」が不可欠なボトルネック設備や、市場で圧倒的なシェアを持つ設備を分類し、接続約款の認可や届出といった重い義務(非対称規制)を課すためのものです。

  • 第一種指定電気通信設備
    固定系の加入者回線(端末系伝送路設備)で、都道府県内のシェアが50%を超えるもの等です。事実上、NTT東日本・西日本の固定回線が該当します
  • 第二種指定電気通信設備
    移動体系(携帯電話)の加入者回線で、業務区域内のシェアが10%を超えるもの等です。NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの大手キャリアの設備が該当します
  • 特定電気通信設備
    第一種・第二種指定電気通信設備に加えて、市場競争に影響を与える一定以上のシェアを持つ設備を含めた分類です。これらの設備を持つ企業がグループ外と合併等を行う際は、厳しい登録の更新手続が求められます

④ 利用者側が設置・接続する設備の分類

電気通信事業者のネットワークの「末端」に、利用者(ユーザー)自身が接続する設備の分類です。これらの接続によりネットワーク全体に悪影響が出ないよう、技術基準適合(技適)マークや工事担任者の制度が関わってきます。

  • 端末設備
    電気通信回線設備の一端に接続される設備で、その設備のすべてが「同一の構内」または「同一の建物内」に収まっているものを指します。例えば、家庭の電話機、スマホ、企業内のPBX(構内交換機)やルーターなどがこれに該当します
  • 自営電気通信設備
    電気通信事業者以外の者が設置する設備のうち、「端末設備以外のもの」です。例えば、電力会社や鉄道会社が、同一構内には収まらない広域にわたって独自に敷設している自社専用の通信網などがこれに該当します

「伝送路設備」についての詳しい解説

分類①の「電気通信回線設備」における「伝送路設備」は、電気通信事業法の中で頻繁に登場するキーワードになりますので、もう少し詳しく解説しておきたいと思います。

伝送路設備とは何か

伝送路設備とは「情報が通る道」のこと

伝送路設備とは、一言でいうと、電気的な手段によって情報の伝達を行うための設備のことです。

これには、情報を伝えるための物理的な線だけでなく、電波を飛ばすための設備なども含まれます。具体的には以下のようなものが伝送路設備に該当します。

  • 有線の設備:光ファイバケーブル、同軸ケーブル、銅線など
  • 無線の設備:マイクロ波回線、送受信を行うための搬送装置、携帯電話の基地局などの無線設備

つまり、目に見えるケーブルから目に見えない電波の通り道まで、情報がA地点からB地点へと移動するための「道」となる設備全般を指していると考えてください。

「電気通信回線設備」の最重要パーツ

前述のように、電気通信事業法において、事業の規模や参入手続(登録か届出か)を判断する上で重要になるのが、「電気通信回線設備」という用語です。

法律上、電気通信回線設備は「送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備と、これと一体として設置される交換設備(通信の行き先を振り分ける機械)、そしてそれらの附属設備」を合わせたものとして定義されています(法9条1号)。

ここでいう「送信の場所と受信の場所との間を接続する」とは、離れた場所(隔地者間)を結ぶということを意味しています。

そのため、1つの建物の中や同じ敷地(構内)の中だけで完結してしまっているような伝送路設備は、原則としてここでいう電気通信回線設備には含まれません。遠く離れた場所をつなぐ「伝送路設備」があって初めて、法律で厳しくルール化される「電気通信回線設備」として成立します。

ネットワークのどこを担うか:2つの分類

伝送路設備は、通信ネットワーク全体のどの部分の道を作っているかによって、大きく「端末系伝送路設備」と「中継系伝送路設備」の2つに分類されています。

① 端末系伝送路設備(ネットワークの末端)

利用者の端末設備(自宅のパソコンや電話機、スマホなど)や自営電気通信設備と直接接続される伝送路設備のことです。

例えば、通信会社の局舎から利用者の自宅やオフィスまでを結んでいる光ファイバーケーブルや、携帯電話の基地局から私たちのスマホまでの電波の通り道などがこれに該当します。利用者に最も近い、ネットワークの末端(アクセス回線)にあたる部分です。

② 中継系伝送路設備(ネットワークの背骨)

上記の「端末系伝送路設備」以外のすべての伝送路設備のことです。利用者に直接つながるのではなく、通信会社の局舎と局舎の間を結ぶような、長距離の大容量通信を担う基幹回線(バックボーン)などがこれに該当します。

まとめ:「伝送路設備」のイメージ

 このように、「伝送路設備」とは、光ファイバーや無線の電波などを使って情報を運ぶ「道」そのものであり、ネットワークの末端を担う端末系と、背骨を担う中継系に分けられます。 そして、この「道(伝送路設備)」と「交差点(交換設備)」が組み合わさることで、私たちの通信を支える「電気通信回線設備」という巨大なインフラが作られているわけです。

より感覚的には、「光ファイバーや基地局などの、通信の通り道のことだな」とイメージしてみてください

「端末系」か「中継系」かで参入のハードルが変わる

このような「ネットワークの構成上の分類」は、主に参入規制の判断に使われています。

電気通信事業法では、自前で通信インフラ(電気通信回線設備)を設置して事業を始める場合、登録(厳しい審査あり)になるか、届出(書類提出のみでOK)になるかが、設備の規模によって分けられています。

この「規模」を測るための専用のものさしとして使われるのが、上記の「端末系伝送路設備」と「中継系伝送路設備」というネットワークの構成上の分類になります。

具体的にどのように判断されるのか、2つの基準を見ていきましょう。

基準1:「端末系伝送路設備」は「市町村」をまたぐか

利用者の自宅やスマホから、最寄りの基地局や局舎までを結ぶアクセス回線である「端末系伝送路設備」の場合、基準となる地理的範囲は「市町村」です。

  • 「登録」になるケース: 端末系伝送路設備を、一つの市町村(東京23区などの特別区や、政令指定都市の「区」又は「総合区」を含む)の区域を超えて広範囲に設置する場合
  • 「届出」で済むケース: 端末系伝送路設備の設置が、一つの市町村の区域内にピタリと収まっている場合(たとえば、特定の市の中だけで提供される地域密着型のケーブルテレビのネット回線など)

端末系は利用者に直接つながる「毛細血管」のような回線なので、これが複数の市町村にまたがる規模になれば、社会的な影響力が大きいとみなされて「登録」という重い手続きが必要になります。

基準2:「中継系伝送路設備」は「都道府県」をまたぐか

局舎と局舎の間を結ぶ基幹回線である「中継系伝送路設備」の場合、基準となる地理的範囲は広くなり、「都道府県」となります。

  • 「登録」になるケース: 中継系伝送路設備の設置区間が、一つの都道府県の区域を超えている(複数の都道府県にまたがっている)場合。
  • 「届出」で済むケース: 中継系伝送路設備の設置が、一つの都道府県の中に収まっている場合

中継系は、言わばネットワークの「大動脈」です。大動脈が県境を越えて全国規模でつながるようになれば、国全体の通信インフラに関わるため「登録」が必要になります。

まとめ:参入ハードルのイメージ

 つまり、事業者が新しく通信ビジネスを始めようとして自前で回線を敷くとき、総務省はこう尋ねるわけです。

「あなたが敷くその回線は、『端末系』ですか? それとも『中継系』ですか?」
「もし『端末系』なら、市町村を超えますか?」 「もし『中継系』なら、都道府県を超えますか?」

 このどちらか一方でも「超えます」となれば、国の重要インフラを担う大規模事業者として厳しい審査が伴う登録ルートへ進むことになります。逆に、どちらも超えない小規模な設備であれば、あるいはそもそも自前で回線を設置しない(他社から借りる)のであれば、手軽な届出ルートで事業をスタートできるという仕組みです。

ただし例外として、登録の基準を超える広域な設備であっても、それが「特定の放送(基幹放送)に付随して使われる無線設備」である場合や、「日本国外(本邦外)のみ」に設置される設備である場合は、特例として「届出」で済むルールになっています

 このように、技術的なネットワークの構成部分(端末系か中継系か)と、行政の区画(市町村か都道府県か)を組み合わせることで、「どこからが国が厳しくチェックすべき大規模インフラなのか」という参入規制をシステマチックに判断しています。

結び

このように、電気通信事業法では、単一の「電気通信設備」という言葉を使いながらも、ネットワークの階層(伝送路・交換機)、影響力(事業用)、市場のシェア(指定設備)、設置者(端末・自営)といった多角的なフィルター(分類)をかけています。

別記事で書いている電気通信事業者における修飾語の手法と同じように、これらの分類用語を条文に組み込むことで、「どの事業者の、どの設備に対して、どこまで厳しいルールを適用するか」をピンポイントでコントロールしており、この法律の精緻で面白い構造となっています。

電気通信事業法 - 法律ファンライフ
電気通信事業法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

電気通信事業法

2024/4/6

電気通信事業法|手続不要?電気通信事業法の「適用除外」となる3つの事業類型

個人情報法務 電気通信事業法

2023/11/10

電気通信事業法による外部送信規律|適用対象事業者

個人情報法務 電気通信事業法

2023/10/14

電気通信事業法による外部送信規律|義務の内容(通知・公表義務)

個人情報法務 電気通信事業法

2023/11/7

電気通信事業法による外部送信規律|適用対象となる場面(情報送信指令通信)

電気通信事業法

2024/2/11

電気通信事業法|「電気通信事業」の定義とは?〜3つの要件で読み解く〜

主要法令等

関連団体

-電気通信事業法