電気通信事業法

電気通信事業法|「業規制」の全体像を解説~5つの分類と条文の配列など

今回は、電気通信事業法ということで、この法律における業規制の分類について、これまでの法改正の歴史と法的構造を踏まえつつ見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

業規制の分類

業規制の分類を理解する上で重要なポイントは、「現在の電気通信事業法には、事業者を固定的な枠組み(事業区分)で分類するという考え方が存在しない」という点です。

かつては「第一種電気通信事業」(設備あり・重い規制)と「第二種電気通信事業」(設備なし・軽い規制)という固定的な事業区分があり、どの区分に属するかで一律に規制が課されていました。しかし、2003年(平成15年)の法改正によりこの区分は撤廃されました。

現在の法律では、参入・退出、業務、電気通信設備、紛争処理、土地の使用といった規制の目的(規律の種類)ごとに、市場やネットワーク構造を踏まえ、必要な事業者を個別の条件(その場限りの修飾語)で切り出して適切な規律を課すという、事後規制型の多層的なアプローチを採用しています。

したがって、業規制の分類は「どのような基準で規制の対象を切り出しているか」という5つのレイヤー(次元)に分けて考えるとよいです。

① 市場参入・退出の規制(設備の規模に着目した分類)

市場に参入する際の手続(参入規制)は、自前で設置するインフラ(電気通信回線設備)の規模によって分類されます。

  • 登録を要する事業
    市町村や都道府県をまたぐような、大規模な電気通信回線設備を設置して事業を営む者(回線設置事業者(大規模))
    ⇨登録が必要(事前審査あり)
  • 届出を要する事業
    小規模な設備しか持たない者(回線設置事業者(小規模))、または自前で回線設備を設置せずに他社の回線を借りてサービスを提供する者(回線非設置事業者)
    ⇨届出で足る
  • 適用除外(第3号事業等)
    電気通信回線設備を設置せず、かつ「他人の通信を媒介しない」サービス(自社からのコンテンツ配信など)
    ⇨これらは原則として手続不要で自由な参入が認められます

参入規制については、以下の関連記事でくわしく解説しています。

電気通信事業法|通信ビジネスの「参入規制」を解説~登録・届出制と適用除外など

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② 公共サービス維持のための規制(役務の不可欠性に着目した分類)

提供するサービスが、国民生活に不可欠かどうかに着目し、事業者の契約の自由(私的自治)を修正する業務規制の対象を分類しています。事実上、主にNTT東西が対象となります。

  • 基礎的電気通信役務の提供事業者
    加入電話や緊急通報など、全国あまねく提供されるべきサービスを提供する事業者
    ⇨提供義務を負い、契約約款を総務大臣に事前に届け出る義務があります
  • 指定電気通信役務の提供事業者
    他の事業者によって代替サービスが十分に提供されない役務
    ⇨提供義務を負い、「保障契約約款」の事前届出が必要です
  • 特定電気通信役務の提供事業者
    指定電気通信役務のうち、特に利用者の利益への影響が大きい役務
    ⇨料金を一定水準以下に抑える「プライスキャップ規制」が適用され、基準を超える値上げには認可が必要となります

③ 消費者・プライバシー保護のための規制(社会への影響力に着目した分類)

サービスの利用者数や、利用者への影響の大きさに着目した分類です。

  • 消費者保護ルールの対象(指定された電気通信役務)
    携帯電話やFTTH(光回線)など、利用者への影響が大きいとして総務大臣に指定された役務
    ⇨これを提供する事業者(および代理店)には、契約前の説明義務、契約成立後の書面交付義務、初期契約解除制度(クーリングオフ類似)などが適用されます
  • 指定電気通信事業者(特定利用者情報の適正な取扱い)
    無料サービスであっても月間アクティブ利用者が1,000万人以上などの大規模な検索サービスやSNS、メッセージアプリなどを提供し、社会への影響が大きい事業者は「指定電気通信事業者」として指定されます
    ⇨この分類に入ると、通信の秘密等の「特定利用者情報」を適正に扱うための情報取扱規程の策定や公表などが義務付けられます

④ 競争政策のための規制:非対称規制(市場支配力とボトルネックに着目した分類)

公正な競争環境を作るため、高いシェアを持つ強い事業者にのみ重いルールを課す「非対称規制」の分類です。

  • 第一種・第二種指定電気通信設備を設置する事業者
    固定通信(シェア50%超・NTT東西など)や移動体通信(シェア10%超・大手携帯キャリアなど)のインフラを寡占している事業者
    ⇨接続約款の認可・届出義務や、会計の分離・公表義務が課せられます
  • 禁止行為規制の対象事業者(第30条指定事業者等)
    ⇨自社グループを不当に優遇したり、他社を排除したりすることを防ぐため、接続に関する情報の目的外利用や不当な差別的取扱いが禁止されます(NTT東西やNTTドコモ等が該当)

⑤ ネットワーク安全と特権に関する規制(インフラの重要度に着目した分類)

  • 事業用電気通信設備を設置する事業者
    通信インフラの中核を担う設備を持つ事業者や、大規模回線非設置事業者(利用者100万人以上等のプロバイダ)
    ⇨設備を国の技術基準に適合させる維持義務、自己確認の届出、管理規程の届出、電気通信主任技術者等の選任といった厳格な安全管理規制の対象に分類されます
  • 認定電気通信事業者
    他人の土地や電柱を使用する「公益事業特権」の付与を希望し、総務大臣の認定を受けた事業者
    ⇨強力な特権を得る代償として、指定期間内に事業を開始する義務と、正当な理由なくサービスを拒めない提供義務を負います

まとめ:業規制の分類イメージ

 電気通信事業法における「業規制の分類」を考える際は、

  • 事業者を「あなたはA種、あなたはB種」といった一つの箱に押し込めるのではなく、
  • 「インフラの有無・規模」「サービスの不可欠性や影響力」「市場シェア」「特権の有無」という複数のフィルター(要件)を重ね掛けし、事業の状況がそれぞれの条件(修飾詞)に合致した時にだけ、該当するルールのスイッチがオンになるという「モジュール構造(組み合わせ構造)」になっている

と理解するのがわかりやすく、法的にも正確な捉え方となります。

業規制の条文上の配列

続いて、ここまでに見てきた多層的で複雑な業規制(業務に関するルール)が、実際の法律の条文上でどのような順番で並んでいるのかという、法律の構造(地図)についても見ておきたいと思います。

一般的に、特定のビジネスを規制する「業法」と呼ばれる法律(例えば電気事業法や宅地建物取引業法など)では、「業務」という章や節を設けて、サービス水準や契約約款の認可、消費者保護のための説明義務、そして不適切な営業に対する業務改善命令などを一連の規定として並べる傾向があります。

電気通信事業法もこのスタイルを採用しており、業規制の大部分は「第二章 第三節 電気通信事業者等の業務(第19条〜第40条)」というパートに配列されています。

かつては「第一種電気通信事業者向け」「第二種向け」と事業区分ごとにルールが分かれていましたが、現在は規制緩和と法改正の結果、「規制の目的」ごとにブロック化されて配列されているのが特徴です。

では、具体的にどのように配列されているのか、見ていきましょう。

① 市場参入・退出の規制:第二章 第二節

市場参入・退出の規制は、そもそも事業を始めるための「入場ゲート」の話です。

そのため、日々の業務ルール(第三節)が始まる前の、「第二章 第二節 電気通信事業の登録等(第9条〜第18条)」に配置されています。ゲートを通った人だけが、次の第三節の業務ルールに従うという流れです。

② 公共サービス維持のための規制:第二章 第三節 前半

第三節の最初は、国民生活に不可欠なサービスや代替の効かないサービス(基礎的電気通信役務、指定電気通信役務、特定電気通信役務など)を提供する、特定の事業者(事実上、主にNTT東西)に対する行政関与の強いルールから始まります。

重要なサービスの契約・料金ルール(法19条〜法25条)

全国あまねく提供されるべき「基礎的電気通信役務」など、国民生活に不可欠なサービスを提供する事業者に対する重い義務が、業務ルールのトップバッターとして規定されています。

ここでは、契約約款を事前に国へ届け出る義務(法19条、法20条)や、料金の値上げを規制するプライスキャップ規制(法21条)、適正な料金算定のための会計整理義務(法24条)、そして正当な理由なくサービスを拒めない「提供義務(法25条)」といった、昔ながらの公共的ルールが配列されています。

③ 消費者・プライバシー保護のための規制:第二章 第三節 前半

社会への影響力に着目して利用者を守るという消費者・プライバシー保護のための規制が、続いて置かれています。現代のスマホ・ネット社会に対応するために拡充されてきた部分です。

利用者を守る「消費者保護ルール」(法26条〜法27条の4)

スマートフォンの普及などによるトラブル増加を受けて、規制緩和と入れ違いで拡充されてきた消費者保護規定のブロックです。

ここには、

  • 契約前の「提供条件の説明義務(第26条)」
  • 契約成立後の「書面の交付義務(第26条の2)」
  • クーリングオフに似た「初期契約解除制度(第26条の3)」
  • サービスをやめる際の「業務休廃止の事前周知義務(第26条の4)」
  • 苦情処理義務(第27条)
  • 不実告知や強引な勧誘を禁じる「電気通信事業者等の禁止行為(第27条の2)」

などが配列されています。

これらは一部の例外を除き、基本的には全事業者に共通して適用される現代的なルールです。

利用者情報の保護と、ルールの裏返し「業務改善命令」(法27条の5〜法29条)

消費者保護に続いて、大規模な検索サービスやSNSなどを対象とした特定利用者情報の適正な取扱い外部送信に関する規律といった、プライバシーや通信の秘密を守るための現代的なルールが配置されています。

そして、通信の秘密の漏えいなどが発生した際の事故報告義務(法28条)に続き、業務改善命令(法29条)が置かれています。

実はこの業務改善命令は、「こういう不適切な営業をしてはいけない(該当した場合は改善を命じる)」という違反事由をズラリと列挙することで、電気通信事業者が遵守すべき業務の準則(ルール)を裏返しに示しているという、特徴的な条文になっています。

④ 競争政策のための規制(非対称規制):第二章 第三節 後半

利用者向けのルールの後は、事業者同士がネットワークをつなぐためのルール(B to Bのルール)が続きます。「非対称規制」が中心となるブロックです。

ネットワーク構築と「競争政策(非対称規制)」(法30条〜法39条の2)

市場支配力を持つ大企業に対する競争政策のための規制(非対称規制)が、事業者同士のビジネスルールとしてまとめられています。

市場支配力を持つNTTグループや大手携帯キャリアへの厳しい禁止行為やファイアウォール規制(法30条、法31条)に始まり、他の事業者から接続を求められた際の「接続義務(第32条)」、そして指定電気通信設備に関する接続約款の厳格なルール(法33条、法34条)が配列されています。

また、事業者間の交渉がまとまらない場合に国が介入する「協議命令や裁定」の制度(法35条等)や、電柱などの設備の共用ルール(法37条、法38条)、回線の卸売りルール(法38条の2)など、競争を促すための精緻なルールがここに集約されています。

【補足】インターネットの根幹や国際ルール(法39条の3〜法40条)

 なお、「インターネットの根幹や国際ルール(法39条の3〜法40条)」が、特定の重要サービスや国際関係に関する特則として、業務の節の最後にポツンと置かれています。

 このように第三節の最後は、インターネットの根幹を支える「特定ドメイン名」を提供する事業者への提供義務や会計公表義務(第39条の3)と、外国政府や外国法人等と重要な協定を結ぶ際の「認可」のルール(第40条)で締めくくられます。

⑤ ネットワーク安全と特権に関する規制:第二章 第四節 & 第三章

通信インフラという物理的な「土台」や「特権」に関する規制は、日々のサービス提供(業務)とは分けて規定されています。

安全を守る「事業用電気通信設備」などの技術基準ルールは、業務の節が終わった後の「第二章 第四節 電気通信設備(第41条〜)」に置かれています。

他人の土地を使える「公益事業特権」のルールは、さらに大きな枠組みを変えて「第三章 土地の使用等(第117条〜)」に置かれています。

例外:第三節以外にある「提供義務」

最後に一つ例外があります。業規制の典型ともいえる「事業の開始義務」(法120条)や「提供義務」(法121条)といった条文が、第二章第三節ではなく、第三章(土地の使用等)にポツンと置かれています。

これはなぜかというと、他人の土地を使ったり電柱を立てたりできる強力な「公益事業特権」の認定を受けた「認定電気通信事業者」に対して、その特権を与える代償として特別に課される義務だからです。そのため、業務一般のルールではなく、特権を定めた章の中にセットで配列されています。

まとめ:業規制の配列の流れ

 このように条文の並び順は、最初は「重要なインフラサービスの維持」、次に「利用者の保護とプライバシー」、そして「事業者同士の公正な競争環境の整備」というように、法律が達成しようとしているテーマ(目的)ごとに、モジュールのように綺麗に整理して配列されています。

結び

5つの業規制と条文の配列を重ね合わせると、電気通信事業法が次のような論理的なストーリー(順番)で構成されていることがわかります。

  1. 「誰が事業をやっていいの?」(第二節:参入のレイヤー)
  2. 「事業をやるなら、どんなサービスを提供するの?」(第三節前半:公共サービスと消費者保護のレイヤー)
  3. 「他社とネットワークをつなぐときはフェアーにね!」(第三節後半:競争政策のレイヤー)
  4. 「使う設備(機械)は安全でなければダメだよ!」(第四節:ネットワーク安全のレイヤー)
  5. 「インフラを作るために他人の土地を使うなら特別な特権をあげるよ!」(第三章:特権のレイヤー)

このように、多層的なレイヤー(分類)の概念が、法律の条文上で、「参入 → 業務(対顧客 → 対同業者) → 設備 → 特権」という時間軸や物理的な土台の順に、綺麗に整理されて「配列」されているわけです。このように流れで押さえると、頭に入りやすくなりますよ。

電気通信事業法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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