今回は、契約の一般条項ということで、分離可能性条項について見てみたいと思います。
※「契約の一般条項」というのは、ここでは、いろんな契約に共通してみられる条項、という意味で使っています
契約書を読んでいると、最後の方に、細かいルール(一般条項)がたくさん書かれていますよね。本記事は、その中でもよく見かける分離(可能性)条項(Severability Clause)について、解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
分離可能性条項とは
分離可能性条項とは、契約書の一部が法律違反(強行法規への抵触など)や裁判で無効と判断されても、他の条項や契約全体は有効なまま残すという取り決めのことです。
もともとは英米法圏の契約で使われていた概念(Severability Clause)に由来しています。仮に契約の中に無効な条項が紛れ込んでいたとしても、その無効になった規定だけを契約本体から切り離し(分離)て、契約の大枠はそのまま存続させたいという当事者の合意を示すものです。
無効になってしまった部分だけを契約全体から切り離す(分離する)ことができるため、このように呼ばれています
なぜこの条項が必要なのか
もしこの条項がないと、どうなってしまうのでしょうか。
契約の一部の条項が、法律の改正や裁判所の判決などによって無効(または強制不能)になってしまった場合に、その影響で契約全体が道連れになって無効になってしまうと不都合です。そのため、問題のある箇所だけを切り離し、せっかく結んだ契約の全体的な枠組みを守るために、この条項を念のため設けておく、ということです。
日本の国内取引においては、わざわざこの条項を書かなくても当事者の合理的な意思として同じように解釈されることが多いと考えられていますが、念のために規定しておきます。実際のところは、M&Aに関する契約など重厚な契約書にはほぼ常に入っていますが、通常長さの契約書ではわざわざ入れているケースは多くないという感じです(入っているケースもあります)。
他方、最近の利用規約などには大体入っているような印象です。要するに、契約の種類や形態が何であれ、内容が長ければ長いほど、一応念のため記載しておく意味が出てくると思っておけばよいと思います
ちなみに、仲裁法という法律でも、契約が無効だと判断されたときに仲裁合意まで無効になってしまわないよう、仲裁合意について分離可能性が認められることを定めたルールが存在します。
▽仲裁法13条7項
7 仲裁合意を含む一の契約において、仲裁合意以外の契約条項が無効、取消しその他の事由により効力を有しないものとされる場合においても、仲裁合意は、当然には、その効力を妨げられない。
有効性:万能というわけではない
ではこの条項さえ入れておけば、どんな契約も守られる(もしものときでも残りは生き残る)のかというと、必ずそうとは言い切れません。あらゆる場面で常に有効になるわけではない点には、一応注意が必要です。
具体的には、以下のようなケースでは契約全体が無効と判断される可能性があるとされています。
ひとつは、無効になったのが契約の中核(要素)だった場合です。契約が成り立つための最も重要な要素(中核的事項)自体に無効事由がある場合は、いくら分離条項が盛り込まれていても、契約全体が無効になる可能性があります。
もうひとつは、公序良俗に反したり、著しく不平等になる場合です。無効になった部分が契約の根幹と密接に関わっていたり、残りの部分だけを有効にすると当事者間にひどい不平等が生じてしまうようなケースもあり得ます。このような場合、残りの部分だけを無理に成立させることは公序良俗や信義則に反するとして、結果的に契約全体が無効と判断されることは考えられます。
実際に一部が無効になった場合
契約書の条項は、多かれ少なかれお互いに関連し合って作られています。そのため、一部の条項が無効になって切り離された後、残りの条項だけで、具体的にどのような契約内容になるのかが曖昧になってしまうケースがあり得ます。
いわば、無効とされた部分のルールが消滅すると、そこにぽっかりと穴が空いたような状態になるということです。それで問題ない場合はよいですが、穴を埋める必要がある場合、その埋め方としては、①法律の基本ルールが適用される場合(補充適用や直律的効力)と、②当事者同士で再交渉する場合とが考えられます。
そのため、実際に一部無効という事態が生じた場合は、改めて変更契約書や覚書を締結し、無効な規定を取り除いた後の契約内容を明確にしておく必要が出てくる可能性もあります。
もし一部が無効になったら、元の目的になるべく近い適法なルールを協議により決め直す(代替条項の合意)とか、有効となる限度で自動的に修正・追加されたものとみなすといった規定(みなし規定)がある場合もあります
結び
分離可能性条項は、契約にもしもの事態があったときに備えて契約全体を守るような役割を果たしますが、契約の根本から直さなければならない致命的なケースまでは救えません。
また、無効になったあとの帰趨も重要です。契約書を作成したり確認したりする際は、ぜひこれらのポイントを意識してみてくださいね。
主要法令等・参考文献
民法(債権関係)改正の資料
- 部会資料1~88-2(民法(債権関係)部会資料)(法務省HP)
- 中間試案補足説明(「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」)(法務省HP)
- 中間試案パブコメ(部会資料71)(平成25年12月27日付意見募集の結果)(e-Govパブコメ)
- 要綱(「民法(債権関係)の改正に関する要綱」)(法務省HP)
- 民法の一部を改正する法律案(国会提出法案)(法務省HP)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省HP)
参考文献
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