フリーランス法

フリーランス法|”これ、買ってくれない?”はNG!発注者が守るべき「購入・利用強制の禁止」とは

2024年10月27日

今回は、フリーランス法ということで、発注事業者が守るべきルールのひとつである購入・利用強制の禁止について見てみたいと思います。

フリーランスとして働いていると、いつも仕事を発注しているんだからうちの商品を買ってくれとか、この仕事を受けるならうちの関連会社の保険に入ってくれといったお願い(という名のプレッシャー)を受けたことがあるかもしれません。フリーランス法では、こういった不当な押売りからフリーランスを守るためのルールが定められています。

取引適正化に関する遵守事項

(義務)
① 取引条件の明示義務
② 期日における報酬支払義務
禁止行為
① 受領拒否の禁止
② 報酬の減額の禁止
③ 返品の禁止
④ 買いたたきの禁止
⑤ 購入・利用強制の禁止 ←本記事
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
+ 報復措置の禁止

就業環境整備に関する遵守事項

(義務)
① 募集情報の的確表示
② 育児介護等と業務の両立に対する配慮
③ ハラスメント対策に係る体制整備
④ 中途解除等の事前予告・理由開示

本記事では、何が「強制」に当たるのか、その判断基準と具体的事例などを解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

購入・利用強制の禁止とは

フリーランス法において、1か月以上の期間で行われる業務委託(契約の更新により1か月以上継続して行う場合も含む)を行う特定業務委託事業者(従業員を使用する発注事業者)には、7つの禁止行為が定められています。

そのひとつである購入・利用強制の禁止とは、フリーランスに発注する物品やサービスの品質を維持・改善するためなどの正当な理由がないのに、発注者が指定する物や役務(サービス)を強制して購入・利用させることを指します。

▽フリーランス法5条1項5号

(特定業務委託事業者の遵守事項)
第五条
 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為…(略)…をしてはならない。
 特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

対象となる物と役務

対象となる「自己の指定する物」や「役務」は、業務に使う原材料などにとどまりません。また、関連会社などが販売する商品・提供するサービスも含まれます。

  • :発注事業者やその関連会社・取引先などが販売する自社製品、お歳暮、チケットなど
  • サービス(役務):保険、リース、インターネット・プロバイダなど

▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問80】

 購入・利用強制の禁止の対象となる自己の指定する物及び自己の指定する役務とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

 「自己の指定する物」とは、原材料等だけでなく、特定業務委託事業者又はその関連会社等が販売する物であって、特定受託事業者に購入させる対象として特定した物が全て含まれます。
 「自己の指定する役務」とは、特定業務委託事業者又はその関連会社等が提供するものであって、特定受託事業者に利用させる対象として特定した役務が全て含まれます。
 つまり、購入・利用強制の禁止の対象は、特定業務委託事業者の指定する「」に限らず、例えば、保険、リース、インターネット・プロバイダ等の「サービス」も含まれます。また、自社の製品やサービスだけではなく、自社の取引先である特約店・卸売店又は自社の子会社・関係会社等の製品やサービスも含まれます。

何が「強制」にあたるのか(判断基準)

強制して」とは、単に購入を取引の条件とする場合に限られず、

  • 購入を拒否したら不利益を与える場合
  • 取引関係を利用して、事実上、購入を余儀なくさせていると認められる場合

も含まれます。

ガイドラインを確認してみます。

▽解釈ガイドライン 第2-2-⑵-オ-(イ)

(イ) 強制して
 「強制して」購入させる、又は利用させるとは、物の購入又は役務の利用を取引の条件とする場合や、購入又は利用しないことに対して不利益を与える場合のほか、取引関係を利用して、事実上、購入又は利用を余儀なくさせていると認められる場合も含まれる。…(略)…。

ガイドラインでは、以下のような方法は購入・利用強制に該当するおそれがあるとされています(解釈ガイドライン 第2-2-⑵-オ-(ウ)参照)。

  • 担当者による要請:購買・外注担当者など、取引に影響を及ぼす立場の者が要請すること
  • 目標設定(ノルマ):フリーランスごとに目標額や目標量を定めて要請すること
  • 不利益の示唆:購入・利用しなければ、今後の取引で不利益な取扱い(発注減など)をする旨を示唆すること
  • 執拗な要請:フリーランスが不要であると意思表示したにもかかわらず(または明らかに不要であるのに)、重ねて要請すること
  • 一方的な送付:注文がないのに一方的に商品を送りつけること

「正当な理由」が認められるケース

本号が

 特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、…

とされているように、例外として、正当な理由がある場合には、指定の物やサービスを利用させることが認められています。 具体的には、給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要があるような場合です。

例えば、

  • 指定した特殊な部品や原材料を使わないと、求める品質の製品が完成しない(品質維持)
  • セキュリティの都合上、指定のシステム環境(サービス)を利用して作業してもらう必要がある

といった、業務の目的を達成するために合理的な理由があるケースがこれにあたります。

結び

フリーランス法における購入・利用強制の禁止は、フリーランスが本来負担しなくてよい出費を強いられるのを防ぐためのルールです。 発注事業者は、自社の売上アップや付き合いのために、フリーランスの弱い立場を利用して不要な商品やサービスを押し付けることはできません。

フリーランス側にとっては、仕事をもらっているから断りづらいと泣き寝入りする必要はないということになります。お互いに健全で対等な取引環境を作っていくことが求められます。

次の記事は、不当な経済上の利益の提供要請の禁止についてです。

次の記事
フリーランス法|"ついでにこれもタダでお願い"はNG!発注者が守るべき「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」とは

続きを見る

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム、公正取引委員会HPまたは厚生労働省HPに遷移します
  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
  • 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ
  • 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

リンクをクリックすると、公正取引委員会HPに遷移します
  • ガイドブック(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法