取適法務(分野別)

支払告示|製造委託等特殊指定(支払告示)の「適用要件」を徹底解剖

今回は、支払告示(「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」)ということで、支払告示の適用要件について見てみたいと思います。

この支払告示が適用されるためには、大きく分けて、①取引の内容に関する要件(対象取引)、②取引の主体に関する要件(事業者要件)があります。一つずつ、運用基準の解釈なども交えながら見ていきましょう。

支払告示の施行日は令和9年4月1日です。支払告示が設けられた背景と概要については、関連記事(【令和9年4月施行】新しい特殊指定!製造委託等特殊指定(支払告示)の意義と概要を解説)をご参照ください。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

要件①:どのような取引が対象になるのか(取引の内容)

支払告示の対象となる取引は、取適法2条6項に規定されている製造委託等です。具体的には、以下の5つの取引類型に限定されます。

  • 製造委託:業として行う販売や請け負う製造の目的物(物品、部品、原材料、専用金型・治具など)の製造・加工を他者に依頼すること
  • 修理委託:業として請け負う物品の修理の全部または一部を他者に依頼すること
  • 情報成果物作成委託:ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザイン、文章などのプログラムやコンテンツの作成を他者に依頼すること
  • 役務提供委託:業として行う提供の目的たるサービス(運送、倉庫保管、情報処理など)の提供を他者に依頼すること
  • 特定運送委託:業として行う販売・製造・修理・作成に係る物品を、取引の相手方に運送する行為を他者に依頼すること

【ポイント】「仕様を指定した委託」であること

 単に市場に流通している規格品・標準品(既製品)を購入するだけの取引は、原則としてこの告示の対象外です。 発注者が給付に係る仕様、内容等を指定して作らせたり、サービスを提供させたりする”オーダーメイド”の要素があって初めて委託となります(※規格品であっても、自社専用のロゴを刻印させる、特定のサイズにカットさせるなどの加工を行わせる場合は、その部分から委託に該当します)。

要件②:誰と誰の間の取引に適用されるのか(事業者要件)

取引の内容が製造委託等に該当する場合、次に、誰が発注し、誰が受注しているかという当事者の関係性が問われます。

支払告示が新設されたのは、取適法における事業者の規模要件から外れる取引にも一定の規制の網をかけるためですので、取適法のような規模要件はありません。しかし、全くの無限定でもありません。以下、内容を確認していきましょう。

委託事業者(発注者)

製造委託等をした法人または個人たる事業者が対象です。

ただし、国や地方公共団体、および「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」の適用を受ける事業者は対象から除外されます(これらは別の法律で規制されているためです)。

▽支払告示(抜粋)

製造委託等製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号。以下「取適法」という。)第二条第六項に規定する製造委託等をいう。をした事業者(国及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十四条に規定する者を除く。以下「委託事業者」という。)が、…

受託事業者(受注者)

保護対象となるのは、委託事業者から製造委託等を受けた事業者のうち、「取引上の地位が当該委託事業者に対して劣っていないと認められる者」を除いたすべての事業者です。

▽支払告示(抜粋)

…当該製造委託等を受けた事業者(その取引上の地位が当該委託事業者に対して劣っていないと認められる者除く。以下「受託事業者」という。)に対し、…

では、 「取引上の地位が劣っている」かどうかは、どうやって判断するのでしょうか。支払告示運用基準では、以下の4つの要素を勘案して個別具体的に判断するとしています。

判断要素具体的な検討内容
(1) 取引依存度受託事業者の売上高全体に占める、その委託事業者との取引額の割合(依存度が高いほど劣りやすい)
(2) 委託事業者の市場地位委託事業者の業界におけるシェアの大きさや、その順位
(3) 取引先変更の可能性他の取引先へ乗り換えることが現実的に可能か、またはその取引のために専用の設備・システム投資(金型等)を行っているか
(4) その他必要性を示す事実当事者間の事業規模(資本金・売上高・従業員数)の格差、その取引を失うことが受託事業者の経営に与える影響の大きさなど

注意点:規模が「同等以上」でも適用される

運用基準では、受注者の事業規模が発注者に比べて小さい場合、支払を先延ばしにされている事実そのものが「地位が劣っていること」の推認となり、特段の事情がない限り受託事業者に該当する(=告示が適用される)とされています。

もう一つ注意すべきは、受注者の事業規模が発注者と同等、あるいはそれ以上であったとしても、その発注者に対する取引依存度が高かったり、取引の継続が経営上不可欠であったりする場合には、やはり「地位が劣っている」(=受託事業者に該当する)と判断され、支払告示が適用される可能性があるという点です。例えば大企業同士の取引であっても、完全に油断はできないのがこのルールの特徴です。

▽支払告示運用基準 第1-2

したがって、当該委託事業者に比して事業規模が小さい事業者が、当該委託事業者による告示に規定する行為を受け入れている場合には、その取り扱う商品又は役務が高い希少性を有するなどの具体的事実を総合的に勘案して特段の事情が認められる場合を除いて、一般に当該事業者は告示の受託事業者に該当する。また、当該委託事業者と事業規模が同等以上の事業者であっても、直ちに「取引上の地位が当該委託事業者に対して劣っていない」と認められるものではなく、その他の具体的事実を総合的に勘案して判断されることとなり、例えば、当該委託事業者に対する取引依存度が高いことや、当該委託事業者を取引先とすることが重要であることなどは、取引上の地位が当該委託事業者に対して劣っていることを示す要素として考慮される。

結び

本記事のハイライトをまとめます。

支払告示の適用要件(チェックフロー)

  • 取引の内容(対象取引):
    ・その取引は、仕様を指定した「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」「特定運送委託」のいずれかに該当するか?(既製品の購入等でなければ該当)
  • 取引の主体(事業者要件):
    ・発注者は事業者(国等を除く)か?
    ・受注者は、自社に対して「取引上の地位が対等またはそれ以上」といえる根拠(代替取引先の豊富さ、自社の依存度の低さなど)があるか?(ない場合は、受託事業者として告示が適用されます)

これらの適用要件を満たす場合、支払告示の適用対象となり、委託事業者には代金の支払遅延の禁止という禁止行為(60日ルール)が課されます。

支払告示|適用対象になるとどうなる?禁止行為(60日支払ルール)と法的構造について解説

適正取引の監視の目は、取適法の改正とともにこの支払告示の制定によって、より厳しくなることが予想されます。自社の発注取引のなかに、要件に合致する60日超支払が眠っていないか、早めに洗い出しを進めておくことが望まれます。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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支払告示|製造委託等特殊指定(支払告示)の「適用要件」を徹底解剖

主要法令等

  • 独占禁止法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)
  • 物流特殊指定(「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」)〔令和8年1月1日施行版〕
  • 物流特殊指定〔※令和9年4月1日施行版〕
  • 支払告示(「製造委託等に係る代金の支払に関する不公正な取引方法」)〔※令和9年4月1日施行〕
  • 支払告示運用基準(「『製造委託等に係る代金の支払に関する不公正な取引方法』の運用基準」)〔※令和9年4月1日施行〕
  • 令和8年6月17日パブコメ(改正物流特殊指定・支払告示・改正優越ガイドライン等の意見公募手続における意見の概要及びそれに対する考え方)|e-Govパブリックコメント(≫掲載ページ

参考資料

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