電気通信事業法

電気通信事業法|「電気通信事業者」の定義と分類

今回は、電気通信事業法ということで、「電気通信事業者」とはそもそも法律上で誰を指すのか?という定義について見てみたいと思います。

実は、「通信サービスを提供している会社=すべて電気通信事業者」というわけではありません。法的な定義を紐解くと、その理由がわかります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

法律上の定義(法2条5号)

電気通信事業法2条5号において、「電気通信事業者」は次のように定義されています。

 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による届出をした者をいう。

つまり、法律上の「電気通信事業者」となるのは、電気通信事業を営むために国(総務大臣)に対して「登録」か「届出」のいずれかの法定手続を完了し、適法に市場に参入した者だけ、ということになります。

前提となる「電気通信事業」「電気通信役務」の定義

登録や届出の手続をする前提として、そもそも行っているビジネスが「電気通信事業」に該当していなければなりません。法律ではこれらも定義されています。

  • 電気通信事業(法2条4号):電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業
  • 電気通信役務(法2条3号):電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること

要するに、自前の業務のため(自己の需要)ではなく、通信インフラやサーバーなどの設備を使って、自分以外の誰か(他人)のために通信サービスを提供するビジネスを行っていることが出発点となります。

法的構造のポイント:「手続をしていない者」は事業者ではない

この定義から導き出される重要なポイントがあります。それは、ネットや通信のサービスを提供していても、登録や届出の手続を行っていない(行う必要がない)者は、法律上の「電気通信事業者」には該当しないということです。

たとえば、次のようなケースです。

  • 「自己の需要」のため:非該当のケース
    企業内のLANや、自社製品のオンライン販売サイトなど、自分たちの業務を遂行するための手段としてネットワークを構築・利用している場合は、そもそも「他人の需要に応ずる」電気通信事業に該当しないため、事業者にはなりません
  • 「第三号事業」等にあたる:適用除外のケース
    自前で回線を持たず、他人の通信を媒介しないサービス(自社サーバーからの一方的な動画配信サイトなど)は「第三号事業」と呼ばれ、原則として電通法上の手続(登録・届出)の対象外となっています。手続をしていないため、法的な「電気通信事業者」ではありません

【ポイント】重要な例外ルール(通信の秘密の保護)

 なお、法律上の「電気通信事業者」に該当しない適用除外のサービス(第三号事業など)であっても、他人の通信を取り扱う以上、憲法の要請でもある検閲の禁止(法3条)通信の秘密の保護(法4条)という重要ルールだけは例外的に適用される、というセーフティネットが張られています。

補足:地方公共団体の「みなし電気通信事業者」

もう一つ法的に面白い仕組みとして、地方公共団体(市町村など)が地域住民向けに非営利でケーブルテレビやインターネット接続サービスなどを提供するケースがあります。地方公共団体は営利目的の「事業を営む」わけではないため、本来は電気通信事業者には該当しません。

しかし、利用者が不特定多数で広範囲にわたる場合、民間サービスと同様に利用者保護の必要性が生じます。そのため、一定規模の非営利事業を行おうとする地方公共団体には総務大臣への「届出」を求め、届出をした地方公共団体は法律上「電気通信事業者とみなす」(非営利届出電気通信事業者)という特別ルール(法165条)が存在しています。

▽電通法165条1項(※「…」は管理人が適宜省略)

(営利を目的としない電気通信事業を行う地方公共団体の取扱い)
第百六十五条
 営利を目的としない電気通信事業(内容、利用者の範囲等からみて利用者の利益に及ぼす影響が比較的大きいものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する電気通信事業に限る。)を行おうとする地方公共団体は、総務省令で定めるところにより、第十六条第一項各号に掲げる事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない
 前項の規定による届出をした地方公共団体は、第十六条第一項の規定による届出をした電気通信事業者とみなす。ただし、…(略)…の規定の適用については、この限りでない

まとめ:「電気通信事業者」のイメージ

 このように、電気通信事業法における「電気通信事業者」とは、世間一般の”通信ビジネスをやっている会社”というふんわりした意味ではなく、他人の需要に応える通信サービスを提供し、法律で定められた「登録」または「届出」の要件を満たして市場に参入した者という、ステータスを示す言葉となっています。

電気通信事業者の分類の仕方

続いて、電気通信事業法における「電気通信事業者」の分類について見てみましょう。

1985年の通信自由化当初は、自前で回線設備を持つ「第一種電気通信事業」と、持たない「第二種電気通信事業」という事業区分がありました。しかし、2003年の法改正(2004年施行)によりこの区分は撤廃され、法律上はすべて単一の「電気通信事業者」という名称に統一されました。

現在の電気通信事業法は、すべての事業者を一律に扱うのではなく、設備の有無や規模、市場への影響力、提供するサービスの性質など、様々な要素の有無に着目してそれぞれの規制に応じた修飾語を付すことで事業者を分類し、それぞれに応じた義務や特権を多層的に規定する手法を採用しています。

つまり、電気通信事業法は、法律上の固定的な事業区分(名前)を廃止した代わりに、個別の条文の適用対象を定める際、「○○である」という修飾語を「電気通信事業者」という言葉の前につけることで、そのルールの対象となる事業者を特定・分類しています

具体的にどういうことか、背景と実例を交えて解説します。

なぜ修飾語が必要になったのか(背景)

上記のように、2003年(平成15年)の法改正により、競争促進や事業展開の柔軟性を高めるために第一種・第二種という事業区分は撤廃され、法律上はすべての事業者を単一の「電気通信事業者」という名称に統一することにしました。

とはいえ、巨大なインフラを持つ大企業と、設備を持たずにサービスを提供するだけの小規模な事業者を、法律で全く同じように扱うわけにはいきません。事業者の規模や設備の有無など、それぞれの要素に応じて課すべき義務や与えるべき特権を変える必要は残りました。

そこで採用されたのが、すべての事業者を「電気通信事業者」と呼びつつも、規制や特権を定める個別の条文ごとに、特定の条件を示す修飾語をくっつけて対象を絞り込むという手法です。

修飾語の具体例

法律の条文(法文)では、特定の規制や特権を適用したい対象を指定するために、たとえば次のような修飾語が使われています。

  • 「電気通信回線設備を設置する」電気通信事業者
    →この修飾語をつけることで、いわゆる「回線設置事業者」だけを対象に絞り込み、他事業者からの接続の原則応諾義務や、電気通信設備の技術基準適合維持義務、他人の土地などを利用できる「公益事業特権」の認定対象となることなどを規定しています
  • 「基礎的電気通信役務を提供する」電気通信事業者
    →この修飾語をつけることで、国民生活に不可欠なサービス(固定電話や緊急通報など)を提供する事業者(主にNTT東西)を対象に絞り込み、役務の提供義務や契約約款の届出義務などを課しています
  • 「第一種指定電気通信設備を設置する」電気通信事業者
    →この修飾語をつけることで、固定アクセス回線で圧倒的なシェアを持つ事業者(事実上NTT東西)を対象に絞り込み、接続約款の認可義務や、他社への不当な差別的取扱いの禁止といった重い行為規制を課しています
  • 「第二種指定電気通信設備を設置する」電気通信事業者
    →この修飾語をつけることで、移動体通信(携帯電話)のアクセス回線で一定のシェアを持つ事業者(ドコモ、au、ソフトバンク等)を対象に絞り込み、接続約款の届出義務などを課しています

まとめ:電気通信事業者の実質的な分類

 このように電気通信事業法では、「第一種」「第二種」といった固定的な肩書きを事業者に与える代わりに、条文ごとに「こういう設備を持っている」「こういうサービスを提供している」といった条件(修飾語)を付け足すことで、ルールを適用するターゲットをその都度絞り込む法形式を採用しています。

 これにより、現在の電気通信事業法は「電気通信事業者」という一つの器の中に多種多様な事業者を包み込みながら、それぞれにふさわしい重さのルールを、柔軟かつ多層的に適用する仕組みになっています。

具体的な分類

主な分類の観点は、以下のとおりです。

  • インフラ(設備)の有無と規模による分類
  • 公益事業特権の有無による分類
  • 市場支配力(シェア)に着目した分類(非対称規制)
  • 役務の公共性・社会的重要度に着目した分類
  • その他の現代的な分類

01|インフラ(設備)の有無と規模による分類

事業者が自ら通信インフラを設置しているかどうか、またその規模がどの程度かという、最も基本的な分類です。

回線設置事業者と回線非設置事業者

回線設置事業者とは、電気通信回線設備を設置して電気通信役務を提供する電気通信事業者のことです。自ら回線や基地局を保有(あるいは長期的な使用権であるIRUにより確保)する事業者を指します。

これらの事業者には、原則的な相互接続の応諾義務、事業用電気通信設備に対する技術基準適合維持義務や自己確認義務、電気通信設備統括管理者・電気通信主任技術者の選任義務など、ネットワークの基盤を支えるための重い規律が課せられます。

回線非設置事業者とは、自ら電気通信回線設備を設置せず、他社の回線を借りてサービスを提供する事業者のことです。MVNO(格安スマホ事業者)やプロバイダ(ISP)などが該当します。回線設置事業者に課せられる接続義務や公益事業特権の適用対象外となりますが、他事業者との接続や卸電気通信役務契約に関する協議命令・裁定の対象にはなります。

なお、「回線設置事業者」「回線非設置事業者」というのは通称であり、電通法にこの用語がそのまま出てくるということではありません

登録事業者と届出事業者(参入手続による分類)

登録事業者とは、回線設置事業者のうち、複数の市町村にまたがるアクセス回線など、一定の大規模な電気通信回線設備を設置する事業者です(行政法学上の「許可」に相当)。

届出事業者とは、小規模な回線設備しか設置しない事業者、および回線非設置事業者です。総務大臣への届出のみで足ります。MVNOなどがこれに該当します。

事業者の分類と参入手続の関係

事業者の分類 参入手続
回線設置事業者 大規模 登録
小規模 届出
回線非設置事業者 届出

02|公益事業特権の有無による分類

認定電気通信事業者

回線設置事業者のうち、他人の私有地に電柱を建てたり、道路や河川などの公有地等を利用したりするための強力な権限(公益事業特権)を希望し、総務大臣の認定を受けた事業者です。

認定を受けるためには「経理的基礎及び技術的能力」や「事業計画の確実性・合理性」といった厳しい審査をクリアする必要があります。この特権を得る代償として、指定期間内に事業を開始する「事業開始義務」と、正当な理由なくサービスを拒めない「提供義務」を負うことになります。

03|市場支配力(シェア)に着目した分類(非対称規制)

ネットワーク産業特有のボトルネック設備や市場における高いシェアを持つ事業者に対しては、他社を排除しないよう特別な名称を与え、厳格な「非対称規制」を課しています。

第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者

固定端末系伝送路(固定系の加入者回線)で都道府県内のシェアが50%を超える設備を設置する事業者です。事実上、NTT東日本とNTT西日本が該当します。

接続約款を定めて総務大臣の認可を受ける義務や、接続料の算定において「長期増分費用方式」といった厳格な原価算定ルールに従う義務、他社への不当な差別的取扱いの禁止、役員の兼任禁止、接続部門と自社営業部門を分離するファイアウォール規制などの重い禁止行為規制が課せられます。

第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者

移動体通信(携帯電話)のアクセス回線で業務区域内のシェアが10%を超える設備を設置する事業者です。NTTドコモ、au(KDDI等)、ソフトバンクの三大グループなどが該当します。

接続約款を定めて総務大臣へ届け出る義務や、接続に関する会計を整理し公表する義務などを負います。

法30条1項の規定により指定された電気通信事業者

第二種指定電気通信設備を設置する事業者のうち、収益ベースのシェアが一定以上(実務上は原則40%超、または25%超で市場支配力が認められる場合)で、適正な競争関係を確保するために指定された事業者です。

事実上NTTドコモが該当し、自社グループ(特定関係法人)への不当な優先的取扱いや優遇が禁止されます。

04|役務の公共性・社会的重要度に着目した分類

提供するサービスが国民生活に与える影響の大きさに応じて、利用者保護のための規制が重くなります。事実上、これらは主にNTT東西が対象となります。

基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)提供事業者

国民生活に不可欠であまねく日本全国で提供されるべき役務(加入電話、緊急通報、公衆電話など)を提供する事業者です。

正当な理由なく提供を拒めない提供義務を負い、提供条件について契約約款を総務大臣へ事前に届け出る義務があります。また、赤字を補填するための「ユニバーサルサービス支援制度」における交付金の受給資格となる「適格電気通信事業者」として指定される場合があります。

指定電気通信役務提供事業者

第一種指定電気通信設備を用いて提供され、代替サービスが十分にないため、適正な提供条件を保障する必要がある役務(NTT東西の固定電話など)を提供する事業者です。保障契約約款の届出義務と提供義務を負います。

特定電気通信役務提供事業者

指定電気通信役務のうち、特に利用者の利益への影響が大きいサービス(加入電話、ISDN等)を提供する事業者です。

この事業者には「プライスキャップ規制」が適用され、総務大臣が設定する基準料金指数(消費者物価指数や生産性向上見込率を加味した上限)を超える料金を設定する場合には、届出ではなく認可が必要となります。

05|その他の現代的な分類

通信環境の高度化やインターネットの普及に伴い、新たに追加された分類です。

大規模回線非設置事業者(法41条4項指定事業者)

自前の回線設備を持たないプロバイダ等であっても、利用者数が100万人以上などの大規模な有料サービスを提供する事業者については、事故による社会的影響の大きさから、特例として事業用電気通信設備の技術基準適合維持義務管理規程の策定義務の対象として指定されます。

特定ドメイン名電気通信役務提供事業者

インターネットのドメイン名(「.jp」など)の名前解決サービスのうち、確実かつ安定的な提供を確保する必要があるものを提供する事業者です。

これらは通常「第三号事業(届出不要)」に該当する形態ですが、その重要性から例外的に事業用電気通信設備の対象とされ、技術基準の代わりに国際的な標準への適合維持義務や、管理規程の届出、電気通信設備統括管理者の選任義務が課せられます。

基礎的電気通信役務の負担事業者(接続電気通信事業者等)

ユニバーサルサービス制度を支えるため、前年度の収益が10億円を超える電気通信事業者は、適格電気通信事業者を支援するための負担金(ユニバーサルサービス料)を納付する義務を負います。

結び

このように、電気通信事業法上の「電気通信事業者」は、ただ事業を営んでいるというだけでなく、「インフラ設備の有無」「他人の土地を使う特権の有無」「市場シェア(独占・寡占度)」「サービスの公共性」といった複数のレイヤー(層)によって細かくラベリングされ、それぞれの立場にふさわしい義務と責任が課される精緻な法的構造になっています。

今回は、電気通信事業法ということで、「電気通信事業者」の定義と分類について見てみました。

電気通信事業法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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