取適法

取適法解説|意外と身近?「修理委託」の定義と2つの類型

今回は、取適法ということで、適用対象取引のうち修理委託について見てみたいと思います。

取適法では、立場の格差から濫用が行われがちな5つの取引類型を適用対象として定めており、その一つに修理委託があります。

適用対象となる取引の内容

① 製造委託
修理委託 ←本記事
③ 情報成果物作成委託
④ 役務提供委託
⑤ 特定運送委託

当社は製造業じゃないから関係ない、あるいは修理業者だけの話と思われがちですが、実は自動車ディーラーやビルメンテナンス業、さらには自社設備を自社で直している工場など、意外な業種が対象になるケースもあります。

本記事は、取適法における修理委託の定義と、該当する2つの類型について解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

修理委託とは

取適法における修理委託とは、事業者が他の事業者に対し、物品の修理を委託することを指します。

「修理」

ここでいう「修理」とは、元来の機能を失った物品に一定の工作を加え、元来の機能を回復させることをいいます。

例えば、単なる点検や清掃は役務提供委託になる可能性がありますが、部品交換や修繕を行って機能を直す行為は修理委託となります。

「物品」

製造委託と同様、「物品」とは有体物をいいます。

旧下請法運用基準では動産とされていましたが、運用基準の改定により取適法下では単に有体物とされ、不動産も含まれるようになりました(対象の拡大。趣旨については後述の注意点参照)

修理委託の2つの類型

修理委託には、以下の2つの類型があります。

  • 物品等の修理再委託
  • 自家使用物品の修理委託

のように、2類型があります。

類型1:物品等の修理再委託(業として請け負う修理の再委託)

事業者が、顧客から業として請け負った修理を、さらに別の事業者に委託するケースです。

条文の文言でいうと、

「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

とされています(法2条2項)。

ここでいう「請け負う物品の修理」には、事業者が販売する物品について保証期間中に顧客に対して行われる修理も含まれます。

具体例

  • 自動車ディーラー: ユーザーから事故車の修理を請け負い、その板金塗装作業を提携先の板金業者に委託する
  • 家電メーカー(保証期間中の修理): 自社製品の修理を請け負っている場合、保証期間中にユーザーに対して無償で行う修理であっても、その作業を修理業者に委託すれば対象となります
  • ビルメンテナンス業者: ビルのオーナーから請け負ったメンテナンス業務のうち、エレベーターや自動ドアの部品交換などの修理作業を専門業者に委託する(※建設工事に該当する修理作業は除かれます)

類型1:物品等の修理再委託

  【発注者】
修理請負 ↓
  【委託事業者】(=元請)
     ↓ 修理再委託
  【中小受託事業者

類型2:自家使用物品の修理委託

事業者が、自社で使う物品を業として修理している場合に、その修理の一部を外部に委託するケースです。

条文の文言でいうと、

「事業者がその使用する物品の修理業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること」

とされています(法2条2項)。

具体例

  • 工場を持つメーカー: 自社工場で使用する工作機械や工具のメンテナンス・修理を専門に行う部署(保全課など)があるが、繁忙期や専門的な作業について、その修理の一部を外部の修理業者に委託する

見慣れない用語であるため「自家使用」の意味がイメージしづらいですが、これは、外部への販売を目的にするのではなく、自社で使用することを指します(自社で使用=「自家使用」)。

ここでのポイントは、「自社でも業として修理を行っている」という点です。

もうひとつ注意点として、この類型に該当するのは、自社で「業として」修理している場合です。例えば、修理に必要な設備を持っていたり、修理に必要な技術を持った技術者がいたりしても、実際にその物品を業として(反復継続して)修理していない場合は、この類型には該当しません(「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当しない)。

また、単に「会社のエアコンが壊れたから修理業者を呼んだ」というだけでは、通常は修理を業として行っているわけではないため、この類型には当たりません。

類型2:自家使用物品の修理委託

  【委託事業者
自社で業として修理している・・・・・・・・・・自家使用の物品
   ↓ 修理委託
 【中小受託事業者

注意点:建設工事との関係

「修理」と似た概念に「建設工事」(建物の修繕など)がありますが、建設業法上の建設業者が請け負う「建設工事」については、建設業法で規制されるため、取適法の対象外となります。

取適法において「物品」に不動産が含まれるようになったため、パブコメで以下のような意見が出されていました

▽令和7年10月1日パブコメ ⑹物品の解釈に関する意見について【No.300】

 「物品」の定義は、現行の運用基準では動産に限り、不動産は含まれないものとされていたが、運用基準案において「有体物」と変更されたことにより、「不動産」も「物品」に含まれると解釈できる。例えば、修理委託の類型の中に「不動産の修理」が含まれることとなり、本法の適用対象となる取引が拡大されると考えられる。この解釈の変更は企業の取引や行動に影響を与えるため、定義の変更の趣旨および具体的な内容について明確にすべきである。
 …(略)…。

 運用基準において、「「物品」とは、有体物をいう。」とした趣旨は、例えば、建売事業者が建物を構成する資材・部材の製造を
委託する取引が製造委託に該当し、本法の対象となるかが必ずしも明確ではなかったことから、そのような取引が本法の対象となるという解釈を明確化するため
です。
 なお、建設業法に規定される建設業を営む者が業として請け負う建設工事は、本法の対象となりません

ただ、建設工事に該当しない修理を委託する場合は、取適法の対象となる可能性がありますので、留意が必要です。

▽取適法テキスト 1-⑶【Q6】

 ビルメンテナンス業者が、業として請け負うエレベーターや自動ドアの修理作業を、修理業者に委託する場合、本法の適用対象となるか。

 ビルメンテナンス業者が、業として請け負うエレベーターや自動ドアの部品交換等の作業であって、建設工事に該当しないものを、他の事業者に委託する場合には、修理委託(類型1)又は役務提供委託に該当する。
 他方で、ビルメンテナンス業者が、業として請け負う故障したエレベーターや自動ドアの改修作業等の作業であって、建設工事に該当するものを、他の事業者に委託する場合には、本法は適用されない

結び

修理委託は、修理をビジネスとしている企業(自動車整備、家電修理、時計修理など)はもちろん、自社設備のメンテナンスを内製化している製造業にとっても関わりのある取引類型といえます。

もし修理委託に当てはまる場合は、発注書の交付等(4条明示)や60日以内の支払といった遵守事項が発生しますので、見落としがないよう確認しましょう。

次の記事は、情報成果物作成委託についてです。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

  • 取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)
  • 取適法施行令(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」)
  • 4条明示規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」)
  • 7条記録規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」)
  • 遅延利息利率規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の率を定める規則」)
  • 取適法運用基準(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」)
  • 取適法Q&A(「よくある質問コーナー(取適法)」)
  • 令和7年改正法 説明資料(「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 令和7年10月1日パブコメ(同日付け「「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」)|e-Gov(≫掲載ページ

参考資料

  • 取適法ガイドブック(「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」(公正取引委員会・中小企業庁))
  • 取適法テキスト(「中小受託取引適正化法テキスト」〔令和7年11月版〕(公正取引委員会・中小企業庁))

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