今回は、電気通信事業法ということで、「電気通信事業」の法的な定義について見てみたいと思います。
通信やインターネットを使っているビジネス=すべて電気通信事業、というわけではありません。本記事では、法律上どのような活動が「電気通信事業」に当てはまるのか、法2条4号の定義をベースに、3つの要件に分解して解説していきます。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
法律上の定義(法2条4号)
電気通信事業法において、「電気通信事業」は次のように定義されています。
四 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第百十八条第一項に規定する放送局設備供給役務に係る事業を除く。)をいう。
この一文の中に、ビジネスが電気通信事業に該当するかどうかを判断するための3つのハードル(要件)が読み取れます。
なお、カッコ内の「放送局設備供給役務」は、放送事業に係る特殊な例外ですので、本記事では割愛します
要件①:「電気通信役務」を提供していること
第一の要件は、提供しているサービスが「電気通信役務」に該当することです。
法律上、「電気通信役務」とは「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること」と定義されています(法2条3号)。
これには大きく2つのパターンがあります。
- 他人の通信を媒介する:
AさんとBさんという「他人同士」の通信を、内容を変更することなく仲介・伝送することです。電話やメール、メッセージアプリなどがこれに当たります - 電気通信設備を他人の通信の用に供する:
他人の通信を媒介しなくても、自社の通信インフラやサーバーを他人の通信のために使わせるケースです。この場合の「他人」には、サービス提供者(自社)と利用者(他人)の間の通信も含まれます。例えば、自社のサーバーから利用者に動画やニュースを配信するようなサービスもここに含まれます
ただ、イメージとしては、とにかく電気通信設備を他人の通信の用に供していれば、「電気通信役務」にあたります。
他人の通信を媒介するタイプの電気通信役務が、古典的に中核であったため(わかりやすい例では電話)、文言でもその記載(①)がありますが、他人の通信を媒介するものに限られません(②)。
要件②:「他人の需要」に応ずるために提供していること
第二の要件は、「他人の需要」を満たすために提供していることです。ここがビジネスモデルを判断する上で重要な分かれ目になります。
自分たち自身の業務のために通信を使っている場合(「自己の需要」)は、他人の需要に応じているわけではないため、電気通信事業にはなりません。 例えば、次のようなケースは「自己の需要」とみなされ、電気通信事業から外れます。
- 鉄道会社が駅同士を専用の通信網で結び、社内の座席指定システムを運用するケース
- 小売業者が自社製品を販売するためのオンラインショップ(ECサイト)を運営するケース
∵通信は使っていますが、それはあくまで「自社の商品を売る」という本来業務の遂行手段にすぎないため
逆に、「通信サービス(情報の送信)を提供すること自体」が独立したビジネスの目的となっており、他人のニーズを満たしている場合は「他人の需要に応ずる」に該当します。なお、サービス自体が無料で提供されていても、広告収入等で実質的に利益を得ようとする目的や積極的な提供意思があれば、これに該当し得ます。
要件③:反復継続的に行う「事業」であること
第三の要件は、主体的・積極的な意思をもって同種の行為を反復継続的に行う「事業」であることです。
したがって、次のような場合は「事業」とはみなされず、電気通信事業にはなりません。
- 緊急・一時的なもの:大災害時などに一時的・緊急で通信設備を貸し出すような場合
- 他のサービスに完全に付随するもの:例えば、ホテルが宿泊サービスの一部として客室に電話やインターネット接続を提供している場合
∵これはあくまで「宿泊」というメインのサービスに付随するものであり、通信の提供だけを切り出して独立した「事業」とはみなされないため
結び
このように、法律上の「電気通信事業」とは、単にネットや通信機器を使っているビジネスのことではありません。
- 電気通信設備を使って通信サービス(役務)を提供し
- それが自社の業務の単なる手段(自己の需要)ではなく、他人のニーズを満たすためのものであり
- 独立したビジネスとして反復継続的に行われている(事業である)
この3つの要件をすべてクリアして初めて、法的な「電気通信事業」の土俵に乗ることになります。
そして、この土俵に乗った上で、自前の回線設備の有無やサービスの仕組み(媒介するかどうか)に応じて、「登録事業者」や「届出事業者」になったり、あるいは「第三号事業」として参入手続が不要な適用除外になったりするというのが、法的構造の全体像になります。
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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