電気通信事業法

電気通信事業法|通信ビジネスの「参入規制」を解説~登録・届出制と適用除外など

今回は、電気通信事業法ということで、その参入規制について見てみたいと思います。

電通法の第二章第二節(法9条〜法18条)に規定されている部分になります。法律の変遷や構造を知ると、通信業界の成り立ちや国の競争政策が透けて見えてきて面白いですよ。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

かつての「第一種・第二種」事業区分から現在の「登録・届出制」への移行

電気通信事業の参入規制の法的構造を理解するには、少しだけ歴史を振り返るのが近道です。

1985年の通信自由化から長らく、日本の電気通信事業は、自前で回線設備を持つ「第一種電気通信事業」(国による厳しい許可制)と、他社の回線を借りてサービスを提供する「第二種電気通信事業」(事業規模等に応じた届出・登録制)に区分されていました。

しかし、インターネットの普及やIP化技術の進展により、回線設備の有無による事業の性質の違いが薄れてきました。そこで競争をより一層促進するため、2003年(平成15年)の法改正により、この「第一種・第二種」という事業区分は撤廃されました。

現在の法律では、事業の形態ではなく「自ら設置する電気通信回線設備の規模」にのみ着目した「登録制」と「届出制」というシンプルな二元管理のルールへと移行しています。

参入規制:登録(法9条)と届出(法16条)

では、現在の参入規制を要件とともに見てみましょう。

① 大規模インフラを担う「登録制」(法9条)

広域にわたる大規模な通信インフラを自前で構築して事業を営む者(大規模な回線設置事業者)は、総務大臣の登録を受ける必要があります(法9条)。

行政法学上はかつての第一種事業と同じ「許可」に相当しますが、法改正による規制緩和により、昔の許可基準であった「事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力」の審査は撤廃されました。現在の登録審査では、通信関係法令違反などの定型的な「欠格事由」に該当しないことや、事業が「電気通信の健全な発達のために適切か」といった点のみがチェックされます。

▽電通法9条1項

(電気通信事業の登録)
第九条
 電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 その者の設置する電気通信回線設備(送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備及びこれと一体として設置される交換設備並びにこれらの附属設備をいう。以下同じ。)の規模及び当該電気通信回線設備を設置する区域の範囲が総務省令で定める基準を超えない場合
二 その者の設置する電気通信回線設備が電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第七条第二項第七号に規定する基幹放送に加えて基幹放送以外の無線通信の送信をする無線局の無線設備である場合(前号に掲げる場合を除く。)

条文の構造としては、「電気通信事業を営もうとする者は、原則として総務大臣の「登録」を受けなければならない。ただし、次の1号と2号のどちらかに当てはまる場合は、この限りでない(=登録は不要であり、手軽な「届出」でよい)」という例外規定の作りになっています。

それぞれを簡単に説明すると、以下のようになります。

  • 1号:通信設備の規模が「小規模」な場合
    自前で設置する通信インフラ(電気通信回線設備)の規模やエリアが、総務省令で定める基準を超えない場合です。具体的には、「端末系伝送路設備なら一つの市町村内に収まる」「中継系伝送路設備なら一つの都道府県内に収まる」といった、地理的な範囲が限定された小規模なネットワークがこれに該当します
  • 2号:テレビやラジオなどの「放送用設備」を使って通信を行う場合
    自前で設置する通信インフラが、電波法に規定される「基幹放送(テレビやラジオの放送)」を行うための無線設備であり、その放送に付随して通信サービスも提供する場合です。こちらは、たとえ1号の基準を超えるような広域で大規模なネットワークであっても、例外として「登録」の対象から外し、「届出」で済ませるというルールになっています

つまり、この9条1項は、1号(小規模なインフラ)か2号(放送に付随する特例)に当てはまれば届出(法16条)ルートへ進み、どちらにも当てはまらない本格的な自前インフラ事業者は登録(法9条)ルートへ進む、という分岐点(入口の振り分け)の役割を果たしています。

1号の伝送路設備や小規模・大規模の判断については、以下の関連記事でくわしく解説しています。

電気通信事業法|「電気通信設備」の定義と多層的な分類構造

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② 柔軟な参入を促す「届出制」(法16条)

登録制の規模に満たない小規模な回線設置事業者や、自前で回線を持たないMVNO(格安SIM)やISPのような回線非設置事業者は、事前の審査を伴わない総務大臣への届出のみで事業を開始できます。

▽電通法16条1項

(電気通信事業の届出)
第十六条
 電気通信事業を営もうとする者(第九条の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない
 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 外国法人等にあつては、国内における代表者又は国内における代理人の氏名又は名称及び国内の住所
 業務区域及び次のイ又はロに掲げる場合にあつては、当該イ又はロに定める事項
イ~ロ (略)
 電気通信設備の概要(第四十四条第一項に規定する事業用電気通信設備を設置する場合に限る。)
 基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業を営もうとする場合にあつては、当該基礎的電気通信役務の提供に関する問合せを受けるための電話番号その他の連絡先
 その他総務省令で定める事項

事業者の分類と参入手続の関係

事業者の分類 参入手続
回線設置事業者 大規模 登録
小規模 届出
回線非設置事業者 届出

【補足】外資規制について

 電波を直接扱う「電波法」や、特殊な歴史的背景を持つ「NTT法」には、外国人や外国法人が事業を行うことを制限する「外資規制」が存在します。

 しかし、「電気通信事業法」の参入規制(登録・届出)においては、原則として外資規制はありません。外国法人であっても、日本国内に営業所や代理人を置くなどの要件を満たせば、届出を行って日本の電気通信市場に参入することが法的に認められています。

③ 手続不要な適用除外事業(法164条)

また、自前で回線を持たず他人の通信も媒介しないサービス(いわゆる第三号事業)は、原則として電通法上の参入手続の対象外です。ただし、影響力の大きさから前年度の月間アクティブ利用者が平均1,000万人以上の大規模な「検索サービス」や「SNS・掲示板等(媒介相当電気通信役務)」については、例外として上記の届出の対象に組み込まれています。

第三号事業を含む「適用除外となる電気通信事業」の全体像は、以下の関連記事でくわしく解説しています。

電気通信事業法|手続不要?電気通信事業法の「適用除外」となる3つの事業類型

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まとめ

参入規制の全体像は、大きく以下の3つのカテゴリーに分けて考えるとすっきりと理解できます。

参入規制の3つのカテゴリー

区分根拠条文設備の規模主な事業者例手続の重さ
1. 登録法9条大規模(自前で広域に設置)NTT、KDDI、ソフトバンクなど(MNO)重い(厳格な審査あり)
2. 届出法16条小規模、または設備なし(借用)格安SIM(MVNO)、プロバイダ(ISP)など軽い(書類提出のみ)
3. 適用除外法164条等該当しない(他人の通信を媒介しない等)自社用ネットワーク、動画配信サイトなど不要(規制対象外)

登録の拒否・取消し(法12条、法14条)

通信インフラは国民生活の重要な基盤です。そのため、申請者が過去に電気通信事業法や電波法などに違反して罰金以上の刑を受け、執行終了から2年を経過していない場合などの欠格事由に該当するときは、総務大臣はその登録を拒否しなければなりません(法12条)。

▽電通法12条

(登録の拒否)
第十二条
 総務大臣は、第十条第一項の申請書を提出した者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は当該申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一~五 (略)
 総務大臣は、前項の規定により登録を拒否したときは、文書によりその理由を付して通知しなければならない。

また、不正な手段で登録を受けたり、法令違反によって公共の利益を阻害したと認められる場合には、市場からの退場処分である登録の取消しが行われます(法14条)。

▽電通法14条1項

(登録の取消し)
第十四条
 総務大臣は、第九条の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、同条の登録を取り消すことができる。
一 当該第九条の登録を受けた者がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反した場合において、公共の利益を阻害すると認めるとき。
二 不正の手段により第九条の登録、第十二条の二第一項の登録の更新又は前条第一項の変更登録を受けたとき。
三 第十二条第一項第一号から第四号まで(第二号にあつては、この法律に相当する外国の法令の規定に係る部分に限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。

登録の更新(法12条の2)

事業区分としての「第一種」「第二種」はなくなりましたが、現在の法律には、市場支配力を持つ特定の設備に対する特別な位置づけとしてその名前が残っています。これが通信会社同士のM&A(合併・買収)のルールに深く関わります。

  • 第一種指定電気通信設備:固定系アクセス回線で都道府県内シェアが50%を超える設備(主にNTT東西の設備)
  • 第二種指定電気通信設備:移動系(携帯電話)アクセス回線で業務区域内シェアが10%を超える設備(主にNTTドコモ、au、ソフトバンク等の設備)

これらの「指定電気通信設備」を持つ大企業が、自グループ(特定関係法人)以外の企業と合併を行ったり、事業を譲り受けたりする場合、市場の競争環境や寡占化に甚大な影響を与える可能性があります。

そのため、こうした資本の変動が生じた際には、事後の届出では済まされず、事由発生から3ヶ月以内に改めて登録の更新を受けなければならないという厳しい特則が設けられています(法12条の2)。この更新においては、通常の登録要件にはない「経理的基礎」や「体制の整備」といった厳しい審査が復活します。

▽電通法12条の2第1項第5号

(登録の更新)
第十二条の二
 第九条の登録は、次に掲げる事由が生じた場合において、当該事由が生じた日から起算して三月以内にその更新を受けなかつたときは、その効力を失う。
 第九条の登録を受けた者(第一種指定電気通信設備又は第二種指定電気通信設備(第三十四条第二項に規定する第二種指定電気通信設備をいう。第四項第三号ハ及び第三十条第一項において同じ。)を設置する電気通信事業者たる法人である場合に限る。次号及び第七号において同じ。)が、次のいずれかに該当するとき。
 その特定関係法人以外の者(特定電気通信設備を設置する者に限る。以下この項において同じ。)と合併(合併後存続する法人が当該第九条の登録を受けた者である場合に限る。)をしたとき。
 その特定関係法人以外の者から分割により電気通信事業(特定電気通信設備を用いて電気通信役務を提供する電気通信事業に限る。ハ及び次号において同じ。)の全部又は一部を承継したとき。
 その特定関係法人以外の者から電気通信事業の全部又は一部を譲り受けたとき。

退出ルールの自由化(法18条)

最後に市場からの「退出」のルールです。

かつての第一種電気通信事業では、事業をやめる際にも事前の許可が必要でした。しかし現在では、電気通信事業の休止や廃止、あるいは法人の解散については、事後に遅滞なく総務大臣へ届け出ることで足りるとされています(法18条)。

▽電通法18条

(事業の休止及び廃止並びに法人の解散)
第十八条
 電気通信事業者は、電気通信事業の全部又は一部を休止し、又は廃止したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない
 電気通信事業者たる法人が合併以外の事由により解散したときは、その清算人(解散が破産手続開始の決定による場合にあつては、破産管財人)又は外国の法令上これらに相当する者は、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

参入だけでなく退出のハードルも下げる(退出の自由を認める)ことで、「ダメならいつでも撤退できる」という前提を作り、結果的に新規事業者の参入意欲を高めるという競争政策が法構造に反映されています。

結び

今回は、電気通信事業法ということで、参入規制について見てみました。

ポイントは、

  • かつての「第一種・第二種電気通信事業」という参入規制の壁を取り払い、現在の「登録・届出」による柔軟な制度へと移行したこと
  • その一方で、不可欠なインフラを持つ企業には「第一種・第二種指定電気通信設備」という枠組みを活用し、M&A時などに厳しいルール(登録の更新)を課していること

であり、「競争を促して、多様なサービスを生み出す」という法の目的が、参入から退出までの法的構造に組み込まれていることがわかる部分といえます。

電気通信事業法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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