社内規程

社内規程|会議体の基本「取締役会規程」の作り方と押さえておきたいポイント

今回は、社内規程ということで、取締役会規程について見てみたいと思います。

取締役会は、会社の業務執行を決定し、取締役の職務を監督する重要な機関ですが、会議体を効率的・合理的に運営するためには、あらかじめルールを具体的に定めた規程を作ることが重要です。本記事では、会議体に関する規程の中でも基本といえる、取締役会規程の作成ポイントについて解説していきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

取締役会規程とは

取締役会規程とは、その名のとおり、取締役会の運営ルールを具体的に定めた社内規程のことです。

取締役会は、会社の業務執行を決定し、取締役の職務を監督する重要な会議体ですが、複数の役員が集まる会議体を効率的かつスムーズに運営するためには、誰が招集するのか、どのように決議するのかといったルールをあらかじめ決めておく必要があります。

会社の基本ルールなら、定款に書けばいいのではと思うかもしれませんが、定款にすべてを書いてしまうと、ルールを少し変更するだけでも株主総会の特別決議が必要になり、実際上は面倒(非現実的)です。そこで、柔軟にルール変更ができるよう、取締役会自身の決議によって独自の規程として定めるのが一般的です。

取締役会規程の記載内容

それでは、作成時に押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

定款および機関設計との整合性

まず、そもそも論ですが、定款や採用している機関設計(監査役会設置会社、監査等委員会設置会社など)と規程が整合しているかチェックする必要があります。

  • 機関設計の一致
  • 定款との一致:招集権者、招集通知期間、議長、定足数などの基本事項が、定款の記載と一致しているか確認する

目的と出席者(関係者)

通常は、第1条あたりで目的を定めます。取締役会は会社法や定款にも定めがあるため、「法令又は定款に定めるもののほか、本規程の定めるところによる」などと明記して、規程の位置づけを整理しておきましょう。

また、会議の構成員は取締役全員です(法362条)。構成員ではありませんが、監査役を設置している会社では、監査役も出席して意見を述べる義務があること(法383条1項)も定めます。さらに、複雑な議題や専門的な知識が必要な場合に備えて、必要に応じて取締役・監査役以外の担当者や関係者を呼んで、意見や説明を求めることができる旨の定めを入れておくことが多いかと思います。

▽会社法362条1項

(取締役会の権限等)
第三百六十二条
 取締役会は、すべての取締役で組織する。

▽会社法383条1項

(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条
 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。

開催と招集手続

開催頻度

代表取締役(および業務担当取締役)は、3か月に1回以上、自分の職務執行状況を取締役会に報告する義務があります(法363条2項)。そのため、最低でも年4回は開催しなければなりません。通常は、原則として毎月1回定例で開催し、必要に応じて臨時会を開くという運用が一般的です。

▽会社法363条

(取締役会設置会社の取締役の権限)
第三百六十三条
 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

招集権者

会社法上は取締役なら誰でも招集できますが、無秩序に会議が開かれるのを防ぐため、代表取締役など特定の取締役を招集権者として決めておくのが通常です(法366条1項)。万が一、代表取締役に事故があった場合や欠けた場合に備えて、代行する順位(副社長、専務、常務など)も定めておきましょう。

また、招集権者以外の取締役(法366条2項)や、監査役(法383条2項)にも、招集請求権があります。

▽会社法366条(※【 】は管理人注)

(招集権者)
第三百六十六条
 取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役【=招集権者】を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。
 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。

▽会社法383条2項~4項(※【 】は管理人注)

 監査役は、前条に規定する場合【=監査役が二人以上ある場合】において、必要があると認めるときは、取締役(第三百六十六条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができる。
 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監査役は、取締役会を招集することができる。
 前二項の規定は、第三百七十三条第二項の取締役会については、適用しない。

招集の通知と開催方法

会社法では開催の1週間前までに通知を発することになっていますが、定款で3日前や5日前などに期間を短縮することが可能です(法368条1項)。また、取締役(・監査役)全員の同意があれば、招集手続を省略してすぐに開催することもできます(同条2項)。

最近では、条件を満たしたテレビ会議や電話会議を利用した参加も認められているので、規程に盛り込んでおくと柔軟に対応できます。

  • 招集通知期間:会社法上の原則は1週間前ですが、定款で短縮(例:3日前)している場合、規程もそれに合わせているか
  • 手続の省略:取締役(および監査役)全員の同意がある場合に招集手続を省略できる旨の規定があるか
  • オンライン開催:テレビ会議・Web会議システム(Zoom/Teams等)での開催が可能であることを明記しているか。また、その要件(即時性・双方向性の確保、場所の扱い)が含まれているか

▽会社法368条

(招集手続)
第三百六十八条
 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
 前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

議長

会議をスムーズに進めるための議長も重要です。

一般的には代表取締役が務めますが、招集権者と同じく、事故があった場合の代行順位を定めておきましょう。また、特定の議題について特別な利害関係を持っている取締役は議長にはなれない旨も明記しておくのがよいです。

付議事項(決議事項)と報告事項

取締役会で何を決定するか(付議事項)は、規程のキモになります。

付議事項としては、大きく、

  • 法定の決議事項:重要な財産の処分、多額の借財、支配人の選任、株式の分割、自己株式の取得など、会社法で定められた事項
  • 定款の規定による決議事項:株主名簿管理人の選定など、定款に根拠のある事項
  • その他の決議事項:経営の基本方針、予算の決定、内部統制システムの整備、インサイダー情報(重要事実)の管理など

の3つがあるとされています(定款・各種規則の作成実務【新・会社法実務問題シリーズ1】(森・濱田松本法律事務所 編)参照)。

また、重要な業務執行は取締役会の専決事項ですが(法362条4項で、取締役に委任することができないとされている)、この重要性の判断基準にするため、ある程度の社内的基準を別表あるいは職務権限規程などで定めておくのが一般的です。

  • 法定の決議事項が記載されているか(記載の粒度はさまざま)
  • 重要な業務執行の具体的基準:「重要な業務執行」の判断基準として、金額基準(例:〇〇万円以上の投資)や質的基準(新規事業、重要な提携)が別表等で具体的に定められているか(なお、権限委譲を進める際にも、取締役会の専決事項と、それ以外の代表取締役や経営会議、執行役員会などに委任する事項の切り分けが明確である必要があります)
  • 定款の規定による決議事項が記載されているか(あれば)
  • その他:例えば、IPO特有の決議事項として、内部統制システムの整備に関する基本方針の決定・改廃、財務報告に係る内部統制報告書(J-SOX)の承認、インサイダー情報(重要事実)の管理・公表に関する事項などが記載されているか

▽会社法362条2項~5項

 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
 一 取締役会設置会社の業務執行の決定
 二 取締役の職務の執行の監督
 三 代表取締役の選定及び解職
 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
 一 重要な財産の処分及び譲受け
 二 多額の借財
 三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
 四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
 五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
 六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
 七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

決議の方法と議事録の残し方

決議の要件(過半数の原則)

取締役会の決議は「議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席者の過半数」で決定します。これは定款で加重することはできますが、軽減することはできません(法369条1項)。

会議体の規程に関しては「賛否同数の場合は議長が決める」といった規定を見かけることがありますが、取締役会規程では決議要件を軽くすることになり無効となってしまうので注意です

▽会社法369条1項・2項

(取締役会の決議)
第三百六十九条
 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

書面決議

取締役全員が書面や電磁的記録で同意した場合に、取締役会の決議があったとみなす書面決議制度を定款で定めている場合(法370条)、規程にその具体的な運用方法(提案の通知方法や期限など)を記載しておくとスムーズです。

▽会社法370条

(取締役会の決議の省略)
第三百七十条
 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨定款で定めることができる。

議事録の作成と保管

会議の後は必ず議事録を作成し、経過の要領と結果を記載します。出席した取締役と監査役が署名または記名押印(電子データなら電子署名)をし(法369条3項・4項)、本店に10年間保管しなければなりません(法371条1項)。

もし反対意見を述べた取締役がいる場合は、その旨と要旨を議事録に残しておかないと、後から賛成したとみなされて会社の損害賠償責任を問われる可能性があるため(法369条5項)、記録を残すことが重要です。

▽会社法369条3項~5項

 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

▽会社法371条1項

(議事録等)
第三百七十一条
 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。

定款との整合性

大本である定款との整合性は重要なため、規程づくりで定款と照らし合わせてチェックすべき代表的なポイントを振り返っておきます。

招集通知の期間を短縮しているか

取締役会を開催する際の招集通知は、原則として開催日の1週間前までに各取締役や監査役に対して発しなければならないと法律で定められています。しかし実際には、3日前や4日前に期間を短縮して機動的に会議を開けるようにしている会社が多いです。

一応注意が必要なのが、この招集期間の短縮を行うためには、あらかじめ定款にその旨の規定があることが大前提になるという点です(会社法369条1項)。定款に定めのないまま、取締役会規程だけで「3日前に通知する」などと定めて運用すると、招集手続が違法になってしまうため、念のため定款を確認しましょう。

書面決議(決議の省略)の規定はあるか

役員のスケジュールが合わないから、今回は持ち回りの書面決議みなし決議)で済ませようというケースはよく発生します。取締役全員が書面や電磁的記録(メールなど)で提案に同意した場合に、取締役会の決議があったとみなせるのは、実際上も便宜な制度です。

しかし、この書面決議制度を利用するためには、定款に書面決議ができる旨の定めが必要です(会社法370条)。取締役会規程の中に書面決議の具体的な運用ルール(提案方法や期限など)を盛り込む際は、大本である定款に根拠となる条文がそもそも置かれているか、念のためチェックしましょう。

決議要件を勝手に加重していないか

取締役会の決議は、「議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数をもって行う」のが原則です。決議の要件を加重することは可能ですが(軽減は不可)、これも定款で定めなければなりません(法369条1項)。普通、わざわざ加重することはないですが、やろうとするときは、取締役会規程だけで勝手に要件を厳しくすることはできないので注意が必要です。

定款の授権が必要な付議事項になっていないか

規程のキモである付議事項(決議事項)をリストアップする際にも、一応、定款のチェックが必要な場合があります。会社法において定款の定め(授権)があって初めて、取締役会で決議できるようになるという事項がいくつか存在します。

代表的なものとして、以下のような事項を取締役会の付議事項に含める場合は、定款の授権があるか一応確認するのがよいです。

  • 取締役など役員の損害賠償責任の軽減(免除)に関する決定(会社法426条1項)
  • 市場取引等による自己株式の取得(会社法165条2項)
  • 剰余金の配当等の決定(会社法459条1項)

定款で権限が与えられていないのに、規程の付議事項リストに入れてしまわないよう注意しましょう。

結び

会議規程を作る際には、自社の会議の実態を見直すことも必要です。それと、これらのポイントなどを参考に、自社にピッタリで使いやすい取締役会規程を作成してみてください。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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