独立開業

【弁護士の独立】経営者の面とプレイヤーの面とのバランス

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今回は、独立すると経営者としての目線を持たねばならないけれども、自分がプレイヤーであることとの相克に悩む、という話を書いてみたいと思います。

といっても、たぶんどこの世界にいっても当たり前の話なので、ただの雑談なんですが。

独立後、ある経営者の集まりに顔を出させてもらっていました。といっても、JCとかYEGとかロータリーとかではなく、気の合う人同士の集まり、という感じのもので。個人経営者もいるし、法人経営者もいました。フリーランスもいて、男性も女性もいて、経営者メインなんだけどそれ以外の人もいて、面白い会でした。

その中に、ある医療法人の理事長の方で、ものすごく「経営のプロ」「プロ経営者」という感じの方がいました。この方は、以前は全く別の業界におられたのですが、経営の傾いたある病院の経営を立て直すために医療法人に入った、という経歴の方で。この方自身は医師ではなく(※当然ですが医療法違反の事案ではないです)、業界をまたぐ、まさに経営のプロ。

この方が経営に入られてから、その病院は、ある特定疾患の分野(整形外科系ではないです)に集中的に注力して見事経営を立て直し、地域でその分野における不動の地位を確立したんですね。◯◯といえば◯◯病院、とみんなが知っているというやつです。

その方からアドバイスとして、「経営はマーケティングが大事だ。例えば法律事務所だったら、いまどんな事件が需要が多いのか、例えば裁判所にその数値があるんだったらその数値を調べて、見ることだ。数値を見るんだ。そこに力を入れていくんだ、そこから広げていくんだ」というありがたいお言葉をいただきました。

シンプルながらどう見ても的を得た言葉で、何というかプロ経営者オーラが凄い人だったので、さすがだなと(小並感)。

実際には各裁判所からそんな数値が公表されているということはないので(だよね?)、やろうと思ったら毎日開廷表を見に行って、自分でデータをつくっていく…みたいになるだろうと思います。たぶん実際にやっている人はいないだろうと思いますが。また、明確に統計的な数値として出さなくても、ある程度肌感としてトレンドはわからないでもないところ。

が、そんなブツクサとしたことは言わず、やってやれないことではないわけです。

しかし単純によりネックだったのは、じゃあ特定の事件類型を抽出できたとして、それをひたすら自分がやっていく、という環境に自分を突っ込めるか、ということだったんですよね。

わかりやすくいえば、たとえば不貞の慰謝料請求が需要伸びている、みたいな数値があったとして、来る日も来る日も不倫の話を聴き続けるという状態に自分を置けるか?ということ。

その理事長の方は、自身は医師ではないので、実際に治療にあたるのは現場の医師なので、経営方針を打ち出すのに迷いはないと思います。ただ、現場の医師たちはどうだったかはわからないなと。実際にやるのが自分ということであったらどうか?迷いは生じただろうか?という気もするわけです。もちろん、経営が成り立たなければ元も子もないのだから、という話はわかるんですが。

個人事務所の経営者はプロ経営者ではなく、経営者かつプレイヤーなので、合理的に導き出される経営方針と、プレイヤーとしてどうしたいかは、相克というか隔たりが出ることも多いのではないかと。

またこういうのとは別の価値軸(職人的な価値軸)として、事件は自分でコントロールするものではなく、弁護士は依頼者のために目の前の事件を一生懸命やっているうちに特定分野の専門家になっていくんだ、という古来からの言い伝えもありますけどね。それもわかります。

このへんでごちゃごちゃ言ってるあたりが、なかなか伸びない原因のひとつなのかなと思ったり思わなかったり(苦笑)。でも上記の言葉(アドバイス)は金言なんですよねえ…。優しい人。

テレビで飲食店と経営コンサルが会話しているシーンを見たことがあって、

店  主 「でも、ウチはこれがこだわりなんです」
コンサル 「わかります。でも、もっとお客さんに来てほしいんじゃないんですか?」
店  主 「う、うーん」

みたいになってるシーンを見たことがあるんですけど、そんなシーンを見ている感じ(笑)。

という雑談でした。

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