反社排除

反社排除法務|取引先だけじゃない!従業員・役員・株主の反社チェックの重要性と対策まとめ

今回は、反社排除法務ということで、取引先以外の反社チェックについて見てみたいと思います。

反社チェックといえば、まずは取引先のチェックがメインですが、実はそれ以外もあります。見落としがちな領域ですが、本記事では、企業防衛のために欠かせないもうひとつの反社チェック、すなわち取引先以外(従業員・役員・株主など)に対する反社チェックについて解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

従業員の反社チェック

従業員の中に反社会的勢力やその関係者が入り込んでしまうと、会社の秩序が破壊されたり、情報漏洩や不当要求のターゲットにされたりする危険があります。

従業員の反社チェックは、大きく、採用時の対応入社後の対応に分けることができます。

採用時の対応

これから採用しようとしている求職者に対するチェックです。企業には採用の自由があるため、求職者が反社会的勢力と判明した場合や疑いがある場合に不採用とすることは原則として許されます。

そのため、採否を判断するための前提として、採用面接などで求職者が反社であるかどうか、あるいは関わりがあるかどうかを本人に質問したり、調査することも原則として許容されます(参考:最判昭和48年12月12日(三菱樹脂事件最高裁判決))。

とはいえ、実際には面接での質問・調査等のみで反社該当性を見抜くのは困難であるため、

  • 採用面接などでの本人への質問のほか、
  • 履歴書の賞罰欄で確定した有罪判決(前科)の有無を確認する
  • インターネット検索等で氏名を調べる(いわゆる反社チェック(属性調査))
  • 入社前に、暴力団関係者等ではなく将来も関係を持たない旨の誓約書の提出を求める
  • 就業規則に暴排条項を定めておく

といった、いくつかの方法を組み合わせるのが基本となります。

なお、誓約書についてもし提出を拒否するなら、それを理由に不採用とすることも原則として許されます。

入社後の対応(有事の対応)

これは、すでに雇用している従業員が反社だとわかった場合ですが、入社後は入社前とは状況が異なります。

この場合は採用時の局面とは異なり、労働関係法令により従業員が保護されており、解雇権濫用法理が働くため、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ解雇は無効になります。

以下、いくつかの場合に分けて見てみます。

従業員が暴力団員だった場合

この場合は、企業秩序への影響の大きさや反社会性の高さから、原則としてただちに懲戒解雇に踏み切ることが許容されると考えられています。

就業規則に反社排除条項の内容を解雇事由として定めておくのがベストですが、もしなくても「会社の信用・名誉を害した場合」などで解雇し得るとされています。ちなみに、これを理由とする解雇は社会的身分による差別にはあたらないと解釈されています。

従業員が密接交際者だった場合

本人が組員ではなく、暴力団員と親しくしている密接交際者だった場合は、判断が少し難しくなります。交際の経緯や関係の深さによって影響度が変わるため、個別具体的に判断せざるを得ません。

「暴力団員と1回ゴルフに行った」程度の理由でいきなり懲戒解雇をすると、処分が重すぎるとして無効になる可能性が高いです。この場合は、まず退職勧奨を行ったり、配置転換や軽い懲戒処分を与えて関係を断ち切らせるよう努めるべきとされています。

過去の反社経歴を隠していた場合(経歴詐称)

採用時に、過去に暴力団関係者であったことはないと嘘をついて入社していた場合は、重大な経歴詐称として懲戒解雇が有効になる可能性が高いといえます。

ただし、事実として採用時にはすでに暴力団を離脱しており、そこから相当な長期間、何の問題もなく真面目に勤務していたようなケースでは、解雇は重すぎると判断されるリスクもありますので、あくまでも事案に応じた慎重な対応が必要です。

内定者・試用期間、業務委託の場合

その他、雇用関係以外での反社チェックについても若干見ておきます。

まず、内定者・試用期間中の場合です。内定期間や試用期間中は、会社側に解約を留保する権利が認められており、本採用後の従業員を解雇するよりは広い範囲で解雇(内定取消・本採用拒否)が認められます。内定通知書や試用期間の条件に、反社との交際が判明した場合は取り消す(留保解約権を行使する)旨を明記しておくことも考えられます。

それから、業務委託スタッフの場合です。個人スタッフと業務委託契約や請負契約を結んでいる場合は、基本的には一般の企業間取引と同じ扱いです(つまり取引先の反社チェックと同様)。

ただし要注意なのは、実態が従業員と同じ(指揮命令関係があり実態が雇用)と評価される場合です。事業者に使用され、賃金(報酬)を支払われているとみなされると、労働基準法などの対象となる労働者と判断され、従業員と同じように厳しい解雇制限のルールが適用されます。

役員の反社チェック

従業員が反社関係者だったというケースと、役員が反社と関係を持っていたというケースでは、会社に与えるインパクトの次元が異なります。

役員が反社と親交を持っていると、銀行からの融資引き揚げ、事業免許の剥奪、さらには上場廃止といった致命的なダメージを受けるリスクがあります。

  • 銀行からの融資引き揚げ:銀行の取引約定書には暴排条項が盛り込まれており、役員が反社と関係していると判断されれば、融資が一斉に引き揚げられる可能性があります
  • 上場廃止・事業免許の剥奪:証券取引所の上場廃止基準に抵触したり、各種業法に基づく事業免許が取り消されたりするおそれがあります
  • 公共事業からの排除:地方自治体などの公共工事への参入が一切認められなくなるリスクもあります

このように、役員の反社との関わりは、文字どおり会社の命取りになりかねません。

就任前の調査と誓約書等

こうしたリスクを未然に防ぐためには、役員を選出・就任させる段階での対策が不可欠です。

まずは事前調査です。役員候補を選出する段階で、その人物が反社関係者ではないか、怪しい交友関係はないかを徹底的に調査する必要があります。過去の経歴や、経営に関与していた別の企業に問題がなかったかなど、多角的なチェックが求められます。

そして、誓約書の取得(または反社排除条項のある委任契約書)は不可欠です。役員就任時には、反社会的勢力と一切関係を持たないことを書面をもって表明・確約させるということです。

ここでのポイントは、明らかに暴力団とわかる者だけでなく、反社会的勢力に該当する人物であると合理的に疑われる者と交際しないことまで誓約の対象に含めることです。さらに、もし違反が発覚した場合は、会社の求めに応じて直ちに取締役を辞任し、損害賠償等の責任を負うといった厳しいペナルティも明記しておくことが望まれます。

そのほか、役員自身に、反社と交際することの危険性やリスクの重大性を認識させるため、就任時のコンプライアンス研修などを実施すること(役員向けの研修)も重要です。

もし役員と反社の交際が発覚したら(有事の対応)

万が一、就任中の役員が反社関係者と親交を持っていることが発覚した、あるいは強く疑われる事態になった場合は、冷静かつ迅速に対応を検討する必要があります。

適切な調査の結果、交際相手が反社であると認められる場合はもちろん、反社だと疑われる合理的な理由がある場合でも、会社は当該役員に対して、即座にその人物との関係を断ち切るよう要請すべきです(関係遮断の要請)。

しかし、もし役員が関係遮断の要請に応じない場合、あるいは過去の交際が非常に濃密だった場合(例:著名な暴力団幹部と長年付き合いがあったなど)には、会社を守るために辞任を要求し、それでも辞めない場合は株主総会での解任という厳しい対応に踏み切る必要があります。

【参考裁判例】大手電気機器メーカー元社長辞任要求事件

 実際に、反社会的勢力との関係が疑われる投資ファンドの代表者と深い親交を持っていた上場企業の社長に対し、他の役員らが辞任を迫ったケースがありました(東京地判平成24年4月11日判時2159号77頁)。

 裁判所は、反社との関係が疑われた以上、深い親交を有する社長に辞任を求めることには相当な理由があるとして、辞任要求を適法(不法行為にあたらない)と判断しています。

株主・出資者の反社チェック

反社が自社の株式を取得してしまうと、株主の権利を悪用して不当要求をしてきたり、最悪の場合は経営権を掌握されて会社を乗っ取られ、企業価値を収奪されるおそれもあります。

商取引(取引先)であれば契約解除で縁を切ることができますが、一度株主になってしまった相手を排除するのは非常に困難です。

そのため、M&A(企業買収)などを行う際も、反社チェックの調査範囲を広めにとり、たとえば買収先の役員だけでなく、主要な株主についても事前に反社チェックを実施しておく必要性が高くなります。

とくに第三者割当増資は要注意

新しく株式を発行して資金調達をする第三者割当増資は、反社が株主として入り込む典型的なルートになりやすいため、とくに厳格なチェックが求められます。

上場企業の場合、上場企業が第三者割当増資を行う場合、割当先(新しく株主になる相手)が反社ではないかを調査し、証券取引所に対して割当を受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書を提出することが原則として義務づけられています。もし割当先が投資ファンドである場合には、ファンドの運営者だけでなく、10%以上の出資者についてまで調査することが求められます。

他方、未上場企業の場合であっても、割当先の反社該当性に無関心でよいわけではありません。未上場企業であっても、割当先が反社であると知りながら第三者割当増資を行えば、各都道府県の暴排条例で禁止されている利益供与に該当し、条例違反となる可能性が高いためです(もちろん、そもそも社会的責任(CSR)の観点もあります)。

利益供与の禁止においてはたとえ適正対価を伴っているものでも利益供与に該当するとされているため、株式の発行価格が適正であっても利益供与にあたります。そして、株式の取得自体が暴力団の投資活動(資金獲得活動)を助長する行為であるといえるため、割当先が反社であると知りながら割当てを行えば、助長取引の認識ありとなり、利益供与の禁止に抵触します。

もし反社が株主になってしまったら(有事の対応)

万が一、すでに反社が株主として入り込んでしまっている場合や、知らずに出資を受けてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。

まずは出資契約や株式引受契約に反社排除条項を盛り込んでおき、それを根拠に速やかに関係を解消する努力をすることが最優先です。

それと同時に、会社法が禁止する利益供与にも細心の注意を払う必要があります。会社法(120条1項、970条1項)は、株主の権利行使に関して、会社が財産上の利益を供与することを禁じており、違反すると役員には民事的な任務懈怠責任が生じるほか、刑事罰もあります(総会屋への利益供与を防ぐためのルールですが、特に総会屋等に限定されてはいません)。

ここでいう利益供与は、お金や物品を渡すことだけではありません。以下のようなケースも該当するリスクがあるので要注意です。

  • 情報や取引の機会の提供:未公開のノウハウなどの情報や、独占的な取引の機会を提供することも、財産的価値があれば利益供与に含まれます
  • 正当な対価をもらっている場合:通常の取引として相当な対価(代金)をもらっていたとしても、そこには相応の利潤が含まれており反社の資金源になり得るため、利益供与とみなされます
  • お中元・お歳暮などの少額の贈り物:社会通念上相当な範囲(5,000円程度の商品券など)であれば該当しないとの扱いが通常ですが(会社法上は株主の権利行使に関してとはいえない、暴排条例上は助長取引とまではいいにくい)、相手が反社だとわかっているならば、それが暴力団の活動資金となる余地が否定できないため、企業のレピュテーション・リスクの観点からも一切提供しないよう努めるべきです

結び

反社排除は取引先のチェックだけでなく、内側(従業員・役員)や資本(株主・出資者)に対しても目を光らせる必要があります。

本記事で見たような、就業規則の見直し、採用・就任時の誓約書の取得、増資時の厳格な審査など、組織全体での防衛体制を構築していくことが肝要です。

反社排除法務のガイドマップ~法令の基礎知識から平時・有事の対応まで

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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関連団体

  • 暴追都民センター(「公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター」)
  • 特防連(「公益社団法人 警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」)

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